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女「ねぇ、アドレス教えてよ」3/6


女「ねぇ、アドレス教えてよ」



162 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 10:43:14 ID:6abcR4N2


先輩「……で、どうよ? ちょっとは進展あったかい?」

女「えぇ、そこはかとなくは」

先輩「そっか」

女「先輩さんは、あの人の口から聞いたんですか?」

先輩「ぐてんぐてんに酔わせてな。あいつは覚えてないだろーよ」

女「そうですか」

先輩「ま、いつかあいつから切り出すんじゃねー?」

女「どうでしょうね」



元スレ
女「ねぇ、アドレス教えてよ」





163 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 10:44:17 ID:6abcR4N2

先輩「今日のあれを見たら、そう思うよ。二人とも顔真っ赤だったじゃん」

女「……」カー

先輩「平静を装うのが精一杯だった、って感じかい?」

女「……はい」

先輩「あっはっは! 初々しい上に、愛いやつだなー」

女「……」

先輩「がんばりな。応援してるからさ」

女「……はい!」


165 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 18:08:23 ID:6abcR4N2

友「おーい女、付箋何枚かくれよ」

女「いいわよ」

友「サンキュ!」

女「……そういえば友って、最近あの人と仲がいいわね」

友「ん、男か?」

女「ええ」

友「前よりは話すようになったよ。おもしれーんだ、あいつ」

女「あのね、ちょっと頼みがあるんだけど」

友「お前が俺に頼みって珍しいな。なに?」


166 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 18:09:25 ID:6abcR4N2



友「おーい、男」

男「ん、どうかした?」

友「ファブリーズ!」

男「……」

友「ファブリーズファブリーズ!」

男「……」

友「あれ、無反応?」


167 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 18:10:33 ID:6abcR4N2



男「お疲れさま」

友彼女「あ、男くんお疲れー」

男「そういえばさ、友くんなんだけど」

友彼女「なになにー?」

男「いや、なんか最近貧乳に目覚めたとかうるさいんだよね」

友彼女「……」タプン

男「うっすら見えるあばら骨が最高! とか」

友彼女「……」ピクピク

男「小学生くらいが好みかな? とか」

友彼女「!」ブチン


168 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 18:12:31 ID:6abcR4N2



女「おはよう。……どうしたのその顔」

友「なんか殴られた。彼女に」

女「なんで?」

友「好きで大きくなったわけじゃないんだから! だって。とりあえず謝ったら許してくれたけど」

女「へんなの」



男「雨降って地固まる、か。良いことしたなぁ、俺」

170 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 22:49:02 ID:6abcR4N2

先輩「だからお前はアホなんだよ! なんだこれは!」

男「……アンパンマンチョコです」

先輩「うちの立地を言ってみろ」

男「……オフィス街」

先輩「客層は?」

男「20代から50代の男性が大半です」

先輩「わかってんじゃねーか。ガキ向けの商品なんて最低限でいーんだよ!」

男「ミス、ですね。すいません」


171 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 22:50:03 ID:6abcR4N2

先輩「それとこれ、ボンタン飴」

男「あ、それは在庫がなかったので」

先輩「売り場見てみろ! 腐るほどあるじゃねーか!」

男「え、あっ、ほんとだ」

先輩「ストコンだけ見て決めるからそんなことになるんだよ!」

男「あー、誰かが売るときに漏らしちゃったんだね」


172 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 22:51:00 ID:6abcR4N2

先輩「人のせいにしない!」

男「……はい」

先輩「このアンポンタンめ」

男「……上手くないよ」

先輩「……うるせーぞ」ギロ

男「反省します、はい」


173 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 22:52:06 ID:6abcR4N2




友彼女「ずいぶんしぼられたみたいだねー」

男「あはは、やっぱりヘコむね」

友彼女「先輩さんは普段あんな感じだから、怒るとよけい怖いんだよー」

男「怒られたことあるの?」

友彼女「仕事に慣れてきたころにね、収納代行ミスしちゃって」

男「あー……」


174 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 22:53:49 ID:6abcR4N2

友彼女「それはもう、鬼! って感じだった」

男「泣いちゃった?」

友彼女「うん! 逆に店長から慰めてもらったよ」

男「……うちは店長がダメだよね」

友彼女「それでね、バイトでミスして怒られるのって初めてだったの!」

男「あ、なんとなくわかる」

友彼女「?」

男「い、いや。続けて」


175 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 22:55:17 ID:6abcR4N2

友彼女「だからー、なんか、うまく言えないんだけど、嬉しくなったのかなぁ」

男「……うん」

友彼女「叱ってもらえるのって、悲しくて悔しいんだけど、ちょっと嬉しいんだよ、多分」

男「大学生ともなると、叱ってくれる人って少ないからね」

友彼女「そうそう! だから先輩さんは、憧れの人なの」

男「後輩で、しかも女の子ってなるとどうしても甘くしちゃうもんだけど」

友彼女「先輩さんはそういうの無いからねー、信頼できるよ」


176 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 22:56:43 ID:6abcR4N2

男「うん、下心も裏表もない人だもんね」

友彼女「……心配になったりもするけどねー」

男「?」

友彼女「痛むのがヤだから表と裏を使いわける人とは違って」

男「……」

友彼女「先輩さんはきっと、傷ついたら傷ついた分だけ、傷つくんだよー」

男「……それでも笑ってるよ、あの人は」


177 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 22:58:03 ID:6abcR4N2

友彼女「笑顔なんて、くすぐられただけで浮かぶものだよ?」

男「……」

友彼女「女の子って弱いんだから!」

男「そっか、そうだよね」

友彼女「誰かさんが支えてあげればいいのにねー」

男「先輩ならよりどりみどりでしょ」

友彼女「よく言うよ、ほんとに」


178 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 22:59:05 ID:6abcR4N2

男「あー、もしかして先輩、なにか言ってた?」

友彼女「当日に、泣きながら電話きたよ。ビックリしちゃったもん」

男「そっかぁ……」

友彼女「詳しく聞いていーい?」

男「聞かなかったの?」

友彼女「男くんから聞きたいのー」

男「……うん」


179 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:02:28 ID:6abcR4N2


―クリスマス―



先輩「いやー、今日も今日とて冷えるな」

男「雪降ってるからね、そりゃ寒いよ」

先輩「ホワイトクリスマス、ってやつか」

男「生まれて初めてかも」

先輩「私もだよ。ま、ゲン担ぎにはちょうどいーかもな」

男「なにかあるの?」


180 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:06:32 ID:6abcR4N2

先輩「それはあとの祭さ!」

男「使い方おかしいよね」

先輩「いーからほら、イルミネーション見に行こーぜ!」

男「え、どこまで!?」

先輩「市立公園までだよ、うだうだ言うな」

男「寒いよー」


181 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:07:39 ID:6abcR4N2

先輩「う、腕組んでやるから! そそ、そうすりゃあったかいだろー」ガシ

男「え、ちょ」

先輩「ん……。ほ、ほら、行くぞ!」グイグイ

男「ま、まって……」


182 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:08:49 ID:6abcR4N2



先輩「はぁー……」

男「うわぁー……」

先輩「すげー、綺麗だな」

男「うん、なんか神秘的」

先輩「夢の中みたい……」

男「あはは、先輩がそんなこと言うとは」


183 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:10:00 ID:6abcR4N2

先輩「うっせーな、私も乙女なんだよ!」

男「はいはい……。それにしても人少ないね」

先輩「あぁ、みんな海の方のお祭りにいってんじゃねーか」

男「なるほど」

先輩「お、あっちのゲートくぐってみよーぜ!」タッタッタ

男「わ、わかったから引っ張らないで」


184 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:11:26 ID:6abcR4N2

先輩「写メとってー!」ピース

男「写りませんよ」

先輩「フラッシュたけばいいだろ?」

男「ん……、おぉ、ほんとだ」カシャ

先輩「いい加減覚えろよな……」

男「このツリー、ハリボテなんだね」


185 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:12:25 ID:6abcR4N2

先輩「電飾のおかげで遠目にはわかんねーけどな」

男「デジカメ持ってくれば良かったかな」

先輩「頭の中に焼き付けときな」

男「空き領域がー」

先輩「片っ端から消去しとけ! 私との思い出は優先度最大だ」

男「恥ずかしいこと言うね。素面?」


186 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:13:30 ID:6abcR4N2

先輩「言ったろ、夢の中なんだよ」

男「現実だよ。……確かになんか、ふわふわするけどね」

先輩「あっはっは、クリスマスっていーもんだな!」

男「あはは。……ありがとう、先輩」ボソ

先輩「うん?」

男「なんでもー」


187 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:18:25 ID:6abcR4N2

先輩「あ、そこのお父さん、写真撮ってくれませんか!」

男「わわわっ」グイグイ

先輩「おおぅ、ここプラネタリウムみてーだ!」

男「屋根一面に……すごいな」
先輩「ん? あれミッキーじゃね?」

男「ただのネズミでしょ」




先輩「あー、はしゃいだ」

男「さっきより更に人少なくなってるね」

先輩「家族連れは帰ったんだろーよ。……雪も、止まないな」

男「うん。イルミネーションが反射して、キラキラ光ってる」

先輩「……なぁ、丘の方に行かねーか? あっちのがいい景色だろ」


188 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:19:18 ID:6abcR4N2

男「うん、行こうか」



男「確かにいい景色、すごいなー」

先輩(……ここまでくるともう誰もいないな)

男「先輩」

先輩(……よし。よっし!)

男「先輩!」


189 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:20:17 ID:6abcR4N2

先輩「は、はいっ!」

男「どうしたの? ぼーっとして」

先輩「あ、いやいやなんでも……。なくは、ないけど」

男「はい、これ」

先輩「えっ?」

男「プレゼント」


190 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:21:48 ID:6abcR4N2

先輩「え、あ、えっと、私も! はい!」

男「ありがとう」

先輩「……うん、ありがとう」

男「……」

先輩(……らしくねーよな、ほんとに。自分からなんて)

男「……」

先輩(あれこれ考えてもわかんねーよ。私、バカだもんな)

男「……」


191 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:25:30 ID:6abcR4N2

先輩「男」

男「んー?」

先輩「好きだ」

男「……」

先輩「お前が、好きだ」

男「……あ、あはは。軽いね、相変わらず」

先輩「当たり前だ」

男「……」

先輩「言葉が重かったら、私の口から出た瞬間、地面に落っこちちまう。誰にも、届かない」

男「……」

先輩「でもな、想いは、重いんだ。心にずっしりと在って、時が経てば風化しちまうかもしれねーけど、誰にも動かせない」

男「……」


192 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:27:31 ID:6abcR4N2

先輩「お前が好きだ。私と付き合え」

男「……」

先輩「……」

男「……ごめん」

先輩「……ん」

男「……」

先輩「……ふーん、あっそ」


193 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:28:37 ID:6abcR4N2

男「先輩」

先輩「……へー、そっか」

男「……泣かないで」

先輩「……ん」ポロポロ

男「泣かないで」

先輩「ん、ん。……泣いてねーよ、バカ」ポロポロ

男「……先輩」


194 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:29:56 ID:6abcR4N2

先輩「あー、ぐす。お前、あ、あれだぞ」ポロポロ

男「うん」

先輩「ぜったい、ん、ぜったいいつか後悔するか、らな」ポロポロ

男「うん」

先輩「……そ、その時は」ポロポロ

男「……」

先輩「わたし、が。いてやる、から」ポロポロ

男「……ありがとう」


195 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:31:51 ID:6abcR4N2

先輩「うぅ、ん。……帰る」グス

男「……また、ね」

先輩「……」タッタッタッ





男「最低だよな、俺」


先輩「ちくしょー。大好きだぞ、バカヤロー……」


男「誰かがそばにいると、お前がもうそばにいないんだって思い知る」


先輩「雪降ったって、意味ねーじゃん……」


男「……でも、一人にはなりたくない。お前がもう、そばにいないんだって思い知るから」


先輩「……私じゃ、ダメなんだよな」ポロポロ


男「……最低だ」ポロポロ


196 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:33:58 ID:6abcR4N2




友彼女「……そっかー」

男「うん、こんな感じ」

友彼女「罪深いねー」

男「言わないで。わかってるから」

友彼女「ううん、言うよ!」

男「……」

友彼女「うちさ、先輩は大好きだけど、女も大切な親友なの」


197 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:34:52 ID:6abcR4N2

男「らしいね」

友彼女「だから、困っちゃうんだよなー」

男「……?」

友彼女「男くんはアンポンタンだってこと!」

男「そ、そっか」

友彼女「うちあっちだから。バイバイ」ヒラヒラ

男「うん、バイバイ」ヒラヒラ


198 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/22(日) 23:38:06 ID:6abcR4N2



先輩「……はーぁ、彼氏ほしいなー」

女「いきなりどうしたんです?」

先輩(想いは風化する、か)

女「先輩さん?」

先輩「いつの話だよ、マジで……。女ちゃーん、壁は高いぞー」

女「……はぁ」


200 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 09:13:53 ID:d5u.xF9o

友「一人暮らしはじめてさ」

男「うん」

友「一年目の冬かな、風邪ひいたんだ」

男「インフルエンザ?」

友「や、ただの風邪。でもさ、買い置きの薬とかもなくて」

男「あー」

友「俺は絶望したよ、あの時」

男「このまま一人で死んじゃうんじゃないか、って思っちゃうよね」


201 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 09:14:55 ID:d5u.xF9o

友「まさにそれ。大学はおろか買い出しもできなかったし」

男「よく生きてたね」

友「彼女に……、その時はまだ彼女じゃなかったんだけど、世話してもらって」

男「えー、ここでノロケかよ」

友「いやいや、俺が言いたいのはそういうことじゃなくてだな」

男「うん?」

友「弱ってるときは誰だって人肌恋しくなるもんだ、ってこと」

男「……うん」


202 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 16:45:59 ID:d5u.xF9o

友「ほらよ」

男「……なにこれ」

友「ポカリとプリンと、一応風邪薬」

男「俺、健康だよ?」

友「女のとこに持って行けってことだ」

男「な、なんで俺が」


203 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 16:47:05 ID:d5u.xF9o

友「ほんとは俺と彼女で行くとこだったんだが、なんか急な用事に付き合わないといけないらしくて」

男「あいつ……」

友「つーわけで、お前に行かせろとのご命令です」

男「まて、本人の許可は?」

友「おりました。がんばれ」

男「なんなんだ……」


204 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:27:32 ID:d5u.xF9o

男「寝てていいよ」

女「プリン……ちょうだい」ケホッ

男「はいはい。あれ、スプーンないや」

女「プッチンしてくれたら、流し込むから……」

男「そんなはしたないことをしないで。水屋にあるよね?」

女「う、けほっ。うん」


205 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:28:30 ID:d5u.xF9o

男「もってくる」



女「ん……。風邪ひいてるときのプリンは最高ね」

男「一応、途中でアイスも買ってきたよ」

女「アイスはいいわ。でも、リンゴは食べたい」

男「お腹空いてるの?」

女「ううん。久しぶりだから」


206 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:29:24 ID:d5u.xF9o

男「そっか。じゃあすってくる」

女「するの?」ケホッ

男「そっちの方が食べやすいだろ」

女「……あなた、甲斐甲斐しいわね」

男「君がしおらしいからね」

女「汗いっぱいかいたから」


207 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:31:12 ID:d5u.xF9o

男「ポカリも飲んどきなね」

女「はーい。けほっ」

男「とは言っても、リンゴの皮むきなんて俺も久し振りだな。ピーラー使うか?」

女「それなら、そこのポーチの中に」

男「どうせビューラーだろ」

女「……つまんない」ケホッ


208 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:32:33 ID:d5u.xF9o

男「大人しく寝てなさい」

女「ちぇっ」




男「おい」

女「どうしたの?」

男「なんで台所にビューラーがあるんだよ」

女「だから言ったじゃない」


209 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:33:24 ID:d5u.xF9o

男「ネタが巧妙すぎるんだよ……」

女「あなたが来ると聞いて嬉しくなったから、ちょっとはしゃいでしまったわ」ケホッ

男「ほんとに風邪ひいてるんだよね?」

女「それはほんと」

男「熱は?」

女「朝計ったら、38度」


210 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:34:29 ID:d5u.xF9o

男「けっこう高いな。もう一回計っといて」

女「うん」




男「ほい、できたよー」

女「うわぁ、すりりんぐ」

男「危ないものみたいになってるからね」

女「いただきます」


211 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:35:44 ID:d5u.xF9o

男「どうよ?」

女「……これはりんごね」

男「今更だね」

女「おいしいわ。懐かしい味って感じ」

男「りんごって言ったら、やっぱり小さいころを思い出すよな」

女「よくお母さんに作ってもらってたわ、うさぎさん」


212 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:37:01 ID:d5u.xF9o

男「まぁ、俺は梨派だったけど」

女「梨だなんて。いっそ水でも飲んでたら?」

男「おい、梨をバカにするな!」

女「ずいぶん思い入れがあるのね?」

男「いや、ただ好きなだけ。思い入れがあるっていったら、リンゴかな」

女「なにそれ、へんなの」ケホッ


213 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:37:54 ID:d5u.xF9o

男「そういえば、熱は?」

女「37度6分」

男「うーん。一晩寝て良くなるかなぁ」

女「さぁ。体に聞いて?」

男「布団をめくるな。冷えるだろ」


214 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:38:37 ID:d5u.xF9o

女「一つ、いい?」

男「なんでもどうぞ」

女「なんでずっとマスクしてるの?」ケホッ

男「移ったら困るもん」

女「人と話すときくらい外したらどうかしら」

男「移ったら嫌だもん」


215 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:39:33 ID:d5u.xF9o

女「……ほんとはあなたに移すつもりでいたんだけど、ね」

男「やっぱりかよ……」

女「言ったでしょ。あなたが来るって聞いて嬉しかった、って」

男「そういう意味ね」ハァ

女「ふふ、じょーだん」ケホッ


216 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:40:35 ID:d5u.xF9o

男「話すよりは、寝てたほうがいいと思うよ」

女「じゃあ、手」

男「ん?」

女「握ってて」

男「……」

女「ね?」

男「……眠るまでな」

女「……話さないから、離さないで」

男「話さないなら寝てくれ。離さないから」


217 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:42:48 ID:d5u.xF9o

女「……うん」

男「人肌恋しくなる、か」

女「なぁに?」ケホッ

男「なんでも」




男「……寝た、よな」

女「……」スースー

男「16時28分、寝息確認。さて、お粥でも作るか」

女「……」スースー

男「……手、離すね」


218 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:48:45 ID:d5u.xF9o

男「……なんで布巾に混じってブラジャーがあるんだ?」


男「……コップの中にリップがあるのは、なぜ」


男「……食パンの下にはインスタントの紅茶が」


男「……エプロンにくるまってる博多の塩。これは苦しいな」


男「……仕込みすぎだろ」ハァ


219 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:49:35 ID:d5u.xF9o

女「……ん」

男「起きた?」

女「……ぅん」

男「どうしたの?」

女「手が、さびしい」

男「手は2つあるんだから、さびしいことないよ」


220 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:50:31 ID:d5u.xF9o

女「……3つ目がほしいの」

男「猫の手借りるほど忙しくもないでしょ」

女「……いじわる。バカ、アホ」

男「い、言い過ぎじゃないか」

女「……良い匂いがする」

男「卵粥作っといた。食べる?」


221 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:51:30 ID:d5u.xF9o

女「……その前に汗拭いて着替えたいわ」ケホッ

男「……」

女「なに、その、ついにきたかって顔は」

男「いや、ついにきたかって思ったから」

女「おあずけしててごめんね、ポチ」

男「いい加減人間にあげてくれよ……」


222 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:52:34 ID:d5u.xF9o

女「……背中」

男「え?」

女「……背中だけ、おねがい」

男「……い、いやいや、そうだよね! うん、そうだ!」

女「前は、自分でやるわ。……は、恥ずかしいから」カー


223 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:54:21 ID:d5u.xF9o

男「……」

女「……?」

男「りせいの種って、運命の壁だったっけ」

女「北の山よ」

男「ちょっととってくる」

女「……バカなこと言ってないで」

男「う、うん。ごめん」



女「……空飛ぶベッドでも、いいんだけどね」ケホッ




男「着替えは?」

女「押し入れの引き出しに、ジャージとシャツが」


224 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:55:08 ID:d5u.xF9o

男「ん、これね。……はい」

女「ありがとう」

男「じゃ、じゃあ俺外に出ておくから」

女「……そこまでしなくても」

男「いいの! 終わったら呼……ぶのは辛いか。メールして」

女「ふふ、うん」


225 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:56:19 ID:d5u.xF9o


女「おいしいわ。隠し味は、愛情ね?」

男「真心くらいなら入ってるかもね」

女「それでも重畳よ」

男「後片付けやったら、帰るね」

女「ね、眠るまで」

男「ダメ」


226 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 18:57:15 ID:d5u.xF9o

女「……人でなし。やっぱりポチよ、あなたは」

男「……いっそポチになっちゃおうかな」

女「……」

男「……」

女「わ、わたしは」

男「……ごめん。なんか変なこと言ったね、俺」

女「……そうね」


227 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 19:03:41 ID:d5u.xF9o
男「さぁ、ちゃっちゃと食べて、ゆっくり休みな」

女「急かさないでよ、もう」

男「あはは」

女「……ねぇ、明日も会える?」

男「体調が良くなったら、大学で会えるよ」


228 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 19:04:59 ID:d5u.xF9o

女「悪かったら、会えないの?」

男「……会えるよ。きっと」

女「じゃあ、安心して眠れるわ」

男「うん、おやすみ」

女「またね」ヒラヒラ

男「またね」ヒラヒラ


229 名前:以下、名無しが深夜にお送りします[sage]投稿日:2012/04/23(月) 19:06:08 ID:d5u.xF9o



女「お見舞いの定番よね、りんごって」

女(りんごに思い入れがある、かぁ。……そういうことなのかな)

女「けほっ。……ふふ、風邪を移す勇気は、わたしには無かったみたい」

女(あなたにも、きっと)


女「それとも、寝てる間にしたのかしら。ね?」


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[ 2012/04/30 16:36 ] 男「」or女「」 | TB(0) | CM(0)
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