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文系勇者「一句詠もう」理系戦士「いや、計算が先です」1/2

文系勇者「一句詠もう」理系戦士「いや、計算が先です」


文系勇者「一句詠もう」理系戦士「いや、計算が先です」



1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 19:45:52.01 ID:t6rEEU/h0
<王国城>

旅立ちを前に、国王に謁見する勇者。

国王「では頼んだぞ、勇者よ!」

大臣「必ずや魔王を打ち滅ぼして下さい」

勇者「はい」

勇者「勇者として、この俺が魔王を倒してみせます!」

勇者「ではさっそく、ここで一句詠ませていただきます」サラサラ…

国王「一句?」

勇者『 いざゆかん 打倒魔王の 旅路へと 』

国王(この男、いつも筆と短冊を持ち歩いているのか……?)

国王(なんだか不安になってきたんだが……)


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 19:47:35.70 ID:eokZyTEn0
魔術師は体育会系ですね




元スレ
文系勇者「一句詠もう」理系戦士「いや、計算が先です」




4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 19:50:56.02 ID:t6rEEU/h0
すると──

大臣「クックック……勇者、残念ながらあなたは旅立てませんがね!」バサッ

勇者「!」

国王「! ──だ、大臣!?」

大臣「クックック……私は大臣などではありません」

大臣「必ずや王のもとに現れるであろう勇者を抹殺せよ、と」

大臣「魔王様からおおせつかったスパイ──魔族なのですよ!」ギラッ

大臣「人間に変身し、大臣として業務を果たして十数年!」

大臣「この時を待ち焦がれていました!」

大臣「さあ、死んでもらいましょうか、勇者!」

国王「ワシをだましておったのか、大臣!」

国王「ワシはおぬしを、もっとも信頼できる右腕だと思っておったのに……!」

大臣「だまされる方が悪いのですよ、国王陛下」ニィッ


5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 19:52:50.64 ID:3UGMUMQUO
な、なんだってー


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 19:53:39.01 ID:t6rEEU/h0
勇者「ケンカはそこまでだ。どちらにせよ、お前を倒さなきゃならないらしいからな」

大臣「そうですね、さあさっそく戦いを始めましょうか」

勇者「その前に、一句いいか?」

大臣「一句? なるほど、辞世の句のおつもりですか……」

大臣「よろしい、詠んでみなさい」

勇者『 大臣に なりきる魔物 見事なり 』

大臣「? ……どういう意味です?」

勇者「魔物という立場でありながら、この十数年」

勇者「国王様をもだましきるほどに大臣の職務を全うしたアンタへの、賛辞だよ」

大臣「!」ガーン



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 19:56:11.79 ID:t6rEEU/h0
大臣の脳裏に、十数年の思い出が蘇る。

国王『よろしく頼むぞ、大臣!』

国王『大臣、国費をちょろまかして二人でパブに──え、ダメ?』

国王『大臣がいるかぎり、これからも我が国は安泰だ!』



勇者「さあ、勝負──」チャキッ

大臣「うおおおおお……っ!」ガクッ

勇者「え?」

大臣「陛下……私は目が覚めました。やはり私は陛下を裏切れません……!」

大臣「どうか……お許しを!」

国王「おお、大臣! おぬしの正体がなんであろうと、かまうものか!」ガシッ

大臣「陛下……!」ガシッ

勇者「…………」サラサラ…

勇者『 友情に 人も魔物も 無関係 』


12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 19:59:19.90 ID:t6rEEU/h0
<城下町>

国王からもらった資金で、旅の準備を整える勇者。

店員「ありがとうございましたーっ!」

勇者(装備も買って、アイテムも買って、準備万端)

勇者(“備えあれば憂いなし”だからな)

勇者(……だけど、やっぱり一人ぐらい仲間が欲しいな)

勇者(“旅は道連れ、世は情け”っていうしな)

勇者(こんな危険な旅についてくる物好きが簡単に見つかるとも思えないけど)

勇者(とりあえず酒場に寄ってみるとするか)



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:04:07.17 ID:t6rEEU/h0
<酒場>

ワイワイ…… ガヤガヤ……

ギィィ……

主人「やぁ、いらっしゃ──おお、勇者様!」

勇者「景気よさそうだね」

勇者「さて酒場にいるみんな、話がある!」

ザワッ……! ザワザワ…… ドヨドヨ……

勇者「俺はこれから魔王討伐の旅に出発する」

勇者「誰か……ついてきてくれる者はいるか?」

シ~ン……

勇者(やっぱりな……)

勇者(今や魔王軍の勢力は絶大だ。こうなるとは思っていた……)


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:06:00.77 ID:kM9rnXM80
スパイの気持ちとか考えろよ


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:09:22.40 ID:t6rEEU/h0
すると──

戦士「ボクが付き合ってもかまいませんよ」バサッ

勇者「!?」

勇者(鎧の上に白衣って、どういうファッションセンスだよ!)

戦士「ボクは戦士です」

戦士「魔王退治の資金集めのため」

戦士「計算が得意なのでここで経理として雇われていましたが──」

戦士「それも終わりの時が来たようです」

勇者「……だけど、アンタ戦えるのか?」

主人「勇者様、彼の腕前はワシが保証します」

主人「ここでケンカ騒ぎが起きたら、いつも彼が冷静に止めてくれましたから」

勇者「へぇ……」

勇者(“人は見かけによらぬもの”ってことか)


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:10:41.23 ID:qPlZGjpF0
文系と理系を何だと思ってるんだ


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:11:11.84 ID:4PxSmSOz0
一番多そうな体育会系がいないだと


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:12:16.77 ID:eHlRjkzX0
>>18
こまけえこたぁry


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:14:20.35 ID:t6rEEU/h0
勇者に近づく戦士。

戦士「ほぉう、あなたが勇者ですか」

戦士「なるほど、なるほど」ジロジロ…

戦士「現在のところ、あなたが魔王を打倒する可能性は、ほんの数パーセントですが」

戦士「今後の成長を加味すると、どうなるかは分からない、といったところですか」

戦士「ボクは将来的には剣術をもっと科学的なものにしたいと考えているのですが」

戦士「あなたに同行すれば、新鮮なデータがいっぱい取れそうだ」

勇者「モルモット扱いされるのは気に食わないが──」

勇者「その実験に命を賭ける気概があるんなら、ひとつよろしく頼むよ」

戦士「フフフ、こちらこそよろしく」

勇者「では、ここで一句」

戦士「一句?」

勇者『 計算が 得意な戦士 仲間入り 』

勇者&戦士(なんだか妙な奴と一緒に旅に出ることになってしまった……)


22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:17:41.47 ID:t6rEEU/h0
ドゴォンッ!

勇者「な、なんだ!?」

戦士「外からですね」

ザワザワ…… ドヨドヨ……

戦士「音から推測すると、建物が破壊されたものと思われます」

勇者「よし、行くぞ!」ダッ

戦士「距離はおよそ500メートル、といったところでしょう」

戦士「ボクたちならば、一分以内にたどり着けます」ダッ

酒場を飛び出る二人。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:23:26.18 ID:t6rEEU/h0
<城下町>

ワーワー…… キャーキャー……

ガーゴイル「勇者はどこだァ~!?」

勇者「ここだ!」ザッ

戦士「ボクは戦士です」ザッ

ガーゴイル「ヒヒッ、探す手間がはぶけたなァ。ついてるゥ!」

ガーゴイル「ついさっき、送り込んでた“スパイ”が失敗したって連絡が入ってなァ」

ガーゴイル「この地方を任されてる魔族であるこの俺様に、役目が回ってきたワケだ」

勇者(スパイ……大臣のことか)

ガーゴイル「勝負といこうかァ、勇者!」

勇者「いいだろう。ではまずは──」

勇者「一句詠もう」

戦士「いや、計算が先です」


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:28:12.59 ID:t6rEEU/h0
勇者「計算?」

戦士「はい、まずはあの魔物を観察し、どういう性質かを見極めるべきかと」

ガーゴイル「なにをブツブツしゃべってんだァ!?」ブオンッ

ズギャアッ!

ガーゴイルの爪が、地面をえぐる。

勇者「あっぶねえ!」

戦士「くっ……」

勇者「オイ、早く計算してくれよ!」

戦士「今はまだ、計算に必要な検証材料が足りません」

戦士「というわけで勇者さん、頑張って下さい」

勇者「ようするに俺一人で戦えってか……」


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:32:14.99 ID:t6rEEU/h0
勇者とガーゴイルの一騎打ち。

キィンッ! ギィンッ! キンッ!

勇者「くっ……!」

ガーゴイル「ぬうっ……!」

ザシッ!

ガーゴイル「ぐおっ!」ヨロッ…

ズバッ!

勇者「ぐっ……!」ガクッ…

キンッ! ガキンッ! キィンッ!



戦士「ふむふむ……」

戦士「なるほど……計算完了です」ニヤッ


28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:38:08.32 ID:t6rEEU/h0
戦士「勇者さん、お喜び下さい。必勝法を編み出しましたよ」

勇者「本当か!?」

戦士「まずガーゴイルが11m/sの速度で突っ込んできたら」

勇者「うん」

戦士「距離2.25mまでひきつけ、そこで3m/sの速度でゆるりと回り込みます」

勇者「うん……?」

戦士「その後、ガーゴイルの背面に回り込んでから1.7秒後──」

勇者「う、ん……」

戦士「重力加速度と遠心力を味方につけた剣でもって」

戦士「26度の角度にて斬り込むのです」

勇者「ちょ、ちょっと待ってくれ。もうちょっと分かりやすくいってくれ」

戦士「これでもだいぶ噛み砕いたつもりですが」

勇者(マジかよ……)


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:43:13.33 ID:t6rEEU/h0
ガーゴイル「ヒヒッ、どうしたァ、勇者!?」ダダダッ

勇者「わっ、来た!」

勇者「だったら戦士、自分で今の必勝法をやってみせろ!」

勇者「“言うは易く、行うは難し”っていうだろ?」

戦士「今の必勝法は勇者さんの身体能力で計算した結果なのですが──」

戦士「仕方ありませんね」

ガーゴイル「切り裂いてやるっ!」ブオンッ

戦士「はっ!」サッ

ガーゴイル(回り込まれた!?)

戦士「でいぃっ!」シュバッ

ザシュッ!

ガーゴイル「ギャッ!?」

勇者(おおっ、すごい! 本当に一撃浴びせた!)


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:47:54.17 ID:t6rEEU/h0
ガーゴイル「ぐはっ……! ぐぐっ……!」ヨロヨロッ…

戦士(やはりボクの筋力では倒すまでには至らなかったか……)

ガーゴイル「ヒヒッ……。く、悔しいが、ここはひとまず退散だァ……」バッ

勇者「あっ、逃げた!」

戦士「逃走速度は60km/hというところですか……追いつけませんね」

勇者「いや……だけどよくやってくれた」

勇者「あそこまで精密な動きができる剣の使い手なんて、初めて見たよ」

ワァー……! ワァー……!

「二人とも、ありがとう!」 「よくやった!」 「すごかったぞぉ!」

ワァー……! ワァー……!

勇者「今後ともよろしく頼む」ニコッ

戦士「フッ……こちらこそ」ニッ

勇者「ここで一句」

勇者『 頼もしき 仲間とともに 故郷発つ 』



 
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:50:29.06 ID:t6rEEU/h0
城下町を出た二人──

勇者「さて、戦士。君の計算ではまずどうすべきだと考える?」

戦士「やはり、もう二人は仲間が欲しいですね」

戦士「魔法での攻撃のエキスパートと……あとは回復役といったところですか」

戦士「魔王軍との戦いは、物理攻撃だけで乗り切るには厳しすぎますからね」

勇者「攻撃魔法と……回復役か」

勇者「そういえば、東の町には大きい修道院があるな」

勇者「もしかしたら、仲間になってくれる回復魔法の使い手がいるかもしれない」

勇者「行ってみよう!」


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:53:36.11 ID:t6rEEU/h0
<東の町>

勇者「お尋ねします」

町民「おや、なんだね?」

勇者「この町には修道院があると聞きましたが、どこにあるんでしょうか?」

町民「ああ、あっちにあるよ」スッ

戦士「ずいぶんアバウトですね。ちゃんと方角と距離を正確にお願いします」

戦士「例えば北北西に315mとか……」

勇者「お、おい……」

町民「ああ、ここから西南西に817.5mってとこかな」

戦士「ありがとうございます」

勇者(この町民も理系か……)


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:56:29.02 ID:t6rEEU/h0
<修道院>

勇者「こんにちは」

院長「ようこそいらっしゃいました」

勇者「実は俺たち、魔王退治の旅をしておりまして」

勇者「回復魔法を使える人を探しているんです」

勇者「こちらの修道院で、どなたか旅に出られるような方はいませんか?」

院長「そうですねえ……」

院長「回復魔法は使えても、過酷な旅路に耐えられる娘、となると──」

勇者(そりゃそうだよな……)

勇者(死ぬかもしれない旅だ。“可愛い子には旅をさせよ”というわけにはいかない)

戦士(該当者がいる可能性は、2%といったところですかね)

院長「一人だけおりますわ」

勇者&戦士「え!?」

院長「こちらへどうぞ」スッ…


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:56:30.44 ID:GKrfuD+i0
マントかと思ったら白衣だった
鎧の上に白衣想像したら変態だった



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 20:59:26.24 ID:t6rEEU/h0
<礼拝室>

院長「ちょうど今、お祈りの時間ですのよ」

勇者「へぇ……みんな静かに──」

「神よ……」 「神よ……」 「神よッ!!!」

「救いを与えたまえ……」 「救いを与えたまえ……」 「救いを与えたまえッ!!!」

戦士「……一人だけ100デシベル以上の声を張り上げている女性がいるんですけど」

戦士「ジャージのような材質のローブで、下はスニーカーですし……」

院長「はい……彼女こそ、我が修道院が誇る」

院長「“体育会系僧侶”です」

勇者(た、体育会系僧侶……!?)ゴクッ

院長「僧侶さん、祈りを中断してこちらにいらして」

僧侶「オスッ! 院長ッ!」ダダダッ

戦士(速い! すごい瞬発力だ……!)


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:00:46.01 ID:eHlRjkzX0
お前が体育会系か


39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:05:11.75 ID:GKrfuD+i0
オスッ!wwwww


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:05:31.98 ID:t6rEEU/h0
僧侶「──えぇっ!? アタシが魔王退治の旅に!?」

勇者「……どうだろうか?」

僧侶「もちろん、お供させて下さいッス! こういう機会を待ってたんッスから!」

僧侶「うおおおお、燃えてきたッ! 体が太陽みたいになってるッス!」

勇者(なんだか、すごいのが入っちゃったなぁ)

戦士(体温はそんなに上がらないっての……。ボク、この人苦手だ……)

すると──

修道女「院長、大変です!」ハァハァ…

院長「どうしました?」

修道女「町にモンスターが攻め込んできました!」

院長「なんですって!?」

勇者「よし、戦士と僧侶さん! こういう時こそ、俺たちの出番だ!」

戦士「分かりました」

僧侶「おっしゃあああああっ! 分かったッス、先輩!」


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:10:12.97 ID:t6rEEU/h0
<東の町>

町中で暴れ回るゴーレム。

ワー……! キャー……!

ズガァンッ! ドゴォンッ!

ゴーレム「ハカイスル……ハカイスル……」

勇者「そこまでだ! ここからは俺たち勇者パーティーが相手をする!」チャキッ

戦士「かなりの破壊力ですね。腕力は軽く数トンはあるでしょう」チャキッ

ゴーレム「ユウシャ……? ハカイスルッ!」グオオッ

勇者「はっ!」シュバッ

戦士「せやっ!」シュバッ

ガギギィンッ!

勇者「硬い……! “歯が立たない”とはまさにこのことだな」ザッ

戦士「この感触……。彼の体は原子番号26……鉄でできているようですね」ザッ 



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:15:51.35 ID:t6rEEU/h0
勇者「でも、いくら硬くても“雨だれ石をうがつ”ように根気強く攻撃すれば──」

ゴーレム「ハカイスルゥッ!」ブオンッ

バキィッ! ドガァッ!

勇者「ぐわっ……!」ドザァッ

戦士「ぐっ……! このパワー、長期戦をするには危険すぎますね……!」

勇者「かといって他に手はない! 僧侶、俺たちを回復──」

僧侶「うおおおおっ! キレちまったッス!」メラメラ…

僧侶「アタシの町や、先輩たちに何しやがるぅぅぅっ!」ズドドドドッ

勇者「ちょっ、俺たちを回復──」

ドゴォッ! ベキィッ! バキィッ!

僧侶とゴーレムが、豪快に殴り合う。

ゴーレム「ウゴォッ……!」ヨロッ…

戦士「女性が素手でゴーレムと殴り合う……!? なんて非科学的な……!」

勇者「職業間違えてないか、この女……」


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:16:47.12 ID:5zsCQpjp0
燃やせばいいんじゃね


47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:19:40.22 ID:t6rEEU/h0
ガシィッ……!

ゴーレム「グオオオ……ッ!」グググ…

僧侶「ぐぎぎ……!」グググ…

町民「がっぷり四つの体勢になった!」

院長「これでもう、僧侶さんの勝ちですね」ニッコリ

勇者「ええっ!?」

僧侶「うおお……っ!」ググッ…

ゴーレム「!?」

僧侶「おっしゃあああああっ!!!」ブオンッ

ズガァンッ!!!

頭から地面に叩きつけられるゴーレム。

ゴーレム「コウドウフノウ……コウドウフノウ……」プシュウウ…

戦士(ゴーレムを投げ飛ばすなんて……! 信じられない……!)


48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:21:13.58 ID:OBoGFcbmO
何系って制限ない職業勇者ぐらいだな


49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:23:21.36 ID:t6rEEU/h0
勇者「い、いやぁ~すごかった……。助かったよ……」

僧侶「アハハッ! アタシも役に立ててよかったッス!」

勇者「あれ、戦士は……?」

戦士「ありえない……ありえない……」ブツブツ…

戦士「人間、まして女性の骨格でゴーレムに打ち勝つなんて……」ブツブツ…

戦士「またデータを追加しなくては……」ブツブツ…

勇者「どうもエラーを起こしてるらしいな」

勇者「……ま、とにかく、俺たちは君を歓迎するよ。よろしく!」

僧侶「オッス!」

戦士「特殊なタンパク質……? あるいは遺伝子レベルの突然変異……」ブツブツ…

勇者「ここで一句」

勇者『 心身が 燃えてる僧侶 歓迎す 』


50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:26:47.02 ID:t6rEEU/h0
東の町を出発した一行──

僧侶「これからどうするんスか、先輩たち!」

勇者「あとは……攻撃魔法のエキスパートが欲しい」

戦士「となると、北の町の魔法学校に向かうのがベストでしょうね」

戦士「しかし、ここから北の町に向かうには、大平原を通らなければなりません」

戦士「どこかで馬を調達──」

僧侶「なぁにいってんスか! 自分の足で行きましょうよ!」

勇者&戦士「へ!?」

僧侶「さあ、出発ッスよ!」ダダダッ

勇者「しかも、徒歩じゃなく走るのかよ!」タタタッ

戦士「参りましたね、これは……」タッタッタ…


51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:31:19.52 ID:t6rEEU/h0
<大平原>

勇者「いい景色だ……。こういう場所では是非一句──」スッ…

戦士「勇者さん、なにやってるんですか! 前方10メートルに敵がきてますよ、敵!」

僧侶「うおおおおっ! アタシが戦うんで、フォローお願いしますッス!」



戦士「おお、これは珍しい植物ですね! 標本として持って帰りましょう!」ブチッ

勇者「お~い、いちいち立ち止まるな。日が暮れちゃうよ」

僧侶「戦士先輩って、変わった人ッスねぇ……」



勇者「いだだっ……回復してくれ、回復!」ヨロヨロ…

僧侶「運動中に水を飲んじゃいけないように、戦闘中は回復しちゃダメッス!」

戦士「そんなの非科学的だァ!」ヨタヨタ…


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:34:28.16 ID:t6rEEU/h0
どうにか大平原を抜けた三人──

勇者「いやぁ~……どうにかなったな」

戦士「ええ、何度も死にかけましたけどね」

僧侶「アハハッ! アタシはまだまだ平気ッスよ!」

戦士「タフですね……いずれあなたの体を本格的に研究したいですよ」

僧侶「研究!? アタシはいつでもオッケーッスよ! 戦士先輩!」

戦士「ほぉう、じゃあさっそく服を脱いで──」

勇者「オイやめろ」

勇者「あれが北の町だ。“善は急げ”というし、さっそく向かおう」


53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:37:06.83 ID:t6rEEU/h0
<北の町>

北の町は、人間界でもっとも魔法研究が進んでいる町である。

僧侶「魔法が盛んな町ってだけあって、町の人も妙にお上品な雰囲気ッスねえ」キョロキョロ

僧侶「アタシにはあまり合わないッスね」

勇者「君は本来、彼ら側の人間だからね? 分かってるかい?」

戦士「なにをキョロキョロしてるんです、二人とも。頸椎をいためますよ」

戦士「聞き込みで、魔法学校の座標が分かりました」

戦士「魔法の使い手をスカウトに行きましょう」

勇者「ああ!」

勇者(いい魔法使いがいるといいが……)


55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:42:46.90 ID:t6rEEU/h0
<魔法学校>

校長「──そういうことでしたら、うってつけの人物がいますよ」

校長「我が校を首席で卒業予定の生徒を紹介しましょう」

勇者「本当ですか!?」

校長「今テレパシー魔法で伝えたので、すぐテレポート魔法で飛んできますよ」

シュンッ!

三人の前に、いかにも利発そうな青年が現れた。

魔術師「はじめまして、勇者様。このボクがあなたの仲間となりましょう」

勇者「おお、すごい! まさしく“神出鬼没”だ!」

戦士「これは期待できそうな方ですね」

僧侶「アタシは僧侶! どうぞよろしくッス!」

魔術師「よろしくお願いします」ニコッ


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:45:23.69 ID:3UGMUMQUO
何系だろう


58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:46:15.00 ID:t6rEEU/h0
同時刻──

北の町の遥か上空を、一頭のドラゴンが羽ばたいていた。

バサッ…… バサッ……

ドラゴン「フン……あのデカイ建物が魔法学校か」

ドラゴン「あれを破壊すりゃあいいわけだな」

ドラゴン「こんなつまらん仕事にオレを駆り出すとは、魔王様も人が悪い」

ドラゴン「まあいい、すぐに終わらせてやる!」

ギュンッ!

ドゴォンッ!!!


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:50:15.34 ID:t6rEEU/h0
グラグラ……!

勇者「な、なんだ!?」

戦士「すごい揺れだ! しかし、震源地は地中ではないようです!」

僧侶「あ、あそこにドラゴンがいるッス!」ビシッ

バサッ…… バサッ……

ドラゴン「グハハッ……お前はまさか勇者か?」ドスンッ…

ドラゴン「スパイにガーゴイルに、ゴーレムと」

ドラゴン「魔王軍でも名だたる魔族を次々に撃退したそうだが」

ドラゴン「それも今日までだ! このオレがバラバラにひきちぎってやる!」

勇者「……くっ!」チャキッ

勇者「校長先生は生徒たちを避難させて下さい! 他の三人は俺に続いてくれ!」


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:55:15.29 ID:t6rEEU/h0
勇者と僧侶が、ドラゴンに立ち向かう。

勇者「だああっ!」シュバッ

僧侶「いくッスよおっ!」ブオンッ

ガキンッ! ドゴォッ!

ドラゴン「小賢しい!」ブワオンッ

バチンッ!!!

尻尾でふっ飛ばされる勇者と僧侶。

勇者「ぐうっ……! さすがに強い……!」ザザッ…

僧侶「あうぅ……っ! 今までの魔物とは別格ッスね……!」ザッ

戦士(ドラゴンは爬虫類に近い魔物と文献で読んだ……寒さには多少弱いハズ!)

戦士「魔術師君、氷魔法でサポートして下さい!」

魔術師「ひぃぃ……あわわぁ……こ、怖いよぉ……」ガタガタ…

戦士(呼吸の乱れに極度の発汗……眼球も泳いでいる)

戦士(ダメだ、とても魔法を撃てるコンディションじゃない!)

戦士(かといって、学校中がパニックで他に魔法を使えるような人は──)キョロキョロ


 
64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:59:11.67 ID:t6rEEU/h0
魔法使い「破壊の美という言葉もあるけれど、この破壊はあまり美しくないわね……」

戦士「!?」

戦士(この騒ぎの中で、あの女魔法使いだけやたら落ちついてる!?)

戦士(ベレー帽を被る魔法使いなんて珍しいが、気にしてる場合じゃありませんね)

戦士「そこの魔法使いさん、氷魔法でサポートをお願いします!」

魔法使い「? ……分かったわ」

魔法使い「この私の芸術的な魔法で、ドラゴンを仕留めてあげましょう」パァァ…

魔法使いが呪文を唱えると、ドラゴンの体に氷がまとわりついた。

パキィンッ!

ドラゴン「ぐおおっ……!?」ガクッ…

勇者「おおっ!」

僧侶「すごいッス! 効いてるッス!」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 21:59:25.65 ID:OBoGFcbmO
カテゴライズはなんだ…?
30歳道程とか言うなよ?


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:02:27.38 ID:t6rEEU/h0
ドラゴン「なんのこれしきぃっ!」バキバキッ

ドラゴン(やりやがったな、先にあの魔法使いを八つ裂きにしてやる!)グオオッ

僧侶「うわぁっ!?」ドサッ

戦士「あの巨体で、なんて速度だっ!」

勇者「ま、まずい! 魔法使いさん、逃げるんだっ!」

ドラゴンの爪が魔法使いに迫る。

ドラゴン「くたばれぇっ!」

魔法使い「あなたの造形──」

ドラゴン「?」

魔法使い「デッサン狂ってるわね」

ドラゴン「!?」


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:06:29.54 ID:t6rEEU/h0
ドラゴン「なっ……」

ドラゴン「他人に向かってデッサン狂ってるって……失礼にも程があるだろ、それ!」

ドラゴン「オレほどドラゴンらしいドラゴンはこの世にいねえって自負してるぜ!?」

魔法使い「う~ん……」

魔法使い「体色はいたって平凡だし、首と体のバランスはおかしいし」

魔法使い「なんていうか、チープなのよねあなた」

ドラゴン「チープ!?」

魔法使い「強さは申し分ないけど、芸術的観点から見たら、あなたの価値は──」

魔法使い「トカゲ以下ね」

ドラゴン「!!!」

ガーン! ガーン! ガーン!


73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:12:09.48 ID:t6rEEU/h0
ドラゴン「うっ……」ウルッ…

勇者「あっ、泣いた。“鬼の目にも涙”ならぬ“竜の目にも涙”か」

戦士「ちなみに涙はもとは血液です。よほど魔法使いさんの言葉が効いたんでしょうね」

僧侶「男はそう簡単に泣いちゃいけないッスよ!」

ドラゴン「うるせええっ!!!」

ドラゴン「…………」ゴシゴシ…

ドラゴン「ちくしょう、もうやってられねえや!」バッ

バサッ…… バサッ……

ドラゴンは飛び去っていった。

魔法使い「逃げ方まで下品で美しくないわね」

勇者(手段はどうあれ、ドラゴンを追い返すとは……!)

勇者(さっきの魔術師君には悪いが、ぜひ彼女を仲間にしたい!)


75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:16:53.04 ID:t6rEEU/h0
勇者「ところで、君は……?」

魔法使い「私は魔法使い、魔法学校での成績は四位よ」

魔法使い「将来は魔法芸術家を目指してるの」

勇者(なんだよ、魔法芸術家って。いやそれより──)

勇者「ドラゴンが襲ってきたのに、よくあんなに落ちついていられたね」

魔法使い「あの程度で驚いていたら、美を追い求めるなんて不可能だもの」

魔法使い「竜なんて珍しいから期待したけど、期待外れもいいところだったわ」

勇者「なるほど……大した度胸だ。ところで本題なんだが──」

勇者「魔王退治の旅に、加わってくれないか?」

魔法使い「魔王退治……」

魔法使い「もう卒業も確定してるし、かまわないわ。ただし──」


76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:21:29.65 ID:t6rEEU/h0
魔法使い「あなたがた三人の“美しさ”を示してもらうわ」

魔法使い「美しくない人に付き従う理由はないから」

勇者「……分かった。みんな、準備はいいか?」

戦士「ではボクから」

戦士「これは“黄金比”で作られた、ボクの盾です」スッ…

魔法使い「ああっ、美しい! 文句なしだわ!」

僧侶「次はアタシッスか? アタシの自慢できるものといったら──」

僧侶「ローブを脱ぐッス!」バサッ…

勇者&戦士「!?」

僧侶「どうッスか!?」ボインッ

魔法使い「サラシに巻かれた滑らかに鍛えられた肉体! これも美しいわ!」

僧侶「アハハッ! どもありがとうッス!」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:21:56.68 ID:kTtrORa00
美術系か


81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:24:30.74 ID:t6rEEU/h0
勇者「最後は俺か」

勇者「それじゃあ──」サラサラッ

魔法使い(筆で壁に字を……!?)

勇者「できた」サラッ



               美



魔法使い「毛筆による“美”一文字……! う、美しい……! 見事だわ……!」ゴクッ…

魔法使い「分かったわ……合格よ」

魔法使い「私の芸術をさらに高めるため、あなたたちに同行させてもらうわ」

勇者「ありがとう!」

戦士「性格はともかく、いい戦力になりそうですね」

僧侶「やったッス! アタシにも後輩ができたッス!」

魔法使い(素晴らしい字だったわ……まさか私が嫉妬を覚えるだなんて……)ウズウズ…


82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:28:24.83 ID:t6rEEU/h0
校長「それでは勇者様、魔法使いさんをよろしくお願いします」

勇者「はい、お任せ下さい」

魔術師「ボクは学校を守るため、校舎に結界を張ることにします」

勇者「ああ、頼む。君の魔法の才能はピカイチだからね」

魔法学校を出発する四人。

勇者「……これで、戦力は整った!」

勇者「いよいよ本格的に魔王軍との戦いに入るぞ!」

戦士「ボクの計算の出番ですね」

僧侶「アタシのど根性、見せてやるッス!」

魔法使い「私の芸術的魔法で、敵を倒してみせるわ」

勇者「ここで一句」

勇者『 時は来た 四人で目指せ 魔王城 』


85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:33:47.10 ID:t6rEEU/h0
こうして四人の旅が始まった。

勇者「みんな、風流に戦うんだ!」ヒュッ

ザンッ!

戦士「いやいや、理詰めで戦うべきですね」ビュンッ

ズバッ!

僧侶「理屈じゃなく、努力と根性で戦うべきッス!」ブオンッ

ドゴンッ!

魔法使い「なにいってるのよ、芸術的センスで戦うべきよ」パァァ…

ボワァッ!

魔族A「コイツら、なんてバラバラなんだ!」

魔族B「でも、メチャクチャつええ……!」


86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:37:45.86 ID:t6rEEU/h0
勇者「道に迷った!」

勇者「たしか、あの有名な小説では東が正解だったはず」

戦士「ボクの計算によると、西に向かうべきですね」

僧侶「アタシの勘によると、南で間違いないッスよ!」

魔法使い「北に向かって歩くのが、一番絵になると思うわ」



勇者「まさか全部ハズレで、地下に隠し通路があったとは……」

戦士「やれやれ、計算外でしたよ。また研究材料が増えました」

僧侶「いやぁ~、してやられたッスね! アハハッ!」

魔法使い「……私の芸術的センスもまだまだね」

苦労を重ねつつも、四人は成長し──



 
88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:41:51.09 ID:t6rEEU/h0
着実に魔王軍を追い詰めていった。

勇者「激戦の末、ようやく魔王軍の中核基地であるデビルタワーを攻略できた!」

勇者「“酒は百薬の長”ともいうし、今日は大いに飲もう! カンパーイッ!」カチンッ

戦士「ではボクはビーカーで飲むとしましょう」カチンッ

僧侶「うおおおお、飲むッス!」カチンッ

魔法使い「芸術家には愛飲家も多いのよね」カチンッ



僧侶「やっぱ酒は、コールとイッキに限るッスね!」ガブガブ…

勇者「も、もう無理……“過ぎたるはなお及ばざるが如し”だ……」オエッ

戦士「ボクの体内にアセトアルデヒドが蓄積されてゆく……」ウゲッ

僧侶「二人とも、だらしないッスねえ」ガブガブ…

魔法使い「泥酔する勇者、いいモチーフになりそうね」グビッ

勇者「おええええっ……!」ビチャビチャ…



90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:44:55.40 ID:t6rEEU/h0
<魔王城>

魔王「……また我が配下が勇者どもにやられたというのか!」

側近「はっ……!」

側近「勇者たちの勢いはとどまることを知らず……」

側近「この魔王城にも迫る勢いです……!」

魔王「ふむ……」

魔王「ふざけた四人組だとあなどったのが誤りだったか……」

魔王「ならば、こちらも最強の四人を出すまでだ」

魔王「側近よ」

魔王「四天王全員に、魔平原にて勇者たちを迎え撃たせろ!」

側近「四天王を……全員ですか!?」

魔王「うむ! 全力で勇者どもを葬り去るのだ!」

側近「はっ! かしこまりました!」


91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:49:20.58 ID:t6rEEU/h0
<魔平原>

勇者「ここが魔平原か……ここを突っ切るのは“薄氷を踏むが如し”だな」

戦士「ですが、この薄暗い平原を越えれば、魔王城はもう目の前です」

僧侶「いよいよッスね! アタシもますます燃えてきたッス!」

魔法使い「この暗い景色……なかなかいいわね。スケッチしようかしら」

魔法使い「!」ピクッ

勇者「どうした?」

魔法使い「大きな魔力が四つほど……この平原にいるわ」

戦士「大きい魔力が四つ……まさか魔王軍の四天王では?」

僧侶「マジッスか!」

勇者「魔王軍最強といわれる四天王……ついに来たか……!」

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:53:35.37 ID:t6rEEU/h0
勇者「みんな! あそこに俺たちと同じ四人組がいる!」

戦士「あれが……四天王ですか」

僧侶「どいつもこいつも強そうッスねえ! ウズウズしてきたッス!」

魔法使い「四対四の戦い……勇ましい絵が描けそうな題材だわ」



四天王(雷)「来ましたこれ、来ましたこれ、神の予言通りですよ、これ」

四天王(炎)「あァ!? あんなのに苦戦してんのか、ウチの軍はよ! 訴えてやる!」

四天王(水)「ぐえへへへ、すっげーケツかゆいんだけど」ボリボリ…

四天王(地)「眠い……」ボソッ



戦士「乱戦になると、チームワークに難のあるボクたちが不利かもしれませんね」

勇者「なら俺たちは四人ともだいぶ成長したし、ここはあえて各自一対一に持ち込もう」

勇者「いくぞっ!」ダッ


95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/10/04(金) 22:59:50.92 ID:t6rEEU/h0
勇者パーティーと四天王の戦いが始まろうとしていた。

勇者「お前は俺が相手をするっ!」チャキッ

四天王(炎)「初対面の相手にお前呼ばわりだと!? どういう教育受けてんだ!?」



戦士「あなたの相手は、このボクです」チャッ

四天王(雷)「おお、来ましたこれ! 神からのお告げ来ました、これ!」



僧侶「アンタの相手はこのアタシッス! よろしくっ!」

四天王(地)「うるっさいな……」ボソッ



魔法使い「あなたの相手が私が──ってなにこのニオイ!?」

四天王(水)「オイラ、生まれてこのかた、風呂入ったことねえんだ」プ~ン



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[ 2013/10/06 10:47 ] 勇者「」or魔王「」 | TB(0) | CM(0)
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