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着物商人「レアなアイテム売ります買います!」9/9
着物商人「レアなアイテム売ります買います!」
659
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 00:52:57.18 ID:/xkJhjhE0
――――――
―――
―
剣士「信号弾が上がったのはここらへんか?」
商人「臭いも残っています、間違いありません……が」
商人「チクショウ、移動してますね」
剣士「そりゃ、信号を見たのは私たちだけでは無いだろうからな。追われているとしたら尚更だ」
商人(そういやちょっと前に同じことやりましたね私)
商人「……!あそこ!臭いが強いです!」
剣士「洞窟だと?あんな場所に逃げ込んだのか!?」
商人「行きましょう!」
元スレ
着物商人「レアなアイテム売ります買います!」
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660
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 01:02:58.23 ID:/xkJhjhE0
商人「なんでこんなところに逃げたんでしょう……案外長い洞窟ですね」
剣士「灯りが無いから不便だな、嗅覚だけでどうにかなるか?」
商人「かなり獣臭いですね、若干怪しいです」
剣士「かなり獣臭い……?」
グォゥ……
剣士「……なるほど、逃げ込んだのではなく」
商人「誘いこまれたって訳ですか……」
剣士「後方!上に張り付いている!仕方がない、奥へ走れ!!」
魔物「ガァァァァァ!!」
商人「チックショウ!なんでこんな目に合わなきゃいけないんだ!!」
661
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 01:07:13.85 ID:/xkJhjhE0
剣士「私たちを見つけたから小僧は餌に使われた、という事か」
商人「この洞窟内にいることは確かですが……オワッと!危ねぇ!」
魔物「グァァア!!」ブンブン
剣士「無暗に腕を振り回しているだけでは捕らえられんぞ、成長しないな獣め!」スッ
商人「腰に手を当てて何してんですか!?」
剣士「あ……」
商人「?」
剣士「剣、無いんだった」
商人「ドアホォォォォォォ!!早く逃げるぞ!!」
商人(そして私も異次元ポケット忘れたぁぁぁぁぁぁ!!)
662
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 01:12:24.42 ID:/xkJhjhE0
剣士「クソッ!目は慣れてきたが灯りが無ければうまく動けん!」
魔物「ゴガァァ」ガンガン!!
商人「壁にぶつかろうが容赦なく追ってきてます!」
剣士「痛みというものを感じないのか化け物め!」
商人「これが狂化……痛みも感じないなんて」
剣士「あんなのだが罠に嵌める知性はある、タチが悪い!」
剣士「なッ!行き止まりだと!?」
商人「そ、それじゃああの子はどこに!?あの魔物の臭いが強すぎて……」
魔物「グガァ!!」ダンダン!!
商人「来た!」
山田「林檎ちゃん!こっちだ!」
剣士「誰だ!?」
商人「や、山田さん!」
663
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 01:16:49.56 ID:/xkJhjhE0
少年「ねーちゃん!こっちの横穴!」
商人「い、今そっちに……」
魔物「ガァァアア!!」
山田「ダメだ!間に合わない!」
剣士「凍り付け!!」
魔物「ガウ!?」カチン
剣士「持って数秒だ!早く入れ、私も入りたい」
商人「は、はい……助かりました。よっこらせっと」
少年「ね、ねーちゃん……」
664
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 01:22:51.02 ID:/xkJhjhE0
少年「その……俺……」
商人「……後でたっぷりお説教です、今はこの状況をどうにかしましょう」
剣士「この横穴の大きさからして奴は入ってこれん、しばらくここで休むぞ。流石に私もこの距離を走り回るのは疲れた」
商人「よく考えたらあなた人間ですもんね」
剣士「あまり息が上がっていないお前を見ているとたまに獣人が羨ましく思うよ……」
山田「これからどうするんだい?」
商人「打開策がゼロって訳でもないですが……あなたが持ってきた道具、全部見せてもらえますか?」
少年「う、うん……」
665
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 01:30:46.21 ID:/xkJhjhE0
商人「さっき使った信号弾が入った遭難セット、山田さんの笛」
少年「山田さんの笛!?名前変わってるよ!?」
商人「それと、お弁当とライターと室内用花火……なんでこんなクソの役にも立たないようなものばかり持ってってんですか!?」
少年「それ全部ねーちゃんの商品だよ!?」
商人「……そして」
剣士「やはり斬姫を持っていたか」
少年「うん……」
666
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 01:34:26.78 ID:/xkJhjhE0
商人「私は護身用の閃光弾しか持ってねぇし……」
山田「うん、それ使えるんじゃないかい?」
山田「この暗がりで動けるんだ、きっと目もいい筈だ。俺が閃光弾と一緒に外に出て注意を引き付けるよ、その隙にみんな逃げるんだ」
剣士「……お前はどうするんだ?」
山田「幽霊だから平気さ!」
商人「……ではあなたを信じます」
山田「任せなさい!」
667
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 01:40:03.44 ID:/xkJhjhE0
山田「俺は物も持てないから林檎ちゃんが閃光弾を投げたら一緒に飛び出すよ」
商人「それじゃあお願いします……3、2、1」
山田「うおおおおお!」
商人「特製爆弾FBR-2もといフラッシュボム林檎ちゃん2号投下!!」ポイー
剣士「そんな略だったのか」
魔物「グゥゥ?」
山田「へイ!こっちだ!ヘイ!」
魔物「ゴォォォ」ブンブン
山田「なに!?効いてない!?ウワァー」ブオーン
商人「や、山田さーん!!」
剣士「振り払われると霧のように消えるんだな」
668
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 01:42:33.06 ID:/xkJhjhE0
剣士「と、言うより効いてないとはどういう事だ?」
商人「あ、私の知ってるウサギだったら両目が塞がっててまず目が見えてないんだった」
剣士「両目?」
少年「山田さんはどうなっちゃったの?」
商人「あぁ、大丈夫ですよ。幽霊ですから死にませんし、しばらく経ったらまた笛で呼び出せるようになります」
少年(どういう原理だよ……)
剣士「おい、ちょっと待て。話が合わないぞ」
669
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 01:47:26.63 ID:/xkJhjhE0
商人「山田さんが幽霊ってところがですか?」
剣士「その狼男の話は割とどうでもいい。そっちじゃない、魔物の目の傷の事だ」
剣士「私が戦っていた魔物は確かに目に傷を負っていたが、両目だなどと言ってはいない」
少年「俺も見たよ、右目に大きな傷がついているの」
商人「あ……え……?つまり……」
剣士「杞憂に終わったな、お前の知っているウサギの魔物とは違う魔物だという事だ。目の前にいるやつがどうなのかは知らんがな」
商人「あ……そっか、よかった……」
剣士「まぁ、感傷に浸っている場合ではない。どうする?」
670
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 01:53:02.29 ID:/xkJhjhE0
剣士「暗くてよく見えんが横穴にへばり付いている、あっちには逃げられそうもない」
商人「この奥はどうなっているんですか?」
少年「あんまり大きくないけど、池になってる」
商人「……もしかしたら外の川とつながっているかもしれませんね」
剣士「行けるのか?」
商人「見てみないとわかりません、ともかく進みましょう」
671
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:00:08.93 ID:/xkJhjhE0
少年「どうかな……?」
商人「魚が泳いでますね、あと大きな穴もあります」
商人「魚に目ン玉付いてますから外と繋がりがあると思います」
剣士「どこでそんな知識を得るんだ」
商人「とあるアニメです。ともかく潜ってみます」
剣士「……魚が通れるくらいの穴しかなかったらどうするつもりだ?それもこんな暗がりだ、碌に進めないだろう」
商人「そこはご安心を、このライターは水中でも使えるという優れものですから。それに、たとえ穴が小さくても今はやらないよりはマシでしょう?」
少年「お、俺が行こうか?」
商人「あなたはこのお姉さんと待機しててください、結構危険ですし。ここは大人の私に任せなさい!」
672
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:01:06.58 ID:/xkJhjhE0
とあるアニメ=名探偵コ○ンなことは密に密に
673
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:04:55.52 ID:/xkJhjhE0
商人「では……この子、お願いしますね」
剣士「ああ、気を付けて行けよ」
商人「フフ、心配してくれてどうも」
剣士「ふん……」
商人(ライターオイルは万全、私の肺活量も良好!さて、行くか……)ボチャン
少年「俺……何もできないで……」
剣士「当たり前だ、身の丈を考えろ」
少年「でも……!」
剣士「まだ自分の力量も分からんのか……」
674
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:09:05.10 ID:/xkJhjhE0
商人(あー、水冷てぇ。さっさと終わらせて帰って寝たい)
商人(穴は……入口はこんなもんだけど奥はどうなっていることやら)
商人(奥に進めば進むほど狭くなってくる……無理か?)
商人(……やっぱりダメか、ここまでしか進めない……他の手を考えるか)
商人(一旦戻って……ん?なんか引っかかって……)
商人(ッ!?ぐおおお!着物の帯が岩場に引っかかりやがった!?ってかこんな服装で水ん中潜ろうとかアホか私は!?)
675
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:11:29.80 ID:/xkJhjhE0
商人(動きやすいように丈は短くしてあるけど水中潜るなんて普段やらないことやるからこんなことに!!)
商人(チクショウ!外れねぇ!手元がまともに動かねぇ!)
スィー
商人(ん?)
面白い顔の魚「ンボ!」
商人「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?」
商人(あ、ヤベ、死ぬ……)
676
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:16:05.07 ID:/xkJhjhE0
商人(あー、22歳で死ぬとか短い人生過ぎるだろ)
商人(まだあんなことやこんなこともしてないのにここで終わるとかマジかよ)
商人(もっと賢く生きれたらなぁ……私が死んだらあの子たちどうなるんだろう)
商人(もし帰れなかったら女将さん悲しむだろうなぁ、竜さんや女神さんは私の事で泣いてくれるかなー?)
商人(つーかあの魚なんだよ!突然現れやがって!アホか!?こんな場面でどうでもいい魚が私を殺しに来るとかアホか!?)
商人(もういいや、死んだら呪い殺してやるあの魚!死ね!焼き魚になって跡形もなく食われて死ね!)
剣士「……」
商人「ムグッ!?ムググググ!!!」
剣士(なーにやってんだコイツは)
677
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:19:06.14 ID:/xkJhjhE0
剣士(氷を球状にして空気を運んできてやったぞ、吸え)ゴッ
商人「ムゴ!ムゴゴゴゴゴ!」スーハースーハー
剣士(凄い顔してるな……これが引っかかっていたのか、危ないところだったな)ブチィ
商人(あぁ、私の大切な服が……)
剣士(ダメだったみたいだし、戻るぞ)グイグイ
商人(……また脱出方法考え直さなきゃなぁ)
678
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:21:43.36 ID:/xkJhjhE0
剣士「すまない、戻ったぞ」ザパァ
少年「大丈夫だった?」
商人「死にかけた」ゼーハーゼーハー
剣士「穴の中は一直線だったからライターに灯りを追えた、運が良かったな」
商人「ありがとうございます……さて、どうしましょうか」
剣士「……お前、もう一つしか方法はないだろう」
商人「正面突破ですか」
679
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:26:55.84 ID:/xkJhjhE0
剣士「なるべく避けようとするのは分かる、だが私は奴を退けたことがある」
商人「剣があれば、でしょう?」
剣士「……意地になるな、前に襲ったことなら謝る」
商人「わかりました、私もここで死にたくはありませんので……」
キュウ
少年「え?」
キュウキュウ
商人「う、ウサギ?なんでこんなところに」
剣士「……おい、こいつはまさか!?」
魔物「ギュウ……」
魔物「ゴガァァァァ!!」メキメキメキ
商人「大きくなった!?」
剣士「コイツ、あの時みたいに体を縮めて入ってきたのか!?」
680
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:34:30.63 ID:/xkJhjhE0
少年「あ……ああ……」
魔物「ウガァ!!」ブン
商人「危ない!!」ダキッ
魔物「ウアァ!!」
商人「うぐッ……うう……」
少年「ね、ねーちゃん……」
商人「よ……予想以上に効きますね……」
少年「……ゴメン、なさい……」
商人「へへ、頑丈ですから大丈夫です……よ!」
剣士「吹っ飛ばされて壁に叩きつけられておいてよく言う……」
商人「あだだ……体、まともに動かせそうにないです……斬姫、勝手に持っていってください」
剣士「……」
681
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:40:05.10 ID:/xkJhjhE0
商人「どうしたん……ですか?早く……」
剣士「名を預ける」
商人「え?」
剣士「ここら辺の国の風習だ、本当に信頼した者にだけ名を教える」
剣士「いつか現れるかもしれん私を屈服させた男にだけ教えるつもりだったが、まあいい。お前たち二人に私の名を教える」
商人「こんな時に悠長な……」
少年「ねーちゃん、重要なことだよ。王族とか貴族とかの間だけで、もう一般には廃れてしまったことだけど、これは……」
剣士「一種のケジメだ、聞いておけ」
682
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:44:35.92 ID:/xkJhjhE0
剣士「私の名は」カチャン
剣士「メリア・アート!メリアは私を拾ってくれたみんなが付けてくれた大切な名、アートは私の育った集落の名だ!」シャキン
商人「いい、名前ですね……」
剣士「林檎!魔剣・斬姫、確かに"借りる"ぞ!」バッ
商人「借りる……って?」
剣士「ク……ヒヒヒ!クヒヒヒ!!化け物狩りだ畜生が!」
商人「あー、笑い声でいろいろ台無しだよ」
683
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:50:52.98 ID:/xkJhjhE0
少年「おねーさん、ねーちゃんの事名前で……」
商人「あー、さっきの時点でそうでしたけどやっと犬畜生と呼ばれなくなりましたね」
剣士「ヒーッヒヒヒヒ!!最高だ!最高の気分だ!!」ザシュザシュザシュ
魔物「ガウウウウウ!?」
少年「魔剣に魅入られたらああなるのか……強い、あれが魔剣の力……!」
商人「いや、あの娘出会った当初からあんな感じでした」
剣士「ほらほらどうした!!動きが鈍いぞ!やはり食う事しか考えられない畜生か?」
魔物「グゥン!!」
剣士「何!?グッ!」
684
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:54:41.34 ID:/xkJhjhE0
剣士「グハッ!」
商人「ど、どうしたんですか!?せっかく刀を渡したというのに!」
剣士「……アイツ、痛みを感じないという事をすっかり忘れていた」
商人「え、ああ、そういえばそうでしたね」
剣士「再生能力も備わっている……以前戦っていた時は痛がっていたし、再生なんてしなった……」
商人「着実に核が体に馴染んでいる、て事ですね」
剣士「ああ、だが退路は開けた」
685
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 02:58:48.32 ID:/xkJhjhE0
商人「入口を塞いでいない今のうちに出ましょう!」グイ
少年「うわ!ねーちゃん俺を背負って大丈夫なの!?」
商人「治りました!」
少年「早ッ!?」
剣士「あの魔物よりお前の生命力が不気味だ……」
商人(大丈夫なワケ無いですよ……今無理しなきゃあなた達を不安にさせるだけですからね)
剣士(……言葉が無くても分かる。林檎、帰れたら少しはお前を労ってやる)
魔物「ウググ!」
剣士「走るぞ!」
商人「はい!」
686
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 03:07:55.31 ID:/xkJhjhE0
魔物「グガ!」ガンッ!
商人「よし!案の定横穴の入口に引っかかった!」
剣士「油断するな!学習能力が高い!またさっきみたいに小さくなって潜ってくるはずだ!」
剣士「そうさせない為にも……」ピキピキピキ
商人「何が始まるんです?」
剣士「入口を氷で塞ぐ……なるほど、斬姫は魔法の補助もしてくれるみたいだな」
商人「そんな私の知らない使い方まで……」
剣士「美しき氷の刃よ、この地をお前の世界に変えよ!」パキン!
商人「んな!?一瞬で洞窟ン中が氷漬けになったぞ!?」
少年「すっげぇ……」
剣士「私の魔力だけではこんなことは出来ない、流石だな」
687
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 03:14:34.86 ID:/xkJhjhE0
剣士「分厚く氷を張った、もう出てくることも出来んだろう」
少年「倒さないの?」
剣士「捕らえられるのなら捕らえろ、だったな」
商人「結構律儀ですねぇ、あなたなら『私の獲物は私が殺す!』とか言いそうでしたけど」
剣士「斬姫を持った事で興味がなくなった」
商人「そう言えばさっき、"借りる"って言ってましたけど……今はもうそのまま持って行っても文句は言いませんよ?」
剣士「……こんな状況だ、そんな気にはなれん。私なりに考えた結果だ」
商人「そっか……」
少年「出口だよ、明るい……」
商人「悪夢のような一瞬からようやく抜け出せましたね」
688
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 03:22:26.82 ID:/xkJhjhE0
商人「皆さんに連絡して来てもらいたいところですが……何も持たずに飛び出したのがいけなかったですね」
剣士「仕方ない、歩いて帰るぞ。報告はそれからでも遅くはない」
商人「魔物は大丈夫なんですか?氷が壊されたりしないですよね?」
剣士「数日では溶けない量だ、ましてや光の届かない洞窟の中、素手で殴っても壊せん」
商人「なら安心ですね……」
商人「さーて、戻ったらタップリドップリお説教タイムですよ?覚悟しとけよクソガキ!」
少年「……わかってる……けど」
剣士「何が納得出来ん?お前の無謀な行動で死人が出そうになった、この事実は変わらんぞ」
少年「……」
690
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 03:30:18.55 ID:/xkJhjhE0
商人「それより、背中から降りてもらえません?ちょいと腰を痛めてまして……」
少年「あ、うん」
剣士「林檎、歩けないようなら私がお前を背負うがいいか?」
商人「あはは……子供の世話にゃなりませんよ」
剣士「お前は強くは無い、だからお前は守られる立場だ。おとなしく私を頼ればいい」
商人「大人が子供を守らないでどうするんですか!だから、あなた達が私を頼ってください!」
剣士「……よくわからん」
商人「私もよくわかりません……フフ」
691
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 03:35:33.82 ID:/xkJhjhE0
竜少女「うぉーい!お主らー!!」
騎士「無事か!?」
少年「迎えのほうが先に来たみたい……」
商人「心配かけちゃいましたねぇ」
騎士「おい、怪我してるじゃねぇか!大丈夫か!」
少年「俺は平気……ねーちゃんの方見てあげてよ」
竜少女「なんじゃ、お主らボロボロではないか!すぐに治癒してやる、こっちへ来い」
商人「あはは……どうもすみません……」
竜少女「何をしておる、お主もじゃ」
剣士「私はいい、ほとんど無傷だ」
692
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 03:39:46.32 ID:/xkJhjhE0
商人「怪人さんは来てないんですか?」
竜少女「あやつこそ連絡係で必要じゃ、宿に残ってもらっておる」
騎士「安否が確認できただけでも良かった……お前らが出て行った後に冒険者ギルドの依頼所から緊急収集がかかったんだぞ?」
剣士「何だそれは?」
騎士「この森でウロウロしてた魔物が人を殺したんだとよ、6人ほどな」
商人「ッ!……死者まで出たんですか……」
竜少女「この国の大臣の不始末じゃ、モノを突き付けてやればもう言い逃れは出来んじゃろう」
693
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 03:42:12.51 ID:/xkJhjhE0
騎士「そこは俺たちの仕事じゃねぇからな、アイツらに任せるとして……」
剣士「その魔物ならおそらく私が捕らえた奴だろう」
竜少女「ぬ?捕まえたのか!して、どこに?」
商人「あの洞窟の中です」
騎士「洞窟って……」
竜少女「なぜこんな場所に氷漬けの洞窟があるんじゃ」
剣士「色々あったんだ」
商人「色々あったんです」
竜少女「むぅ、仲良くなっておる。なんか妬けるのぅ」
694
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 03:46:14.36 ID:/xkJhjhE0
騎士「んじゃ、連絡だ。使い魔を伝ってあいつらに」
竜少女「うむ、もう終わっておる」
商人「早ッ!?どうなってんだ使い魔システム……」
竜少女「少し待てば来るじゃろう、逃げないようにここで待とう」
商人「……この子は先に宿に帰してきますね」
少年「……」
騎士「ああ、何があるかわからんからな。お前たちは戻れ」
剣士「私より弱いお前が残るのか?」
騎士「うるせー、疲れてるお前よりは戦力になるわ!」
剣士「……そうか、当てにさせてもらう」
騎士「お?おう……」
695
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 03:50:12.02 ID:/xkJhjhE0
商人「ではお願いします」
竜少女「治癒はしたが無理はするでないぞ?肉体の疲労まではどうしようもないからのう」
剣士「行くぞ、歩けるな」
少年「……大丈夫だよ」
騎士「ホント、アイツら何があったんだろうな」
竜少女「仲良きことはよい事じゃ、キリヒメとか言う刀があの娘の手に握られているところを見るとそういう事なんじゃろうな」
騎士「あ、そいうやそうだな」
696
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 03:59:37.01 ID:/xkJhjhE0
商人「あ、ウサギの事竜さんに話すの忘れてました」
剣士「ん?戻るのか?」
商人「どうしましょう、不安の種はとっとと取り除いておいた方がいいですし……」
少年「俺が伝えてこようか?」
商人「ダメです、また危ない目に合いたいんですか?」
少年「もうここには危ないものなんてないよ……」
商人「そうは言ってもですねぇ……」
バシャ
剣士「?水の音?」
商人「そういえば川が近くにありましたね」
バシャバシャ
少年「何かいるのかな?」
バシャバシャバシャ
商人「……嫌な予感がします」
剣士「……同感だ、私もだ」
697
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 04:02:50.14 ID:/xkJhjhE0
剣士「……覗いてみるか?」
商人「放置は……出来ませんね」
バシャバシャバシャバシャバシャバシャ
魔物「グゥ………フー!フー!フー!!」
魔物「ガァアアアアアアアアアアアアア!!!」
剣士「出てきたのか!あの池から!」
商人「私たちでは入れなかったあの小さい穴から……なんちゅう頭の良さしてんだアイツ!」
698
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 04:09:55.24 ID:/xkJhjhE0
剣士「もう形振り構っていられん、奴を殺す気で行く!」
少年「出来るの!?あいつすぐに傷が塞がるんだよ!?」
剣士「やるしかない、お前たちはここで待っていろ!」
商人「り、竜さんたちを呼んで……」
剣士「下手に動くと感づかれる、私が確実に仕留める、ジッとしてろ!」ダダダ
魔物「アアアアアア!!」
剣士「お前とはもう何日間か戦い続けていたな、私が追ってお前が逃げて……」
剣士「だがそれも今日で終わりだ!」
剣士「応えよ斬姫!凍てつけ刃よ!」
魔物「ゴガアアアアアアアア!!」
699
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 04:15:40.53 ID:/xkJhjhE0
少年「やっぱりあの人たちを呼んできた方が……」
商人「あの娘を信じましょう……動いて標的をこちらに変えられたら私たちは戦うことは出来ないんですから」
少年「どうして……俺は……」
ガサ
商人「こんな時に後ろから不穏な影が……」
ガサガサ
少年「ウソ……だろ……」
商人「ッ!?これは……!」
「グゥ……」
700
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 04:19:47.14 ID:/xkJhjhE0
剣士「驚いたな、さっきよりも強くなっているじゃないか!」
魔物「グン!グン!!」ブンブン
剣士「私も避けるだけでは手が回らなくなってきたぞ……」キンッキンッ
剣士「だが、もうお前とは遊ぶ気にはならん!」ザシュ
魔物「ウウウウウ」
剣士「痛みが無くとも、再生しようとも、それは着実に蓄積されていく!そこが知れたな!」
ガサ
剣士「ん?……っ!?」
魔物「ガ……?」
「グゥ……グゥ……ゴガアアアアアアアアア!!」
剣士「二体目だと!?アイツらはどこだ!?大丈夫なのか!」
701
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 04:25:03.29 ID:/xkJhjhE0
剣士(クソ、こいつはどの程度だ、同じ練度ならば二体相手は非情に戦いにくい!)
剣士(あの二人も連れて帰らなきゃいけない……どうする、どうすればいい……)
「グゥ……」
剣士(……悔しいが、二人を無理やりにでも引きずって逃げるしかないようだな……)
魔物「ガゥ……」
「ガアアアアアアアア!!」ドシンドシンドシン
魔物「ギャアアアアアアアアアアア」バキッ
剣士「何だと!?魔物が魔物を襲った!?」
魔物「ウガァ!アアアアアア!!」
「アアア!!!ガアアア!!」
702
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 04:30:01.55 ID:/xkJhjhE0
商人「メリア!」
剣士「無事だったか!これはどういう事だ!」
商人「後から来たもう一方の魔物……両目の引っ掻き傷、私が知ってるウサギの魔物です!」
剣士「お前を助けに来たとでもいうのか!?」
商人「わ、わかりません……ひょっとしたら」
剣士「なんだ?」
商人「あの両目の傷はあっちの魔物に付けられたもの……かも」
剣士「要は復讐か、私の獲物を……」
商人「……」
剣士「……と、言いたいところだが。今はお前たちの命を優先しよう、逃げるぞ」
703
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 04:34:10.18 ID:/xkJhjhE0
商人「ちょっと待って!」
ウサギ「ウグ……」
魔物「フーフーフー!」
剣士「アイツ……弱いじゃないか!もう持たないぞ!」
ウサギ「キュウ……」メキメキメキ
少年「小さくなった……」
剣士「どの道倒す必要が出てきたみたいだ……」
商人「ダメ!あの子が殺されちゃう!」
704
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 04:38:19.13 ID:/xkJhjhE0
魔物「ゴガアアアアア!!」
ウサギ「キュ……」
剣士「残念だが……」
商人「いやああああああああ!」
騎士竜「何かわからんがくらえッ!」ドカッ!
魔物「ギャアアアアアアアア!!」
商人「!?」
剣士「!!?」
少年「!?!?」
705
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 04:47:01.92 ID:/xkJhjhE0
竜少女「お主ら無事か!?」
商人「え、ええまぁ」
竜少女「まったく、こんな短い時間で2回も心配させおって!」
剣士「あのリザードマンをデカくした感じのは……」
竜少女「うむ、奴の竜としての姿じゃ。二足歩行で人としての形を残しておるから竜人とか言うのかの」
騎士竜「立てド腐れ、てめぇが冒険者殺しの犯人だな?」
魔物「グ……ググ!」
騎士竜「大人しくするなら良し、後で罰は受けてもらう」
騎士竜「抵抗するっていうなら……」
魔物「ウガアアアアアアアアア!!」
騎士竜「爆竜剣で叩ッ斬る!!」ズシャアアア
魔物「ア……」ドシャ
剣士「さ、再生を許さずに一撃……」
竜少女「竜化しておらんとあのデカい剣を存分に振るえないのもいけないのう」
商人「絵面が完全に怪獣大決戦なんですけど」
706
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 04:52:29.20 ID:/xkJhjhE0
騎士竜「フン、口ほどにもない……やったぞ」
竜少女「やったぞ、ではないわボケが。突き出すはずの材料を殺してしまいおって」
商人「そんなことよりあのウサギは!?死にかけてたんですよ!」
剣士「ここだ……まだ息はある」
竜少女「どけ!治癒魔法をかける!」
商人「どうか……」
騎士竜「……俺の活躍の意味は?」
707
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 04:58:25.93 ID:/xkJhjhE0
竜少女「……もうダメじゃ、これ以上は治せん……」
商人「そんな……」
竜少女「これが……こんなことが天命だとでも言うのか……」
商人「なんでこんな事を……」
ウサギ「キュウ……キュウ……」
ウサギ「キュゥ……」
剣士「……息が止まったな」
竜少女「ごめんなさい……ワシでは……私じゃ助けられなかった……」
商人「……この子、首飾りしてない……」
剣士「首飾り?」
商人「私のあげた首飾り……天敵から身を守る物です」
708
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 05:03:12.43 ID:/xkJhjhE0
剣士「野生の動物なんだ、邪魔だと思うのなら自分で外すだろう」
商人「そう……ですよね」
少年「ねーちゃん達!こっち見て!」
商人「……なんですか?」
キュウキュウ
キュウキュウ
商人「あ、そうか……子供が居たんでしたね」
剣士「ここは巣か、簡易的な使い捨ての巣。毎日こんなのを作って移動しているんだな」
剣士「……この魔物は本当に頭がいいみたいだな」
商人「え?」
騎士「巣の中に……首飾りが」
竜少女「このウサギ、まさか子を守る為に……?」
709
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 05:09:47.17 ID:/xkJhjhE0
商人「この首飾りを持っていればその天敵に出会うこともなかったのに……」
竜少女「……近場にあの魔物が現れた時点でそうも言っていられなかったのだろう」
竜少女「首飾りを置いて自分は奴を追い払いに行ったんじゃ。おそらくの」
騎士「親の愛ってやつか、死んでも守りたいものなんだろうな……」
竜少女「ワシらは子供が居ないからそういうことは分からんが……そういう事なんじゃろうな」
少年「親の愛……」
剣士「……守りたいもの、か」
キュウキュウ
商人「この子たちはどうするんですか?」
竜少女「女神のやつならほかっておけと言うじゃろうが……」
騎士「ダメだぞ、旅に連れては行けん」
竜少女「お主も言うと思ったわ」
710
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 05:13:57.73 ID:/xkJhjhE0
キュウキュウ
商人「あぁ、こんなに私になついて」
ガブ
商人「いてぇ!?今噛みやがったなコイツ!?油でカラッと揚げて食ってやろうか!?」
剣士「……自然の中で生まれたのならほかっておけ、小さいとはいえ野生の生物だ。自分たちで生きる方法くらい見つけるだろう」
鎧少女「その必要はない……少し遅れたようだな」スッ
剣士「……音も気配もなく現れるのはやめろ」
竜少女「こやつらを貰ってくれるのか?」
鎧少女「ああ、貴重なサンプルだからな」
騎士「サンプル?」
711
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 05:21:31.81 ID:/xkJhjhE0
鎧少女「本当に大事なことを伝え忘れていたが、研究所から逃げ出した魔物の数は6匹だった」
商人「おい、いくらなんでもそれ伝え忘れちゃいけないだろ!?」
騎士「倒したコイツらを含めて後4匹って事か……おい、このウサギの子供が6匹いるんだが」
鎧少女「ああ、狂化させられた魔物はこの森には2匹迷い込んだようだな」
鎧少女「そこに転がっているデカいのと、私たちの知っているウサギ……」
鎧少女「他の2匹は研究所が回収、残りの2匹は私の国の者が回収した」
商人「結構話が進んでたんですねぇ」
鎧少女「お前たちに話した時点で残り3匹だったからな、夜の間でどうにかなった」
712
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 05:25:35.21 ID:/xkJhjhE0
剣士「つまり?」
騎士「どういう事だ?」
鎧少女「そのウサギ達はこの親ウサギが脱走した後に出来た子供という事だ、だからサンプル」
竜少女「んな!?お主この期に及んでまだこの者達をそんな風に扱うか!」
鎧少女「悪いようにはしない、責任を持って引き取るつもりだ」
竜少女「うぬぬ……なんか納得いかんのう」
商人「ここは信じましょう、私たちではどうすることも出来ないんですから」
キュウ!
713
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 05:30:51.53 ID:/xkJhjhE0
鎧少女「色々と検査とかするけど大丈夫、お前たちには酷い事はしたりはしないからね」ナデナデ
キュウキュウ!
鎧少女「……生まれた命に罪は無い、親の業を背負わせる訳にもいかない」
鎧少女「私も人の親だからわかる、信じてくれ」
竜少女「うむ……わかった」
鎧幼女「いい子だ、お前も親になればわかる時が来る」
竜少女「なっななななっ何を言っておるか!まだワシはそんな予定無いわ!」
少年(……この人大人だったんだ……)
商人「ところで、指輪渡したんですか?」
騎士「……まだだ」
商人「婚約指輪とかじゃないんですからとっとと渡しちゃいなさいよ」
騎士「俺にとっては同じようなもんだよ、タイミングがだな……」
剣士「どうでもいいが帰ろう、疲れた」
――――――
―――
―
717
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/02(金) 12:53:14.09 ID:h2Fel/oDO
乙
ずっとザンヒメだと思ってたww
718
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/02(金) 16:03:30.64 ID:kMSdF9ITO
>>717
俺がいる・・・
719
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/02(金) 16:18:30.30 ID:Au1eGc28o
俺ざんきだと思ってたわ
720
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/02(金) 19:02:40.18 ID:bcizTIJpo
>>717
同じだ
721
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 22:09:18.65 ID:/xkJhjhE0
再開
読み方は割と序盤で仮面さんにカタカナ表記してもらったのにコレである
やっぱり女の子の発言の方を見ちゃうよね!
722
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 22:16:08.16 ID:/xkJhjhE0
眼帯少女「……彼らを遠くから見てるだけ、声をかけないの?」
黒髪少女「この状況で声なんてかけにくいでしょうに。あの魔物を取り逃がしたのは私の責任でもありますし」
金髪少女「元凶はあんなモノを作った者達だ……気にすることは無いだろう」
黒髪少女「半ば強制的でしたが、関わってしまった以上は見て見ぬふりは出来ません」
黒髪少女「最悪、竜達の介入が無ければ私が割って入るつもりでしたが……あの剣士の娘一人でもどうにかなりましたね」
眼帯少女「……どんな形であれ、彼女の手にはあの刀が握られている。約束通りに直さなきゃ」
――――――
―――
―
723
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 22:25:31.81 ID:/xkJhjhE0
竜少女「ところでお主、連れはまだ帰ってきていないのか?」
鎧少女「帰ってきていないというか、私はさっきまで一緒に行動していたんだが」
騎士「俺たちが呼び出しちまったって事か……悪いな」
鎧少女「それはいい、それが私の仕事だからな」
少年「……」
商人「……家に着く前に言い訳くらいなら聞いておきますよ?」
少年「……俺はただ……誰かに認められたかったんだ……」
剣士「的中だな」
商人「なんでそんな事わかるんだよマジで」
724
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 22:31:22.73 ID:/xkJhjhE0
少年「母さんには宿を継げって言われてるけど……死んじゃった俺の父さんも、それに母さんも昔は冒険者だったんだ」
竜少女「やはりか……」
騎士「依頼所の内情に詳しかったからか?」
商人「身のこなしからして明らかに常人離れとかしてましたけどね」
少年「小さかった俺を連れて旅を続けてたけど、父さんが俺を庇って死んじゃってから母さんは冒険者をやめて……」
少年「発展途中だったこの街にたどり着いて、それから宿を始めたんだ」
少年「俺は学校も行ってないし友達とかいないし、俺を見てくれてるのは母さんだけだったんだ」
少年「……母さんはそれでいいって思ってるけど、俺はそうじゃない。誰かに認められたい、誰かにもっと俺を見て欲しい」
商人「私への度重なるセクハラもそういう事情があっての事か」
少年「ゴメン、それは趣味」
商人「」
725
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 23:14:16.23 ID:/xkJhjhE0
少年「だから少しでも強くなって魔物でも退治出来れば、誰かが俺を見てくれる……そう思ったんだ」
騎士「そんな向上心があるならなんで地道に努力しようとしない?」
少年「何の才能もない俺が頑張ったところで知れてるよ、だから強い武器が欲しかったんだ!」
剣士「はぁ……」
商人「呆れた……こりゃ酷いですね」
少年「なんだよ!」
剣士「自分の才能の限界を決めるのは軽率過ぎる……お前はまだ子供なんだ」
少年「おねーさんだって子供だろ!なのにこんなにも強いのはなんでだよ!」
剣士「そりゃ……才能だ」
少年「ぐぬぬ」
商人「それ完全に煽ってますよ」
727
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 23:37:25.61 ID:/xkJhjhE0
商人「そうやって無謀なことをしでかして……あなたはあなたを心配してくれる人の命を危険にさらしたんですよ?」
少年「……誰も頼んでない!!」
商人「……私のものを盗んで行ったことは?」
少年「ちゃんと返すつもりだった!!」
商人「……女将さんを……心配させたんですよ?」
少年「俺は!!……宿なんて継ぎたくない……ッ冒険者になりたいんだよ!!」ダダダダダ
竜少女「……どうしようもないのう」
騎士「まだ子供なんだ、だが積りに積もったものが爆発したんだろう」
竜少女「あんな言い方無いじゃろう……」
商人「……」
剣士「……叱らないのか?」
商人「手前勝手なのはどうしようもないにしても、彼を叱るのはあの子のお母さんの役目です」
商人「私の事についてはその後……結局はあの子と私は他人ですからね」
728
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/02(金) 23:46:14.57 ID:/xkJhjhE0
商人「ま、可能ならば助走をつけて顔面をグーパンで殴りたいところですが」
剣士「だろうな、私もそうしたい」
竜少女「だろうと思ったわ」
騎士「手を出さないだけマシか……人生の先輩としての意見を聞きたいんだが、アンタはどう思う?」
鎧少女「私に振るか!?……まぁ子供のやることだ、大目に見てやれ……とは言える状況ではないが」
鎧少女「スマン、私は子育てについては何も言えん。自分の子供を十数年ほったらかしにするような親だ」
商人「……訳ありですねぇ」
鎧少女「落ち着いてからもう一度話し合うべきだ、今回の事はいくら相手が子供でもちゃんとした謝罪はさせた方がいい」
729
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 00:00:25.45 ID:LXmp5Xfr0
とぅるるるるるる
鎧少女「ん?アイツから電話だ」
商人「なんちゅう着信音にしてるんですか」
鎧少女「もしもし?どうした?」
仮面男『不味い事になった、部下をそちらに向かわせたから魔物の引き渡しをしたら君はすぐに魔導都市に戻ってくれ』
鎧少女「不味い事?何があった?」
仮面男『大臣がヤケになって行動を起こした……クソッ、すべてが裏目に出たか……』
鎧少女「街の方に何かあったのか!?」
仮面男『すまない、結構多く相手にしてるんだ、そろそろ切るよ』ギンッザシュッ!!
鎧少女「すぐに行く!待ってろ!」
竜少女「何かあったのか?」
鎧少女「すぐに街に戻るぞ、何かが起きている」
730
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 00:10:07.27 ID:LXmp5Xfr0
商人「こ……これはまさか連戦というやつでしょうか」
剣士「私は構わんが」
竜少女「先に戻った小僧も心配じゃし、とっとと戻るか」
鎧少女「……お前たちはここに残ってくれてもいいぞ」
鎧少女「元は私たちの撒いた種だ、無理に付き合う必要もない」
騎士「そんなこと言うなって」
竜少女「前も言うたじゃろう、ワシらは好きで付き合っておるんじゃ。もっと頼ってくれてもいいくらいじゃ」
商人「あ゛ーもうどうにでもな~れ!」
剣士「お前は戦えないから本当に残れ」
731
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 00:20:04.81 ID:LXmp5Xfr0
――――――
―――
―
少年「な……なんだよこれ……」
「逃げろ!追いつかれるぞ!!」
「道を開けろ!どけ!」
「いやぁ!死にたくない!」
「冒険者は何をしているんだ!早くコイツらを何とかしろ!」
少年「街が……魔物だらけになってる……」
怪人男「ああ!帰ってきてたんですね!」
少年「お、おっさん!」
732
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 00:26:06.89 ID:LXmp5Xfr0
怪人男「女将さんを心配させて!あなたは何をしてるんですか!……っと、今はそれどころじゃないですねぇ」
少年「ど、どうなってるんだよこれは!」
怪人男「あなたが知る必要はありません。さ、私につかまってください」
怪人男「安全なところまでお送りしますよ」
少年「……家が心配だ!」ダダダダ
怪人男「ああ!ちょっと待ってください!」
鎧少女「なるほど、この惨状か……」
怪人男「あ、お帰りなさい!あの子が……」
商人「ああもう!私が捕まえてきます!」ダダダ
剣士「チッ、また追うのか……」ダダダ
竜少女「あの二人、今日はよく走るのう」
733
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 00:39:53.74 ID:LXmp5Xfr0
怪人男「この状況、何か知っているんですか?」
竜少女「ワシらもよくわからんのじゃ」
騎士「仮面のやつに直接聞かないことには何とも……」
鎧少女「大臣がヤケを起こしたとか言っていたが……安全なところにいたハズの大臣を強行させるような事でも起きたのか……?」
竜少女「お主のところの者が何かやらかしたんじゃなかろうな?」
鎧少女「……わからん。ともかく現状を打開しよう」
竜少女「うむ、とりあえずワシは人気のないところで元の姿に戻ろうかの」
騎士「持てる力で戦うか……大勢に見られるけどいいのか?」
竜少女「仕方ないじゃろう。じゃが、化け物の集団の中に化け物が2匹紛れ込んでも大差ないじゃろうに」
騎士「……ほかの冒険者に攻撃されないように気を付けような」
鎧少女「では、行くぞ!」
734
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 00:45:08.14 ID:LXmp5Xfr0
――――――
―――
―
少年「か、母さん……!」
母「……あ、お帰り……なさい」
少年「なんで……こんな傷だらけ……」
母「フフ、家を守りたかったから……久しぶりにちょっと……頑張っちゃった……」
少年「怪人のおっさんと一緒に逃げればよかったじゃないか!どうして残ったんだよ!」
母「私がここに残るように言ったから……だって……入れ違いになったら大変でしょう?」
商人「追いついた……ってええ!?どういう状況ですか!?」
母「お帰りなさい……ごめんなさい、林檎ちゃん。この子が迷惑をかけて……」
735
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 00:50:30.85 ID:LXmp5Xfr0
商人「いえ、それは後からでいいんですけど……」
少年「なんで……俺を待ってたんだよ……こんなにも滅茶苦茶やった後なのに、こんな傷だらけになるまで戦って!なんで!」
母「……家族なんだもん、自分の子供の帰りを待たないで……どうするの?」
少年「ッ!」
母「……あなたが冒険者になりたいなんて言い出して、すごく心配だった」
母「お父さんみたいに……いつか死んじゃうんじゃないかって」
母「だから、なるべくそういったことには関わらせないようにしてた……でも、それがダメだったみたいだね」
少年「母さん……」
736
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 00:57:15.31 ID:LXmp5Xfr0
母「守ってあげたかった……でも、もっと外を見せてあげるべきだった……私があなたを束縛してたんだね」
少年「違うよ!俺が……何も知らない俺がずっと母さんに甘えてただけだった!ずっと無知なことに甘えてただけだった!」
母「まだ子供だもん……これから先、いろんなことがあると思う。いろんなことを経験して大きくなっていく……」
母「それが、何かを守ること、誰かに認められていくことなんだよ……だから……」ペチッ
少年「うん……わかってる……わかってるよ……」
母「よしよし、反省できたね?」
少年「勝手なことしたのも、ねーちゃんのもの盗んだのも……全部……ねーちゃん、ごめんなさい」
商人「あー、うん。まぁこの場に流されてそれは良しとしましょう。ですが……」
商人「傷だらけといっても極めて軽傷で辺りが魔物の屍だらけのその山の上に堂々と君臨しているのもどうかと思いますよ?」
母「ウフフフフフ」
737
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 01:06:13.97 ID:LXmp5Xfr0
母「ごめんなさい、盗んだ件でこの子の事、任せてもいいですか?」
商人「私が叱ってもいいんですか?」
母「……束縛して視野が狭くなっていたことは事実です。私にこれ以上の発言力はありません。だから、身内でない人にお願いしたいんです」
商人「……無責任ですよ……親として」
母「招致してます、これは本来なら私が言い聞かせることだという事は……」
母「……甘すぎましたね、あの子も私も……」
少年「ねーちゃん……俺も戦いたい!今度は俺が母さんを……ねーちゃんを守りたい」
剣士「お前はまだそんなことを……」
商人「……」
少年「心配かけたことは……ごめんなさい、さっきあんなこと言っちゃったし、許してもらえないかもしれないけど」
少年「でも……せめて、傷付かないものを、安全な武器でもいい!俺に貸して!力になりたいんだ!」
738
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 01:11:14.01 ID:LXmp5Xfr0
商人「……女将さんの言っていたことの意味も分かってなかったみたいですね……」
少年「え……?」
商人「メリア、すみませんが斬姫をちょっと返してもらえますか?」
剣士「ああ、どうするつもりだ?」
商人「……では、この刀をあなたに預けます。どうぞ、これで存分にあなたの守りたいものとやらを守ってください」
少年「あ……どうして……?」
商人「あなたの欲しがっていた武器ですよ?魔剣ですから、素人が使ってもひょっとしたら強くなるかもしれませんね?」
少年「何言ってんだよ……そんなのいらないよ……俺は!」
商人「怖くなったんですか?傷つけるのも傷つくのも」
少年「ッ!!」
739
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 01:19:28.92 ID:LXmp5Xfr0
商人「ほら持て!!」グイッ
少年「うう……」
商人「本物の刃物だ!重いだろ!人なんて簡単に殺せるぞ!!」
商人「お前はこれを盗んでいった!いとも容易くだ!これで何をしようとした!?命の奪い合いをしようとしたんだぞ!?」
少年「それは……」
剣士「……」
商人「あなたは何がしたかったんですか?恰好つけたかっただけですか?引き下がれなくなっただけですか?」
少年「みんなに認められたかった……」
商人「さっき聞きました。それだけですか?」
少年「……守りたかったんだ……父さんみたいに……誰かを……」
740
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 01:23:53.76 ID:LXmp5Xfr0
少年「母さんもねーちゃんも、みんなも……」
母「……」
商人「……守るってことは、こうやって武器を取って戦う事だけじゃないんですよ」
商人「そんな無謀で出来ないことをやろうとするな、怪我をして心配するのはいつも親なんだ」
商人「死んでしまったら……それでお終いです」
少年「……グス」
商人「……叱るだけ叱りました、あとはもう一回。母親であるあなたが何とかしてください」
母「ごめん……なさい……」
741
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 01:29:35.22 ID:LXmp5Xfr0
剣士「そんな言葉、ツラツラとよく出てくるな」
商人「こう行商で長旅していると、こんなご時世嫌でも人の生き死にを見るんですよ」
商人「別に私は身内が死んだとか言う経験は無いですけど……戦争中の所なんか見てたりすると、考えさせられるんですよ」
商人「……そんな私がこんな事言っても、重みなんて全然ないですけどね」
剣士「……私にはわかる」
剣士「剣を取らざるを得なかった私は仕方がないにしても、小僧は戦う理由なんてない」
剣士「……無事でいて欲しい、傍にいて欲しい。ただそれだけでも、あの母親にとっては大切なんだろう」
商人「あの子の存在が、女将さんを守ってるってことですね。わかってくれればいいんですけど……」
742
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 01:32:54.44 ID:LXmp5Xfr0
少年「ねーちゃん……俺、間違ってたよ」
商人「うんうん、わかってくれたか!」
少年「俺……俺なりの方法で戦うよ!」
商人「以下無限ループにつき顔面パンチで終了させます!!」ドゴォ!!
少年「ぶべら!!?」
少年「違うよ!?戦うって言っても物理的にじゃなくてこれからの事を言おうとしただけだからね!?」マエガミエネェ
商人「おっと、そりゃ失礼」
剣士「見事にぶち壊したな」
743
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 01:38:12.59 ID:LXmp5Xfr0
剣士「さて……これからの事を語る前に、やることはやっておこう」
商人「そうですね……こうそこらじゅうに魔物に徘徊されてたら締まりませんね」
母「私に何かできることは……」
商人「それこそあなたは息子さんを守ってあげてください。もう一線は引いた身でしょう?」
剣士「小僧、お前は母親を大事にしろ。戦いは戦う者に任せておけ」
少年「うん!」
剣士「林檎、お前もだ。ここに残って隠れていろ」
商人「ギリギリまであなたをサポートしますよ、女の子一人出歩かせるのは大人として見過ごせませんからね!」
剣士「お前も大概だな……守り切れる自信は無いぞ?」
商人「大人をもっと信用しなさい!そんじゃ行きますよ!」
――――――
―――
―
744
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 01:46:10.42 ID:LXmp5Xfr0
仮面男(隠し研究所はやけにあっさり破棄したな……)
仮面男(最後に盗み見た大臣の姿は半狂乱だったが……私以外にもこの計画を潰そうとしていた者が居たというのか?)
仮面男(私自身、奴とはパーティ以来接触自体していない。こんな状況になるなど、ほかの要因があったとしか思えん)
仮面男(……まぁいい、直接聞きただせばいいだけだ)ザシュッ
仮面男「……今のコイツで最後だ。残っている研究員共、一緒に切り捨てられたくなければ知っていることを全部話せ」
研究員「ひ、ひぃ……」
仮面男「私が来なければお前たちはこの暴走した魔物の餌食になっていたところだ、正直に話せば命は取らん」
研究員「し、知らないんだ……こんなことは何も聞かされていない……!」
仮面男(だろうな。都合の悪いものを切り捨てようとしている、といったところか)
仮面男(……)
745
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 01:53:03.07 ID:LXmp5Xfr0
仮面男「分かった、信じよう。だが、この場所は押収させてもらうが構わないな?」
研究員2「そ、そんな!それでは我々は……」
仮面男「罰せられるか?当然だろう、大勢の人を実験台にしてこんな非人道的な実験をしていたんだ。国の許可もなく」
仮面男「調べただけで旅行者、冒険者、ホームレス……この国からいなくなっても困らない連中ばかりを誘拐して」
仮面男「大方大臣の暴走だろうが……お前たちも同罪だ。命があるだけありがたいと思え」
研究員3「クソッ!大臣にも捨てられてこんなことに……全部あいつが悪いんじゃないか!」
仮面男(屑どもが……)
研究員「……グ」
仮面男「ん?」
746
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 01:58:16.17 ID:LXmp5Xfr0
研究員「グ……ゴ……」メキメキメキ
研究員「ガアアアアアア!!」バキバキ
研究員2「そ、そんな!?」
研究員3「コイツまで実験体にされてたのか!?」
仮面男「保険か?徹底的に根本から始末する気だったか」ザシュッ
研究員「ア……ガ……」
仮面男「だが、そこらの魔物と同程度ではな」
仮面男「お前たち、悪いが額を抉って核を埋め込まれていないか見させてもらうぞ」
仮面男「他にも改造されている者もいるかもしれない」
研究員2「や、ヤメロォ!」
747
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 02:05:09.50 ID:LXmp5Xfr0
ピピピピ
仮面男「電話……命拾いをしたな」
研究員2「命拾い!?額抉るだけじゃなかったのか!?」
仮面男「抉ったら死んじゃうでしょそりゃ……もしもし?」
鎧少女『軽いパニック映画状態だぞ』グサッ
仮面男「うん、知ってた」
鎧少女『なぁ、今テレビ見れるか?』
仮面男「なんだい?面白いドラマでもやっているのかい?おい、テレビを付けろ」
研究員2「は、はいっ!」ピッ
鎧少女『ジョークが飛ばせるならお前の方は余裕なんだな……ちょいと胸糞悪いものを見せることになるのを先に謝っておく』
――――――
大臣「ただいまこの都市で大規模なテロが発生しております。魔物を放つという大変悪質なものです!」
大臣「軍を導入して事態収めようとしています。皆様ご安心ください!」
――――――
748
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/03(土) 02:11:58.31 ID:LXmp5Xfr0
鎧少女『外にある魔法のスクリーンにデカデカと映ってるから最悪だなこっちは』
仮面男「あたかも自分は関係ないって顔しているな」
仮面男「少し調べれば事実は分かるだろう、こんなものは一時しのぎだ」
鎧少女『そこは権力で押しつぶす気だろう、ヘタすりゃコイツ国王より力持ってるからな』
仮面男「これが権力ってやつか……」
――――――
大臣「犯人は必ずわが国の軍が捕まえます!どうか皆様、速やかに避難を行ってください!」
――――――
仮面男「あの大臣の事だ。諦める気はないだろうが、研究員共は切り捨てる気か……ま、末端の連中ならそうなるだろうな」
研究員3「くそ……くそ……!」
仮面男「同情はしないがな」
――――――
―――
―
756
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 00:26:19.06 ID:2b4/vLPf0
剣士「しかし、なんだな」ザシュッザシュッ
商人「何ですか藪から棒に」
剣士「コイツら、確かに常人よりも強いだろうがまるで手応えが無い」
剣士「それどころか逃げ惑っている奴までいるくらいだ」
商人「……それは多分」
剣士「元が人だったかもしれない奴……だろ?」
商人「気づいてたんですか?」
剣士「私はこっちに向かって来ている奴としか戦っていない、安心しろ」
商人「……暴走して理性を失ってしまった場合は仕方ないですが、何とかして助けてあげられないんでしょうか」
剣士「それを考えるのは私たちではない、今は暴れている奴の処理だ」
商人「はい……」
757
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 00:33:44.00 ID:2b4/vLPf0
剣士「強さはあのウサギの魔物が特別だっただけか……連中の中で統率が取れているわけでもなく、個体差もバラバラ」
剣士「動物や魔物を狂化させた奴はまさしく畜生で動きが読みやすい、人を狂化させた奴は今度は対して強くは無い」
剣士「おまけに、比較的原型が残っている奴に限って理性が飛んでいないからタチが悪い……見ていて吐き気がする」
商人「一度皆さんと合流しましょう、解決の糸口がまったく掴めません」
剣士「分かった、戻るのにまた突っ走るが着いてこれるか……と、聞くまでもないな」
商人「毎日重い荷物を持って走り回ってる獣人の私の体力をなめんなよ!」
剣士(治癒をしたとはいえ、さっき結構な大怪我をしたはずなんだが……体の頑丈さは人間卒業一歩手前だな)
758
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 00:41:38.39 ID:2b4/vLPf0
竜「ぬ?お主ら戻ってきたのか」
商人「うお変身してる!?とりあえず、こっちはこっちでいろいろと解決したので」
騎士竜「捻くれ小僧は大丈夫だったのか?」
商人「顔面に一発くれてやりました」
鎧少女「どうしてそうなった」
剣士「加勢する、私は何をすればいい」
鎧少女「そうだな、まずあそこの役立たずを回収して来てくれ」
怪人男「いやー!やめてー!服が破れちゃううう!あ、引っ張らないでこれ高かったんですから。痛ッ!何するんですか!酷いじゃないですか怪我したらどうしてくれるんです!?」
商人「10体くらいに揉みくちゃにされてますけどなんであの人死なないんですか」
鎧少女「そういう星の下に生まれてきたんだろう。多分核爆弾が直撃しても五体満足で生きてるだろうな」
759
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 00:54:02.90 ID:2b4/vLPf0
剣士「連れてきた」
怪人男「いやぁ、狂化された魔物は強敵でしたね」ボロッ
鎧少女「転移して逃げればよかった話だろう……」
商人「今の状態についていろいろ知りたいんですが、何かわからないんですか?」
鎧少女「潜入してたウチのと連絡が着いたがあっちもどうもハズレ臭かったから何とも言えないな」
鎧少女「ただ、大臣が研究所の一つを切り捨ててそこにあった被検体すべてを解放したという事くらいだ」
商人「それがこの惨状って事ですか」
竜少女「……どういうわけか能力の差が激しいがこれはどういう事じゃ?」
怪人男「それは私が説明しましょう」
760
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 01:03:41.77 ID:2b4/vLPf0
怪人男「と、言っても憶測も混じりますが……」
怪人男「被検体のほとんどが実は失敗作なんですよ」
騎士竜「失敗作?コイツら全部見た目が変質しているがこれが失敗なのか?」
怪人男「ええ、同じ種族の狂化でも見た目が完全に別物だったり、強さがマチマチなのもその証拠」
怪人男「獣の習性に従い、人を襲うものもいれば特に何もせずいつも通りの行動をするもの、人がベースになっているのは暴走するのもいれば意識があるのもいたりと見ていて悲惨です」
鎧少女「……こんな不完全なものを軍事利用しようとしていたのか」
怪人男「大臣はいつか成功するとか言ってましたけど、この研究自体はものすごく難航してまして実用化の目途なんて立ってなかったんでしょうね」
怪人男「老人が意固地になって続けちゃってもう迷惑な話ですよ」
761
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 01:09:34.89 ID:2b4/vLPf0
竜「……で、その情報はどこで手に入れたんじゃ?」
怪人男「アレ?言いませんでしたっけ?私がちょちょいと資料盗んできたんですよ?」
鎧少女「いつの話だ?」
怪人男「私が魔導都市に着いたばかりの時ですから……1週間くらい前ですね、ワープに失敗してたまたま研究所の倉庫内に飛んじゃったんですよ~。息苦しくて死ぬかと思いました」
商人「……」
竜「……」
騎士竜「……」
鎧少女「……なんで情報を開示しなかった?」
怪人男「やっぱり私、伝え忘れてました?アッハッハすみませんねぇ~」ザクッ
怪人男「」
鎧少女「……知ってりゃ役に立った情報だな」
商人「擁護出来ないのでそうやってしばらく魔物の餌になっててください」
怪人男「」ガブガブ
762
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 01:18:21.30 ID:2b4/vLPf0
剣士「魔物の数も少なくなってきた……倒したのか逃がしたのかわからんぞ」
鎧少女「それはいい。逃げたのは私の国の連中に回収させている最中だ」
商人「あなたの国の人たちちょっと優秀過ぎません?」
鎧少女「信用できる者達しか呼んでいない、そいつらがたまたま優秀だっただけだ」
商人「はぁ……」
バラバラバラバラ
騎士竜「ん?何の音だ」
商人「おー珍しい。ヘリですねぇ……こんな時に?」
竜「さっき放送で軍を呼ぶとか言っておったがそれではないのか?」
763
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 01:26:45.80 ID:2b4/vLPf0
剣士「私はてっきり、そこの怪人が魔物にバラバラにされている擬音かと思ったぞ」
鎧少女「私もだ、こんなところでスプラッター的なものを見せられても困るが」
商人「それはどうでもいいですけど」
怪人男「」バリバリダー
騎士竜「軍にしても一機だけなのは変だろ。魔導師も大量に派遣するだろうから専用の魔動式の乗り物で来るはずだ」
竜「……もしやと思うが、大臣が自分だけ逃げようだなんて思っているのではないじゃろうな?」
鎧少女「可能性はあるな……私が追う!」バッ
商人「凄い勢いで飛んでった!?流石は女神様ですね……」
剣士「おい竜ども、お前たちはいかないのか?」
竜「ぬ?別にあの女神一人で大丈夫じゃろ、ワシらより強いし」
竜「それにワシは疲れた、あーかったるくて動けんわ。歳は取りたくないのぅ」
商人「なんじゃそりゃ」
剣士「面倒になっただけか……」
764
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 01:33:25.97 ID:2b4/vLPf0
騎士竜「あの人は本当に一人で大丈夫だろ、ここももう魔物が居ないし俺たちは反対側を回る。お前たちは悪いけどヘリを追ってくれないか?」
商人「それだったらあなた達の方が適任じゃないですか?」
騎士竜「この姿を維持するのって結構疲れるんだぜ?燃費も悪いし体の節々は痛むし」
騎士竜「元の姿に戻ったらそこの嬢ちゃんより弱くなるからな、安定して戦えるお前がフォローに行った方がいい。相方はこんなだし」
竜「うにゅう」
商人「厳つい見た目でそんなかわいい声出すなよ」
剣士「まぁいい、行くぞ林檎」ダダダ
商人「はいはい、なんかあっちこっち移動して貧乏くじひかされまくってる感じですねぇ」ダダダ
騎士竜「頼んだぞー!」
騎士竜「……動けるか?」
竜「スマンな、気を遣わせて」
765
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 01:45:36.18 ID:2b4/vLPf0
竜「しかし、言い訳が滅茶苦茶じゃのう」
竜「元の姿もなにも、ワシらの"本当の姿"はこっちの方なんじゃ。疲れるわけも体が痛むわけもないじゃろう。燃費が悪いのは認めるが」
騎士竜「そんなことはアイツらにはわかるワケないだろ、俺たちしか知らないことなんだ」
騎士「それに俺は人間だ、これが俺の姿だ。人として生まれた、それだけは忘れたくはない」
竜「……」
騎士「ところで、本当に調子が悪いのは見て分かっていた。どうして動けなくなるまで戦っていた、俺はお前にこんなつらい思いをさせたくないからお前を戦わせたくなかったんだ」
竜「力配分を間違えただけじゃ。最近どうも年甲斐もなく楽しくて休むことを忘れはしゃぎ過ぎてのぅ」
竜「ま……友達の前でちょっとカッコつけたかっただけじゃ」
騎士「少し休んでろ、無理して倒れられても困る」
竜(分かっておる……ワシが目に見えて弱っていることも、お主が最悪の事態を危惧しておることも……)
――――――
―――
―
766
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 01:54:26.98 ID:2b4/vLPf0
鎧少女「ビンゴ!当たりだ!」
大臣「おやおや、飛んでいるヘリの扉を突き破ってくるとは。恐ろしい御嬢さんだ」
鎧少女「軽口を言っていられるのもここまでだな、諸悪の根源め」
大臣「はて、なんの事かな?」
鎧少女「お決まりの言葉を掃いて捨てるように言わせてもらうが、しらばっくれるなよ小悪党?」
大臣「それで、"女神さん"?私になにか御用かな?」
鎧少女「特に証拠は無いが貴様の悪行を咎めに来た!とりあえず私がお前を裁く!」
大臣「それは理不尽すぎるだろう!?」
鎧少女「理不尽なものか、女神っていうのはなんでも正当化させるんだよ」
鎧少女「……貴様、なぜ私が女神だと知っている……?」
大臣「敵国の情報を調べているのは自分たちだけだと思ったか?元魔王め!」ガラガラガラガラ
鎧少女「クソッ対神兵器か!?」
767
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 02:02:01.98 ID:2b4/vLPf0
大臣「無力だな!無様だな!神の作り出した鎖によって神自らが戒められようとはな」
鎧少女「この鎖……神器か」
大臣「そう、神が神を屈服させるために編み出した兵器だ。まさか本当に使う日が来るなんて思ってもみなかったが」
大臣「このような小娘が神だとは、笑わせる。お前も実験体の一人にしてやろうか?」
鎧少女「あーあー、やっぱりお前は黒だったか。真っ黒くろすけだな、ハハハ!」
大臣「この状況でよく笑えるものだな……生かして狂化の魔導核を埋め込んでやろうと思ったが気が変わった、絞め殺すか」
鎧少女「バカだろ貴様……ヘリのパイロットがどうなっているか見てないのか?」
大臣「何!?」
パイロット「……」
大臣「し、死んでいる……これは!?」
768
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 02:14:50.02 ID:2b4/vLPf0
鎧少女「お前の顔を見たときにとりあえず尊い犠牲になってもらった。まぁ同罪だと思えばいいか」
大臣「槍で一突き……こんな一瞬で」
鎧少女「よかったな、お前を殺したら夫がうるさいんでな」
大臣「だがお前はこのザマなのは揺るがない」
鎧少女「徹底的に私をメタったつもりだろうが、そもそも前提条件がおかしいだろう。私一個人に単身で勝てるワケが無い」
鎧少女「つまり、手足が動かなくてもお前を殺す方法はあるってことだ」
鎧少女「何ならこの距離からお前の耳でも鼻でも噛み千切ってやろうか?何ならこのまま内臓引きずり出してやってもいいぞ?」
大臣「下品な……やはり悪魔と天使の間に出来た忌々しき汚れた存在か。お前の両親は化け物を作りたかっただけのようだな」
769
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 02:20:18.94 ID:2b4/vLPf0
鎧少女「……お前の種族はなんだ?エルフか?ドワーフか?ああ、その厚底の靴を見る限り案外背が低いからホビットか?」
大臣「何の話だ?」
鎧少女「我が父は誇り高き幻魔の末裔!母は気高き天の使い!貴様の目の前に者を誰と心得るか!」
鎧少女「我は魔王!父と母が愛し合い出来た、望まれて生まれた命だ!私の両親を侮辱することは許されん!」
鎧少女「極刑だ……ヘリが落ちる前にな」
大臣「な……に?」ブシュ
大臣「……?」シュー
鎧少女「だが、さっきも言ったように殺したら私の夫が怒るんでな。今はそれで勘弁してやる」
大臣「あ……?」
大臣「腕が……無い!?」
大臣「があああああああああああ!?」
鎧少女「あはははははは!もがけ苦しめ!私の槍は生きているんでな!こうして人の血肉を食いにやってくるんだ!お前のような極悪人の肉だ、さぞ美味いだろうなぁ!」
770
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 02:25:58.39 ID:2b4/vLPf0
剣士「おい、ヘリが変な軌道を描いてるぞ?」
商人「へぇ、ヘリってあんな動き出来るんですね……って落ちてるって!?なぜ!?あの人何したの!?」
ヒュルルルルル
剣士「あ、落ちた」
ドーン
商人「爆発した」
剣士「……」
商人「……」
商人「大変だああああ!?」
剣士「女神ってあの程度で死ぬのか?」
商人「どうなんでしょうね、どのくらい頑丈なのか知りませんけど。じゃなくて早く行くぞ!そうでなくても心配だ!」
771
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 02:31:48.97 ID:2b4/vLPf0
剣士「おーい、大丈夫か?生きてたら返事をしろー」
商人「アンタなんか軽いな」
剣士「私より強い奴がそう簡単に死ぬか、多分生きてるだろう……ほらな」
鎧少女「危ない危ない、鎧が無ければ即死だった」
商人「鎧パワー!?ってか無傷だし!?」
鎧少女「冗談、鎧が無くてもあんな爆発で死ぬワケないだろう」
商人「え、そっち?しばらく自由落下もしてたはずなんですけど」
鎧少女「女神は易々とは死なないんだよ……とりあえず私に巻き付いている鎖を解いてくれないか?自分ではどうにもならない代物を巻きつけられた」
剣士「面白いな、こんな短時間で束縛プレイか。心躍るな」
鎧少女「そういうな。ま、確かに私は縛られるのは嫌いじゃないな」
商人「アンタら精神科紹介しようか?」
772
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 02:37:41.77 ID:2b4/vLPf0
商人「よっと……解けましたよ」
鎧少女「ああ、ありがとな……まったく、厄介なものを持ってくる」
商人「特殊なものなんですかコレ?かなり長い鎖ですけど」
鎧少女「対神兵器、神が作りし神を捕らえる戒めの鎖。要は神器だ」
鎧少女「私を封じるために用意してくるとは、迷惑な話だ」
商人「じ、じじじじじ神器!!?この手に取っているのがあの神器!?」
剣士「ほう……初めて見たな」
商人「私だって初めて見たよ!?それもこんな持って間近で見れるなんて……」
鎧少女(お前の異次元ポケットも神器だっての、気づけよ)
773
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 02:49:27.18 ID:2b4/vLPf0
商人「いやぁ、こんなに珍しい事もあるんですねぇ、感動しちゃいますねぇアッハッハ」サッサッ
鎧少女「おいネコババしようとすんな、私が回収するに決まってんだろ」
商人「ネコババなんて酷い言い方しますねぇ、私はただ落ちてた鎖を拾っただけですよ、ゴミ拾いゴミ拾い」
鎧少女「ゴミならいらないだろう、早く渡せ」
商人「だーっはっはっは!神器は私のもんだ!これで一攫千金目指して億万長者だああ!!」ダダダ
鎧少女「捕らえろ」
槍「ギャース」ガスッ
商人「おが!?」ステン
剣士「お前たち楽しそうだな」
774
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 02:55:46.56 ID:2b4/vLPf0
鎧少女「紹介しよう。私の得物、血槍イー・ザンだ。逸話はさっき話した通りだ、しいて言えば生きている」
槍「ゴゲッガガガッ」
商人「うわキモい」
剣士「普段は魔法で姿を変えているといったところか……ところで、大臣とやらはどうなった?」
鎧少女「奴なら腕一本喰らって黙らせた。ヘリの墜落からは守ってやったから、あとはウチの旦那待ちだな」
商人「えと……どこにいるんでしょう?」
鎧少女「どこって、そこらへんに埋まってるだろ?お前の鼻で探せ」
商人「こう焦げ臭いと探せるものも探せませんよ……おんや?」
775
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 03:01:49.05 ID:2b4/vLPf0
商人「かなりの血の匂い……だんだん遠ざかってる?」
鎧少女「ッ!しまった逃げられた!?まだそんな気力があったか!」
商人「おい!ここで逃がすとかアンタお茶目すぎるだろ!?チクショウまた走るのかよ!」ダダダ
剣士「お前はどうするんだ?」
鎧少女「さっきの鎖は神に対して毒も含んでいる、しばらくまともに動けん……頼めるか?」
剣士「言われなくても。林檎一人を行かせる訳にはいかんだろう」
鎧少女「フフッ、そうだな」
剣士「ふん」ダダダ
仮面男「やぁ、満足気だね」
鎧少女「雑魚相手に不覚を取ったんだ、満足どころか不満足だよ」
776
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 03:10:18.12 ID:2b4/vLPf0
仮面男「彼女たちを見てどこか楽しそうだったよ?……一人は私の知らない子だったけど」
鎧少女「楽しそうなのは気のせいだろう……捕まえる口実は考えてきたか?」
仮面男「……捕まえてから考える」
鎧少女「だからお前は王として三流以下とかよく言われるんだよ。私なら経済的にも社会的にもどんな手を使っても屠るぞ」
仮面男「私達の仲間が必死に資料とかをまとめてくれているよ。折角だし、だから後からみんなで考えよう」
鎧少女「まったく……」
仮面男「……それ以前に、まずは私の妻をこんな目に合わせた報いを受けてもらうがな……」
鎧少女「あの二人、すぐに追わなくてもいいのか?」
仮面男「私たちとは別に彼女たちを隠れて付けている者がいるみたいだ」
仮面男「敵意は無いみたいだが、こちらのと接触は控えようとしてる。だから少しずらして追うよ」
――――――
―――
―
777
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 03:16:59.02 ID:2b4/vLPf0
黒髪少女「あちらはこっちの事に気が付いてくれたみたいですね」
金髪少女「わざわざ譲ってもらってなんか悪い気もするけれど……」
黒髪少女「ですが、どうやらお邪魔なのは私たちの方みたいですね。あの娘たちの安全だけ確認したら引きましょうか」
金髪少女「ここまで目をかけるとは、随分お人よしなんだな?」
黒髪少女「若き少年少女を見捨てる理由はどこにありますか」
金髪少女「建前。本音は?」
黒髪少女「見てて面白い。これにつきます」
金髪少女「性格悪いね」
黒髪少女「ええ、私は悪魔ですから」
剣士「視線を感じる」
商人「え?なんだって?」
剣士「なんでもない、まだか?」
商人「後ちょっとの距離……見つけた!」
778
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 03:23:51.66 ID:2b4/vLPf0
大臣「私は死なん、こんなところで死なん……この国のが栄光をつかむには私無しでは成しえない……」
商人「うわ、ホントに片腕もげてる……病的なまでになんかブツブツ言ってるし」
剣士「このまま行くと街の中央広場に出る、人ごみの混乱に乗じて見失ったら厄介だ」
商人「ではここで決着と行きましょう!思ったら私たちあの人と特に因縁めいたものとか無いですけど!」
剣士「弱いもの虐めは趣味ではないのだが……斬り伏せる!」
商人「オイお前どれだけ私の事虐めてたと思ってんだ?」
779
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 03:33:39.37 ID:2b4/vLPf0
剣士「待て、そこのジジイ」ザッ
大臣「……私は忙しいんだ、退け下民が」
剣士「特に個人的な恨みは無いが、お前の命を貰いに来た……覚悟ッ!」
商人「おい待て命は貰わんでいい!」
大臣「有象無象がッ!私に逆らうか!」ギュイン
剣士「魔法!?抜かったか!」
大臣「滅却せよ!消し炭になれ!!」
剣士「氷の壁よ!」ピキン
商人「どわぁ!?水蒸気で前がみえねぇ!?」
780
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 03:40:42.47 ID:2b4/vLPf0
剣士「……今の煙で逃げられたな」
商人「まだです!あそこ!」
大臣「余計な手間をッ!!」ダダダ
剣士「あれだけの大怪我でよく動けるものだ、なんという精神力だ」
商人「感心している場合じゃないでしょう、接近しても魔法で防がれるし」
剣士「遠距離から魔法を放っても防がれるだろうしな。もっと物理的なをぶつけたいが……何か都合のいい道具は無いのか?」
剣士「こう、物を投げたら絶対に当たる百発百中君とか」
商人「ありますよ?よく知ってますね?」
剣士「本当にあるのかよ」
781
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 03:46:40.32 ID:2b4/vLPf0
商人「今は手持ちに無いですけどね……室内用花火のロケット花火じゃまず間違いなく防がれるでしょうし」
剣士「ん?そういえばここは……」
商人「魔導都市記念モニュメント……」
商人「そうだ!アレ使いましょう!」
剣士「アレ?あの歪な物体か」
商人「そうです!私にいい考えがあります!」
商人「アイツがあのモニュメントの横を通るときに思いっきり魔法をぶち込んでやるんです!」
商人「斬姫on今のあなたの魔法ならあの絶対防御に定評のあるモニュメントを破壊できるはずです(ヒビ入ってるけど)」
剣士「瓦礫の下敷きにすると言うわけか」
782
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 03:50:14.21 ID:2b4/vLPf0
剣士「だがアレは私がいくら斬りつけても壊れなかったんだぞ?そう上手くいくか?」
商人「大丈夫!自分を信じろ!今なら出来るやれば出来る絶対出来る!(あのヒビ割れを狙えば)」
剣士「……いや、無理そうだな」
商人「何だよ!?もっと熱くなれよ!?」
剣士「奴はあの物体と別方向に進もうとしている」
大臣「」スタスタ
商人「誘導するんだよぉおおお!撃て撃て撃て!」
剣士「注文が多い奴だ」バシュンバシュン
大臣「チッ、しつこい!」バッ
783
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 03:58:00.19 ID:2b4/vLPf0
剣士「誘導は出来た、次は?」
商人「魔力全乗せでモニュメントにデカいの一発ぶち込めぇええ!!」
剣士「……氷の結晶、一つとなりてその姿を現せ!!」ガキンッ
大臣「ひ、氷山だとッ!?」
商人「デカッ!?いくらなんでもデカい!?正直舐めてた!!」
剣士「押しつぶせ!」
大臣「炎神舞え!我が敵を塵とせよ!」ブワッ
剣士「真正面からぶつかる気か!?」
大臣「溶かし尽くせえッ!!」
剣士「侮っていた……奴は手練れの魔法使いだ」
商人「あとちょっとなのに!」
784
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 04:03:31.46 ID:2b4/vLPf0
大臣「ぐぅッ!」
剣士「負傷している相手に負けてられるか!!押し殺せ!!」
商人「だから殺すなって!」
大臣「限界か……!」
ズンッ!
剣士「やったか!?」
商人「それフラグ!!」
大臣「……ふ、ふふ……どうやらこの都市が私を救ったみたいだな」
商人「モニュメントに激突して……大臣には当たらなかった……」
ビシッ
剣士「林檎……言われた通り、ぶつけてやった……ぞ」ドサッ
商人「あ、おい!?どうした!?」
剣士「正真正銘魔力全乗せだ……もう立てん」
785
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 04:08:43.35 ID:2b4/vLPf0
ビシビシッ
大臣「私の作った都市なんだ……私の作り上げてきた地位なんだ!こんなところで失ってたまるか!」
商人「見届けさせてもらいましたよ」
大臣「……一人獣人が残ったか。ふんッ、獣の相手をしている暇などない。命が惜しくば去れ!」
商人「満身創痍の身で何言ってんですか」
大臣「お前のような何も知らない奴に私の邪魔をさせるものか……」
商人「分かりたくもねぇよンなもん」
商人「人の命弄びやがって、何が国だ地位だ!」
大臣「ハッ!小娘がいっちょ前にこの私に説教か?」
786
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 04:16:58.43 ID:2b4/vLPf0
商人「私にゃアンタの思想なんて知ったことじゃねぇよ!」
ビシッビシッ
商人「ただ自分の身可愛さに自国民まで巻き込んで挙句自分はその場から逃げるだぁ?ふっざけんな!」
大臣「命の重さがあるだろう!私はこの国に必要な人材だ!」
商人「アンタのような人の痛みも知らないバカは誰も必要となんてしてないよ!」
大臣「国という形を知らない典型的で頭の悪い言い方だな!綺麗事で政治が成り立つか!」
商人「それで結構!私はそんなもの知りたくないですからね!」
大臣「ならば口を継ぐめ!!目を逸らせ!!力の無い物は何も聞くな!!」
商人「典型的なエゴイストでしたか……ですが、巻き込まれた人たちへの報いは受けてもらいます」
大臣「お前に何ができる!」
ビシビシビシッ
787
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 04:23:20.30 ID:2b4/vLPf0
商人「ちょっとだけ、ちょっとだけでも私でも魔力が練れたりするんだ……ちょっとだけでも」
大臣「やってみろ……無力な獣が!」
商人「この街は、あなたの作った街です」
商人「でも、あなた自らがこの街を裏切ったんです」ガンッ
大臣「モニュメントを殴った……?何を……」
ビシビシビシッ
ビキッ
大臣「何ィ!?魔防壁!クソッ消耗して魔力が……!?」
商人「この街は……決してあなたを守ったりしませんッ!」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ
――――――
―――
―
788
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 04:31:39.45 ID:2b4/vLPf0
商人「……あっ」
仮面男「これは……驚いたな」
商人「もう……遅いですよ。私、今日どれだけ走ってたと思うんですか?」
仮面男「こんな青空の下で眠ってるなんて、よっぽど疲れてたんだね」
商人「瓦礫の下に……」
仮面男「ああ、今引きずり出している」
「あーいたいた、これでよく生きてるなぁ」
「何だっていいさ、とりあえず口を割らせよう」
商人「リザードマンとエルフ……?あの人たちは?」
仮面男「私の仲間だ、今回の件で色々と動いてもらっていた……リザード兵君は後で鉄拳制裁の対象だが」
商人「?」
789
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 04:39:24.69 ID:2b4/vLPf0
リザード兵「おら、目ェ覚ませ」グキッ
大臣「うっ……」
エルフ「ウチの大将が直々にアンタと話がしたいんだって、光栄だね」ドサッ
仮面男「……」
大臣「やはり裏で糸を引いていたのはお前だったか……」
仮面男「無力で無様で……滑稽だな?」
大臣「フッ……お前を突き動かすのはお前の妻の一大事だけということか」
仮面男「口を慎めゲスが」ガッ
大臣「フフ……頭を踏みつけて楽しいかい?魔王様?」
仮面男「いくら私を煽ったところで無駄だ、人の皮を被った化け物め」
商人(アンタ煽られてド頭踏みつけてますやん)
790
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 04:47:24.81 ID:2b4/vLPf0
大臣「化け物?それはあなたの事ではないのでは?」
仮面男「……悪いが、私はもう魔王を引退した身だ。化け物と呼ばれる筋合いはない」
大臣「ああ、失礼。今は勇者を名乗っているんでしたね?これはお笑いだ」
仮面男「ああ、お笑いだな。だが、私は大真面目だ」
大臣「で、勇者様は私に何をしようというのでしょうか?まさか私をその手で裁こうなどというのですか?」
仮面男「……」
大臣「……たかが冒険者風情がッ!!平民上がりの王がッ!!この私を裁く?笑わせるな!!」
大臣「私がどれだけ苦労してこの地位を手に入れたと思っている!?何も労せずすべてを手に入れた貴様には到底理解できまい!!」
大臣「私こそがこの国を守っている!!この国を思っている!!軍事に加担して領土を増やそうとすることが何故いけない!?」
大臣「私こそが絶対だ!!こんな勇者気取りの遊び人が私を裁くだと!?バカにするなクソッ垂れ共が!!」
791
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 05:00:23.87 ID:2b4/vLPf0
仮面男「裁くのは私ではない、この国の法だ」
大臣「っ!?」
仮面男「国王にはすでに話は通してある、貴族たちも悠々としていたそうだ」
仮面男「お前はやりすぎた、ただそれだけだ……」
大臣「あ……あぁ……」
仮面男「誰もお前の味方をする者はいない」
仮面男「誰も、お前を必要となどしていない」
大臣「バカな……なぜだ、私は何のために今まで……」
仮面男「……権力を振りかざしていただけで、お前は味方を作らなかったみたいだな」
仮面男(……裁けないなら裁けないで、私が直接手を下していただろうがな)
792
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 05:04:38.71 ID:2b4/vLPf0
仮面男「二酸化珪素……」
大臣「?」
仮面男「アルミ・マグネシウム・カルシウム・鉄」
大臣「……何が言いたい、気でも触れたか……」
仮面男「粉状魔鋼・魔粒子・蒼鉄鋼・直接砕いた適当な魔導核」
仮面男「……お前の研究とやらに使われていた核の原材料だ」
仮面男「魔導核を除けばどれも簡単に手に入るようなものばかりだ……いや、ほとんど石ころと考えてもらってもいいだろう」
大臣「……」
仮面男「何やら自身の研究に絶対的な自信を持っていたようだが、この石の生成方法……どこで手に入れた?」
大臣「……全てを失った今となってはどうでもいい」
仮面男「そうか……身柄を引き渡す、連れて行け」
リザード兵「あいよー」
エルフ「自分で歩きな、私たちはそこまで面倒は見ないよ」
大臣「……」
793
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 05:17:12.24 ID:2b4/vLPf0
商人「あの……」
仮面男「……答えられる範囲で答えておくよ」
商人「まだ何も言ってないんですけど」
商人「前、女神様が"私たちの撒いた種"って言ってたのが気になって……どういう事なんですか?」
仮面男「過去に私の国でも大規模な人工魔導核の研究を行っていたんだ」
仮面男「今でこそ一般に普及しているが、昔はそうでもなかった。自然に生成される大変貴重なものは手に入れるのも一苦労」
仮面男「まして調べるまで効果が分からないと来た。そこで本物の魔導核を砕き分け、ほかの物質で補い量産を図ろうとしたんだ」
商人「一般的に売っているのはそれと魔法使いが作れるものですね」
仮面男「ああ、そうだ。だが、そこで問題が起きたんだ」
商人「問題?」
仮面男「ああ、まだペーパープランだったその計画書と内容が外部に持ち出されてね……」
仮面男「後に、考えは同じだがもっと効率的な方法を取ったものを採用することになるんだが。まぁこれは別として……」
794
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 05:22:50.72 ID:2b4/vLPf0
仮面男「そもそも魔導核の量産の技術を持っているのはウチの国だけ、なのに連中はそれが出来た。不完全な形で」
商人「あの大臣が持ち出した……と?」
仮面男「いや、奴はその技術を買ったんだろうね」
仮面男「外部に漏らした者を捕らえても、高値で売ったとしか言わなかったから発見出来なかったんだ」
仮面男「不完全な技術だったために形にするには相当な時間と労力を必要としただろう」
仮面男「その間に私の国では量産に成功していたから売り出すことは出来なかったみたいだが……」
仮面男「だが不完全なものは所詮完成させても不完全。碌に機能しないガラクタに成り果てただろう」
795
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 05:28:04.16 ID:2b4/vLPf0
仮面男「それで、改悪に改悪を重ねて完成したのがあの狂化の核だ」
仮面男「魔導核は体に埋め込んだところで人体に効果は現れない、アレは不良品もいいところだ」
仮面男「効果も不揃い、強度も純度もダメダメダメ……人から盗んだ偽物の技術じゃ、一生かかっても成功しなかっただろうね」
仮面男「国のためだと何だと言い訳にして、自分の技術に絶対的な自信を持っていた奴だからこそ、後に引けなくなったんだろう」
商人「……それじゃあ、犠牲になった人たちが……」
仮面男「不憫かい?」
商人「……あんな奴のエゴに付き合わされて、それじゃああんまりですよ」
796
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 05:32:18.54 ID:2b4/vLPf0
仮面男「大本を辿れば私に非があるようなものだ、責任は取る」
商人「それはっ……違うんじゃないですか?」
仮面男「違わないよ。自分の……戦争するための資金繰りをしていたんだ」
仮面男「結局、その技術はこんな形で使われてしまった。そういうわけだ」
仮面男「……責任の取り方は、残った人たちや動物たちを保護して元に戻すための研究をしてやることしかできないけど……」
仮面男「総力を尽くすつもりだ、それしか私には出来ない……」
商人「……」
797
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 05:38:45.96 ID:2b4/vLPf0
――――――
―――
―
初めは物を売りに来ただけだった魔導都市
こんな大きな事に巻き込まれるなんて思ってもいませんでした
国とか政治とかは私にはよくわかりません
私はただの旅商人、通りすがりの行商人
この国とは一切無縁のこの私が、いったい何をやってんだか
危険なことに足を突っ込み、毎日走りまわされて
それでも後悔していません
だって……
798
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 05:43:33.18 ID:2b4/vLPf0
商人「うっひゃひゃひゃひゃ、売れる売れる!飛ぶように売れる!」
竜少女「お主は……」
商人「ハイ!この街を救った救世主!林檎ちゃんとはこの私だいっ!買ってけ買ってけ!」
剣士「……私はいつまで売り子を続ければいい」
商人「あ?何言ってんだ?一生に決まってんだろ?体で斬姫の代金を払いきるにはそれくらいの時間がかかるんだよ!あ、いらっしゃいませ!」
騎士「コイツ、ちょっと調子に乗りすぎじゃないか?」
竜少女「まったく、新聞の一面を飾ってからずっとコレじゃからのう」
いやぁ涎が出るほど商売うまく行ってますからねぇ、事件万々歳ですよHAHAHA
805
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 23:38:11.31 ID:2b4/vLPf0
……その後の事、ちょっとだけ語りましょうか
まずは女神様と仮面の元魔王現勇者さん
仮面男「私たちか?事後処理があるからしばらく滞在しなくては行けなくなったな」
鎧少女「ホントはパーティ終わってからとっととここを発つつもりだったんだが……誤算が色々とあったからな」
リザード兵「本来早く片付くハズだった大臣の暴挙が予定より遅れましたからね……仕方ないですよ」
仮面男「お前たちのせいだお前たちの!!」ドカッバキッボコッ
リザード兵「ヘブッ!?何すんだ糞魔王が!?刺すぞ!?」
仮面男「やってみろ糞トカゲッ!!」
商人「……なんか白熱してますね」
鎧少女「パーティに呼ばれていたのは本当は私たちの息子とアイツ、それにそこのエルフと今ここにはいないが側近が」
鎧少女「後はこいつらの選んだ適当な人材を連れてくるつもりだったんだが……」
エルフ「申し訳ありません……私は都合が悪く遠征に行っていたものですから」
鎧少女「お前については側近から聞いているからわかっている、問題は息子とそこのバカだ」
リザード兵「ぎゃぁああ――――――――」チーン
仮面男「魔王って言うな!!お前が私に勝てるワケないだろ」
商人「……仮面の人、容赦ないですね」
鎧少女「旧知の仲だからな」
806
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 23:43:21.42 ID:2b4/vLPf0
鎧少女「ま、パーティの報告を聞いた後に逃げるように遠征に行ったのは不味かったな」
エルフ「もっとマシな言い訳出来たハズなんですけどね……本当は勇者さんと魔王様たちに会いたくなったんじゃないですか?」
鎧少女「だったらまぁ……嬉しいんだけどな、あと私の事を魔王っていうな!」
エルフ「あっごめんなさい!昔の癖で……」
商人「女神様が魔王……?」
鎧少女「気にするな、こっちの話だ」
何やら私が触れなくてもいいことが盛り沢山のようだ
でも、彼らとの挨拶で一番驚いたのが……
807
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 23:47:15.82 ID:2b4/vLPf0
剣士「おい林檎、今日の売り上げの勘定終わったぞ」
商人「おお、早いですねぇ。ちょっと教えただけですぐに飲み込むのは流石です!」
剣士「好きでやっている訳ではないのだが……」
仮面男「彼女は?」
剣士「ッ!」
仮面男「……?どうしたんだい、血相変えて?」
商人「あぁ、あなたは顔を合わせるのは初めてでしたね、この方は……」
剣士「魔王……!」
仮面男「……私を知っているのか?」
808
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/04(日) 23:54:17.31 ID:2b4/vLPf0
商人「え?あれ?知り合い?」
剣士「ずっと……貴方を探していた」
商人「"貴方"だぁ!?頭おかしくなったか!?まさか計算ばっかりさせてたから知恵熱が……!?」
剣士「黙れ」
商人「はい」
剣士「私を、覚えていませんか?アートという集落で貴方が攻め込んで来た軍を倒したことを……!」
仮面男「すまない、襲われた集落の巡回はかなり多くこなしている……覚えていないな」
剣士「あ……そう……か……」
私の手駒、剣士メリアが仮面の人と知り合いだったこと(一方的だったが)
後で聞いた話だが、彼女は直接彼と話した訳ではなく遠くから見ていただけだったとのこと
そりゃ覚えられてないわ
でも、とても悲しそうな顔をしていたのは胸が痛かった。私のメリアに何してんだこの腐れ勇者
809
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 00:02:05.45 ID:al36JfzF0
次は怪人さんもとい、……役職名なんだっけ?
怪人男「異次元魔王ですよぉ!」
商人「ちょっと、モノローグに突っ込みはやめてください」
怪人男「まったく、今回の事件での私の扱いの悪さと言ったら酷いにも程があります!」プスンカ
商人「いやぁ、あなたがヘマとかしなきゃもっと円滑に事が運んだんじゃないんですかねぇ?」
怪人男「あなたがイレギュラー過ぎたんですよ!?あなたが下手に行動起こして尻拭いしたの私ですからね!?」
商人「はいはい結果論結果論」
怪人男「もう……いいですけど!」
こんなナヨナヨした人だが、一国の王で運送会社の社長だ
もっと媚び売ってパイプでも作っときゃよかったか……
怪人男「モノローグとか言ってますけど丸聞こえですよ」
ちなみに、後から聞いた話だが。既婚者らしく年頃の娘さんがいるらしい
心配だからとっとと国に帰るんだとか
最近近所に住む勇者にたぶらかされてるとも言ってましたね……頑張れお父さん!
810
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 00:09:09.92 ID:al36JfzF0
お次は最も世話になったであろう竜のお二方
この人たちは……女神様にも言えるけど胸張って言える!うん、大好き!
竜少女「その唐突な告白はやめんか」
商人「トキメキました?」
騎士「まさか」
商人「お二人はラヴラヴな夫婦生活送ってるんですもんねぇ~一人モンは邪魔ですかそうですか」
騎士「……コイツが悪いんだが一応弁明しておくが、俺たちは結婚してねぇ」
商人「何ですと!?散々妻だの夫だの言ってたじゃないですか!?」
竜少女「女神共を見てたらどうしてもワシもその気になってしまってのぅ……まったく、いつ本当の夫婦になれることやら……」チラッ
騎士「……」
商人(あー、ひょっとしてそのための指輪か……)
驚くべきことに結婚してないと来た
811
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 00:15:45.90 ID:al36JfzF0
商人「お二方はもう魔導都市を出るんですよね?」
騎士「ああ、このまま西へ向かう」
商人「何か用事があるんですか?」
竜少女「古の竜を研究しておる施設があるみたいじゃ、それの様子見といったところかの?」
騎士「……俺もこいつも、竜ではあるが竜の事をあまり知らないんだ。だから俺たちに必要な情報があるかもしれんから」
竜少女「それを探しに行くという訳じゃ!」
商人「そっか……ここでお別れなんですね」
竜少女「案ずるな、ひょっとしたらまた会えるかもしれん」
竜少女「そこいらの道端か、はたまた地の果てか、あるいは別世界か……ともかく」
竜少女「ワシらはズッ友じゃぞ☆」
商人「……」ダキッ
竜少女「うお!?突然なんじゃ!?」
812
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 00:22:09.14 ID:al36JfzF0
商人「もちろん、ずっと友達ですよ」
竜少女「うー……」ウルウル
騎士「これ以上は名残惜しくなっちまうぞ?……林檎、ありがとな」
竜少女「お礼を言わなきゃいけないのは私ですよ、ありがとうございました」
竜少女「うわぁ~ん!嫌じゃあ~!せっかく出来た友達と離れたくないのじゃあ~!!」
商人「はいはい、リンゴ飴あげるから泣き止んでください」ナデナデ
竜少女「うん!」ニパー
商人(可愛いなぁ)
二人はそのまま西側のゲートを潜り去って行った
後姿を眺めながら、いつか「私は竜と友達だ!」なんて言って地元のみんなに彼女たち二人を紹介してみたいと思った
……でも、私が彼女と再開することは二度となかった
813
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 00:25:54.08 ID:al36JfzF0
黒髪さん達青空カフェ御一行は……
実はあの事件以来姿を見ていない
女将さん曰く、代金だけ置いて立ち去って行ったとのことだ。残念
剣士「……だが、あの眼帯のやつはしっかり仕事をしていったようだな」
商人「おおー、やっぱりいつみても立派に直しましたね」
剣士「元は付いてなかった装飾まで施してある。余計なことを……」
商人「まぁあなたからしてみれば不満でしょうねぇ」
814
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 00:31:43.76 ID:al36JfzF0
剣士「ああ、だが……」
剣士「治って帰ってきたんだ、私の心が」
商人「それじゃあ武器は二つもいらないですよね?斬姫はもう用済みって事で」
剣士「バカを言うな、アレの力を完全に引き出せるのは私だけだ。売り物に戻すのは許さんぞ」
商人「分かってますよ、斬姫はあなたに貸出中ですから。ほかの誰にも渡しません」
剣士「ああ……すまない、お前の居場所は私の所ではないな」
商人「そっちを売りにでも出すんですか?」
剣士「もっと有意義な使い方を思いついただけだ」
815
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 00:37:07.47 ID:al36JfzF0
そして、私たちは……
――――――
―――
―
「3番ホーム下り、列車が通過します」
少年「うー……ねーちゃん達もう行っちゃうのかよ」
商人「私は旅の商人ですよ?一か所に長く滞在はしませんよ」
母「何から何まですみませんでした……」
商人「別にいいですよ、私はやりたいことやって言いたいこと言って過ごしただけですから」
剣士「その過程でたまたまそこの小僧を更正させたと?」
商人「更正させたかどうかは知りませんが、しっかり言い聞かせたのは女将さんですよ。ね?」
母「ええ、言ってもなかなか理解してくれなかったので一晩よく語りました。拳で」
少年「マックノーウチッマックノーウチッ」
商人「見事なデンプシーロールでしたね」
816
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 00:41:35.70 ID:al36JfzF0
少年「ねーちゃん、今だから言うけど。俺、ねーちゃんの事……好きなんだ!」
商人「いや、言わんでも知ってたから」
剣士「自分でも鈍感だとわかる私でも理解してたからな」
少年「ほげぇ」
商人「おっと、これ以上立ち話してたら乗り遅れちまいますね」
母「どうかお気をつけて」
商人「ええ、そちらも。いつまでも仲睦まじい親子でいてください」
剣士「小僧、道を間違えるなよ。お前は賢い、色々なことに挑戦していけ」
少年「俺と3歳しか違わないおねーさんに言われても……」
817
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 00:47:13.88 ID:al36JfzF0
「列車が発車します」
ガタンガタンガタン
母「お元気で!」
少年「俺!大きくなったらねーちゃんの事嫁に貰いに行くからなーーー!!」タッタッタ
商人「ばっかやろー!私は高いぞーーー!」
剣士「小僧!お前は筋は悪くない!ゆっくりでいい、これからも鍛錬を続けて行け!」
少年「……うん!」
剣士「餞別だ!私の剣、私のルーツ……受け取れ!」ポイッ
少年「うげあ!?」ガンッ
商人「オイ列車走ってあっちも走ってるのにそんな重いもん投げつけるバカがいるか!?」
剣士「それくらいは持てるようになれ!」
少年「」グッ!!
母「」ペコッ
818
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 00:55:56.08 ID:al36JfzF0
ガタンガタンガタン
商人「よかったんですか?あの子に渡しちゃって」
剣士「傍には常に見咎めてくれる親がいるんだ、無茶はしないだろう」
剣士「過去のしがらみも消えた……それに、私もお前のように誰かに何かを与えてやりたかったんだ」
剣士「……林檎、お前の言った通りだったな」
商人「何がですか?」
剣士「いつか与えることを教えてくれる者に出会える……お前自身だったとはな」
商人「あー、そんなこと言いましたっけ?」
剣士「言った。お前は端々で自分の発言を忘れるな」
商人「ノリと勢いで生きてますからねぇ」
819
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 01:02:08.26 ID:al36JfzF0
剣士「ところで、私はお前についてきてもよかったのか?」
商人「斬姫の事が一番大きいですけど、何より私を守ってくれる護衛がちょうど欲しかったので」
剣士「今までよく無事に一人で旅なんて出来たな」
商人「そりゃアンタにブーメランしたいセリフだよ」
商人「ま、一人でいるよりも誰かといた方がずっと楽しいですけど」
山田「俺を忘れちゃいけないよ林檎ちゃ~ん!」
商人「うお!?山田さん!?笛吹いてないぞ!?」
山田「あーうん、この子が謝って吹いちゃったらしいんだ」チョイチョイ
子ウサギ「ウッキュウ!」
剣士「!?」
商人「ウサギって……コイツ私の手に噛みついた奴じゃねーか!?女神様に回収されたんじゃなかったのか!?」
山田「その前にずっと君にしがみついてたみたいだよ?その後はその大きなリュックの中で食いつないでたみたいだけど」
商人「最近なぜか弁当が消えると思ってたらそういう事だったか」
剣士「気づけよ」
820
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 01:06:53.70 ID:al36JfzF0
商人「う~む……あの人たちの国なら次の駅から行けないとこ無いですから、当人たちは居ないけど事情を話して預けに行くべきか……」
子ウサギ「ウッキュウウッキュウ」ウルウル
商人「そんな目で見るなッ!人数増えると何かと食費がかさむんだよ!」
剣士「一匹増えても変わらんだろう、その分私が働く。だから連れて行ってやれ」
商人「……しょうがないですねぇ。こいつ変身とかしないよな?」
子ウサギ「ウッキュウ?」
山田「その時はメリアちゃんが何とかしてくれるよね?」
剣士「私の名をお前みたいな汚らわしい糞犬獣人が呼ぶな」ブンッ
山田「ほあああああああああああ」
商人「や、山田さーん!!」
821
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 01:10:38.06 ID:al36JfzF0
商人「ま、そのうち復活するから放置でいいでしょう」
剣士「使い捨て放題のデコイか、今にして思えばいいアイテムだな」
山田(酷い)
商人「さて、お弁当でも食べましょうか。ちゃんと二人分作ってきたんですよ、ほらこの通り……」カラッ
子ウサギ「ゲプッ」
剣士「」ガクガクガクガク
子ウサギ「!?!?!?!」
商人「怖い!?食の執念が!!無表情でウサギを揺さぶり続けている!!」
822
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 01:15:36.71 ID:al36JfzF0
剣士「早速コイツを開きにして食ってみようと思う」
子ウサギ「ウギュウ!?」
商人「連れて行くって言ったのあなたですよ!落ち着いてください!」
「卵焼きー、もやし炒めー、物凄く美味しい絶品な頬が落ちること間違いなしの最高級パスタいりませんかー?」
商人「ほら、売り子さん回ってきた事ですし、お金は私が出しますから。あ、もちろんお小遣いから引きますけど」
剣士「構わんが……異常なパスタ押しだな」
商人「すみませーん!なんかくださーい!」
823
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 01:20:58.43 ID:al36JfzF0
男性「はいはーい……お、可愛い御嬢さんたちだな」
女性「……アレ?あなた」
商人「ん?どこかでお会いしました?」
女性「パーティに参加してましたよね?魔導都市の」
商人「ええ、してましたけど」
女性「ああやっぱり、チラッと見ただけですけどね。私たち、そこで料理作ってたんですよ」
商人「へぇ、あの並んでた料理の数々はあなた達が作ってたんですか」
男性「卵焼きともやし炒めとパスタだけだけどな」
商人「何だよそのチョイス」
824
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 01:25:46.39 ID:al36JfzF0
商人「ってかそれしか売ってないんですね」
女性「作り置きですからね、朝一番に作った出来立てホヤホヤのものばかりですよ」
商人「今昼だよ!?それ作り立てって言わないよね!?」
男性「何かの縁だ、コレはタダでやるよ」
剣士「そうか、悪いな」ガツガツ
商人「おい待て!タダより怖いものは無いぞ……て言う前に食べてるから遅いよね、ハハ」
女性「お金には拘ってないんですけどね」
男性「困ったときは親父から絞るからな!」
女性「クズが」
商人「んー、なんか逆に気味が悪いですねぇ……貰いっぱなしもアレなんで私はコレあげます」ヒョイ
男性「お、リンゴ飴か」
女性「珍しいですね」
825
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 01:28:37.86 ID:al36JfzF0
男性「しかも美味い!」
女性「勇者さん!新しいお料理に使えませんか!?」
男性「創作意欲が湧いてきた!!席に戻って色々と考えるぞ!」ダダダ
女性「はい!」ダダダ
商人「……なんなんでしょう一体」
剣士「……」ガツガツガツ
商人「どうしました?」
剣士「これはイランな」ポイー
商人「窓の外にパスタを捨てた!?」
剣士「アレは食ってはいけない気がする、だから捨てた」
商人「さいですか」
826
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 01:34:06.12 ID:al36JfzF0
――――――
―――
―
ガタンガタン
商人「……」
子ウサギ「キュー」クカー
剣士「う……ん……」スースー
商人「滅茶苦茶な日常でしたね、ホント……でも」
黒髪少女「でも、楽しかったですか?」
商人「滅多打ちにされてた方が多かった気もしますが、充実もしてましたね」
商人「……怖いですから現れるにしてもワンクッション置いてください」
黒髪少女「フフッ、それは失礼しました」
827
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 01:38:09.28 ID:al36JfzF0
剣士「……」スースー
眼帯少女「……寝てれば可愛い」ツンツン
金髪少女「だからといって下手に頬をつついてると噛まれるかもしれませんよ?」
剣士「んぐぅ」ガチン!!
金髪少女「ほら……」
眼帯少女「……あ、危なかった……」
商人「まさかまた無賃乗車とかじゃないでしょうね?」
黒髪少女「二度も馬鹿な真似はしませんよ……それより、一つ謝らせてください」
商人「何かありましたか?」
黒髪少女「いえ、大臣が最後に魔物たちを放ったことについてです」
828
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 01:47:29.10 ID:al36JfzF0
商人「……あなた方、何をどこまで知ってるんですか?」
黒髪少女「あなたの持ってる情報全部+αですね」
黒髪少女「……冒険者ギルドの上層部に私の知り合いがいるんですが」
黒髪少女「あろうことか、誰かさんが今回起きていることすべてをその人にリークしてしまいまして」
眼帯少女「……」
黒髪少女「あ ろ う こ と か 私 に 内 緒 で リ ー ク し て し ま い ま し て」
眼帯少女「……ごめんなさい」
商人「ちょこちょこ作戦会議中に顔だしてたのはそのためだったんですかあなた……」
黒髪少女「冒険者ギルドは国境を越えて大きな権力を持っています」
黒髪少女「おそらく、あなた達の計画の便乗して期を図って告発……焦った大臣がこのような狂気に走ったんでしょう」
商人「……ですが最終的には大臣は失脚して国に裁かれます。経緯はどうあれ、いつああいう状況になってもおかしくは無かったですし、あなた方のせいではありません」
黒髪少女「あなたの心遣い、痛み入ります」
829
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 01:55:18.07 ID:al36JfzF0
黒髪少女「……人って不思議ですよね、必死に生きて必死にもがいて。いつか死んで何もなくなってしまうのに」
商人「何言ってんですか?」
黒髪少女「あなたは無駄だとは思いません?」
商人「思いません、私は趣味でやってるところもありますが……そうしないとそもそも野たれ死ぬのが早まるだけですから」
黒髪少女「長く生きていたいのですか?辛いことも沢山あるでしょうに」
商人「それと同じくらい楽しいことだってあります。今日辛くてもまた明日、楽しくなるといいなって希望を持つことも出来ます」
商人「それが毎日ずっと続いていく……ちょっと楽観視してますけど、私は生きてるってそういうことだと思いますよ?」
黒髪少女「フフッ、失礼しました」
830
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 02:03:29.33 ID:al36JfzF0
黒髪少女「それじゃ、そろそろ私たちはお暇しましょうか」
商人「意味深なことだけ聞いといてサラッと終わりかい」
黒髪少女「そうですねぇ……では最後にもう一つ意味深なことを聞きますが」
黒髪少女「商売、好きですか?」
商人「ええ、もちろん。趣味と実益と……大切な出会いと繋がりがありますから!」
黒髪少女「それは重畳。この数日間、あなたにとっていい経験になったみたいですね」
商人「あなた方との出会いももちろん大切ですよ?中々スリリングでしたし」
黒髪少女「あなたみたいな実直な人は好きですよ?」
商人「はいはい、世事はいいですから。私もそろそろ眠くなってきたからもうこの辺で……ふあぁ……」
商人「……また、会えたらいいですね」
眼帯少女「……生きていればまた会える」
金髪少女「おやすみなさい、いずれまた」
黒髪少女「眠いところをご迷惑をおかけしました……それでは」
――――――
―――
―
831
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 02:08:43.95 ID:al36JfzF0
剣士「オイ林檎……」ザックザック
商人「なんですか……話しかけないでください、疲れてるんですから……」ザックザック
子ウサギ「ギュー」ビターン
剣士「なぜ私たちは砂漠のど真ん中を歩いている……」
商人「いやぁ、どこで道を間違えたんでしょうねぇ?」
剣士「……地図、逆さまだぞ」
商人「……」
剣士「……」
832
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 02:15:40.99 ID:al36JfzF0
商人「うがあああ!!水が!水が欲しいいいい!!!」
子ウサギ「ウギュウウウウ!!」
剣士「騒ぐな騒々しい!!大体お前がここらに生息する珍しいサボテンが欲しいとか言い出すからこんなことに……!」
商人「うるせぇ!お前だって加工したら食えるとか言って意気揚々としてたじゃねーか!前よりちょっと頭良くなったからって生意気言いやがって!!」
剣士「……やめよう、腹が減る。そのせいで氷も作れない状態なんだが」
商人「そうですね……体力の無駄遣いです」
商人「あ、そういや『天候変更雨のち雨』ってアイテムがありましたね。強制的に辺り一帯を雨にする画期的な装置が」
剣士「全世界の何割かが救われそうな装置だな」
商人「っつー訳でスイッチオン!!」ブイーン
剣士「……」
商人「……」
剣士「いつ雨が降るんだ?」
商人「……来年ぐらい?」
剣士「貴様ああああああああ!!」ブンブン
商人「だあああ!?斬姫を振り回すな危ない!!」
子ウサギ「ウーキューウー」ビターン
833
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 02:25:21.41 ID:al36JfzF0
自分のやりたいことやって生きてきた私だが、どうも何かを振り回し振り回される
それが私の人生のようだ
商人「ぎゃああああ!当たったあああ!!」ビターン
剣士「峰討ちだこの畜生!」
いろんなことに首を突っ込んでは巻き込まれ、安全な道を行ったはずが巻き込まれ
売り物売ってレアアイテムを買いあさり、それをぼったくり同然の値段でまた売る
商人「うお!なんか見えるぞ!」
剣士「飯か!?」
子ウサギ「!!」
そんな毎日が、誰かと出会う毎日が、みんなと過ごす毎日が
とっても楽しくて仕方がない、だから商人はやめられない
商人「うひょあああああ!!オアシスだ!砂漠のオアシスだ!!」ダダダダダ
剣士「……まて、アレは蜃気楼では……オイ待て!!」ダダダダダ
どんなピンチに陥ろうとも、おのずと突破していたり
気が付いたらいろんなアイテム手に入れて
それが私、私たち!
商人「ひゃっほーう!!水だぁぁあ!!この土地は私が手に入れた!買いたきゃこの値段の10割増しだああ!!」ドサッ
剣士「気を確かにもて!!それはただの砂だバカ!!」
子ウサギ「ウッキュウ」ヤレヤレ
着物商人「レアなアイテム売ります買います!」 終わり
834
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 02:30:52.62 ID:al36JfzF0
やっと終わった……
モチベーション下がりまくりで1か月放置した挙句逃げること考えてたけどまさかのコメントが付いて嬉しくて継ぎはぎだらけで再開
それでも異様なまでに長くなり数か月かかるというバカっぷり
プロットなしの思いつき投稿なんて二度とやらねぇ
次書くときは絶対に下地だけは作りたい
835
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 02:33:03.51 ID:al36JfzF0
過去作
勇者「定食屋はじめました」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1365500381/
ディアボロ(……ブチャラティのジッパーが!?)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371919184/
もし見てた人がいるなら1か月放置申し訳ありませんでした
最後まで見てくれてありがとうございました
836
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/05(月) 03:06:17.51 ID:xWd6UHNAO
乙
837
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/05(月) 03:11:25.04 ID:Ifn9WyNEo
パーティのパスタ不味いってのはやっぱあの定食屋勇者の仕業だったか
お疲れ様 またどっかで林檎ちゃん達の出番もあるといいな
838
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/05(月) 07:53:57.25 ID:yG0e00vFo
おつ
最初から見てた
次回作期待
839
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/05(月) 08:45:14.30 ID:qYsALYQbo
おつ
次回作はよ
840
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/05(月) 10:38:38.70 ID:7kr1gFzQo
乙
よかった
841
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/05(月) 11:01:14.68 ID:r2PhNO2eo
乙乙
842
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/05(月) 11:53:27.92 ID:X03fE4CDO
おつ
定食屋からずっと見てたよ、会話のテンポがすげぇ好き
お疲れさまでした
843
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/05(月) 12:42:22.42 ID:clUU2YUaP
最近の一番の楽しみだったお疲れ様
贅沢をいうと指輪を渡すシーン見たかったなぁ・・・
844
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/05(月) 12:44:53.57 ID:al36JfzF0
ぶっちゃけると指輪は前振り
騎士と竜少女の話は別で書くつもりだからそっちでいつか
845
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/05(月) 13:58:20.76 ID:XPxhfCOeo
乙
竜の話も見たいが恐らくバッドエンドだよな
846
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/05(月) 14:25:28.07 ID:AwsrN/VDO
乙
そういや竜二匹ともセリフの所々で鬱展開っぽいフラグ立ててたな
847
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/05(月) 16:04:27.88 ID:2Dxz4eOxo
二度と会えなかったってそういう…
848
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/06(火) 00:17:10.03 ID:K2b4CA/eo
鬱は嫌だな~
849
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/06(火) 02:22:31.58 ID:3lBi5Mm00
こっそり答えておくと私のSSは鬱にはなるけど絶対バッドエンドじゃ終わらせない
しゃしゃり出て失礼しました
850
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/06(火) 07:32:33.57 ID:ACR0Ri1ko
>>849
その言葉が聞きたかった
851
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/06(火) 13:32:39.52 ID:3lBi5Mm00
再開
852
名前:
◆cZ/h8axXSU
:2013/08/06(火) 13:33:08.71 ID:3lBi5Mm00
違う
間違えたこっちじゃねぇ
853
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/06(火) 13:42:16.34 ID:Lry083uDO
ワロタww
854
名前:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2013/08/06(火) 15:12:22.12 ID:yH2TT86AO
再開ならぬ、再会への布石となったか