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幼鬼「オニはそとっ♪」



幼鬼「オニはそとっ♪」



1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 20:53:40.06 ID:J+qmb34A0
幼鬼「ういっす」
男「おっす……まて、誰だおまえ」

幼鬼「おさないおにと書いて、幼鬼と申します。はじめまして」ペコリ
男「これはご丁寧に。俺は男と言います」

幼鬼「それでは、さっそくテレビを……」ポチリ
男「おう、ゆっくりくつろいでくれ……待て待て」

幼鬼「もう、なに?」
男「名前は良い。なんでおまえが家にいるんだ?」



元スレ
幼鬼「オニはそとっ♪」




4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 20:55:24.20 ID:J+qmb34A0
幼鬼「それはもちろん……」
男「もちろん?」

幼鬼「居心地良さそうだったから」

男「ふむ、そう言われて悪い気持ちはしないが、基準はなんだ?」

幼鬼「このバレンタインデーの差し迫った冬の日に、ひとりさみしくテレビで時間を潰す独り者の若い男って点で……」

男「うむ、メチャクチャむかつくな。出てけ」


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 20:57:59.67 ID:J+qmb34A0
幼鬼「そ、それは節分だから?」キラキラ

男「うわっ! なに目を輝かせてんだよ!」

幼鬼「そ、それはもちろん、鬼にとって節分で追い出されるなんて、鬼のあこがれのイベント3巨頭ですから」

男「ほう、他のイベントは?」

幼鬼「桃太郞に斬られる役と、地獄の罰を与える鬼です」

男「なるほど……ってあぶねえ!」


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 20:59:45.22 ID:J+qmb34A0
幼鬼「なにがあぶないんですか?」

男「うっかり話し込んじまうところだったじゃねえか、恐ろしい子!」

幼鬼「わーい。ほめられた」

男「ほめてないからね、怖いって言ったんだからね」

幼鬼「鬼に怖いなんて、普通の女の子にかわいいって言うようなもんですよ」

男「へえ、そうなのか……って、また普通に話すなぁ……」


7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:01:30.54 ID:J+qmb34A0
男「もういいや、おれもこたつに入るわ。ちょっと失礼」

幼鬼「はいどうぞ」

男「ここはおれの部屋なんだが……まあいい。おまえはおれの部屋が居心地良さそうだから来たって言ってたな?」

幼鬼「はい、その通りです」

男「そんなら、いつもはなにやってんだ?」

幼鬼「いつもですか? 地獄の底で刑の執行をしています」


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:04:00.80 ID:J+qmb34A0
男「刑の執行? つまり、地獄の鬼ってワケか?」

幼鬼「はい。そー言う意味では花形の職業です。えっへん」

男「って言うと、針の山とか血の池地獄とか?」

幼鬼「その通りです。爪はがしたり、目玉をくりぬいたりは日常茶飯事です」

男「それで、きょうはどういったご用件なんでしょうか?」ガクガクブルブル

幼鬼「おや? 急に敬語ですね」


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:06:45.18 ID:J+qmb34A0
幼鬼「簡単に言えば、休暇の旅行です」

男「休暇? 地獄にも休みはあるんですか?」

幼鬼「基本、月月火水木金金なんですが、盆暮れ正月をはじめ、大きなお祭りの時はお休みになります。今日の節分とか」

男「へぇ……それで、なんでわざわざ……えーと、なんつーか……」

幼鬼「現世に来たかですか?」

男「そう、その通り」

幼鬼「単なる暇つぶしです」


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:08:43.10 ID:J+qmb34A0
男「ひ、暇つぶし?」

幼鬼「はい。単に地獄のお家でゴロゴロしていてもつまらないんで、現世に遊びに来る鬼はけっこう多いんですよ」

男「そうなのか」

幼鬼「人気なのが、幼稚園や老人ホームに行って、鬼の役をすることですね」

男「鬼の役って……まんま鬼じゃねえか」

幼鬼「まあ、そうなんですけどね」


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:12:03.91 ID:J+qmb34A0
幼鬼「幼稚園では、大きな体格の男の鬼が人気あります。豆まきの後に一緒に遊んだり」

男「ほう」

幼鬼「老人ホームだと、大きな鬼よりも大人の女性くらいの鬼が人気ありますね」

男「へえ……それなら、あんたも幼稚園とか老人ホームに行けばいいじゃないか」

幼鬼「……この外見ですよ? 幼稚園に行けば子供たちにもみくちゃにされ、老人ホームに行けば豆ではなく、歓迎お菓子の雨あられです」

男「幼稚園はたしかにきつそうだけど、老人ホームなら良いんじゃないか? 可愛がってもらえるんだろ?」

幼鬼「可愛がられるなんて、鬼の沽券に関わります」

男「だからウチに来たと」

幼鬼「そういうことです」


13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:14:34.39 ID:J+qmb34A0
男「もったいないな、かわいいのに」

幼鬼「うぐ……それは人間の女の子にブスって言うのと同じくらい、ストレートな悪口ですよ?」

男「わ、ごめんごめん……で? おれはなにすりゃいいんだ?」

幼鬼「おかまいなく……あ、ミカン一個いいですか?」

男「おう……食え食え。しかしなあ……」

幼鬼「なんですか? みかんおいしー」


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:17:41.45 ID:J+qmb34A0
男「せっかく鬼がいるんだし、追い出すわけじゃないけど、豆まきのまねごとくらいはしたいよな」

幼鬼「ほう……豆まきをしていただけると?」

男「嬉しそうじゃねえか」

幼鬼「べっ……べつに嬉しいわけじゃ……」

男「そうと決まれば、ちょっくら買い出しに行ってくる」

幼鬼「あ、わたしも……」

男「虎縞ビキニの女の子なんて連れて歩けるかよ……待ってろ」

ガチャ……バタン

幼鬼「行っちゃった……くふふ、豆まき! やったぁ!」ジタバタ


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:19:59.72 ID:J+qmb34A0
しばらくして

男「ただいまー。豆と太巻き買ってきたぞ」

幼鬼「お、お帰りなさい! 豆まきにする? 太巻きにする? それとも、わ・た・し?」

男「とりあえず豆まきに……って、テンション高くねえか?」

幼鬼「そっ、そんなこと、ありますん……くふふっ!」

男「うわぁ……顔まっ赤だぞ……とりあえず……」

幼鬼「ぬ……来るかっ!?」

男「おにはーそと!」ぽいぽいっ

幼鬼「きゃああああ!」


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:21:34.66 ID:J+qmb34A0
男「ふくはーうち!」ぽいぽいっ

幼鬼「ひいいぃぃ!」

男「おにはーそと! ふくはーうち」ぽいぽいぽいっ!

幼鬼「きゃひいいい! ……ってなんじゃこりゃあああ!」

男「え? ピーナッツだけど?」

幼鬼「WHY? なぜに? どうして? 落花生!?」


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:24:05.23 ID:J+qmb34A0
男「いや、落ちても食えるし」

幼鬼「いやいや、豆まきの豆は、そとにまいて放置が基本でしょ?」

男「いやいやいや、北海道じゃ投げた後回収して食うんだよ」

幼鬼「なにそれいやしい」

男「い、いやしいだと!? 開拓者精神! 道産子舐めんなあああ!」びしびしびしっ!

幼鬼「いたた、投げないで、ピーナッツ、ジミに痛いから」


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:26:30.82 ID:J+qmb34A0
男「どうだこの攻撃力! 大豆よりも良いじゃないか」

幼鬼「呪術的な威力じゃ無くて、物理的ダメージじゃない……こんなので追い払われたくないぃ……」

男「ふふふ、豆まきの次は……コイツだっ!」

幼鬼「……」

男「今年の恵方は北北西! さあ、だまったままがぶっとどうぞ!」

幼鬼「……いや、これって」


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:28:28.99 ID:J+qmb34A0
男「ロールケーキだが?」

幼鬼「コレを? コレを鬼のわたしに食えってか!?」

男「ああ、女の子だし、甘い方がいいかと思って」

幼鬼「くうぅ……好きなだけに腹の底から怒れない……むしろ嬉しいと思う自分が許せません」

男「さあ、がぶっと!」

幼鬼「ええい! ままよ!」かぷっ

男「……」もぐもぐ

幼鬼「……」もぐもぐ


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:30:19.07 ID:J+qmb34A0
男(けっこう量があるなぁ……)もぐもぐ

幼鬼(甘ったるくなってきた……お茶が欲しい)もぐもぐ

男(しかし、なぜに無言で食わなくちゃいけないんだ?)もぐもぐ

幼鬼(こんな関西のバカ行事……儲かるからってコンビニが広めやがって……)もぐもぐ

………………
…………
……


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:31:27.41 ID:AsTKd5Mq0
酒呑童子「おーいどこだー?幼鬼?」
茨木童子「どこにいったのー?幼鬼ちゃーん?」
幼鬼 「あっ!!ニーちゃんとねーちゃんだ!!」



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:33:00.62 ID:J+qmb34A0
……
…………
………………

男「ううふ。たいらげた!」

幼鬼「自分をほめてやりたい……でも、けっこうおいしかった」

男「だろ? ちょっと離れてるけど、ちゃんとしたケーキ屋さんのロールケーキなんだ」

幼鬼「へぇ……」

男「おととしあたりから、節分にロールケーキを丸かじりって宣伝しててさ、思い切って買ってみました」

幼鬼「そのバカなケーキ屋のせいか! ……うっぷ」


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:37:49.08 ID:J+qmb34A0
男「まあ、おちついて……お茶をどーぞ」

幼鬼「かたじけない……ずずず」

男「はあ、冬の寒い日にはしぶーいお茶に限りますな」

幼鬼「いやいや、まったくですな。甘味もほどよくひいて……ずずず」

男「とりあえず、節分のことは全部やったかな?」

幼鬼「うーん、贅沢言うなら、まだあるんですが……」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:39:43.97 ID:J+qmb34A0
男「ほう、他にも?」

幼鬼「ええ。焼いたイワシの頭をヒイラギの枝に刺して、家の入り口に飾るんです」

男「え、なにそれ。モズの早贄ですか?」

幼鬼「見た目はそうかもしれませんね。一種の魔除けですし」

男「イワシの頭ねえ……あ」

幼鬼「どうしました?」


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:43:46.59 ID:J+qmb34A0
男「そういやきのう、サンマを食ったわ……ちょっと待ってろ」

幼鬼「はぁ、サンマですか」

男「ええと……ゴミ箱の中に……あったあった」

幼鬼「……」

男「これを、ベランダから手が伸びる、なんだかよくわからん木の枝に刺して……っと」

幼鬼「……」

男「ほら、できたぞ」

幼鬼「そ、それ、近づけないでください!」


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:48:59.62 ID:J+qmb34A0
男「ええ、なんでだよ?」

サンマの頭「……」ぷ〜ん

幼鬼「とにかく! こっちに来ないでくださいっ!」

男「ほう、魔除けってのは本当なんだな」

幼鬼「ちょ、近づけないでください!」

男「すごい効き目だ。ほれほれ」

幼鬼「効き目じゃ無くて! そんな生ゴミ持ってこないでください!」



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:52:05.42 ID:J+qmb34A0
男「な、生ゴミ?」

幼鬼「生ゴミでしょう?」

男「……」
幼鬼「……」

男「たしかに」

幼鬼「とにかく、それは玄関にでもおいてきてくださいよ」

男「わかったよ……ぐっすし」


30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 21:55:52.72 ID:J+qmb34A0
男「おいてきたぜ」

幼鬼「ご苦労様です」

男「ま、これで節分のやることは終わったわけだ」

幼鬼「そうですね……と言いたいところですが」

男「まだなんかあんのかよ?」

幼鬼「これくらいしっかり”節分”しているお宅なんて最近珍しいですから」

男「珍しいから?」

幼鬼「そろそろ来ると思います」


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 22:01:18.92 ID:J+qmb34A0
トントントン

男「ドアが3度ノックされたな」

幼鬼「来たな……」

男「はいはい、いま出ますよ〜」

幼鬼「……」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 22:05:19.12 ID:J+qmb34A0
ガチャ……

男「はい、どちらさんで」

???「あなたに幸せを届けに参りました」

男「あ、そういうの結構ですんで」

バタン

???「ちょ、ちょっと待ってください! 幸せですよ、幸福ですよ〜」

ドンドン


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 22:08:13.69 ID:J+qmb34A0
男「ただいま。あーこたつあったけえ」

幼鬼「誰でしたか?」

男「なんかわかんねえけど、メチャクチャ縁起のいいカッコした女の子だった」

幼鬼「入れてあげればいいのに」

男「やだよ、宗教はカンベン」

幼鬼「でも、福の神ですよ?」

男「そうか……えええ? 福の神!?」

幼鬼「まだ玄関にいるんじゃありませんか?」

男「ちょっと行ってくる」


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 22:10:01.80 ID:J+qmb34A0
ガチャ……

男「あれ? いない」

福の神「寒いよ、おなか減ったよ……」プルプル

男「おお、居た居た。さあ、中にどうぞ」

福の神「え、いいんですか?」

男「もちろんだ」



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 22:23:09.40 ID:J+qmb34A0
男「と、いうわけで、福の神を連れ込んだんだが……」

福の神「……」むっすし

男「おい幼鬼。なんでコイツ、こんなに機嫌が悪いんだよ?」

幼鬼「さーてね」

福の神「しらじらしい! 薄汚い鬼め!」

男「こら」ポカッ

福の神「うぐっ!?」

男「そんなこと言うなよ」

福の神「あ、あんたも、わたしを誰だと思って!」


43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 22:33:19.01 ID:J+qmb34A0
男「福の神だろ?」

福の神「それなら、相応の扱いってもんがあるでしょ!? さもないと!」

男「さもないと……か。まあいいや」

幼鬼「ねー」

福の神「く、くくっ! 幼鬼! どーしてあんたがここに居るのっ!」

幼鬼「べつにいいじゃん」

福の神「良くない! 福の神たるわたしが来たのに、鬼が居るなんて沽券に関わる!」


44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 22:37:18.67 ID:J+qmb34A0
男「おまえらって、本当に沽券にこだわるのな」

福の神「当たり前です! 招かれたからにはちゃんとその人を幸せにしなければ……」

幼鬼「一応わたしも、取り憑いた人を不幸にしないとね」

男「ふーん、そうか。ロールケーキで腹ふくれちゃったけど、晩飯は焼き魚でいい?」

幼鬼「おう! むしろ大歓迎!」

福の神「ちょっと、男さん、わたしの話を!」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 22:47:03.14 ID:J+qmb34A0
台所。

男「はじめちょろちょろなかぱっぱ♪」

幼鬼「ちょっと、やめろって!」
福の神「いいえやめません! 今年こそはどっちが上か思い知らせて」

ガチャン……ドタバタ

男「居間から騒がしい声が聞こえるなあ……魚焼いてと」

幼鬼「くそ……そっちがその気なら……」
福の神「ひあっ!? ど、どこさわってますの?」

男「こーいうエロい声が聞こえたときは、思い過ごしってパターン多いよな。味噌汁、おひたし、OK!」

幼鬼「ほらほら、もっといい声で鳴いてよ」
福の神「ひあああっ!? らめえええ……」


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 22:52:17.30 ID:J+qmb34A0
男「ごはんできたぞ……って、なにやってんの!」

幼鬼「やあ、ちょっとしつけをね」

福の神「ふぇ……えふぅ……」ピクピク

男「う……わぁ……部屋中にぶちまけやがって……とにかく風呂入ってこい」

幼鬼「はーい……ほら福の神、行くよ」

福の神「は……はい、お姉さま」///

男「ったく……まずは掃除だな」


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 22:59:10.73 ID:J+qmb34A0
ごしごし……

男「うわぁカーペットがビシャビシャだ……」

福の神「お、お姉さま、もうお許しになって」
幼鬼「くふふ、強がっちゃって、毎年わたしに会いたくて探し回ってるくせに」

男「風呂場からも声が聞こえるな……ったく、なんて鬼と福の神だ」

福の神「ふああ……だめです」
幼鬼「どこがダメなの? 言ってごらん……ほれほれ」

男「はぁ……厄日だ」


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 23:09:32.17 ID:J+qmb34A0
男「さて、だいたい片付いたな」

幼鬼「おとこー」
福の神「お風呂、いただきました」

男「おう、さっそく飯に……って、服を着ろ!」

幼鬼「くふ、迷惑かけたおわびにさぁ……」ぴとっ
福の神「おわびをしようとお姉さまが……」しなり

男「へ……ええええっ!?」

幼鬼「禍福はあざなえる縄のごとし、わたしたち、食べてみない?」
福の神「すこしくらいなら、いたくしてもいいですよ?」

男「……」ぽかっ

幼鬼「きゃうっ!?」

男「……」ぱこっ

福の神「ひうっ!?」


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 23:15:34.99 ID:J+qmb34A0
男「魚焼いたって言っただろ! 冷めちまうから早く食え!」

幼鬼「く……われらの誘惑を退けるとは……」
福の神「やりますね。男さん」

男「貧乳はひとにあらず」

幼鬼「えーそんなー」
福の神「好きでこんな身体なんじゃありません!」

男「だまれ幼児体型」

幼鬼「体型だけじゃないよー」
福の神「中身もです。肉体的にも精神的にも」

男「なお悪いわ」


54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 23:19:37.15 ID:J+qmb34A0
幼鬼「いただきまーす」
福の神「いただきます」

男「ああ、召し上がれ」

幼鬼「お?」
福の神「あら?」

男「どうだ?」

幼鬼「これは意外に……」
福の神「おいしい……です」

男「そっかそうか! それなら、とっておき……」

どんっ!

幼鬼「おおお! 越乃寒梅!」
福の神「神への供え物として、清酒とは……やりますね」

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 23:28:57.45 ID:J+qmb34A0
男「燗してあるからな……まずは一献」

幼鬼「おっとっと、わ、いい香り」
福の神「わたしも、わたしもっ!」

男「はいはい……どうぞ」

幼鬼「ん……んむ……んまい!」
福の神「ほんと、美味しい……良いお酒♡」

男「ツマミもまだまだあるからな」

幼鬼「うーん……こんなに良くしてもらうと、悪いなあ」
福の神「そうですね、せっかくです。何か願いはありませんか?」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 23:34:57.10 ID:J+qmb34A0
男「願い? そうだなあ……」

幼鬼「どきどき」
福の神「わくわく」

男「口で言うなよ。願いは、特にないなあ」

幼鬼「えー、ないのー」
福の神「なんでも良いんですよ?」

男「そうだなあ、こんなかわいい子たちと晩飯食えて、これ以上頼んだら罰が当たりそうだけど……」

幼鬼「むっ! カワイイだってぇ……」
福の神「お姉さま、悪口じゃありませんから」

男「ま、無病息災、家内安全ってトコロかな」

幼鬼「……」
福の神「……」


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 23:43:38.47 ID:J+qmb34A0
男「あ、あれ? なんかヤっちゃったか?」

幼鬼「うむ! ますます気に入った!」
福の神「その願い、きちんと叶えましょう」

男「お? おう、よろしく頼みます。はい、もう一献」

幼鬼「おっとと……はぁ、おいしい」
福の神「おつまみもお酒も……しあわせです」



そんなこんなで、男と少女の神たちはひと晩楽しく酒を酌み交わした。

翌朝男が目覚めるとすでに2柱の姿は無かったが、それからというもの、男とその家族は風邪ひとつひかなかったという。

おしまい


63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/03(金) 23:52:48.11 ID:BgdTKYZv0
おつおつ


66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]投稿日:2012/02/04(土) 00:10:38.02 ID:Vn0YOjle0
え?柊の枝でお豆さんを貫くお話は?


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]投稿日:2012/02/04(土) 00:11:18.33 ID:EMigWaOz0
大人向けの絵本とかで売れそう。乙でした
.
[ 2012/02/20 22:23 ] 和風系SS | TB(0) | CM(0)
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