2ntブログ

↑アローズ速報↓/SSまとめ

VIPなどのSSまとめInアロ速

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

「魔王を助けてやってくれ」勇者「え?」6/10


「魔王を助けてやってくれ」勇者「え?」



394 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:44:21.45 ID:+dzWyMwwo

――――
――

「そ……さま」

スライム「そっき……ま」

スライム「そっきんさま!!」

側近「あぁ……、スライムか。どうした」

スライム「だいじょうぶですか! すごい血が!」

側近「……ああ、だいじょうぶだよ」

側近「……ふしぎとな。あまりいたくないんだ」

側近「きずは、あまり深くないようだから……」






元スレ
「魔王を助けてやってくれ」勇者「え?」
[SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)@VIPServise掲示板]




395 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:44:47.49 ID:+dzWyMwwo

スライム「でもでも、こんなに血が」

側近「だいじょうぶ……だいじょうぶだから……すこし……はなしをしないか?」

スライム「な、なんですか?」

側近「なぁ、魔界はいいところ、だよな……」

スライム「うん。ぼくの故郷だもん」

側近「あぁ……。わたしもだ」

側近「人間界のように、空はかわらないけれど……。植物あまり育たないけれど……」

側近「それでも、この地は美しい」



396 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:45:16.32 ID:+dzWyMwwo

側近「それは……人間界もおなじ……。違う美しさを……もっている」

側近「どうして……わたしたちは……それをみとめらないんだろうか……」

側近「そうすれば……おなじように、すごすことが……できる……のに」

スライム「側近さま……ぼくには難しすぎてわかりません」

側近「は、ははっ……すま、ない……」


397 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:45:44.45 ID:+dzWyMwwo

側近「わたしは、ただ……おまえや……まおう、さまと……」

側近「このそらのした……わらいあっていきれば……」

側近「そ……れだけで……」


わたしは、スライムに手をのばす。

ドロで汚れてざらざらしてしまっていて、とてもさわってきもちわるいけれど。

これがわたしが、助けた命。

わたしがたすけられたさいごの…………。


398 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:46:10.92 ID:+dzWyMwwo

スライム「……側近さま?」

スライム「側近さま!しっかりしてください!」

スライム「側近さまぁあああ!!!!」



――――
――


399 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:46:37.30 ID:+dzWyMwwo

ゴーレム「報告します!! 結構いい数の勇者が魔王城に集まってきました!!」

後見人「……そうか。それならば頃合か」

ゴーレム「……本当にやるんですか?」

後見人「それが、魔王が望んだことなのだ。我々はそれを叶える場所を用意するだけだ」

ゴーレム「わかりました。耐えましょう。それが魔王様のためならば」



400 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:47:05.94 ID:+dzWyMwwo

勇者「さっきから静かですね。本当に戦争しているんですか?」

魔王「ええ、そのはずよ」

勇者「でも、こんな広間みたいな場所にいていいんですか。もっと話し合いとかしないと」

魔王「大丈夫です。時が来るときまで待てば、私たちは勝てます」

勇者「そうなんですか?」

魔王「……ええ」



401 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:47:32.98 ID:+dzWyMwwo

後見人「魔王様、準備が整いました」

魔王「……そう。ありがとう」

勇者「なにがはじまるというのです?」

魔王「ひとつの劇ですよ。勇者さん」

魔王「後見人、この部屋には誰一人いれないでくださいね」

後見人「それが魔王の望みであれば」

魔王「ええ、お願いしますね」 



402 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:47:59.15 ID:+dzWyMwwo

魔王「さて、勇者様。いまからひとつの劇をしてもらいます」

勇者「……え?」

魔王「あなたは、勇者役。私は魔王役」

魔王「私はとてもとても悪い魔王で、勇者さん、あなたはとてもとても良い勇者です」

魔王「勇者は悪い魔王を殺します」

魔王「その後勇者は魔王を討ち取ったことを世界に広め、魔界を自分のものにします」

魔王「……そして人間と魔物のやさしい世界をつくります」

魔王「そんな劇です」

魔王「さあ、はじめましょうか」

勇者「……ま、まってください!! なんですかそれ!!」



403 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:48:27.84 ID:+dzWyMwwo

勇者「あ、あなたもしかして死ぬ気だったんですか!」

勇者「そんなことだめです! 絶対に許しません!!」

魔王「勇者が魔王の死を許さないのですか……」

勇者「言葉遊びはやめてください!!」

勇者「だいたい、魔物が私についてくるとおもうんですか!?」


404 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:48:54.44 ID:+dzWyMwwo

魔王「ええ、絶対についていきます」

勇者「なんで言い切れるんですか!!」

魔王「……あなたがくる、ずっと昔に、生まれたばかりの魔物を教え込んだのですよ」

魔王「勇者はいい人。勇者は魔王になる前の仮の姿で、いつかは私にかわって魔王になり世界を幸せにしてくれると」

勇者「!?」

勇者(だからスライムはあんなことをいっていたのか!)

魔王「他にもたくさんの準備をしてきました」

魔王「あなたが知っている限りでは、魔物を広めるのはそうですが、あなた自身の知名度を高めることもそうですね」

魔王「お金を求めずたくさんの町を救った勇者は、好かれることでしょう」

勇者「……」


405 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:49:20.65 ID:+dzWyMwwo

魔王「そして強すぎる勇者は、王にとっては恐怖の対象になってしまう」

魔王「勇者は強すぎてはいけません」

魔王「強くみせないためには、魔王が弱くみせればいい」

魔王「たかが兵士でも倒してしまうような、そんな弱い魔王を」

魔王「それを群衆の前でみせればいいだけ」

勇者「じ、じゃ、一ヶ月前のあれは演技だったんですか」

魔王「ふふっ、結構私は演劇とか大好きなのよ~」

勇者「……」

406 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:49:49.96 ID:+dzWyMwwo

魔王「……勇者さん、魔王が率いる魔王軍ではだめなんですよ」

魔王「どんなに私ががんばっても、悪い魔物のまま」

魔王「だから私じゃだめなんです。魔王では、平和な世などつくれません」

魔王「でも、勇者であれば。もしかすると、可能かもしれません」

魔王「勇者さん、どうか、託されてください」

魔王「魔物と人間の未来を。どうか……」

勇者「魔王……」



407 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:50:15.93 ID:+dzWyMwwo

勇者「……きっと、私がどう説得しても、あなたはその未来以外選ばないんでしょうね」

魔王「えぇ……」

勇者「…………ほんと」

勇者「あなたは……不器用な人だ」

魔王「よく、いわれます」



408 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:50:42.73 ID:+dzWyMwwo

勇者「それならはじめましょう、魔王。あなたがいう劇を」

魔王「えぇ……。でも、ね、勇者さん。この劇はみんなには内緒にしてください」

魔王「これはあなたと私だけの舞台」

魔王「あなたと私だけしかしらない、大切な秘密です」

勇者「……はい」



409 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:51:09.62 ID:+dzWyMwwo

魔王「よくぞきた、勇者よ!! ここまで来れたことはほめてやろう」

魔王「だが貴様の命運もここまでだ! ここでお前は死ぬがよい!!」

勇者「人々を苦しめる魔王よ、それはこちらのセリフだ!」

魔王「ふははは!! 面白い、それならばかかってこい、勇者よ!!」


魔王が現れた!!



410 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:51:35.52 ID:+dzWyMwwo

勇者(体力ではあちらが上手。いっきに終わらせたほうがいいだろう)

勇者(確実に、一撃で、魔王の命を奪える方法)

勇者(…………そんなのひとつしかない)



411 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:52:02.27 ID:+dzWyMwwo

魔王「何をしている、勇者。こないのならこっちからいくぞ!!」

魔王の攻撃!

勇者は150のダメージを受けた!

勇者「やるな魔王! だがお前は私には勝てん!!」

勇者「悪は滅びる運命にあるのだからな!!」


412 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:52:30.23 ID:+dzWyMwwo

勇者(必要なのは、ただひとつだ)

勇者ははぐれメタルの剣を投げ捨てた。

勇者はナイフを装備した。


413 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:52:56.91 ID:+dzWyMwwo

魔王「ナイフ? ふははっはっ!! 貴様、この私をなめているのか!!」

魔王「私の手に持っているのはお前が投げ捨てた剣なのだぞ!」

魔王「そんなちんけな小さい剣で私に勝とうなど!!」



414 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:53:23.10 ID:+dzWyMwwo

魔王の攻撃!

勇者は300のダメージを受けた!


勇者「ぐぅ……」

魔王「ふはははっ!! 脆い、脆いぞ勇者!!」

魔王「人間など脆すぎる生き物だなあ!!!!!」




415 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:53:49.16 ID:+dzWyMwwo

勇者(しかし、今ので見切ったぞ。魔王は、横切りしかしてこない)

勇者(剣を振った瞬間にしゃがみこみ、そして懐に……)

勇者(大丈夫、あとは……あとは……)



416 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:54:19.02 ID:+dzWyMwwo

魔王の攻撃!

勇者は――。

勇者「何事にも臆することなき勇気のみ!!」

魔王「なにぃ!?」



勇者「――――」

魔王「――――」

417 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:55:04.06 ID:+dzWyMwwo

魔王「ゆ、ぅ…しゃ…さん。また、抱きしめて……くれ……ました……ね」

勇者「……う……ううっ……」

魔王「なか、ない……で。ね……?」

勇者「魔王……魔王……っ。どうして、どうしてあなたが……犠牲にならくなちゃ……いけないんですか!!」

勇者「わたし、わたしは……あなたのことを……」

魔王「いいのよ、もう……いわなくても。ね、……さん。……わたし、ひとつだけ……あと……つだけ……かなえてほしい……おねがいがあるの」


418 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[]投稿日:2011/09/01(木) 16:55:40.90 ID:+dzWyMwwo

勇者「なん、……ですか?」

魔王「キスを……してみたい……なって」

勇者「……」

勇者「わか、わかり……ました」

魔王「――……」

419 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:56:06.54 ID:+dzWyMwwo

魔王は、最後は空ろな目をみて、何もいえないようだったけれど。

私にはありがとう、といっているように見えた。

私はそれを飲み込むように、彼女の唇に自分の唇を重ねる。

それはほのかにあたたかく……、彼女の優しい桜のような香りが伝わってきた。

……でもこれが私が奪ってしまった彼女のものだとおもうと、罪悪感で胸がいっぱいになってしまう。

だけれど、劇は終わらない。

私と彼女の劇はまだ終わらないのだ。

私はそっと彼女をもう一度抱きしめる。

もう、そこには彼女は存在しないけれど。

だけど弱い私は、それにしがみ付いていないと壊れてしまいそうで。

420 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:56:38.64 ID:+dzWyMwwo

勇者「……」


それでも、時間が私をせかすのだった。

彼女の亡骸をそっと床の上に置き、私は歩き出す。

まだ勇者としての役割が残っているのだから。



421 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:57:17.35 ID:+dzWyMwwo

勇者「もどき勇者どもと魔王軍よききええええええええええぇええ!!!」

勇者「この勇者が魔王を打ち破った!!!」

勇者「もう魔物も人も戦わなくてもよいのだ!!!」

勇者「元凶は……げ、元凶はもう、もういないのだ!!!」

勇者「も、もう終わったのだよ!! 人と魔物の戦争は!!!!!」


なきそうになる。

しかしこらえらなければいけない。わたしは魔王を討ち取った勇者なのだから。

言葉ではない方法で、私に気持ちを伝えてくれたとても不器用な――。

私のたったの一人の愛する魔王を殺した勇者なのだから。


勇者 END


422 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 16:59:33.01 ID:+dzWyMwwo

勇者ルート 後日談


「―― 断ろう。お前を救う道理など魔王軍にはない」

その男はとても哀れだった。私がいう台詞ではないとはおもうけれど。

以前私が見たときは鉛筆のような細身だった体が、いつの間にかもやしにレベルアップしていた。

母親を求める赤ん坊のようにひたすらに私に伸ばす手の指は、自由自在に動く木の棒のようでとても不気味だった。

私は恐怖を覚え、後ずさりをしてしまう。そして、なんとなしにその男の顔を、見つめてしまった。


423 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:00:55.76 ID:+dzWyMwwo

眼球は少し触っただけで取れてしまうのではないかと思えるぐらいに飛び出していて、そしてその目は恨むように私をみていた。

呪い殺されるかと思えるぐらいに。本当に。

私は魅せられたようにその目から視線を逸らすことはできなくなってしまった。

心臓は高鳴るのに、頭は氷を当てられたかのように痛みながら冷えていく。



424 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:01:42.27 ID:+dzWyMwwo

呼吸は徐々に激しさを増し、吐き気を覚えた。

息を吸う毎に私の身体は重くなっていく。

今すぐにこの床に嘔吐物をぶちまけたい。それでこの男が私から視線をそらしてくれるのであれば。

だけど身体はそんな私を無視して、動かしてくれない。金縛りにでもあってしまったのだろうか。

それともこれはただの夢なのではないだろうか。そうであれば今ここで裸踊りをしてもいいぐらいに嬉しい。




425 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:02:25.32 ID:+dzWyMwwo

でも、違う。

知っている。そのくらいは知っているのだ。これは紛うこと無き現実なのだと。

氷は頭だけではなく、体全体を冷やしにかかる。しかし何故かそれに比例して私の額を汗が通っていく。

暑いわけでも、寒いわけでもなかった。ただ身体が圧倒的な恐怖に冷えていく。



426 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:02:53.83 ID:+dzWyMwwo

「勇者」

搾り出したような霞んだ男の声は、私の体を撫で回す。

ガチガチと自然に歯が震えだし、呼吸が不規則なものに変わっていく。

とても息苦しい。こんな気持ちを味わうぐらいならば死にたいとも思った。



427 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:04:22.86 ID:+dzWyMwwo

「わしはお主も、お主の父も、魔物も、憎むぞ」

男はしわくちゃの顔をもっと皺だらけにしながら目を閉じ、顔を伏せた。

その瞬間、震えながら吐き出す息とともに、私の身体は軽くなっていく。

そっと氷も私の元から離れ、呼吸も少しずつ元通りにと戻っていく。

死にたいという感情も、他人事のように、ああ、そんなこともあったな、とさえ思うようになっていった。

……しかし恐怖だけは、未だに私を捕えている。

一年前はただの老人だと思っていた人物だったのに、憎悪を向けられるとこんなにも恐ろしい存在になるのか。

少しだけ他人行儀にそんなことを思った。



428 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:05:10.80 ID:+dzWyMwwo

――


それでも、その男は哀れなものだった。

男の側近の話から聞いた話だ。

彼に与えられた世界は大きな城のひとつだけ。出ることも許されず、遊ぶことも許されないまま、王とはなんたるかを学んだ。

しかし彼は人の王になれる器ではなかった。人を束ねられるほどの才能がなかったのだ。

いや、それ以前の問題だったのかもしれない。彼は人と接することが苦手なようだったから。


429 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:05:57.99 ID:+dzWyMwwo

そんな彼が大人なり、王になり、何を思ったのかはわからない。

ただ王になっても彼は孤独なままだった。

父が残した莫大な権力と、金を振り回し、なんとか民をまとめ、国を治めていた。

……日に日にやつれていく身体と、金、権力、王としての価値。

彼は悩んだのだろう。きっと。王として何をすれば、民に必要とされるか。

そんな彼に近づいたのは賢者だったという。




430 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:07:02.07 ID:+dzWyMwwo

私がゲームに安らぎやときめきを与えられるように、彼は賢者の宗教に安らぎを感じてしまった。

彼はやっと悲しいとき、悔しいとき、自分のベッドの布団ではない、本当に自分を救ってくれる縋れるものを手に入れたのだ。

だから、彼は宗教にはまってしまった。

国民の税金を教団に差し出し、金が足りなくなったら自分の臓器を売るぐらいに。

そうして少しずつ、ずぶずぶと底なし沼にはまるかのように、彼は破滅の道へと堕落していった。




431 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:07:51.22 ID:+dzWyMwwo

教団が魔物が悪だといえば、悪だと信じた。

そして彼はうまくない国政を、魔物の所為にすることで余裕をもつことができた。

自分は悪くないのだと思い込めるようになった。

彼は幸せになれた。こんな形になってはじめて。



432 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:08:39.86 ID:+dzWyMwwo

だけれど私の父と、そして戦士さんが教団をつぶした。

多数の信者の目撃証言で賢者が魔物だということが広まってしまった。

王も、すぐにそのことを知った。

そして何を思ったのか、魔物は神の使いだと言いまくり、勇者たちをすべて神に背く悪魔だから処刑しろと吼えてしまったのだ。

勿論勇者たちは激怒した。そして、そこから勇者と王との戦争が始まった。

それはひどく醜く、ただただ人が死んでいく戦いだった。



433 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:09:14.37 ID:+dzWyMwwo

そして勝ったのは、意外にも王だったのである。

勇者たちは皆殺し。王は歪んだ正義を貫くことができたのだ。

しかしそれに激怒したのは民達だ。

愛する家族を魔物に襲われたのに、王はそれが正義だという。

その魔物を倒してくれる勇者のことを、王は悪だという。

そのことに耐え切れなかったのか、民は恨みの対象を魔物ではなく自分たちの王に向けた。

そしてまたもや内戦が始まったのだ。



434 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saeg saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:09:41.18 ID:+dzWyMwwo

王である男はそこでやっと気づいたのだ。自分は間違っていたことに。

しかし何もかも遅かった。遅すぎたのだ。

縋るものはもうなにもなく、だけれど自分たちの力ではどうすることもできない。

だから男は私に声をかけてきた。助けてくれ、と。

だけれど私は……断った。


435 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:10:10.06 ID:+dzWyMwwo

私はひとつため息をつく。

まるで牢屋のような石の壁や床でできた小部屋には無機質にもベッドしか置いていない。

あの男はこれが客用の部屋だといっていたけれど、たぶん嘘だろう。

けれど文句をいって本当に牢屋にいれられては困るので、私はここの小部屋で寝ることを選んだ。

私はベッドに腰掛け、小さな窓から外の様子を伺う。

436 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:10:37.10 ID:+dzWyMwwo

このからみえる藍色の空はべったりとアクリル絵の具で塗られたように重く、けして美しいものではなかった。

けれどもその中で、恥ずかしげに欠けた月は黒い雲のドレスを身にまとい、私たちをやさしく見守っている。

なんとなく、それが魔王に重なって、手を伸ばした。

そして月を握り締める。勿論感触なんてあるはずがない。ただ自分の指先の温度を感じるだけだった。



437 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:11:20.82 ID:+dzWyMwwo

―― あれから、一年半ぐらいたつだろうか。

人々が魔物ではなく、王に関心を向けてくれたおかげで、私たちは内政を整える時間をもらった。

通貨もなかった魔物の生活は、少しずつ人のような生活へと進化していっている。

魔界で取れる農作物も、去年の倍近くまで増え、自給自足の生活だってできるようになった。

だけれども、魔王のいっていた世界にはならない。

いや、もうする必要性がないんじゃないか、とも私は思っている。

魔物はもう人間の力を借りなくても、魔物だけで生活できる。

同じ星に住む生き物だからって無理に仲良くする必要性なんて、ないじゃないか。


438 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:12:37.72 ID:+dzWyMwwo

人間は人間。魔物は魔物で、すごしていけばいい。

今のようにお互い無関心で……。


「……っ」


先ほどの王の顔がパチンと一瞬フラッシュのように写り、私は身を震わせる。

私は結果的には殺したことになるだろう。

だから王はあんな目で私を、魔物をみた。

初めて向けられた憎悪という感情は私の中を駆け巡り、心や身体を刺していく。

……だけれど、これでいいのだ。

あの王に加勢したところで、なんの特にもならないのだから。

私は耐えなければならない。


439 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:13:20.47 ID:+dzWyMwwo

ゆっくりと手を下ろし、もう一度月を見つめた。

しかし残念ながら雲に隠れてしまっていて、もう月の影すらみえない。

私はもう一度だけこの深い藍色の空のようなため息をついた。

するとほんの少しだけ寒くなって、足指を触ってみると、思っていた以上に冷たくてびっくりした。

びっくりしすぎて、自分を抱きしめたくなって、体操座りをして足ごと抱きしめた。



440 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saeg saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:14:20.90 ID:+dzWyMwwo

「父さん、私、間違ってないよね……」


教団をつぶしたらしい父と、戦士さんの行方はわからず、僧侶さんもどこかにいってしまった。

勿論、探している。けれどどこにもいない。

死んだとは、考えたくなかった。きっと父も戦士さんも僧侶さんも生きている。

父と戦士さんはどこかの小さい村で若い女の人と暮らしていて、僧侶さんは……修行とかにでかけた、みたいな。

だから死んでいるはずがない。絶対に。みんな強いんだから、絶対に生きている。


441 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:16:03.78 ID:+dzWyMwwo

「明日は魔王城に戻って人口増加についての話し合いか……」

私はもう世界を救う勇者でも、夢心地な魔王でもなく、今日、明日を生きるのに精一杯な女になっていた。

だから、今となっては魔王がうらやましく思う。

442 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saga]投稿日:2011/09/01(木) 17:17:44.59 ID:+dzWyMwwo

あんなに純粋に、そしてあんなにも無垢にあんな得にもならないことを思い続けられるなんて。

そしてあんなことを約束し、魔王を殺した自分も。

感情で動いていた、ただのバカなガキ達だったんだと――。


後日談 END


469 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage]投稿日:2011/09/03(土) 21:31:17.91 ID:8tWHkztno
すべて書き終わらなかったので、トゥルー√の途中まで今日は投下させていただきます。


470 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:32:00.82 ID:8tWHkztno

勇者「それじゃ、父さん。お願いするね」

勇者父「おう、まかせとけ。こういえても100レベルなんだから、一人でなんでもできるぞー!」

勇者「うん、じゃ、私は魔王とにゃんちゃんちゅちゅしてくるので」

勇者「父さんは一人で頑張ってください」

勇者父「勇者さん、かわってもらってもいいっすか?」

勇者「だが断る」ヒュン

勇者父「あ、いっちゃった……」

勇者父「よっし、俺もいっちょ仲間から探すかな!!」



471 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:32:34.40 ID:8tWHkztno

トゥルー√

――

勇者父「こういう時に頼れるのは男という相場が決まっている」

戦士「だから俺のところにきたのか」

勇者父「すまん、忙しいとは思うがまた一緒に世界を救ってくれ」

戦士「かまわんよ」

勇者父「いいのか。仕事とかないのか?」

戦士「先日カミさんに逃げられて剣以外残っていないんだ」

勇者父「うわぁ……、お前なにしたの?」

戦士「浮気」

勇者父「ババアのカミさんよりも若い女を選んだかこいつwwwww」

戦士「男なら普通のことだろwwwwwっうぇっうぇwww」



472 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:33:02.59 ID:8tWHkztno

戦士「確かお前って魔王に呪いか何かかけられてなかったっけ」

勇者父「それは勇者が頑張って解いてくれている」

戦士「おお、ならそれは問題にしなくてもいいな。ところで世界つっても今更何を救うんだ?」

勇者父「どうやら賢者が変な宗教つくって俺つえーやっているらしい」

戦士「昔から厨二病っぽいと思ってたが、そこまで悪化してたとは……」


473 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:33:29.11 ID:8tWHkztno

勇者父「ということで俺達がその宗教を潰す」

戦士「魔王ちゃんと勇者ちゃんたちはなにしてんの?」

勇者父「魔物のイメージをアップさせるとか言っていたな」

戦士「そういや俺の町にも魔物来てトイレ掃除してたな」

勇者父「トイレ掃除とかwwwww地味すぎるwwwwww」



474 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:33:56.77 ID:8tWHkztno

戦士「あと一年ぐらい頑張れば結構いい線いくかもよwwww」

勇者父「よっし、俺たちもいいことするときはモシャスで魔物になってからやろうぜ」

戦士「斬新なアイディア。知り合いの雑誌のライターやっている友達にそれ勧めとくわ」

勇者父「モシャスで魔物になるのが今時のかわいい!! モテ☆かわ魔物スタイルで彼氏のハートをギガデインにしちゃお☆」

勇者父「がはやるってことですねwwww」

戦士「やばいwwwそれやばいwww」



475 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:34:23.60 ID:8tWHkztno

勇者父「でも実際、賢者のとこいくのは一年後くらいにしようぜ」

戦士「なにその一年後に本気出すみたいなwwwww」

勇者父「いやwwww魔物が一般化したら、魔物嫌いな宗教とか今より権力落ちるかもしれないからさwwww」

勇者父「あまり大きな権力に喧嘩うったら、お先真っ暗でござるよ」

戦士「それもそうだけどそんなのんびりで大丈夫なのかよwwwwwww」

戦士「もう俺たち後も長くねーし、さっさと倒して隠居したほうがはやいような気がするwwww」



476 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:34:58.80 ID:8tWHkztno

勇者父「なぜだろう、お前がかしこくみえる」

戦士「テンションあげぽよ~ぉおおお!!」

勇者父「よっしこういうことは馬鹿な俺ら二人で話し合ってもしょうがないし、僧侶の意見を聞きに行こうぜ」

戦士「さっそく女に浮気したwwwwwwwwwwwww」

勇者父「うるせえwwww」


477 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:35:29.22 ID:8tWHkztno
――

僧侶「……おはようございます、僧侶です」

僧侶「今日も勇者様のところにいってお話したいなあ」

僧侶「……どうして私、僧侶なんて選んじゃったんだろ」

僧侶「この歳まで独身だなんて……。ぐすん……勇者様と結婚したかったのになぁ……」

僧侶「おはようございます、神様。どうか人間にとっても魔物にとっても今日が良い一日になりますように」

僧侶「……」

僧侶「そういえば賢者さんが変な宗教つくって、もう20年かぁ……」

僧侶「どうして賢者さんは魔物を殺したがるんだろう」

僧侶「……勇者様のところへいこっと」




478 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:35:58.50 ID:8tWHkztno

僧侶「ごめんくださーい、僧侶ですけど、勇者様いますかー?」トントン

僧侶「……」

僧侶「…………いないや」

僧侶「どこにいったんだろう。いつもならいるはずなのに」

僧侶「……勇者様」

僧侶「…………かえろ」クルッ

僧侶「いたっ……」ゴツッ

僧侶「あれ、ドアの前に壁なんてあったっけ……」



479 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:36:25.49 ID:8tWHkztno

魔物「オ、イタイタwwwwホントオイシソウッスネwwwww」

僧侶「ひっ。ま、魔物!? ど、どうしてこんなところに」

魔物「オレジュクジョモエナンスヨwwwwwwチョットイタダキマスネwwwwww」

僧侶「い、ひ……いやっあ!! こないで!! こな――――……」

勇者父「何人の家の前でいちゃついてやがるんだ魔物風情があぁあああああああ!!!」ドガッ!



480 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:36:51.98 ID:8tWHkztno

魔物「フギャァwwwwwwwww」ズサササ――……!!

僧侶「!? 勇者様!?」

戦士「大丈夫か僧侶ちゃん!! 怖かったなら俺の胸に飛び込んできてもいいんだぜ!?」

僧侶「戦士くん……それは、遠慮しておくよ……」



481 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:37:18.38 ID:8tWHkztno

魔物「エーwwwwwチョwwwwwエーwwwwwwwコンナテンカイwwwwキイテナインスケドwwwwww」

魔物「マオウサマノwwwwウソツキwwwwwwドウスリャイインダヨコレwwwwwwwww」ザザザザッ

戦士「お、こいつ逃げようとしてるぞ!!」

勇者父「まてぇえ!!! ぜってーにがさねーぞおおおおお!!!!!」ドドドドドッ

魔物「ヒィイイイイイイwwwwwwwwwwww」ザザザザザッ



482 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:37:46.33 ID:8tWHkztno

勇者父「捕まえた」

魔物「」ピクピク……

僧侶「勇者様、その魔物まだ完全には死んでいませんよね。どうするんですか?」

戦士「生け捕りにして食べるのか?」

勇者父「いや魔王にみせようとおもって。こいつ魔王の嘘つき、とかいってたし」

戦士「そうと決まったら魔王城にれっつらごーだ!!」

僧侶(うう……なんだかめんどくさそうな展開になりそうだよぉ……)



483 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:38:13.11 ID:8tWHkztno
――

勇者「めっちゃ眠い」

魔王「あらー、勇者さん。おはようございます~」バサッバサッ

勇者「今日は洗濯ですか」

魔王「はい。今日は風が心地よくて素敵ね~」

勇者「あまり天候とか変わらないような気がするんですが」

魔王「それは勇者さんが魔界にあまりいないからわからないのよ~」

魔王「魔界はずーっと同じような天候でわかりにくいけれど、これでも毎日違うのよ?」

勇者「勉強になったなあ」


484 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:39:15.26 ID:8tWHkztno

魔王「そういえば昨日スライムたちが魔界に帰ってきましたけど、何かあったんですか?」

勇者「ああ、そのことなんですけど、ちょっと話聞いてもらいますか?」

勇者「できれば側近さんとかもいるといいんですけど」

魔王「あら~、側近ちゃんもですか。 ごめんなさい、勇者さん。丁度側近ちゃんは――」

勇者父「魔王アッァァアアアアアアアアアアアアアア!!!」

勇者「父さん!?」

戦士「おっぱいもませてくれー!!!」

魔王「ひっ、え、あ、ゆ、勇者様!? と、戦士様!? ど、どうしたんですか~?」

僧侶(私もいるよぉ……)



485 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:39:57.23 ID:8tWHkztno

勇者父「論より証拠だ。まずこれをみてくれ、どう思う?」

戦士「いやその前に俺のはどうおもう」ギンギン

魔王「え、あ、やっ。やめてください、そういうのは……ちょっと……」

戦士「ウブだね、グッヘッヘッヘ。ほらほら」ブラブラ

勇者「戦士さん、それ以上やったらもぎ飛ばしますよ」

戦士「ひぃ」



486 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:40:26.32 ID:8tWHkztno

魔物「」ピクピク…

魔王「あ、えっと、これ、魔物、ですよね」

魔王「あら、でも、どうしてこんなにボロボロに?」

勇者父「俺がボコボコにしました。僧侶食おうとしたので」

魔王「え、そ、僧侶さん、大丈夫でしたか?」タプーン

僧侶「は、はい。だ、大丈夫です」ペターン

僧侶(……巨乳は何十年たっても苦手だなぁ)



487 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:40:54.37 ID:8tWHkztno

勇者「僧侶さん襲ったって本当なの」

勇者父「ああ、本当だ。この目でしっかりみた」

魔王「人間を襲う魔物なんて……そんな……」

勇者「こいつ一匹だけとかじゃないでしょうか」

勇者父「それはさすがに楽観視しすぎだろう」

勇者「ですよねー」

488 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:41:42.99 ID:8tWHkztno

魔王「……あら、でも、この魔物……。ううん……」

勇者「どうしたんですか?」

魔王「……こんな魔物、魔王軍にいたのかなって。私が忘れているだけかもしれませんが~……」

魔王「ちょっとこの子、回復させてもよろしいでしょうか?」

勇者「どうするんですか?」

魔王「本人から少し話を聞こうと。おしおきもしないといけませんしね」



489 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:42:24.55 ID:8tWHkztno

勇者父「……まぁ、そういうことなら。だけど、このままだと絶対逃げるよな。縄とかない?」

魔王「あ、はい。あると思います。縄とってきますね。どうぞ城の中でお待ちください」

勇者「じゃ、いつもの個室で待ってます」

魔王「はーい、案内お願いしますね」タタタッ

勇者「わかりました」

勇者父「……」

戦士「……」

勇者「……なんすか?」

勇者父「なんでもないですよ」

戦士「ええなんでもないですよ」

勇者「なんだかむかついてきた」



490 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:42:54.21 ID:8tWHkztno

魔王城 個室


戦士「やっぱくさいよねー」

勇者父「うんうんくさい」

戦士「だよねー」

魔王「お待たせしました~」

側近「失礼します」

勇者父「あれ、君だれ?」

側近「お会いするのは初めてですね。私は魔王様の側近をやっています、側近と申します」

勇者父「……ああ、魔王に電話かけるといつも出る子か」

勇者「声で判断できるほど電話してたのかよ」

勇者父「一人さびしい夜に、魔王の声を聞いて」

側近「勇者殿からの電話はとらないようにしますね」

勇者父「すいませんでした」



491 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:43:35.38 ID:8tWHkztno

魔王「人を襲う魔物が現れたということで、側近ちゃんも呼んでみたんですよ」

魔王「きっと私以上に魔物は把握していると思いますので~……」

側近「そ、そんなことは……。と、とりあえずその魔物をみせてもらいますか?」

勇者父「これです」

魔物「」ピクピク……

側近「うむ……」

側近「……これは私も、みたことありませんね」

魔王「じゃあ、やっぱり本人から話を聞くしかないですね~……」


492 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:44:02.06 ID:8tWHkztno

勇者父「縛ったよー」

魔王「あら~……難しそうな縛り方で縛りましたね~……」

勇者「なぜ亀甲縛りなのか」

戦士「魔王ちゃん! 俺を縛ってくれ!!」

魔王「あ、え、私にこんな縛り方はできません~……」

勇者父「そもそも戦士よ。こーゆー胸してるんだから、こっちが縛ったほうが迫力あっていいとおもうぞ」

戦士「それもそうだな。魔王ちゃん、縛らせてくれ」

側近「私がしばいてあげましょうか?」

戦士「さいきんのおんなのこってこわい! なんでもすぐにほんきにする!!」

僧侶(私、影うすいなぁ……)

493 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:44:28.91 ID:8tWHkztno

側近「ベホマズン!」

魔物「オ、オオオオオ、ウヒョーwwwwwナンダカシラナイケドwwwwwカラダカルイwwwwww」

魔物「ッテwwwwアレwwwwwココドコwwwwwwwwwwwww」

勇者「こいつの声聞き取りにくいなぁ」

魔王「はじめまして、魔物さん。わたしは、魔王と申します~」

魔物「エwwwwwハイ?wwwwwマオウwwwww?チョwwwwwニセマオウサマktkrwwwwww」

魔王「偽? あ、わ、私、偽の魔王だったんですか~!?」

側近「大丈夫です、魔王様。あなたは偽の魔王ではありません」

魔物「ヨクミタラwwwwシバラレテタwwwwwwコーユープレイwwwwwスキクナイノニwwwwwwwww」



494 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[sage saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:44:55.55 ID:8tWHkztno

勇者父「お前がいう魔王とは何者だ」

魔物「ゼッタイwwwwwオシエナイwwwwwwwww」

魔王「あ、私の父、のことでしょうか。名前はエスタークっていうんですけど」

魔物「ダレソレwwwwwwwwwwwwwwww」

側近「どうやら違うみたいですね」

勇者父「そういえばエスタークどうなってんの? まだビンビンギンギンで寝てるの?」

魔王「あ、はい。恥ずかしながら……。あと千年ぐらいで目覚めると思うんですが」

勇者父「千年以上もあの格好で寝るなら俺は死を選ぶ」

戦士「俺もだ」

魔王「実の父を殺せるほど、私は冷酷にはなれません~……」

勇者「なんだか魔王の口から殺せるとか聞くとものすごい違和感を覚えるよ」



495 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:45:26.76 ID:8tWHkztno

魔物「イイカラハナセヨwwwwwwオマエラヲwwwwタベツクシテwwwwwマオウサマノトコロヘwwwwwカエルカラwwwwww」

勇者「だからその魔王の名前をいえってば」

戦士「そうだそうだ」

魔物「ゼッタイwwwwwオシエナイwwwwwwwコンナシバリカタシタwwwwwヤツラニハwwwwwゼッタイニwwwwww」

勇者「あーもう、聞き取りづらい。聞き取りづらい」

496 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:47:22.86 ID:8tWHkztno

側近「魔王様、これは計画にかなり重要な打撃を与える出来事です」

側近「なんとしてもこいつからマオウサマの情報を聞き出さなければいけません」

魔王「え、ええ、そうね~……。どうしましょう」

側近「ずばり拷問しかないでしょう」

勇者父「うわ、ひどい」

戦士「さすが魔物、やることが汚い」

側近「そ、それしか解決方法が思いつかないんですからいいじゃないですか!!」

勇者「そうだよ、父さんたち。ちっぱいな側近さんにそれ以外の解決方法がうかぶとおもったr」

側近「うるさいぞ勇者!!!!」



497 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:47:50.40 ID:8tWHkztno

魔王「……そうですね~。でも僧侶様を襲ったのですから、その分のお仕置きは同じ魔物としてしなければいけませんし」

魔王「わかりました。私、ちょっと叱ってみますね~」キリッ

戦士「魔王ちゃんの喋る速度って×1.5ぐらいにすれば丁度よくなりそうだよね」

魔王「あ、あら~? わ、わたし、そんなに喋る速度遅いですか?」

戦士「子守唄みたいで素敵だってことさ。どうだい、今夜。女としての悦びを俺の剣で刻み込んでやるぜ」ドヤッ



498 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県)[saga]投稿日:2011/09/03(土) 21:48:45.06 ID:8tWHkztno

魔王「す、すいません。それはまた今度にお願いします。今日は勇者さんと寝る約束が」

勇者「ちょ、あぁぁぁあ!! たんま! 魔王まって! 戦士さん言っておきますけど、そーゆー意味じゃないですからね。アレの方向じゃないですからね」

戦士「これは、新種のツンデレか何かかな」

勇者父「父親としては喜んでいいのか悲しんでいいのかわからない」

魔王「……えっと、ご、ごめんなさい?」


関連記事
[ 2012/02/27 23:11 ] 勇者「」or魔王「」 | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック:
この記事のトラックバック URL
http://yajirusiss.blog.2nt.com/tb.php/417-0ebf27a1

プロフィール

LACK

Author:LACK
うーっす
当ブログはノンアフィリエイトです
何か(不満、ご希望、相互リンク・RSS、記事削除、まとめ依頼)等はコメント及びメールフォームまでオナシャス!
SSよみたいかきたい!!!1
不定期更新で申し訳ない

カテゴリ

アクセスランキング ブログパーツ