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男「い、許嫁が…出来ただと…!?」3/3


男「い、許嫁が…出来ただと…!?」


男「い、許嫁が…出来ただと…!?」




225 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]投稿日:2009/01/20(火) 00:53:11.25 ID:ADsta5U0
パー速なので、ゆっくり投下します
娘がデレ過ぎたようなのと、方向修正です


男「さて、夕飯の支度しなくちゃ…」

娘「…な、何で……あの場に居たんですか?」

男「え?」

娘「ついて来てたんですか? す、ストーカーですか?」

男「…ストーカーじゃねえよ……。あんな時間に帰ってもやる事が何もないから、お前が本屋から出てくるのを待ってたら…」

娘「ほ、ほら! やっぱりストーカーじゃないですか!!」

男「…助けてあげたってのに…何だよ、その言い分は…! 俺が助けてなかったら、今頃どうなってたか…」

娘「余計なお世話です! あんなの、私一人で十分だったんです!」

男「嘘吐け」

娘「ほ、本当です! あんなの、私の護身用スタンガンで……!」

男「はぁ……そうかいそうかい、すみませんでしたねぇ…」

娘「………」


 


元スレ
男「い、許嫁が…出来ただと…!?」
パー速VIP@VIP Service掲示板




233 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]投稿日:2009/01/20(火) 01:10:21.03 ID:ADsta5U0
娘「…これは何ですか?」

男「鯵の開き」

娘「鯵の…開き?」

男(そんぐらい知っとけよ)

娘「…どうやって食べるんですか?」ギチ…ギチ…

男「箸で、こうやっt

娘「ひゃあっ! ゆ、指が…生臭いです!!」

男「……」


娘「…生臭いのは嫌ですが、意外と美味しいですね」

男「……そうか」

娘「でも、食べづらいので今後絶対食べたくないです」

男(……)



 
238 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]投稿日:2009/01/20(火) 01:34:10.22 ID:ADsta5U0
男「風呂、沸いてるからな」

娘「あ、はい! ……の、覗かないでくださいね…?」

男「誰がするか…」

娘「…そう口では反論しますが…ほ、本当は覗きたいんですよね?」

男「……さっさと入れ」

男(お前を相手にすると疲れる…)

娘「…つまんないです…」

ガラガラ…ピシャッ

男(さて、皿洗って…テレビでも見るかな…)

娘(…甘え方がよくわからないです…)


239 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]投稿日:2009/01/20(火) 02:04:33.86 ID:ADsta5U0
娘「はぁ…。いいお湯でした…」

男「お、上がったのか…。…今日も肩揉むのか?」

娘「え? ……え、エッチな事考えてます…?」

男「考えてないから」

娘「…そうですか。じゃあ、髪乾かしたらお願いします」

男「はいはい…」


モミ…モミ…

娘「はぁ…気持ちいいですぅ…」

男「…そうか」

男(これから毎日、肩揉みしなきゃいけないのか…?)



 
357 名前:娘病女照[]投稿日:2009/01/28(水) 01:49:04.75 ID:PX4M8cI0
男「はい、肩揉み終わり」

娘「……はあ…どうもありがとうございました…」

男(今初めてありがとうって言われた気がする…)

娘「じゃ、私は寝ますので。おやすみなさい」

男「…おやすみ」

娘「…ぜ、絶対部屋に入ったり一緒に寝たりしないで下さいね!?」

男「誰がするか…!」イラッ

娘「……軽く傷付きます…」

ガチャ…バタンッ!

男(……2000万、かぁ…。それさえ無ければ、あんな恩知らずとはお別れ出来るのに…!)

男「…今から頑張ってみるか? いや、でも…」


娘(つまらないです…。やっぱり男さんは、女心を分かってないんです…)

娘(でも………格好良かったです…)


360 名前: ◆WV4Wkh3leM[]投稿日:2009/01/28(水) 02:09:58.28 ID:PX4M8cI0
酉変えた


ピピピッピピピッ…

娘「……んぅ…?」

娘(…もう朝ですか…)

ガチャ…

娘「おはようございます…」

男「あぁ、おはよう」

娘「…今日の朝ご飯は何ですか?」

男「ベーコンエッグと味噌汁とご飯」

娘「そうですか…。顔を洗ってきます…」

男(……)

男「…なぁ」

娘「はい?」

男「…給料がたk……いや、何でもない…」

娘「……へ?」

男「…」

娘「??」



 
365 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]投稿日:2009/01/28(水) 02:27:15.29 ID:PX4M8cI0
男「いただきます」

娘「…い、いただきます…」

男(…こいつなら、給料の良い会社くらいは知ってるとは思うんだけどな…)ジー…

娘「…なかなか美味しい…で………す?」

男(今から大手に目指すとしたら、もう死ぬ気で勉強して良い大学入らないと無理だろうしな…)ジー…

娘(…お、男さんからの熱い視線…! これは…まさか……!)

男(……死ぬ気でべんky

バチーン!

男「…づっ!? お前、何しやg

娘「だ、ダメですからね…! あ、ああ…朝から、そんな……!」

男「…はぁ?」

娘「……ふ、不潔ですっ!」プイッ

男(何なんだよ、こいつ…)



 
367 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]投稿日:2009/01/28(水) 02:49:19.85 ID:PX4M8cI0
娘「さ、行きましょうか」

男「…派手な服だな」

娘「そうですか?」

男「派手だよ…」

娘「別に派手でも似合えば良いじゃないですか。さ、行きましょう?」

男(もう少し目立たないように出来ないのか? そんなの着てたら、またどっかに連れてかれるぞ…)


女子1「娘さん、おはよー!」

娘「おはようございます」

友「おぉ、服可愛いね!」

娘「ありがとうございます」

女「…」

男「女、おはよう」

女「あ…おはよ……」

男(心なしか、痩せてる気が…)


 
409 名前:書いたの全部消えた[]投稿日:2009/02/03(火) 00:44:16.44 ID:LbM2W6s0
男「ち、ちゃんと朝ご飯食べた?」

女「…うん、ちょっとだけ…」

男「ちょっとって…朝ご飯はちゃんと食べないと…」

女「食欲、無くて…」

男「……」

女「…あ、そうだ…。今日のお昼に一緒に食べようと思って、プリン作って来たの…」

男「! …女、ごめん…。今日は一緒に食べれなくなった…」

女「……そ、そっか…」

男「ごめん…」

女「…ううん、別に謝らなくても…あたしは大丈夫だから…」

男「……」


 
412 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]投稿日:2009/02/03(火) 01:08:55.26 ID:LbM2W6s0



女子1「で、どうだったの? 例の作戦は!」

娘「多分…上手くいってると思います」

女子1「ホントに!? 良かったじゃない!」

娘「そ、それより…上手くいき過ぎてしまったのか、今朝男さんに襲われそうに…」

女子1「そりゃ、襲いたくもなるよねぇ…娘さん、こんなに可愛いし…!」

娘「…そ、そうですか…」

女子1「来る者は拒まず、よ! もしまた襲ってきたらちゃんと…」

娘(…)



 
414 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[]投稿日:2009/02/03(火) 01:20:37.53 ID:LbM2W6s0
男「…いいこと思いついた」

女「…?」

男「いっそのこと、女とあいつと三人で弁当食べたらいいんじゃないか?」

女「…」

男「……ダメかな?」

女「…ううん、あたしはその方が良いよ…。でも、娘さんが許してくれるかなって…」

男「俺から何とか言っとくからさ…」

娘(…二人を見てると…イライラします…)

女子1「でね? 彼が……ねぇ、聞いてる!?」

娘「えっ!? あ、は、はい…」

娘(…不思議と、腹が立ってきます)



 
541 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/15(日) 20:13:13.18 ID:UkiEEADO
男「い、許嫁だと?」

父「ああ」

男「ちょ、マジ?そんな時代じゃねーだろ」

父「何度か話したとは思うが、この家は古くからこの辺を治めていた家系で(ry」

男「知ってる知ってる、その話はいい」

父「うちを本家として、幾つか分家があってな」

男「親戚とは違うの?」

父「まぁそんな感じだ」

男「じゃあ会ったことある?」

父「親戚として、は無いな」

男「?」

父「分家は近隣にある。つまり、そこの娘とは学校で顔を合わせたこともあるだろう」

男「うへぇ……で、誰?名前は?」

父「しきたりによってまだ言えん。お前が18になる日……つまり明日会うことになってる」

男「え……突然すぎ」

父「不都合か?」

男「幼馴染が祝ってくれるって」

父「……付き合っとるのか?」

男「一応」




543 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/15(日) 20:31:34.59 ID:UkiEEADO
男「――ということらしい」

幼「許嫁……」

男「馬鹿馬鹿しいだろ?」

幼「でも、男の家って伝統ありそうっていうか曰く付きっていうか」

男「霊は出ねーよ?」

幼「そうじゃなくて!っていうか出そうだし!」

男「まぁな……こんな巨大な和風屋敷じゃ仕方ないわな」


幼「じゃあ、今日どうする?私、行っちゃいけないの?」

男「……いいんじゃね?」

幼「いいの?」

男「うん」

幼「まだ付き合っててもいいの?」

男「……多分」

幼「なんでそんな曖昧なの」

男「だってさぁ、そんなの俺の自由じゃね?」

幼「でも会うんでしょ?」

男「周りが仕組んだことだし……」

幼「いいよ、今日は誕生日パーティー中止で」

男「え?」

幼「男の家のことに、私は口出せない。男が選んだ答えなら、私は受け入れる」

男「幼……」


 
547 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/15(日) 20:46:40.05 ID:UkiEEADO
男「そんな余裕見せられると逆に不安になるわ」

幼「何が?」

男「平然と別れられるのかな、って」

幼「そんな訳ないじゃん!何年の付き合いだと思ってんの」

男「ごめんごめん」

幼「これでも頑張ってるんだから」

男「頑張りすぎは良くないぞ」

幼「登校中に泣けないもん。学校着いたらトイレで泣く」

男「いや、泣くなよ……」

幼「で、相手はどんな子?」

男「(ケロッとしてるじゃねーか)……それが教えてくれねぇ。候補が二人いるとしか」

幼「二人!?」

男「うん……その、幾つかの分家に若い娘が二人いるらしくて」

幼「それなんてギャルゲ?」

男「知らん。しかし向こうは16歳になった時に知らされたんだとか」

幼「あー、結婚できる年に、ってこと?」

男「だな」

幼「同じ学校にいるんだよね」

男「らしいな」

幼「……私、何かの権力で消されたりしない?」

男「うちはそんないかがわしい家系じゃないと思うが」


548 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/15(日) 20:56:07.03 ID:UkiEEADO
男「じゃ、また後でな」

幼「ん」

男「おいおい、覇気がねーぞ」

幼「うるさいっ」

男(あー、行っちゃった)


男友「おっす」

男「おう」

男友「朝から喧嘩か?」

男「違うって」

男友「それより!今日帰りに遊びに行かね?」

男「今日は無理だな」

男友「幼も一緒にさ」

男「そういう問題じゃなくてな……(許嫁と会うとか言えねぇ)」





 
553 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/15(日) 21:52:31.44 ID:UkiEEADO
男「むぅ……」


男(いつもと同じ教室の風景なのに落ち着かねぇ)


男(俺だけ知らねぇって、もどかしいな……あ、あいつ今こっち見た)


男(あのビッチは勘弁してほしいな……あの豚も)


男(しかし約二年も……誰も接触してこなかったよなぁ。それもしきたりなのかなぁ)


男(まぁ、ずっと幼と付き合ってたからだろうけど)


女友「ボーッとして、どうした?」

男「んっ?あ、いや……」

女友「今日誕生日だったな。おめでとう」

男「ありがと……よく知ってたな」

女友「友人の誕生日や血液型くらいは把握してる」

男「そか……(まさか、なぁ)」

女友「随分と物欲しそうな目だな」

男「そんなつもりじゃないよ」

女友「せっかくだ、これをあげよう」

男「……何?いいの?」

女友「委員会の仕事の時に食べようと思っていたクッキーだ」

男「悪いからいいよ。気持ちだけで」

女友「いいんだ。作りすぎたし」

男「(ラッピングしてあるんだが)じゃあ頂くよ。ありがとう」

女友「気にするな」


554 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/15(日) 22:06:51.20 ID:UkiEEADO
――昼休み

男「幼~?飯食おーぜ」

幼「食欲無い」

男「(やっぱり気にしてんのか)じゃあお前の分も俺が食う」

幼「なんでそんなに普通でいられるの?」

男「普通でもないけどな」

幼「男こそ……本当は私じゃなくてもいいとか」

男「思ってねぇよ」

幼「……」

男「変わらない自信があるから、だな。今夜会合が終わったら幼の家行く」

幼「え……」

男「祝ってもらう約束だからな。毎年恒例なんだからな」

幼「男……」


男(違うクラスに来ても視線を感じる……気のせいだろうけど)


男(こんなの続いたらノイローゼになるわ)




555 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/15(日) 22:33:33.36 ID:UkiEEADO
男「ふぅ、やっと授業終わりか」

男「ん?メール?幼か……」

幼【先に帰るね。ごめん(絵文字)】

男「……ったく」


男(今夜は可愛がってやらなければなりませんな)

男友「なんだその顔、キモいぞ」

男「ぬ……失敬な」

ギャル男「男も誘っただろ?」

男友「ああダメだって」

男「あ?ああ、悪いな。何だったの?」

ギャル男「行かねーの?向こうにも言っちゃったのにー」

男「誰によ?」

男友「ニー女の奴ら」


男「お前ら……合コンに誘うなよ。しかも幼まで」

男友「合コンじゃねぇよ。同じ中学だった奴らと久々に会うだけ」

ギャル男「幼だって知ってる女ばかりだしー」

男「む……(しかし6時には帰らなきゃだし)悪いな、今日はダメなんだ」


男友「じゃあまた今度な」

ギャル男「お前に会いたがってる女もいるんだけどなー」

男「それじゃ余計行きづらいわ。じゃあな」

男友「おう、またな」


557 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/15(日) 22:47:06.38 ID:UkiEEADO
新聞部「男くんっ!」

男「んあ?」

新聞部「ちょっと待って」

男「……何?」

新聞部「あ、お時間大丈夫?」

男「少しなら」

新聞部「えっと……あの」

男「……眼鏡変えた?」

新聞部「え?あ、うん」

男「で、何?」

新聞部「今ね、部活を引退した方々にコメントを頂いてるの」

男「なんだ……」

新聞部「ということで、地区予選一回戦で呆気なく敗退して引退した元バスケ部員から後輩に向けてメッセージをどうぞ」

男「もう少し言い方を学ぼうな」

新聞部「わざとだよ」

男「じゃあ、“諦めたらそこで試合終了だよ”で」

新聞部「はい、あなたで5人目。そのコメント」

男「マジか」





558 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/15(日) 23:17:37.64 ID:UkiEEADO
男「やっと解放された……早く帰ろ」

後輩「せんぱーいっ」

男「んあ?」

後輩「たまには部活見にきてくださいよぅ」

男「俺が教えられることなんて無いし」

後輩「先輩方がいなくなった途端、みんな気ままにやり始めちゃって」

男「楽しければいいんじゃね?」

後輩「そんなこと言わないでくださいよぅ。下手でも一生懸命やるのがカッコいいんじゃないですかぁ」

男(どいつもこいつも……)

男「あれ?お前今帰り?マネージャーだろ?」

後輩「今日は大事な用があるんです」

男「へぇ……(まさか)」

後輩「あ、誕生日おめでとうございますっ」

男「お、おう、よく知ってr(え……こいつなの?)」

後輩「えへへ」

男(まんざらでもない……って、どうせフェイクに決まって)


後輩「今日プレゼント持って伺いますからね」


男「えっ……」

後輩「聞いてますよね?……あの話」

男「え……マジで?」

後輩「もう一人いても……幼さんがいても私、権利破棄しませんから!」

男「……」

後輩「じゃ、とりあえずお疲れっす!」

男「あ、ああ……(普通に白状しやがった)」

 
561 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/15(日) 23:34:41.86 ID:UkiEEADO
女友「まだ帰らないのか?」

女「ん……ちょっと考え事」

女友「私でいいなら聞くが」

女「……大丈夫」

女友「そうか」

女「ねぇ……自分の将来が決まっているとしたらどう思う?」

女友「む?……運命とかそういう話か?」

女「それとは違うかな……なんて言えばいいんだろ」

女友「よくわからんが、好きなようにやればいいと思うぞ」

女「……」

女友「それが幸せなら受け入れればいいし、そうでないなら反抗してみる」

女「そうだね」


女友「月並みな意見しか出なくてすまない」

女「そんなことないよ」


女友「それなら良かった。ところで……彼氏を待たせてるんじゃないのか?」


女「今日は用があるから一緒に帰れないんだ」

女友「そうか。用があるなら急いだ方がいいだろう」

女「うん……」







 
566 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/16(月) 22:14:40.82 ID:W7.L/6DO
男「紋付き袴とは仰々しいな」

母「一応そういう儀式だからね」

男「なんか落ち着かない」

母「似合ってるよ」

男「(嬉しくないけど……)母さんはどんな気持ちだった?これの時」

母「楽しみだった」

男「ふぅん」

母「そういう時代、そういう家に生まれたから、それが唯一の幸せなんだって……」

男「……」

母「それが私の常識だった。まだ見ぬ主人にいだく感情は恋心しか許されなくて」

男「なんか可哀想だね。別の人生だってあったかもしれないのに」

母「別の人生なんて示されたら、当時の私は悲しむのよ」

男「それって、ほとんど洗脳じゃん」

母「そうかもね。今だって、違う人生なんて考えられない」

男「……」

母「それはそれで幸せよ?」

男「そんなもんなのかねぇ」

母「もちろん、あの人が素晴らしい夫だったからよ」

男「のろけられても」




567 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/16(月) 22:25:45.92 ID:W7.L/6DO
男「今日来る子たちも、そういう教えを受けてきたのかな」

母「程度の差はあるだろうけどね」

男「あんまり現代的じゃないし……どうも想像つかないな」

母「一つ教えようか。候補が複数いた場合……って
複数いるのが普通なんだけど、予め一人に絞るように話し合いが設けられるの」

男「え?じゃあどうして二人来るの?」

母「双方とも、権利を破棄しなかったから」

男「権利……?(後輩が何か言ってたな)」

母「分家の者全員が持つ権利は、昔は親の話し合いや金品による取り引きで一人に集約されてきた」

男「折り合いつかなかったの?」

母「そうみたい。本当は徹底してやらなきゃいけないのに……親が子煩悩な辺りは現代的なのかもね」

男(どうせ資産目当てなんだろうな、親は)

母「だから、どちらを選ぶかは貴方の自由よ」

男「幼を選択肢に入れるのは?」

母「……それは答えられない」




 
569 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/16(月) 22:35:29.01 ID:W7.L/6DO
父「揃ったことだし、始めようか」


男(女の子は和装も悪くないね)

後輩「……」

男(片や、いつも騒がしいのに澄ましちゃってる後輩)


男(片や……)

女「……」

男(同じクラスだけど、ほとんど話したこともない女さん……か)


男(確か、彼氏いたよな?)


父「――では、あとは若い者同士で」


男(見合いか!)


後輩「……ぷはぁっ……肩が凝りましたぁ」

男「俺もだ」

女「……」

後輩「それで、先輩はどうするんですか?」

男「直球だな」

後輩「だってぇ~」

男「俺だって昨日聞いて今日コレな訳で、まだ混乱してんだよ」




 
571 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/16(月) 23:10:40.99 ID:W7.L/6DO
後輩「ああ、そっかぁ。私は一年以上ももどかしい思いしてから」

男「女さんはそれ以上なんだろうけど」

後輩「そうでした。失礼しました」

女「別に……」

男(どうも望んで来たようには見えんな)

女「ところで二人は……知り合いなの?」

後輩「私バスケ部のマネージャーですから!」

男「まぁ、ちょくちょく話す機会はあったかな」

女「知ってて近づいたの?」

後輩「そうですよ?」

男(う~ん……険悪になってきた)

女「男くんが18になって全てを知るまでに
過剰に接触するのは規則違反だよ」

後輩「普通に部員とマネージャーの関係でしたけど」

男(ああ、女さんって素っ気ないイメージだったけどそういうことか?)

後輩「そういえば女さん、彼氏いますよね?」

女「……」

男「だよねぇ。俺もそれを不思議に思ってたんだけど」

後輩「親に言われて嫌々来たんなら、もう帰っていいですよ?」

男「そんな言い方……」

後輩「先輩は嫌じゃないんですか?」




572 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/16(月) 23:26:28.09 ID:W7.L/6DO
後輩「先輩とのこと知ってて他の人と付き合うような浮わついた人ですよ?」

男「だから……その辺は全てが女さんの意思じゃないんだろうし」

後輩「なんでそんなに女さんの肩持つんですかぁ」

女「……」

男「嫌というか不憫に思うよ。……今回のことは気にしなくていいからね」

女「……どういう意味?」

男「だから……今まで通り、彼氏と付き合うなり好きにしなよ」

後輩「先輩……それじゃあ私を選ん……」

男「いや、それも待て」

女「男くんにも彼女がいるもんねぇ」

後輩「む……」

男(煽るな煽るな)


女「一つ、勘違いを訂正させてもらう」

男「……ん?」

女「私は自分の意思でここに来たんだよ」




 
579 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/17(火) 21:50:42.60 ID:8LWqjYDO
男「そうなの?(意外……というか、何考えてんのかわからん)」

後輩「なんですか?今更。そういうことは、ちゃんと別れてから言ってください」

男(まぁ正論か)

女「そうだね……ケジメは付けなきゃね」

後輩「っ……!」

男「……無理してない?」

女「全然」

男「でもさ、ご存知の通り俺にも彼女がいる訳で……
今のところ別れるつもりはないんだけど」

後輩「……」

男「だから女さんも決断を早まるようなことは」

女「それは私の問題。結果がどうであれ、男くんを責めはしないよ」

男「でもきっかけはこの許嫁騒動なんだし、知らんぷりできないよ」

女「じゃあ責任取る?」

男(……なんだこれ、誘導尋問か)


580 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/17(火) 22:09:25.49 ID:8LWqjYDO
男「後輩もな、若いんだからもっとこう、視野を広く、だな」

女「スルーですか」

男「ごめんなさい」

女「まぁ、快諾されるとは思ってないから
いいけどさ」

後輩「私はっ!……私には先輩しかいないんですっ!」

男(これって多分、母さんと同じ精神状態だよな)

男「なぁ、よく考えろ。それは本当にお前の感情か?」

後輩「え?そんなの当たり前じゃ」

男「今答えなくていい。帰ってから考えてみろ」

女「……」

後輩「……はい」

男「じゃ、あんまり遅くならないようにって言ってたし、お開きにしよう」


581 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/17(火) 22:19:48.34 ID:8LWqjYDO
男「はぁ……眠れねぇ」


男「あ、幼のところ行かなきゃ……忘れてた」


男「もう11時過ぎ……いや、約束したんだしな――」


男(静かに静かに……見つかったらヤバい。あれでなかなか厳しいし)


男(脱出成功っ。……ん、メール?幼か?)


男「……女さん?」


女【ちょっと話したいんだけどいい?できたら会いたい。近くの公園にいるから】

男「もういるとか卑怯だろ……せめて返事してから」

男「しょうがねぇなぁ、もうっ」


女「あ、来てくれた」

男「若い娘が一人で夜中に出歩くもんじゃありません」

女「ごめん……眠れる気がしなくて」

男(俺もだけどさ)

女「あ、さっき彼氏と別れたよ」

男「早っ!」

女「別に、好きで付き合ってたんじゃないし」

男「……へぇ?じゃあなんで?」

女「なんで……だろうねぇ」


582 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/17(火) 22:29:57.01 ID:8LWqjYDO
女「後輩ちゃんに問い詰めてたアレだけど」

男「ん?」

女「あれは後輩ちゃんの本心だと思うよ?」

男「そうかなぁ……親が植え付けたもののような」

女「それも含めて後輩ちゃんだから」

男「……ん?」

女「そういう家に生まれて、そういう価値観や常識
許嫁という存在を教えられて……
そうやって後輩ちゃんという人間が出来上がったんだから、それは紛れもない本心なんだよ」

男「いや、まぁそうなんだろうけど……言い方悪いけど、そんな洗脳まがいのことされなければ」

女「洗脳ね……それをしたのは、親じゃなくて後輩ちゃん自身じゃないかな?」

男「どういうこと?」

女「自分にとって特別な人がいると明かされたら、やっぱり意識しちゃうでしょ」

男「ん……そうかもね」

女「多少の使命感も手伝って、気持ちはどんどん加速していく」

男「そう……なのかなぁ」

女「それは多分、普通の恋愛と同じことなのかもしれない」


583 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/17(火) 22:46:15.71 ID:8LWqjYDO
女「自分で惚れるか、第三者に告げられるか……きっかけが違うだけ」

男「……なるほど」

女「宗教とかのめり込む人って滑稽に見えるけど、きっと本人は充実してる。それと同じようなこと」


男「信じるものが欲しいから……?」

女「そうだね」

男(俺は……幼を信頼してる。それは周りから見たら、俺から見た後輩と同じように映ってるのか?)

男「女さんは、彼氏をとまう思ってたの?」

女「……わからない」

男「……」

女「後輩ちゃんは一年以上かけて、もどかしくなるくらいにまで気持ちを暖めた」

男「……うん」

女「私にとっては、この二年は短かったよ」

男「え?」

女「色々考えるには、全然足りなかった」

男「そう……」

女「たまたま告白されたから、ある人と付き合ってみた。でも、私が知りたいことは結局わからなかったよ」

男「知りたいことって?」

女「私は、人を好きになるって感情がわからないから」




594 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/19(木) 18:33:35.79 ID:rRcMXYDO
女「ねぇ、好きになるってどんな気持ち?」

男「どんなって……説明しづらいな」

女「だよねぇ」

男「説明できたとしても、女さんが納得すると思えないし」

女「ごもっとも」

男「今日来たのは、それが知りたかったから?」

女「まぁ……そういうことだね」

男「どうだった?少しは得るものとか……」

女「んー……どうかなぁ」

男「ある訳ないか」

女「私は多分、ずっとわからないと思うんだ。考えようとしてないから……
というか、考えすぎだから……?」

男「でもさぁ、それで俺に会いにくるのも危険な賭けじゃない?」

女「何が?」

男「だって、もし俺に惚れられたりしたら面倒でしょ」

女「男くんには彼女いるし、その可能性は低いと思ってた」

男「面倒ってところは否定しないのか」

女「あはは、少なくとも今の私には否定できない」

男「正直だね……(わりと話し易いかも)」

女「でもね、付き合いを重ねている内に
もしかして私にも後輩ちゃんみたいな気持ちが芽生えるのかと思うと……」

男「……怖い?」

女「半分怖い。もう半分は期待」

男「願望はあるんだ」

女「うん。恋に恋してる」

男「……それ違くね?」


595 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/19(木) 18:49:07.26 ID:rRcMXYDO
女「何はともあれよろしくね」

男「え、あ、ああ」

女「何、その変な返事」

男「その……女さんは、ただ恋心を知りたいんであって
俺に固執する理由は無いんじゃないかと」

女「相手は誰でもいい、って言うと語弊があるけど……
まぁ、せっかくの許嫁だし」

男「それか……
(そこに拘らなければ、俺は振り回されなくて済むのに)」

女「それと、話してて嫌じゃないし」

男「……ん?」

女「前の彼氏より話し易い気がするよ」

男「へぇ……それはそれは」

女「もしかしたら、私の中にも少しはあるのかもね。
……男くんを特別に認識している気持ちが」

男「あるの?」

女「わかんない。あはは」

男(本音なのか……作戦なのか……わからん)



596 名前:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]投稿日:2009/03/19(木) 19:06:00.58 ID:rRcMXYDO
男「じゃ、俺もう行くから」

女「うん。おやすみ」

男「おやすみっ(幼……起きてるよな!?)」


男「一応メールしとくか

今から行くぞっと」


ブブブブブ

男「おっ、起きてるな……って」

幼【こなくていいよ。もう遅いし】

男「なんで……もうすぐ着くのに!」



幼【ちゃんと女さん送ってあげなよ】


男「!?」

男(見たのか……違う、誤解だ……俺はお前が)


幼【もう日付変わっちゃうね。誕生日おめでとう】


男「くそっ……せめて声聞かせろよ!」ピッピッピッピッ

『おかけになった番号は電波の届かないところに(ry』

男「電源切りやがった……くそっ……」



 

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