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配達少女「お届けものでーす」4/4
配達少女「お届けものでーす」
320
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/01(金) 14:56:21.44 ID:oA15g2f/o
エイプリルフール ①配達少女の場合
少女「お疲れさまでーす、担当分終わりましたー」
少女「ふー、ちかれたあ……」
少女「ん、あれ? どうしたんですか局長、そんな真面目な顔して。らしくないです」
少女「らしくないは余計? これは失礼。でも何かあったんですか?」
少女「お前には話せない? 余計に気になります!」
少女「教えてくださいよう、ねえねえ誰にも言いませんからぁ」
少女「そこを何とか!」
少女「え! いいんですか!? やったあ!」
少女「ふんふん……」
少女「ええ!? 二郎さんに恋の相談をされた!?」
少女「つ、ついに二郎さんがデレる時が!」
少女「……え、違う? そ、それはどういうことですか?」
少女「……」
少女「……好きな人が別にできた……って」
少女「え、えええええええ!?」
321
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/01(金) 14:58:20.07 ID:oA15g2f/o
エイプリルフール ②青年の場合
青年「お疲れース、担当分終わりやしたー」
青年「あーだるかった……」
青年「――ってアレ? センパイは?」
青年「は? 用事があるからって帰った?」
青年「何の用事スか」
青年「……デート?」
青年「……あいつが? 誰と」
青年「……」
青年「ああなるほど、今日は四月のいっぴ。そういうことスか」
青年「……くだんね」
青年「え? どこ行くかスか? ちょっとタバコ吸いに外に出るだけっスよ」
青年「ちがいます、別にあいつはどうでもいいスよ。本当にデートしてようが嘘だろうが俺には関係ないっス」
青年「……本当っスからね?」
322
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/01(金) 14:59:21.06 ID:oA15g2f/o
エイプリルフール ③中年の場合
局長「ふひひ、あいつらのあの顔!」
局長「あの子は素直だし、二郎もなんだかんだ言って純情だし、ころっとひっかかってやんの!」
局長「いやいや違う違う、これは悪意があってついたウソでは決してない。あいつらがいつまでたってもくっつかないから私が仕方なくだな……」
局長「ふひひ!」
RRR...
局長「お、来た来た、どうなったかな。面白いことになってるといいのだが」
局長「はいもしもし、こちら局長だ」
局長「うん、うん。え、あ、ちょ、泣かない泣かない!」
局長「すまんすまん! そう、あれは私の善意のウソだって。だから気を確かにもつんだ!」
局長「だから……って二郎? あー……すまん。いや、お前ウソだって気付いてたじゃ」
局長「……」
局長(無言のプレッシャーパねえ)
局長「いや、だからすまん!」
局長「え、許してくれるのか? 怒ってない? いや、怒ってるよね?」
局長「その代わり?」
局長「……」
局長「結婚するから二人揃って退職する……だと!?」
323
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/01(金) 15:00:27.69 ID:oA15g2f/o
エイプリルフール ④変な名前の猫の場合
猫「zzz...」
「局長、これで懲りましたかね?」
「さて、どうだか。俺としては本当に辞めてやっても良かったけどな」
「二郎さん、カンカンでしたもんねー、ふふ」
「……別に」
「んー、私も辞めても良かったかも」
「ん?」
「辞めたら二郎さんと結婚できるんですよね?」
「……お前いっぺん論理学勉強してこい」
「あー、馬鹿にしたあ」
「はいはい」
「……待ってますからね」
「……」
猫「zzz...」
おしまい
元スレ
配達少女「お届けものでーす」
[SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)@VIPServise掲示板]
329
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/02(土) 14:29:08.25 ID:rVhEFPKqo
少女「お疲れ様で―す、担当箇所終わりましたー」
少女「ふう」
少女「あれ、局長何してるんですか?」
少女「行き先のない保管郵便物の棚卸? 手伝います」
少女「思ったよりはありますねー」
少女「……それだけ届かなかったものがあるって思うと、ちょっとさびしい気持ちになります」
少女「わあ……これすごいですね。だいぶ紙が古くなってます」
少女「何年前の何でしょう?」
少女「えーと、昭和ですから……って、昭和!?」
330
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/02(土) 14:29:52.17 ID:rVhEFPKqo
少女「二十五年前かあ。こんなに古いものが……」
少女「受取人がいなかったとかは分かりますけど、差出人のところに返送はしなかったんですか?」
少女「え? どっちも引っ越して行き先不明?」
少女「そうですか……」
少女「あ、二郎さんお疲れ様です」
少女「これですか? 実はですね――」
・
・
・
少女「――と、いうわけなんです」
少女「二十五年前ですよ、すごすぎですよね」
少女「って、二郎さん!? 何ナチュラルに開封してるんですか!?」
331
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/02(土) 14:30:20.30 ID:rVhEFPKqo
少女「局長も何とか言ってやってくださいよ! なんでわたしがぶたれなきゃいけないんですかー!」
少女「二郎さんってほんとは優しいのに、わたしには容赦ないです……はあ」
少女「……ねえ、聞いてます?」
少女「え? なにか書いてあったんですか?」
少女「見ろって……わたしを共犯にするつもりですか? ふふーんだ、その手にはかかりませんよーだ」
少女「……またぶったー!」
332
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/02(土) 14:31:55.24 ID:rVhEFPKqo
少女「分かりましたよう、読みますってば」
少女「えーと……」
『私はあなたを許します』
少女「……?」
少女「許す? ってなんのことでしょうか……」
少女「え? あ、ええ。その通りですね、大事なお手紙であることは間違いなさそうです」
少女「確かに届けなければいけない気がしますが……でもどうしましょう、どちらもお引っ越ししちゃってるみたいで」
少女「聞き込み、ですか? 二十五年前ですよ?」
少女「どうにかなる? そんな適当な……」
少女「え、有給取る? 私もですか? そ、そんな急すぎますよう!」
少女「あ、二郎さん待ってくださーい!」
336
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/03(日) 22:40:07.35 ID:D/3S+L2do
<翌朝>
少女「――さて。ここが届け先の住所ですが」
少女「きれいでかわいらしいおうちですねー」
少女「あ、ちょっと二郎さん?」
ピンポーン……ガチャ
少女「あ、え? わ、わたしですか!?」
少女「――あ、あー、えーと、こ、こんにちは! わたしたち郵便局の者です!」
少女「今日はちょっと伺いたいことがありまして……」
少女「あ、はい、えーとですね、前にこちらに済んでいた人なんですけど……」
少女「あー……やっぱりご存知ないですよね」
少女「申し訳ありません、失礼しました」
……パタン
337
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/03(日) 22:40:44.78 ID:D/3S+L2do
少女「二郎さんいきなりはひどいですよう」
少女「ってあれ、二郎さん? あ、いたいた」
少女「どこ行くんですか?」
少女「いたっ。どうして叩くんですかぁ。……なんでついてくる、って」
少女「手分けして聞き込み? そんな警察じゃあるまいし」
少女「二郎さんて変なとこ行動的ですよね」
少女「――って、行っちゃった……そんなにうまくいくのかなあ……」
338
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/03(日) 22:41:49.66 ID:D/3S+L2do
少女「あ、いたいた! 二郎さーん!」
少女「……ちょっと、何叩こうとしてるんですか」
少女「遅い? 場所指定しないで行った二郎さんが悪いんです」
少女「え、結果ですか? うーん、特にこれといった情報は……」
少女「二郎さんもですか? まあ、そうですよねえ」
少女「え? 次行く? 一体どこに?」
少女「送り元って……二つ隣の県じゃないですか!」
少女「あ、待って、置いてかないでー!」
339
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/03(日) 22:42:20.90 ID:D/3S+L2do
少女「zzz……」
少女「ん……んにゃ?」
少女「あ……着いたんですね……」
少女「んー……身体が凝りました。三時間ほどずっと車でしたからねえ」
少女「あ、はい、えーと。目的地は地図だとあっちみたいです」
・
・
・
少女「……空き地、ですね」
少女「見た感じ、こうなってから結構たってるみたいな」
少女「どうします二郎さん。 って、あれ? いない……」
少女「また聞き込みですかあ。はあ……」
343
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/06(水) 23:30:34.78 ID:MRHQCmPDo
少女「うう……結局こっちでも有益な情報を持ってる人は見つかりませんでした」
少女「二郎さんも収穫無しですか。そうですよねえ……」
少女「ところで暗くなってきました。今日は帰りませんか?」
少女「え、まだ寄るところがある? どれくらいかかるんですか?」
少女「……」
少女「聞き間違いですよね?」
少女「十数時間とか、ちょっと常識じゃ考えられません」
少女「あ! 待ってください! 知らない土地で一人はやーですー!」
344
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/06(水) 23:31:27.52 ID:MRHQCmPDo
・
・
・
少女「……ううん、ムニャ……」
少女「ん――あれ?」
少女「ああ、着いたんですか……」
少女「夜行バスじゃないんですから、こう言うのはもう勘弁ですよう……」
少女「で、ここはどこですか?」
少女「……県を四つ跨いだんですね」
少女「半分仕事とはいえ、これはちょっと……」
少女「え? なんですか? 鏡?」
少女「あ! 涎の跡が!」
345
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/06(水) 23:32:27.55 ID:MRHQCmPDo
ピンポーン――ガチャ
少女「あ、おはようございますお爺さん」
少女「朝早く申し訳ありません、わたしたちこういうものなんですけど。ええ郵便局の」
少女「はい、実はちょっとお伺いしたいことが……」
・
・
・
350
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/07(木) 22:52:08.43 ID:xGATdViEo
・
・
・
少女「……」
少女「お話、ありがとうございましたお爺さん」
少女「……」
少女「ええ。行きましょう二郎さん。彼女たちが、待っています」
少女「……二十五年。いやもっとですか」
少女「ずっと、すれ違ったままで。ずっと分かりあえないままで」
少女「わたしはそれに恐怖します」
少女「……そして感謝します。手紙に救えるものがあることを」
少女「今なんですね、ええ」
少女「今こそ」
351
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/07(木) 22:52:42.16 ID:xGATdViEo
・
・
・
ピンポーン――……
少女「……出てください」
ピンポーン――……
少女「すぐそこなんです。あなたたちのは、すぐそこなんです」
ピンポーン――……
少女「将棋のお爺さんとは違うんです、この世界で確かに届くんです。だから……!」
――ガチャ……
少女「……! あのっ、わたしたち――いや、わたしたちはどうでもいいんです。
この手紙を、届けに来ました。受け取ってください」
少女「彼女からの、お手紙です。取り戻せる過去からの、お手紙です……!」
352
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/07(木) 22:53:08.90 ID:xGATdViEo
『私はあなたを許します』
353
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/07(木) 22:53:46.14 ID:xGATdViEo
『お久しぶりですね。
あなたたちがいなくなってからずいぶん経ちました……彼がいなくなってからずいぶん経ちました。
私はあなたたちといた日々を片時も忘れたことはありません。
――そして、あなたが私から彼を奪ったこともまた、忘れません』
少女「お爺さんから聞きました。昔、近所に仲の良い三人の子供たちがいたそうですね」
少女「男の子一人に女の子二人。三人は仲が良くていつも一緒にいたと聞いてます」
少女「三人が成長してもそれは同じで。
からかわれることもあったけど、それでもその子たちの友情を断ち切るのには足りませんでした。」
少女「でも友情は慕情に変わります。そして残念ながらそれは、三人全員を幸せにするには、席が足りなかった」
少女「彼は選んだそうですね、あなたを」
少女「……続き、読んでください」
354
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/07(木) 22:55:35.67 ID:xGATdViEo
『彼はあなたを選びました。悔しいけれど、それは事実です。
私もそれは仕方なかった、彼も悩んで決めたのだと理解しています。
でも許せなかった。あなたが彼と二人で旅行に行くなどと言わなければ、彼は死なずに済んだのに、と。
あれはあなたたちの早めの婚約祝いでしたね。あなたたちは車で隣の県まで旅行に行って、事故に遭いました。
不慮の事故、でした。
彼は死にました。あなたは生き残りました。
私は……私は取り残されました。
もちろんあなたが悪くないことは、頭ではわかっていました。
でも私には、この愚かな私には、あなたが全てを奪い、壊してしまったように見えて仕方なかった』
少女「――駄目です。逃げちゃ駄目です」
少女「続き、読みましょ? ね?」
355
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/07(木) 22:56:09.33 ID:xGATdViEo
『あなたはその後すぐに別の県に引っ越してしまいましたが、それはきっと正解でした。
その時の私には、あなたを許すことなんて到底できなかったでしょうから。
事実私は憎みました。激怒し、嫌悪し、憎悪しました。
誰にかは自分でも分かりません。
私を選ばなかった彼にかもしれませんし、あなたにかもしれません。
それとも神様に、だったのかも。
そのまま数年がたちました』
356
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/07(木) 22:56:47.39 ID:xGATdViEo
『私は、私にはもう何も残っていないことに、ある日気がつきました。
あの日の三人の、目が眩まんばかりの輝かしい日々はありません。
三人で遊んだ公園も今はないことを知っていますか?
学校も、新しくなったんです。
もう、どこにも、あの日の匂いは残っていなかった。
私は。私は――』
『――だから、私はあなたを許そうと思うのです。
これは積極的な許しではないでしょう。
むなしさに気付き、それゆえ心が折れた、そんな消極的な許しです。
ここには根本的な解決はないでしょう。
それでも。
ああ、それでもあの日々はとても楽しかったから……』
357
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/07(木) 22:57:18.71 ID:xGATdViEo
『私は、この手紙を書いたら出発します。
もうあの日の残滓はありませんが、私たちのことを知っている人が残っています。
弱い私にはそれが耐えられないから。
だから、私たちのことを知っている人がいないところに行きます。
繰り返します。私はあなたを許します。
そして、さようなら』
358
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/07(木) 22:58:05.49 ID:xGATdViEo
少女「……」
少女「……書きましょう」
少女「お手紙、書きましょう」
少女「今のあなたには泣くことしかできないでしょうけれど、それでも書かなければなりません」
少女「また明日、ここに来ます。その時に手紙を渡してください」
少女「私たちが届けます」
少女「大丈夫、必ず届きますから」
少女「あの日の輝きは取り戻せないでしょうけれど」
少女「それでもまだ取り返しのつくものはきっと。その手の中に残っているんですよ。ね?」
359
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/07(木) 22:58:36.20 ID:xGATdViEo
それから。
その二人の女性の会合は、いまだ実現してはいないものの。
これから実現する見通しもないものの。
それでも小さな文通は。
ある二人の郵便局員の手によって続いているそうな。
360
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/04/07(木) 22:59:14.06 ID:xGATdViEo
・
・
・
少女「二郎さーん、終わりましたよー」
少女「ってあれ? 二郎さん眠ってるんですか?」
少女「……ハンドルに突っ伏して、器用ですねー」
少女「まあ、ほとんど寝ていないんですから仕方ないといえば仕方ないですが」
少女「それにしても」
少女「ふふ、なかなか可愛い寝顔ですね。もうちょっと待ってあげますか」
少女「……お疲れ様、です」
おしまい
361
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]投稿日:2011/04/07(木) 23:03:34.13 ID:xGATdViEo
読んでくれた人乙
さて、もちろん他に書きたい人がいれば別だけれども
あと3エピソードほどで勝手ながらスレを終わらせようと思っておりやすのでよろしく
そしてセンパイはポニーテールじゃなかろうかと思う今日この頃
362
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]投稿日:2011/04/07(木) 23:10:58.36 ID:8uOEPU/uo
ポニテだったのか
勝手にツインテで想像してた
おつおつ
363
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]投稿日:2011/04/08(金) 14:11:21.36 ID:yuLjWSxIO
普段はポニテで仕事のときはおろしててそこに配達員の帽子をかぶってるイメージ
366
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 14:54:12.58 ID:qak9e7+uo
青年「なーんか久しぶりな気がする」
青年「いや何がってわけじゃないが」
青年「こう、すごく間が空いたようなこの間延び感」
青年「まあいいか」
青年「センパイの住むとこが見つかったってんでなんちゃって同棲が終わって早一週間」
青年「なんだか、ようやく自分の時間が持てたような気がする」
青年「……」
青年「さーて、隠してあったDVDでも見るか」
ピンポーン
青年「ん?」
青年「……どうせ勧誘だろ。無視無視」
367
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 14:54:40.48 ID:qak9e7+uo
ピンポンピンポーン
青年「……」
ピンポンピンポンピンポ――
青年「ああうるせえ!」
青年「はいはいどちら様だ!?」ガチャ
青年「っ――!」
青年「お前……一美」
青年「なんで……なんで、ここに来た?」
青年「……」
青年「ま、まあ入れ。話は中で聞く」
368
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 14:55:09.57 ID:qak9e7+uo
一人の女が俺を訪ねてきた。
知ってる顔。知りすぎてる顔。
できれば忘れたかったそいつ。
俺の今回の話は、ここから始まる。
369
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 14:55:45.27 ID:qak9e7+uo
青年「ほれどうぞ」コト
青年「フー……」
青年「……」
青年「で? 何があった?」
青年「……黙ってちゃ分からねえよ」
青年「ん?」
青年「――はあ?」
青年「俺の家に泊めてくれ、だあ? 正気か?」
青年「いや、だってよ……」
青年「まあ妻帯者用の社宅だから部屋はあるんだが」
青年「じゃあいいだろってもよ……」
青年「お前は――」
青年「っと、しまったそういえば配達の時間だ。
悪いが話はまた後でにしよう」
370
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 14:56:11.78 ID:qak9e7+uo
そう言って俺はそいつを残して社宅を後にした。
これから起きる面倒事には、この時全く気付いてなかった。
371
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 14:56:39.37 ID:qak9e7+uo
青年「ただいまー、っと。ふうやれやれ」
青年「ん?」
青年(いいにおいだな)
青年「もしかして夕飯作ってくれたのか?」
青年「うお、わりいな」
青年「じゃあ、手洗ってくるわ」
372
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 14:57:06.36 ID:qak9e7+uo
青年「うん美味い」
青年「……」
青年「いや……上達したな、って。……あの頃よりも」
青年「……」
青年「ごちそうさま」
373
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 14:57:33.48 ID:qak9e7+uo
青年「さて、じゃあ話の続きをしようじゃねえか」
青年「何があった? 言ってみ」
青年「……」
青年「やっぱりだんまりか」
青年「悪いがそれなら家に泊めることはできない」
青年「いや、今日はもう遅いから泊めるけど、明日には帰るんだ」
青年「……いいな?」
374
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 14:58:13.25 ID:qak9e7+uo
カポーン……ジャバー
青年(一体、何があったっていうんだろうな)
青年(なんとなく予想はつかないでもないが)
青年「……ったく」
青年(面倒事はごめんだぜ)
青年「……」
青年(なんでこんなときに、センパイを思い出すんだろうな)
ガラガラガラ……
青年「なっ!?」
青年「なんっ……なんで入ってくるんだよ!」
青年「背中を流そうと思った? 余計な御世話だ、帰れ!」
青年「ちょっ、せめて服を着ろ! 目のやり場に困る!」
375
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 14:59:24.71 ID:qak9e7+uo
青年「……あービビった」
青年「全くあいつは何を考えてるんだか……」
青年「あー、なんかちょっと疲れた。もう布団に入って寝ちまおう」
ガチャ
青年「」
376
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 15:00:01.18 ID:qak9e7+uo
青年「何のつもりだ。そこは俺のベッドだ」
青年「いや、何も言うな部屋戻って寝ろ」
青年「ここで寝る? 俺にあっちに移動しろってか? 一体何の意味が――」
青年「……」
青年「ああうすうす感づいてたさ」
青年「だがな、誰が一緒に寝るものか!」
青年「何でか? もともと恋人だっただろう?」
青年「俺とお前はもう別れただろうが!」
青年「ついでに言うぞ――」
青年「お前はもう人妻だろうが!」
381
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 20:17:50.95 ID:qak9e7+uo
青年「zzz...」
青年「ううん……」
青年「ん、ふあ……朝か」
青年「いけね、配達の準備しねえと」ゴソゴソ
――ムニュ
青年「」
青年「うお! うおおおお!?」
青年「なんっ、なんで! いつの間に!」
青年「お前結局俺のベッドに忍び込んだのかよ!」
382
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 20:18:26.64 ID:qak9e7+uo
青年「あービビった……」
青年「あ、おはようございっス」
青年「いや、別になんでもないっスよ」
青年「隠し事でもないっス」
青年「あ……おはようセンパイ」
青年「いや、別になんでもねーよ」
青年「……本当だ」
383
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 20:18:53.94 ID:qak9e7+uo
青年「ただいま」
青年「朝食? 悪いな」
青年「ご飯に味噌汁……和食か」
青年「いや、嫌いとかそういうんじゃない。ただ、久しぶりだなって」
青年(……懐かしくも、あるしな)
青年「ん、じゃ手洗ってくる」
384
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]投稿日:2011/05/04(水) 20:19:22.49 ID:qak9e7+uo
青年「ごちそうさま」
青年「ああ、美味かったぜ」
青年「……」
青年(照れ笑いは昔のままか)
青年「あ、いや……なんでもない」
385
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 20:20:00.15 ID:qak9e7+uo
青年「さて、じゃあ約束通り帰ってもらうからな」
青年「冷たいとか言うな」
青年「……きっと、お前のためにもなる」
青年「文句は聞かない。さっさと……」
青年「っ!?」
青年「ちょっ……それ! 俺のDVD!」
青年「いや、別にやましいもんじゃ……いややましいけどよ!」
青年「そ、それをどうするつもりだよ。別に俺は……」
青年(ここでビビったら負けだ……!)
青年「……」
青年「すみませんでした」
青年「親父に言うとか勘弁してください。マジで」
386
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 20:20:28.12 ID:qak9e7+uo
青年「ちくしょう、結局泊めることになっちまった……」
青年「あ、センパイ?」
青年「大丈夫大丈夫、別に具合が悪いってわけじゃねーよ」
青年「ていうか、俺の心配をするなんて百年早い。うり」
青年「叩くな? だったらそれに見合った回避力をだな――」
prrr...
青年「ん、携帯?」
青年「……ん? あー、えっと、ちょっと外出てくる」
387
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 20:20:55.36 ID:qak9e7+uo
青年「なんだよ」
青年「え? 声が聞きたくなった? ふざけんな」
青年「面白くない冗談はやめとけ」
青年「ん、土鍋? それだったら食器棚の二段目一番奥だな」
青年「最初から用件だけいやいーんだよ」
青年「別にうれしかねえよ」
青年「ん、じゃあ切るぞ」
388
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 20:21:22.56 ID:qak9e7+uo
青年「あーわりいわりい、ちょっと知り合いからだ」
青年「ん? 本当だぞ?」
青年「いや、隠すようなことはないが」
青年(勘がいいな)
青年「あ、ほら局長呼んでんぞ、さっさと行った行った」
青年「……ふう」
389
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 20:21:50.86 ID:qak9e7+uo
青年「ただいま」
青年「今日の夕飯は鍋物か?」
青年「へえ、鍋焼きうどん。いいじゃん」
青年「じゃ、手洗ってくるよ」
390
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 20:22:17.24 ID:qak9e7+uo
青年「……」
青年「ん? ああ、美味いよ」
青年「ただ、ちょっと考え事しててな」
青年「いや……」
青年「一美、旦那と喧嘩でもしたのか?」
青年「聞くなって……気になるだろうが」
青年「……」
青年「喧嘩じゃない、か」
青年「じゃあもっと深刻な何かだな」
青年「図星か」
青年「まあ帰れとか言っといて何だが。頭冷えるまでゆっくりしてくといい」
青年「そのうち何をすべきかもわかるだろ」
391
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 20:22:44.12 ID:qak9e7+uo
青年「で、だ」
青年「風呂ぐらい一人で静かにはいらせてもらえないか?」
青年「だが断るってもよ、色々と問題が……」
青年「あーはいはいDVDね」
青年「でも、タオルくらい巻いておけ。あと、背中流すだけだからな。これは譲歩しない」
青年「駄々こねるな、痴女か」
392
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/04(水) 20:23:11.80 ID:qak9e7+uo
青年「寝る時も別の布団だ。同じ部屋までってのが俺の譲歩だ。いいな?」
青年「じゃあおやすみ」
青年「……」
青年「寝てる間に忍び込むのもなしな」
青年「泊めてやってるんだからそれぐらい聞いてもらってもいいだろうが」
青年「……拗ねるとそうやってふくれるのは、まだなおってないんだな」
青年「いや……おやすみ」
395
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 17:04:41.21 ID:Plz/PCKdo
青年「ただいまー」
青年「お、今日の夕飯は牛丼か」
青年「いや、手抜きだとは思わないな。むしろこういうのに腕の差は出るんだろ?」
青年「じゃあ手洗ってくる」
396
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 17:05:07.89 ID:Plz/PCKdo
青年「あれから早一週間か」
青年「旦那は心配しねえの?」
青年「愚問だったな。心配しない訳がない」
青年「そもそもちゃんと言って出てきたのか?」
青年「……そうか、ならいい」
青年「いや、よくないかもわからんが」
397
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 17:05:34.52 ID:Plz/PCKdo
青年「今日は休みだから暇だな」
青年「ん? 買い物?」
青年「そーいえば給料入ってたな」
青年「冷蔵庫も空?」
青年「じゃあ、仕方ねえ、出かけるか」
青年「なんでうれしそうなんだよ」
青年「必要なもの買ったらさっさと帰るんだ、いいな?」
398
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 17:06:00.99 ID:Plz/PCKdo
青年「と、いうわけでショッピングモールに来たわけだが」
青年「さっそく脱線かよ」
青年「あーはいはい、かわいいかわいい似合ってる似合ってる」
青年「……ったく、既婚者が無理すんなっての」
青年「いででで! 悪かったもう言わんから!」
青年「あ? ああ……似合ってるのは本当だ」
青年「はしゃぐなよみっともない」
399
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 17:06:27.63 ID:Plz/PCKdo
青年「で、次はペットコーナーかよ」
青年「俺? 断然猫派」
青年「今、仕事場のセンパイと一緒に飼ってるしな」
青年「ポッチャレータムっていうんだが」
青年「なんだよ、いい名前だろうがよ」
青年「ん? センパイ? 女だけど」
青年「何でむっとするんだよ。そいつとはなんもねえよ」
青年「嘘じゃ、ねえよ」
400
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 17:06:53.99 ID:Plz/PCKdo
青年「歩きづらい」
青年「なんでかって言うと、お前が腕に絡みついてきてるからだ」
青年「離れてくれると嬉しいんだが」
青年「ああ、確かに恥ずかしい」
青年「照れるな? 意味が違えよ」
青年「全く……」
青年「ん?」
青年「――あ、いや」
青年(気のせい、だよな?)
401
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 17:07:21.04 ID:Plz/PCKdo
青年「おい」
青年「ここゲームセンターじゃねえか」
青年「買い物に来たの忘れてないか? 来るにしても買い物後だろうが」
青年「おい、待てよ!」
青年「チッ……」
青年「……」
青年「……新しい筐体は入ってるかな」
402
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 17:07:53.52 ID:Plz/PCKdo
青年「うおおお! 死にさらせ!」ズキュンズキュン!
青年「こんの!」ズキュキューン!
青年「っ……」デュクシ!
青年「やりやがったなド畜生があああ!」ズッキューン!
ゲーム・クリアー!
青年「……は、いかんいかん、時を忘れてのめり込んでしまった」
青年「見てたのかよ」
青年「カッコよかった? 当たり前だ」
青年「でも叫び声は恥ずかしい?」
青年「アレやんねえと気分が出ねえんだ」
青年「お前もやってみないか? お断り? そうか」
403
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 17:08:46.32 ID:Plz/PCKdo
青年「さーて帰るか」
青年「ん? 重そう? 大丈夫だって、これでも毎日の配達で鍛えてる」
青年「片方持つ? いいから」
青年「あ、ちょ」
青年「……」
青年「手、あったけえな」
405
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:02:22.48 ID:Plz/PCKdo
青年「ふわぁあ」
青年「……おはようござい―っす、うーっす」
青年「お、センパイおはよう」
青年「……」
青年「……?」
青年「おい」
青年「おいって」
青年「……行っちまった」
406
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:03:21.45 ID:Plz/PCKdo
青年「……」
青年「……お、戻ってきたか」
青年「……」
青年「おい」
青年「おいって」ガシ
青年「なに無視してくれてんだよ」
青年「――うわっと」
青年「ちょ、なんで突きとば……」
青年「おい、待てよ……って」
青年「……」
青年(……泣いてた?)
407
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:03:47.81 ID:Plz/PCKdo
青年「あ、局長……」
青年「センパイは?」
青年「え、帰った? 早退?」
青年「何でまた……」
青年「俺? 俺は別に……」
青年「いや、まさか」
青年「あ、いや、心当たりはないっス」
408
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:04:15.04 ID:Plz/PCKdo
青年「……今日の仕事も終わった―」
青年「センパイのことは気になるが……とりあえず帰るか」
prrr...
青年「ん?」
青年(……この番号は)
青年「……。はい、もしもし?」
青年「あなたですか」
青年「……何の用で?」
青年「はい。はい――」
409
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:04:41.95 ID:Plz/PCKdo
・
・
・
青年「ただいま」
青年「ああ、お出迎えありがとう」
青年「いや、飯はまだいい」
青年「その前に話をしよう。椅子に座ってくれ」
青年「大事な話だ」
410
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:05:17.74 ID:Plz/PCKdo
青年「まず最初に……嘘はよくない」
青年「とぼけるな。俺に嘘をついてただろう」
青年「旦那に話して出てきた? 大嘘じゃねえか」
青年「旦那さん、ひどく心配してたぞ」
青年「……」
青年「黙ってちゃ分からない」
青年「何があったか――」
prrr...
青年「チッ……誰だこんなときに」
青年(……センパイ)
青年「すまん、ちょっと出てくる」
411
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:05:56.37 ID:Plz/PCKdo
青年「……もしもし?」
青年「ああ、俺だ」
青年「昼間? 突き飛ばして悪かった?」
青年「ああ、まあびっくりしたな」
青年「なんであんなことしたか教えてくれるか?」
青年「……」
青年「……そうか、見られてたんだな、買い物」
青年「女と一緒にいた俺を思い出したら、何も考えられなくなって、それで、か」
青年「……」
青年「安心しろ。彼女は別に俺とどうこうってわけじゃない」
青年「彼女は……俺の姉だ。旦那が出張だとかで俺のとこに遊びに来てたんだ」
青年「……本当だ」
412
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:06:24.24 ID:Plz/PCKdo
青年「ああ、だから別に――」
――二郎さんは
青年「……?」
――二郎さんは、わたしのこと……好きですか?
青年「……」
――わたしは……二郎さんのこと、好きです。気づいちゃいました。大好きなんです
青年「……」
――でも、二郎さんは? わたしは二郎さんの、何ですか?
青年「……」
――わたしは、二郎さんの大切な人になれますか?
青年「……」
――……
青年「俺……俺は――」
413
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:07:03.31 ID:Plz/PCKdo
・
・
・
青年「……」
青年「ん、ああ……おいしいよ」
青年「うん、おいしい……」
青年「……別に」
青年「…………」
青年「? おい、食事中に席を」
青年「んむ――」
青年「――ぷは……な、何を……!?」
ムニュ……
青年「ちょっ……ちょっとまて」
クチュ……
青年「ま……」
ヌルリ……
青年「あ……」
トロリ……
414
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:07:35.37 ID:Plz/PCKdo
温かいものに包まれた。
それはどこまでも優しくて、気持ちよくて、そして淫靡だった。
まどろみにも似ていて、うたたねのように安らかで。
そのまま流されそうになったのは事実だ。
事実だったが――
415
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:08:04.41 ID:Plz/PCKdo
『待ってますからね……』
416
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:09:00.18 ID:Plz/PCKdo
青年「……!」
青年「――ぷはっ! ハア、ハア」
青年「悪いが、離れてくれ」グイ
青年「頼む、頼むよ」
青年「一美姉さん――!」
418
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:48:01.74 ID:Plz/PCKdo
彼女は俺の姉だ。
一美、そして二郎。そういうことだ。
俺と彼女は姉弟、そして恋人だったのだ。
初めはおふざけだったかもしれない。
姉は俺をからかって遊んでいたようにも思える。
だが、どちらが先だったかは知らない。本気になってしまった。
恋は芽生えてしまった。
それは一時の気の迷いにも思えたが、それでも収まることはなく大きくなるばかりだった。
関係は長く続いたが、姉さんはそれがあるとき怖くなって、俺から逃げていったのだそうだ。
419
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:48:37.30 ID:Plz/PCKdo
青年「で、だ」
青年「姉さんは旦那さんのことが好きなのか分からなくなってしまったと」
青年「……」
青年「俺から手を引くために結婚、したんだな」
青年「知らなかったよ。姉さんは俺を嫌いになってしまったのかと、一時期は本当に落ち込んだ」
青年「……」
420
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:49:07.35 ID:Plz/PCKdo
姉さんは、逃げるように結婚し、それで分からなくなったのだそうだ。
"自分は本当にこの人が好きなのか"
間違いのないよう言っておくと、旦那さんと結婚したことは後悔していないようだ。
ただ、また怖くなったのだ、と。
自分はこれでいいのか、と。
421
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:49:49.43 ID:Plz/PCKdo
青年「俺は……」
青年「俺は、今でも姉さんのことが好きだよ」
青年「……でも、姉さんと一緒になる気はない」
青年「それじゃあ姉さんは今度こそ後悔することになる」
青年「人の気持ちは簡単に裏切っちゃいけないし、裏切られちゃいけないはずだ」
青年「それでも、迷うなら――」
青年「手紙を書け」
青年「誰に送る手紙でなくともいい。誰にも届かなくてもいい。多分自分には届く」
青年「知ってるか? 手紙ってのは想いを運ぶ小さな舟なんだ。多くは乗せられない。でも確かに届くものがある」
青年「無理して旦那さんが好きなんて自分を欺く必要はない。自分の素直な気持ちを書けばいい」
青年「それで誰かに届けたいと思ったなら、俺が、俺たちが届けてやるよ」
青年「俺たちの仕事だからな」
青年「それと、姉さんと一緒になれない理由はもう一つある」
青年「俺、姉さんよりももっと好きな人ができた」
青年「皮肉だけど、それを気付かせてくれたのは姉さんだ。ありがとう」
青年「でも、俺は彼女を裏切りかけたから」
青年「だから、行かなくちゃならない」
青年「終わりなんだ」
422
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:50:16.25 ID:Plz/PCKdo
俺たちは数年前に関係を終わらせたが、ここで再び関係を終わらせた。
今度こそ、卒業だ。
423
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:50:43.23 ID:Plz/PCKdo
青年「じゃあ、行ってくる」
青年「その間に手紙を書いてくれ」
青年「絶対、届けて見せるからよ」
424
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:51:19.96 ID:Plz/PCKdo
ドアを勢いよく押し開け、暖かくなってきた夜の空気を引きずるように走った。
どこまでも走っていける気がした。
俺は決めた。
抱きしめる。
それからキスをするのだ。
それが先ほど何も答えられなかったことへの、精一杯の謝罪に思えた。
425
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:51:49.44 ID:Plz/PCKdo
青年「待ってろよ、センパイ!」
426
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 18:53:15.20 ID:Plz/PCKdo
配達少女「お届けものでーす」
~完~
427
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 19:10:39.86 ID:Plz/PCKdo
~エピローグ~
428
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 19:11:12.17 ID:Plz/PCKdo
人の思いは届かない
どんなに頭をひねっても、どんなに言葉を尽くしても
それが丸ごと伝わる日なんて決して来ない
だがそれでも、いやだからこそ人は書く
それはヒトのささやかな抵抗で、ひそやかな意地で
だから人間は愛おしいと。私はそう思うのだ
429
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 19:12:07.07 ID:Plz/PCKdo
手紙:人の思いを乗せた小さい舟。たくさんは乗せられなくて、でも、確かに届くその気持ち
思い:喜怒哀楽、感謝、謝罪、恋、愛、憎しみ、すれ違い、惜別、会いたい気持ち
430
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 19:12:41.38 ID:Plz/PCKdo
少女「……んん」
少女「ふわぁあ……」
少女「……むぅ」
少女「二郎さんの寝顔って、普段の振る舞いの割に案外かわいらしいですよねえ」
少女「なんだか憎たらしくなります」
少女「あ、おはようございます」
少女「……」
少女「あ、あの……その……」
少女「き、昨日は、激しかったですね」
少女「あ! じ、二郎さんが照れた!」
少女「あう! 恥ずかしいからって叩かないでくださいよ!」
431
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 19:13:08.20 ID:Plz/PCKdo
少女「は、恥ずかしいから、着替えてるとこ見ないでくださいよ……」
少女「思ったよりスタイルいい? え、えへへ……」
少女「あ、ちょっ、んっ……」
少女「だ、駄目ですよう、これから配達ですもん!」
少女「だから、帰ってきてからゆっくり……ね?」
432
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 19:13:47.02 ID:Plz/PCKdo
ブロロロ……
少女「うーんまだ風が冷たいですねえ」
少女「でも二郎さんの背中はぬっくいです」
少女「昨日は驚きましたよ、二郎さん、バイクあるのにわざわざ走ってくるし、ふふ」
少女「そんなに必死だったんですね、うれしいです……」
少女「あの」
少女「ずっと、待ってました……」ギュッ
433
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 19:14:13.56 ID:Plz/PCKdo
少女「おはようございまーす!」
少女「局長、今日もよろしくです!」
少女「ふふ、ご機嫌ですよー。なんたって――」
少女「あ、二郎さん、小突かないでくださいよう」
少女「いいじゃないですか、すぐにばれるんですし」
少女「局長、わたしたち付き合うことになりました!」
少女「あれ、あんまりびっくりしないんですね」
少女「むしろ今まで付き合ってなかったのが不思議? えへへ」
少女「褒めてない? こりゃ失礼」
434
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 19:14:48.70 ID:Plz/PCKdo
ブロロロ……
少女「ねーねー二郎さん、仕事が終わったら寄りたいところがあるんですけど」
少女「ふっふー、ウェディングドレス見に行きましょう!」
少女「わあっと! よろめかないでくださいよう!」
少女「いいじゃないですか、二郎さんは遊びでわたしと付き合うんですか? 違うでしょ?」
少女「なら行動は早いに越したことはありません! 善は急げ、香車は前進! です!」
少女「っていうか、いつもは二郎さんの方が行動派ですから逆転ですね、ふふふ」
少女「そうと決まったら、配達を頑張りましょう!」
少女「まずはこのお宅からですね」
少女「では早速――」
435
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]投稿日:2011/05/05(木) 19:15:16.40 ID:Plz/PCKdo
少女「お届けものでーす!」
436
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]投稿日:2011/05/05(木) 19:18:01.70 ID:Plz/PCKdo
終わった……やり遂げました……
なかなか長かったっスねこれ
その間色々な人に参加してもらったり支援もらったりでうれしかったっス
大変お世話になりました
また会うことがあればよろしくお願いしたいです
それでは
437
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]投稿日:2011/05/05(木) 19:32:01.19 ID:Plz/PCKdo
あとオリジナルクロススレにも参加表明してきたので、もしよかったら見に来てください
それでは
438
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]投稿日:2011/05/05(木) 20:36:07.39 ID:rkAWzHyyo
乙乙
きれいなハッピーエンドだな
439
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越)
[sage]投稿日:2011/05/05(木) 21:32:51.83 ID:jy8E5EwAO
乙
終わっちまったか…
ちくしょう最後にいちゃいちゃしやがって(´・ω・)
440
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海)
[sage]投稿日:2011/05/05(木) 21:35:22.79 ID:ez3txi0AO
渾身の乙 後オリジナルクロススレってどこにあるので?
441
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]投稿日:2011/05/05(木) 21:53:16.18 ID:Plz/PCKdo
>>440
こっちが連絡用で
→
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1304490718/
こっちが投下用っス
→
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1304492630/
442
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]投稿日:2011/05/06(金) 00:33:17.27 ID:1WTU/URDO
乙でした
443
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]投稿日:2011/05/06(金) 01:06:29.72 ID:EVLnhI0ho
乙
444
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)
[sage]投稿日:2011/05/06(金) 09:48:28.74 ID:XNYI2LP4o
乙
よかったよ
445
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]投稿日:2011/05/06(金) 13:37:09.38 ID:ob0a+sEIO
おつぅぅあ!!
446
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山梨県)
[sage]投稿日:2011/05/07(土) 11:47:38.93 ID:lzV6GiRgo
乙