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着物商人「レアなアイテム売ります買います!」2/9


 


着物商人「レアなアイテム売ります買います!」



86 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/05/31(金) 01:19:16.03 ID:HhyReeOk0

騎士竜「どうだ?空の旅は?」

商人「生きた心地がしません」

竜「じゃろうな。いきなり飛び出して"これ"じゃからのう」

商人「一番驚いたのはあなたも竜だったって事ですかねぇ」

騎士竜「まぁな、言う必要もなかったし知られなけりゃそれでもよかったし……」

商人「あと鷲掴みはやめてください、普通に胸とか触ってるんですけど」

騎士竜「あぁ、悪いな。俺の大きさだと人を乗せて飛ぶのはちょっと無理だからな」

竜「どれ、ワシの背に移すがよい。人ひとり乗せるなぞ造作もないわい」

商人「こりゃどうも……ま、これも生きているうちに体験できないようなことですから十分な価値になりますね」

竜「経験こそ財産じゃの」

騎士竜「冒険者をやってると一番耳にする言葉だな」

商人「私の財産は経験よりもレアアイテムですよ!ハハハ!」

商人「って、あ!これなら別に汽車で移動しなくても飛んでいけばよかったじゃないですか!」

竜「この姿は何かと目立つからの、あまりこれで行動はしたくないんじゃ」

騎士竜「いつどこで、誰が珍しい竜狩りをしてるか分からないからな」

商人「強い生物ほど弱点が明るみだったり多いんでしたっけ?」

竜「そんなところじゃ」

騎士竜「さて……あんまり長距離は移動できないからそろそろ降りて野宿だな」

商人「うえぇ……汽車の椅子に座ってた方がまだマシだったのに」

竜「贅沢言うな」

竜「あと、お主らはまだ飯を食っていなかったの。ちょうど材料もある、ワシが特製の野菜スープを振る舞ってやろう」

騎士竜「お、いいねぇ!お前の作る料理は美味いからなぁ」

商人「へぇ、料理出来るんですか」

商人(あんなちんちくりんな子供の姿だったからてっきり中身も子供だと思ってた……というのは胸に秘めておきましょう)

竜「いつも作るのはワシじゃ……まったく」

――――――
―――





元スレ
着物商人「レアなアイテム売ります買います!」
SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)@VIPServise掲示板





92 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/05/31(金) 18:09:12.01 ID:HhyReeOk0


商人「あ゛ーもうすぐ着きますねー」

騎士「結局歩くハメになったな」

竜少女「ヒッチハイクしようにもまさか車も見つからんとは思わなんだ」

商人「専用道路が通ってるみたいですし都市の近くまで行かないと未開拓地が広がっているだけでしたね」

商人「何か採取しようにも何もないってどういうことですかまったく!旅の楽しみ半減ですよ!」

竜少女(ワシらはコイツとようやく解散できるのが楽しみじゃがの)

騎士(口に出すなよ、何言い返されるか分からん)

商人「お!見えてきましたよ目的地!いやぁ、でっかい建物がたくさん立ってますねー!」


93 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/05/31(金) 18:18:13.33 ID:HhyReeOk0
騎士「この国を代表する都市みたいだな、交易も盛んだし」

竜少女「美味い飯が食えそうじゃの!」

商人「ですねー。もう歩きっぱなしだったんでクタクタですよ」

商人「中に入ったら早速みんなで宿でも探しましょうか!」

竜少女「……お主は何を言っておる」

商人「へ?」

騎士「護衛の約束は到着までだったろ……宿まで一緒になる義理は無い」

商人「そ、そんなぁ……またアイツに襲われたらどうするんですか!」

竜少女「んなもん知るか!大体お主、依然ワシらの事を役立たずと言っていたではないか!」

商人「オウフ!」

騎士「今度はもっと腕の立つ奴を引っかけるんだな、それじゃ」

竜少女「達者でのー」

商人「え、ちょ……」

騎士「あ、剣の手入れしたいからどこか鍛冶屋に寄ってくか」

竜少女「ふむ、それならワシの使い魔に探させよう」

テクテクテク

商人「ちょ、ちょっと待ってください!おいこら待て!薄情者!裏切り者!カムバーック!!」

――――――
―――



94 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/05/31(金) 18:24:00.58 ID:HhyReeOk0

商人「畜生!到着するなり逃げられた!」

商人「ま、さすがにこれは仕方がないですね……アイツがあのまま汽車で移動してるとは考えにくいですし、追ってくるにしてもしばらくは大丈夫だと思いますが……」

商人「と言うよりお縄についてもらっていると願いましょうか、うん。あの状況じゃ逃げられないしね!」

商人「そうですねぇ……それじゃあまずいろいろと店を回って品物のレートでも見ますかね」

商人「もともと鉱石売りに来たようなもんですし、そこらへん重要ですね。護衛を雇うのはその後でいいでしょう」

――――――
―――



95 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/05/31(金) 19:07:57.37 ID:HhyReeOk0
とある鍛冶屋

商人「な、なんじゃこりゃ!!」

商人「ほとんどの鉄鉱石が普通の単価下回ってるじゃねーか!なんだよこの大安売りは!」

店主「ん?どうしたんだいお嬢ちゃん?」

商人「あ、オホホホ、失礼しました。いえ、鉄鉱石がやけに安いなぁと思いまして……」

店主「ああ、それね。お嬢ちゃん旅の人?ここ2,3日で来たばかりなら知ってるはずないか」

商人「なんですか?鉱山でも見つかったんですか?」

店主「いや違うよ、鉱山の豊富な隣国から物資の支援があったんだよ」

店主「順次、各店舗に入れてくれることになってね。ウチもそれにあやかってこの値段になってるって訳さ!」

店主「旅商人には残念な話だけどな。まぁ、個々でネットワークを持っているだろうからそんなヘマをする奴ははみ出し者の商人だけだけどな」

店主「ん?どうしたお嬢ちゃん?」

商人「」


96 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/05/31(金) 19:14:31.93 ID:HhyReeOk0
商人(あぁ……特定の組織に所属していないのが仇となったか……)

商人「そ、そうですか。ご説明どうも……それでは……」

店主「お、おう。何も買っていかねぇのかい?」

商人「えぇ、いろいろ見て回っていただけなので」

商人(何も知らずに価格調査してたなんて言えるはずがない……)

カランカラン

店主「お、いらっしゃい!今日も工場使っていくかい?」

仮面男「こんにちは。そうだね、使わせてもらいに来たよ」




商人「なんかすげぇの入ってきた」


97 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/05/31(金) 19:32:10.07 ID:HhyReeOk0
店主「今日も何か作っていくのかい?」

仮面男「いや、今回は友人から武器の点検を頼まれていてね……流石に利益にならない事は迷惑だったかい?」

店主「いやぁいいよ、ここんところ世話になりっぱなしだからね。いいよ、使っていきな!」

仮面男「ありがとう、もし時間が余るようだったら何か売れるようなものを作るよ。では早速……」

商人(……おんや?あの武器確か……)

商人「ちょっと、そこの仮面のお兄さん」

仮面男「ん?私の事かい?」

商人(アンタ以外に誰が居るんだよ)

商人「そちらはご友人の武器とおっしゃいましたけど、その方ってひょっとして竜の……」

仮面男「おっと、その先は言わないでくれ。バレたら色々とマズイみたいだからね」

商人「そ、それは失礼しました……」

商人(やっぱりあの竜二人の武器か)


98 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/05/31(金) 19:44:57.81 ID:HhyReeOk0
仮面男「彼らの知り合いかい?」

商人「ええ、まぁ。長い夜を語り明かした仲です」

商人(嘘は言ってない)

仮面男「フフ……見たところ商人みたいだけど、違うかい?」

商人「はい!旅商人をやっております!よろしければ見ていってください!」

店主「ええ!?お嬢ちゃん旅商人だったのか!?」

商人「気が付いてなかったのかよ!!こんなデッカいリュック背負ってワザと商品飛び出させたりしてわかりやすいようにしてるのになんで気が付かないんだよ!!さっき普通に嫌味言われてるかと思ってたよ!!」

店主「わ、悪い悪い……俺は周りから鈍感で通ってるみたいでさぁ」

商人「どうかしてますよ!」

仮面男「他人の店で堂々と自分の持ってきた商品売ろうとしてる方がどうかしていると思うよ」


99 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/05/31(金) 20:03:59.39 ID:HhyReeOk0
商人「あそうだ、作業工程とか見てみたいんですけどダメですか?」

仮面男「ん?邪魔さえしなければ私は構わないよ。いいかな、彼女を工場に連れて行っても」

店主「俺も構わねぇよ、悪いことしちまったからな」

仮面男「だそうだ。準備するから少し待っててくれ」

商人「分かりました!先に行って待ってますね!」

商人(身なりもよさそうな人ですし、あわよくば何か売れるかもしれませんね)

商人(ここの店で取り扱ってない素材とかも持ってますし……点検だけとか言ってたから売れるかなぁ)

鎧少女「……おい」

商人(作業中は流石にダメでしょうし、始める前に声かけてみようかな)

鎧少女「聞いているのか犬耳?」

商人「狼です!ってうぉあ!!びっくりした!突然現れた!?」

店主「おあっ!アンタいつの間に入ってきたんだ!?」

鎧少女「……驚かせたな、すまない。それより、着物の狼……でいいか?」

商人「はい、狼です」

鎧少女「……あの仮面の男を引っかけようとするなよ?騙されはしないと思うが人がいいからな」

商人「……引っかける?何の事ですか?」

鎧少女「お前の事は先に"あの"二人組から聞いている。護衛を探して詐欺紛いな事をしている奴がいたってな」

商人「な!失礼な!詐欺じゃなくて正当な取引でしたよ!」

鎧少女「まぁそこらへんは興味ないからいいとして、アイツにちょっかい出すようならタダじゃおかないぞ?」

鎧少女「そういうわけだ、失礼する」フッ

商人「おぉう……消えた……」

店主「何だったんだありゃ……」



仮面男「準備できたよ……どうしたんだ?二人ともそんな変な顔をして」

――――――
―――




103 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/02(日) 02:06:55.36 ID:UbdpneD10
仮面男「……」

商人「……」

仮面男「……」

商人「……」

商人「ふぁーぁ……」

仮面男「点検しているだけだ、見ているだけでは退屈だろう?」

商人「ふぇ!?そ、そんなことないですよ!」

仮面男「無理はしなくていいよ、大したことは本当にしてないしね」

商人「むぅ……あ、いくつか聞いていいですか?」

仮面男「私が答えられる事なら」

商人「武器の点検を任されたって言ってましたけど、よっぽどあの二人から信頼されてるんですね?」

商人「竜の二人組から信頼されるなんて一体あなた何者ですか?」

仮面男「いきなり思いきった事を聞くね。私は、鍛冶が出来るただの冒険者だよ」

仮面男「もっとも、あの二人が私を信用しているかどうかは分からないけどね」

商人「と、いうと?」

仮面男「私に武器の点検を任せている理由は、私がこの武器を作った本人だからね」

商人「おお、意外な回答」


104 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/02(日) 02:15:59.77 ID:UbdpneD10
仮面男「彼の大剣、爆竜剣は私の作品。彼女の二振りの剣、竜鳴剣と竜涙剣は私が補修と改装をしたものだ」

仮面男「私以外にも腕のいい者はいくらでもいるだろうが、作製と補修をしたのが私だから私に預けたのだろう」

商人「へぇ……でも、この都市に着いた時に腕のいい鍛冶師を使い魔に探させるって言ってましたからやっぱり信用してるんじゃないですかね?」

仮面男「ほぅ……」

仮面男「……」

商人「……照れてますか?」

仮面男「……照れてるよ」


105 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/02(日) 02:27:12.19 ID:UbdpneD10
商人(なんか面白い人だなぁ)

商人「その武器には何か特殊な機能とか付いてたりするんですか?」

仮面男「ああ、爆竜剣には爆破の魔導核が使われている……これだね」

商人「こ、これ装飾用の宝石じゃなくて魔道核だったんですか!?ここまで大きいのは見たことないですよ」

仮面男「純度も非常に高い、私もここまでいい物は他には知らないね」

商人「でも、爆破の魔導核って確か主にそのまま爆薬として使われることが多いんじゃないですか?」

仮面男「そうだね、普段使われるものは採掘用や解体用に爆薬に混ぜられることが多いが、それはあくまで純度の高くない……悪く言ってしまえば粗悪品だね」

仮面男「特に爆破の魔導核は珍しいものではなく、天然のものでも採掘量も多いし自ずと市場に大量に流通するんだ」

仮面男「魔法で魔導核を作った時に失敗なんかしたりすると大体この核になるしね」

商人「この大剣にこの魔導核を装着させたメリットはなんですか?自爆でもするんですか?」

仮面男「いや、直接爆破させて一個消費じゃ割に合わないよコレ!?」

商人「流石に冗談ですよ」


106 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/02(日) 02:41:08.93 ID:UbdpneD10
仮面男「これは、斬った直後に使い手の意思で爆破の魔法を付与するんだ」

仮面男「爆発の規模は振った時の力加減に比例する」

商人「なんか使いにくそうですね。なんで使いにくいものを作っちゃうんですか」

仮面男「と、言うより、この核自体が武器に付けるとこういう能力しか付与できないのが問題なんだけど」

仮面男「もっとマシな物に出来たかもしれないけど、そこは私の力不足だな……」

商人(傍から見てたらこんな立派なモン作り上げる職人は中々いないと思いますけどねぇ)

商人「そっちの……あの娘が持ってる剣は何かあるんですか?」

仮面男「こっちの二振りは雌雄二対の剣、鳴が彼女の父親の亡骸で、もう片方の涙が母親の亡骸で作られたらしい」

仮面男「どちらも長らくある貴族の手に渡っていたらしいが、私と初めて出会った時には既に取り戻していたみたいだ」

商人(うわ、超ハード)

仮面男「こっちは特にコレといった能力は無いが……あぁ、どちらも彼らの牙と爪を素材として使われているね」

仮面男「自分の体の部位を使って武器を作ってくれと言ってきた時はさすがに私も驚いたよ」

仮面男「私も嬉しかったけどね、滅多に手に入る事のない竜の爪や牙を使って武器を作れるのだから」

商人「……あ」


107 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/02(日) 02:44:52.69 ID:UbdpneD10
商人(しまったぁぁぁ!!あの二人からこっそり鱗でも剥ぎ取っておくんだったぁぁぁぁ!!)

商人(そうだよ何やってんだ私!目の前にレアアイテムの塊が居たじゃねーか!)

商人(プライド捨てて頼み込めば譲ってくれたかもしれないのにィッ!!私のバカ!!)

仮面男「何か後悔しているようだけど大体察しはつくよ、ご愁傷様」


109 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/02(日) 18:34:15.84 ID:u4fe+D/oo
おつ
とりあえずもやし炒めくれ


110 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/04(火) 20:48:17.59 ID:MWH5N3A3O
みてる
とても面白いんだけど商人はもうちょっと性格良くていいと思う
または少し痛い目あわせるとかwwwwww



111 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/04(火) 21:40:30.53 ID:FV91Tino0
再開
もやし炒めは出るかも
綺麗な商人はそのうち


 
112 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/04(火) 21:53:18.81 ID:FV91Tino0
仮面男「他には……実は竜の一部以外に貴重な金属を使っているよ」

仮面男「爆竜剣そのものにはオリハルコンをベースに、鳴涙には補修箇所その他諸々にアダマンタイトを」

仮面男「こっちはもともとアダマンタイトが使われていたからこうするしかなかったのだけれど……」

商人「随分豪華な素材ですね!?あの方たちにそんな高価な物買えるお金なんてあったんですか?」

仮面男「いや、無償で請け負ったよ。自分の腕には自信があるけど、所詮私はアマチュアだからね。保証は出来ない」

仮面男「鉱石は私が用意したものだ。最近は錬金術で質がまったく同じ模造オリハルコン、アダマンタイトが作れるみたいだけど、やっぱり素材にはこだわりたいから本物を使っている」

商人「!?」

仮面男「んー?あちらが貴重な竜の素材を提供する代わりに……だから、無償ではないか」

仮面男「趣味の範囲だね、これは」

商人(いや割に合わねぇだろそれ!?むしろ多くを与えちゃってるよ!?どんな趣味だよ!)


113 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/04(火) 22:24:58.97 ID:FV91Tino0
仮面男「この剣についてはこんなところだね、ほかに聞きたいことはあるかね可愛い商人さん?」

商人「ノリノリですねぇ。それじゃあ、私の持ってるこの刀についてはどう思いますか?」

仮面男「刀……東洋の武器か。見せてごらん」

仮面男「ふむ……いいね。反りのない直刀、青白いではなく完全な深い青色の刃」

仮面男「これは特殊合金かな?材質は調べてみないと分からないが、普通の刀は3、4人ほど斬った時点で刃がダメになるが」

仮面男「とても魔力を通しやすい物になっている。使い手が魔力を流し続ける限り刃が血や油分を弾いて長持ちしやすくなっている」

仮面男「切れ味自体も悪くなさそうだ。刀自体も微量ながら魔力を放っていて強化とある程度の再生をしてくれる……」

商人「!?ある程度の再生ってまさか……あ、やっぱり!ちょっと!勝手に刀に傷をつけないでください!!」

仮面男「いやぁすまない、確証があったからこそ少し傷をつけてみたが、瞬時に治ったね」

商人「むちゃくちゃやりますね!?最悪弁償してもらいますよ!?」


114 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/04(火) 22:38:47.90 ID:FV91Tino0
仮面男「はは、まぁそうなってしまったら流石に買い取るよ。ところで名前はなんて言うんだい?」

商人「え?私の名前ですか?私は……」

仮面男「いや君じゃなくてこの刀」

商人「ありゃ、これは失礼しました。この刀は名だたる鍛冶師、ヴォーグが唯一認めたという刀!聞いて驚けその名も!」

仮面男(ヴォーグだと……?)

商人「名刀・斬姫!どこの市場にも出回っていないモノホンのレア物!お安くは出来ませんがいかがでしょう!」

仮面男「武器は間に合っているからいいよ……ヴォーグか……」

商人「流石に鍛冶に手を付けてる人でその名を知らない人はいないでしょうね」

仮面男「数百年前に実在した天才鍛冶師……狂気的とまで言われた彼のスタイルは誰もマネすることは無かった」

商人「狂気的……?私の知らない話ですね」


115 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/04(火) 22:49:33.39 ID:FV91Tino0
仮面男「彼は決して自分のオリジナルの作品は作らず、いつも必ず模造品を作った」

仮面男「気に入った武器があればそれをどんな手段を使ってでも回収。時には持ち主を死に至らしめることもあった」

商人「ず、随分とえげつない話ですね……」

仮面男「回収した武器を真似て自らが同じものを作る。しかし同じなのは見た目だけ、中身はまるで別物」

仮面男「その武器の数々、時には異形な変形を遂げるものも、時には使用者の命を吸い殺すものもあった」

商人「まるで魔剣ですね……」

仮面男「そう!魔剣なんだ!!」ガタッ

商人「ヒィ!!」

仮面男「武器が出来上がる度に彼は人を斬った!殺した!人間だろうが獣人だろうが構いはしない!!」

仮面男「時に君のような可愛い女の子をズタズタに引き裂いたこともあった!!」

商人「」

仮面男「だが趣味ではない!その生涯をかけて模造品を作り続けたヴォーグの目的はこうだった!」

仮面男「自分だけの、自分の為だけの最強の兵器を作り上げること!!」

商人「へ、兵器!?」

仮面男「そしてヴォーグは作った、その最強の兵器を……」


116 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/04(火) 23:00:38.98 ID:FV91Tino0
仮面男「だがそれと同時にヴォーグは悟った」

仮面男「『自分はコイツに見合う人間か?この兵器を振るって最強となりえる器なのか?』と」

商人「ゴクリ」

仮面男「その日、ヴォーグは命を絶った。自らの作り上げた兵器で首を刎ねたんだ」

商人「な、なぜ……?」

仮面男「自分亡き後、この兵器は野に放たれるだろう。自分の命をその兵器に捧げることで彼は自分の魂をそこに閉じ込めたんだ」

仮面男「最強の兵器に最強の担い手が現れることを信じ、その目に焼き付ける為に……」

仮面男「そして時は数百年流れ……出会った!この兵器を意図も容易く扱う者に!」

仮面男「そしてこれが……」スッ

商人「そ、それは?」

仮面男「天才鍛冶師ヴォーグの最終作にして最高傑作、魔剣ガル・ヴォーグ!」

商人「なななな、何故そのようなものをあなたがががが」

仮面男「巡り廻ってきたんだよ、私の手に」

仮面男「最強である私の手にィ!!」

商人「」


117 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/04(火) 23:08:16.95 ID:FV91Tino0
仮面男「私が手にしたとき、ヴォーグの魂は確かにここにあった……」

仮面男「そしてヴォーグは私の体と一体化し、今に至る……」

商人「……え?えぇ!?」

仮面男「あぁ、武器が欲しい……貴様の刀……キリヒメと言ったカ……」

仮面男「ウツクシイ……トテモ……」

商人「え、ちょ、冗談ですよね?ね?あはは……」

仮面男「手に入れル……ドンナ手段ヲ使ってモ……」

商人「あ……ぁ……」

仮面男「ソイツヲ……ヨコセェェェェェェェェェエエエエエエエ!!!!」

商人「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」


118 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/04(火) 23:15:03.45 ID:FV91Tino0
仮面男「と、言うのは冗談で」

商人「ああああああああああ!!んなこったろうと思ったよ!!!本気でビビったわ!!ちょっとチビったわ!!」

仮面男「それは失礼、この話をして驚かすの大好きなんだ」

商人「趣味わりぃなおいぃ!?」

仮面男「だが、この魔剣ガル・ヴォーグの逸話については本当の事だ」

商人「げっ!それ本物なんですか?」

仮面男「ああ、証明出来るものは無いが間違いなく本物だよ」

商人「それが本当だったら博物館行きの代物ですよ。何故本物だと?」

仮面男「ヴォーグの魂が宿っていたからね、昔は会話なんかも出来た」

商人「んー……にわかには信じられませんが」


119 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/04(火) 23:28:40.02 ID:FV91Tino0
商人「それで、そのヴォーグさんの魂とやらは居ないんですか?」

仮面男「ああ、既に役目を終えて魂は消えていったよ」

商人「最強の担い手をその目で見た……ということですか」

仮面男「いや、ある大戦の最終決戦で私の妻がこれを使って敵に攻撃した時に叩き折ってしまった」

商人「はい!?」

仮面男「その時に満足そうに消えて行ったよ、ふふっ『楽しかったぜ、ありがとよ』なんて言ってさ」

商人「……」

仮面男「それで、私が持てる限りの技術で修復したのがこれだ。彼は消えてしまったが機能は完全回復……」

商人「ばっ――――――――――っかじゃないですか!?」

仮面男「!?」

商人「実物だったら国宝級ですよ国宝級!!それを叩き折った!?あなた物の価値わかってるんですか!?」

仮面男「い、いや、これも武器なんだし……使わないといけないだろう?」

商人「はいそうです!確かに武器は消耗品ですし使わなきゃいけないです!で も ね」

商人「これは歴史的価値のある物です!時代を刻む証明です!なのになんですか!?奥さんが叩き折った!?」

商人「どんな怪力女だよ!?見てみたいよその腕っぷし!!」

仮面男「あ、あんまり滅多な事を言うと……」

商人「なんですか!?」

鎧少女「滅多な事を言うと後ろからその腕っぷしを見せつけるぞ、狼娘」

商人「うわ!また出た!?」


120 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/04(火) 23:34:38.74 ID:FV91Tino0
鎧少女「失礼な、初めからずっとここに居たぞ」

商人「そんなバカな、私の鼻センサーに引っかからなかったですよ!?今気が付きましたよ!」

鎧少女「私は毎日風呂入るようにしているからなぁ……それで臭いにくいんだろ」

商人「そんなバカな……」

仮面男「紹介が遅れたね、彼女が魔剣を叩き折った私の妻だ」

鎧少女「その言い方やめろ!大体その剣は元々私の物だろう!」

仮面男「ははは、こいつぅ」

鎧少女「誤魔化すな!」

商人「何なの一体……」


121 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/05(水) 00:15:30.44 ID:XaxtjcmG0
仮面男「で、だ」

仮面男「この眉唾物の魔剣と同じく、その刀。彼が唯一認めたと言っていたが、それも証明できるのかい?」

商人「あー、そのことでしたら多少膨張して言ってますけど、彼の鍛冶場の隠し部屋に飾ってあった武器の一つって言うのは本当ですよ?」

商人「少し前ですけど、商人ギルドの正式な場で私も立ち会ってますから」

鎧少女「ほう……そこで誰にも気づかれないようにくすねてきたと?」

商人「人聞きの悪い!その場にいた全員で分けたんですよ、こっそり」

商人「ま、のちにバレてこれが原因で全員ギルドから物品没収と追放食らったんですけどね」

商人「その時に隠し通したのがこの一刀だったというわけです」

鎧少女「最悪だなお前」


122 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/05(水) 00:46:40.19 ID:XaxtjcmG0
商人「こういうものを売らずに倉庫の肥やしにしておく方がよっぽど勿体ないと思いますけどね」

鎧少女「さっき魔剣を博物館行きと言っていたじゃないか」

商人「物によりますよ。確かにこれはヴォーグが所有していたものですが彼が作ったものでは……」

仮面男「いや、それ恐らくヴォーグの作品だよ」

鎧少女「なに?」

商人「なんですと!?」

仮面男「さっきも言ったろう?模造品を作るって」

仮面男「彼のオリジナルはこの魔剣しかない。ヴォーグの銘で作られたといわれる武器は大方が偽物か、気が付かれていないか」

仮面男「死の間際、自分の集めた武器や防具をすべて破壊している」

仮面男「オリジナルとすり替えることでワザと自分の作品が世に出回るようにしたんだ」

仮面男「隠し部屋に置いてあったのは……置き忘れだろう、多分」

商人「多分て……」

商人「いや、でもだとしたらこの刀……手放さない方がいいのでしょうか?」

鎧少女「肥やしにするのはなんちゃらかんちゃら……」

商人「えぇい!急に惜しくなったんですよ!悪いですか!」


123 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/05(水) 01:21:07.50 ID:XaxtjcmG0
仮面男「あと、それが本当に彼の作品なら君の手元から離れる可能性が高いだろうね」

商人「なぬ!?私が手放すとでも?死んでも離しませんよ!」

仮面男「いやいやいや、そういうことじゃなくて。彼の作ったものには特殊な魔法が掛けられているようで」

仮面男「自分の所有者に相応しい者の所へ行こうとするんだ。まるで意志を持っているかのように」

鎧少女「確かにこの魔剣は私は父上から譲り受け、その後手放す事になったが……」

仮面男「それを私が受け取り、そして結果的に君の元へ帰って行ったね。魔法が解けた今は私が使っているけど」

仮面男「いくつか彼の作品を見たことがあるが、ほとんど持つべき者が持っていた、という感じがしたよ」

商人「伝説の武器って感じがしますね。私が所有者に相応しくなれたりしないんですか?」

仮面男「君、剣術は?」

商人「さっぱりです。何分物売りなもので」

仮面男「だとしたら難しいだろうね。ある程度の使い手を好むみたいだから」

鎧少女「後は……波長?のようなものが合ったりするとかか?特徴としては」

鎧少女「お前が旅をしている最中にいなかったか?やたらその刀を欲しがってたり刀が呼んでるとか言う奴」

商人「……」

商人「……サァ?イマシタッケネソンナノ?」

仮面男「いたんだね」

鎧少女「よかったじゃないか、おめでとう。博物館行きも倉庫の肥やしも免れるぞ」

商人「嫌ですよ!あんな奴に渡すなんて!」


124 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/05(水) 01:24:28.22 ID:XaxtjcmG0
魔導核がものすごい表記揺れしてることに今更気が付いた


125 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/05(水) 01:39:22.73 ID:XaxtjcmG0
鎧少女「売りつければいいじゃないか、得意なんだろ?」

商人「流石に無一文の相手に売ることは出来ませんよ。ってかあなたさっきから私に厳しいですね」

仮面男「まぁ、そこらへんは君次第だね。泣く泣く手放すか、泣きながら奪われるか」

商人「涙の別れが決定しているかのように言わないでくださいよもう……」

商人「それよりもうひとつ、聞きたいことが」

仮面男「どうぞ」

商人「あなたが今は魔剣を使っているんですよね?でしたら反対側に置いてある……大きい剣は奥さんが?」

仮面男「いや、こっちも私の剣だ」

鎧少女「私の今の獲物は槍だ」

商人「二刀流とか言うやつですか。なんか誰がどれ使ってるかとか複雑ですねぇ……」


126 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/05(水) 01:54:35.23 ID:XaxtjcmG0
商人「この剣にも何か逸話が?」

仮面男「気になる?」

商人「そりゃあ、ここまで聞いたら。多分こっちもただ者ではないでしょうし」

商人「あ、さっきみたいに脅かす方向は無しで!」

仮面男「む?そうか、残念だ……」

鎧少女(そんなことで落ち込むなよ……)

仮面男「……神器という種の道具を知っているかい?」

商人「えぇと、確か、この世には存在し得ない物質、および製造方法で作られた神が使うとされるアイテムですね」

商人「天界、および異界から何らかの要因で極稀に地上へ持ち込まれることがある」

商人「一振りで幾万の兵をひれ伏す刃、巨万の富を得る幸運を与える首飾り、服用することで異次元の扉を開ける事の出来る丸薬など」

商人「決してその形状は予測できるものではない、神々の使う道具として作られた……ってまさか」

商人「そ、それが……!?」

仮面男「そう、この剣は聖剣マリーフィア。正真正銘の神器、神の作りし……されど、神殺しの剣」

商人「……」





商人「……なんか信じられませんね」

仮面男「言うと思ったよ」


127 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/05(水) 02:06:21.34 ID:XaxtjcmG0
商人「いや~、魔剣の方は百歩譲って信じるとしても流石に神器の方はですねぇ」

仮面男「うん、さすがにこれは信じてもらえるとは思わないよ」

仮面男「この剣の出所はハッキリしているが……ま、真相を知るのは私たち夫婦だけで十分だ」

鎧少女「ああ、誰に話す事でもないだろう」

商人「逆に気になりますねぇ……話さないのならいいですけど」

商人「何か神器らしいギミックとかあったりしたんですか?悪魔の軍勢を一振り血の惨状にさせたーとか、念じただけで人をぬッ殺すーとか」

仮面男「聖剣らしからぬ機能だね……大したものじゃないよ」

仮面男「魔法による刃の出し入れ、以上」

商人「え?それだけ?」


128 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/05(水) 02:20:59.41 ID:XaxtjcmG0
仮面男「そう、それだけ」

仮面男「あ、いや。あと凄く軽い」

商人「それ本物だとしてもハズレじゃないですか……」

仮面男「しかし、地上の技術では不可能なんだ」

仮面男「何もない柄の部分から魔法の刃を形成すること自体は可能だ」

仮面男「だが何もない柄から実体剣を形成することは理論的に不可能」

仮面男「使い手が魔力を込めることでそれを可能にする能力を持つ神器、というわけさ」

商人「期待してたのとなんか違う……」

鎧少女「そう言うな、そういうものだってあるんだ」

商人「じゃあせめてその仕掛け見せてくださいよー。それならそれが神器だって私も認めますから」

仮面男「あー、いや、その……」

仮面男「この聖剣も魔剣と同じく、大戦で……なんだ、叩き折ってしまってね、私が」

商人「―――――――――はいぃ!?」

仮面男(また来た……)


129 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/05(水) 02:30:41.36 ID:XaxtjcmG0
商人「叩き折った!?一体あなたはなんなんですか!?唯一無二の歴史的な一品の可能性があるを壊して回るのが趣味なんですか!?タチ悪いですね!!」

仮面男「しゅ、趣味って……」

商人「それで?魔剣はしっかり元通りになって、聖剣のギミックの方は?」

仮面男「あー……私の技術では流石に……」

商人「何の価値も無くなっちまったよ!!ただちょっと大きい小奇麗な剣だよ!!あ、あとホントに軽い!!」



仮面男「私は何故こんなに怒られているんだ……」

鎧少女「変なのに捕まってしまったな、やれやれ……」

――――――
―――



130 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/05(水) 02:38:36.23 ID:XaxtjcmG0

仮面男「……」

鎧少女「……」

商人「……ふぁ……」

鎧少女「暇なら出て行ってもいいぞ」

商人「んが!?そ、そんな事ないですよ!」

仮面男「……」

商人「……さっきから私を無視するように作業に没頭しているみたいですけど」

鎧少女「あの竜共の武器に直す箇所がいくつかあったらしい。無視されてる訳ではなくただ集中しているだけだ」

鎧少女「ああなると私の相手もしてくれなくなる」

商人「寂しいんですか?」

鎧少女「……寂しい」

商人(可愛い)

仮面男(可愛い)


131 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/05(水) 02:48:31.56 ID:XaxtjcmG0
仮面男「二人ともすまない、今の私ではまともに話し相手にもならないし見ていても退屈だろう」

仮面男「気晴らしに依頼所にでも行って来たらどうだい?」

鎧少女「コイツとか?」

商人「いや、私冒険者じゃないですし足手まといにしかなりませんよ?」

仮面男「大丈夫、彼女は強いし何かあったら絶対助けてくれるから」

仮面男「それに、危険な仕事を受ける必要もないんだ。あくまで気晴らし」

鎧少女「この狼と行動を共にする理由がないじゃないか。却下だ、なるべくお前のそばに居たい」

仮面男「それは嬉しいけど……君はもっと身内以外にも協調性を持った方がいいよ。連れて行っていいよ、私が許可する」

商人「お?それじゃあ依頼に寄生させてもらいますね!」

鎧少女「お、おい勝手に決めるな!バカ!離せ!やだーー!!」



店主「さっきから工場からの叫び声が凄い」


132 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/05(水) 03:05:18.55 ID:XaxtjcmG0
――――――
―――


商人「と、言うわけで依頼所です」

鎧少女「なんで私が……」ブツブツ

商人「そう不貞腐れずに!あ、これなんか私が行っても大丈夫じゃないですか?」

商人「ふむふむ、近年増えているウサギ型魔物の変異種の生態調査ですって」

鎧少女「ん?狩りつくして根絶やしにすればいいのか?」

商人「んな脳筋じみた依頼じゃないですよ!?話聞いてました!?」

鎧少女「冗談だ、そんな事するわけないだろう」

商人「ホントに根絶やしになんてしないでくださいよ?」

鎧少女「するか!……ほら、お前の名前を書類に記入しろ」

商人「こういうのって初めてなんですよねぇ~。チョチョイのチョイっと、OKです」

鎧少女「ん、どれ……林檎?これなんて読むんだ?偽名か?」

商人「偽名じゃないですよ、リンゴ。英語でアッポゥ!そう、それが私の名前です!」

鎧少女「そうか、美味そうな名前だな。それじゃあ提出して出発だな」

商人「あ、ちょっと!流れ的にあなたの名前を私に名乗るんじゃないんですか!」

鎧少女「ここらの地方では位の高い者ほど呪いの類を避ける為に名を名乗らない習慣がある。悪いが私は名乗れんぞ」

商人「うぇ、マジですか。私呪われるんですか?」

鎧少女「名前以外にも色々と条件があるが……よっぽど恨みを買われていなければ何もないだろ」

商人「…………」

商人「林檎ちゃん大丈夫♪」

鎧少女「色々恨みを買ってそうだな。そしてお前の頭は大丈夫そうにない」



136 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/08(土) 17:42:04.82 ID:3QaqsdnR0
鎧少女「さて、それはどうでもいいとして。依頼中は私の言うことを絶対に聞け」

商人「ん?経験者の意見は優先しますが流石にそこまで危ない物じゃないですよね?」

鎧少女「何があるか分からんからな。特に、お前みたいに欲深そうな奴は出張って何するか分からん」

商人「んま!失礼な!流石に私もそういう真面目な時は慎重になりますよ!あと欲深いなんてさっき会ったばかりなのに言わないでください!」

鎧少女「受注できたみたいだな……ほら、行くぞ」

商人「あ、ちょっと!聞こえないふりですか!?」

――――――
―――



137 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/08(土) 17:50:21.62 ID:3QaqsdnR0

商人「都市から出れば広がる未開拓地……」

鎧少女「この森林地帯に棲む魔物の生態調査だな」

鎧少女「必要項目が結構あるな……フンまで回収しなければいけないのか」

商人「なるべく干渉はしないようにともありますね。まぁウサギ型と言っても魔物ですし近づかないに越したことはありませんね」

商人「というか、こんなもの専門の人たちがやればいいじゃないですか」

鎧少女「危険が付きまとうからこそ、取り換えの利く冒険者にやらせるんだろうな」

鎧少女「……しかし木々が邪魔なほど生い茂っているだけで生物自体があまりいないな」

商人「生態系自体が壊れてるんじゃないですか?なんか増えてるとか書いてありましたし……お?」

商人「っとと、これはフンですね。危ない危ない」

商人「魔物の物でしょうか?なまじ鼻が利く分最悪な気分ですけど」

鎧少女「!!……それに近づくな」

商人「え?な、何かあるんですか?」

鎧少女「……恐ろしいな、本当に」

商人「もったいぶらずに行ってくださいよ!なんですか!?」

鎧少女「それ、多分人糞だ」

商人「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!」


138 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/08(土) 17:55:45.84 ID:3QaqsdnR0
商人「ホワイ!?なして!?なぜに!?なにゆえ!?」

鎧少女「こういうところでたまにあるんだ……人間とは限らないがそれに近い種族か。まったく、嫌な気分にさせる」

商人「冒険者怖い」

鎧少女「見なかったことにしよう、引き続き探索を続けるぞ」

商人「了解です。あ、ついでにいい香りのする消臭スプレー撒いておきますね。魔物逃げちゃうタイプの臭いですけど」

鎧少女「それはやめろ」


139 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/08(土) 18:01:10.34 ID:3QaqsdnR0
商人「結構歩いてるのに見つかりませんねぇ」

鎧少女「帰りを考えてもこのペースだと今日中には無理かもしれんな」

鎧少女「いかんせん範囲が広すぎる。せめてどこのエリアいるのか依頼主が調べるべきだろ」

商人「この魔物、定期的に住処を変えてるみたいですしそれも難しいとかなんとか」

鎧少女「周期も法則性も分かっていないんじゃ依頼を受けたこっちもお手上げだ」

商人「誰がこんな面倒な依頼受けたんですか?」

鎧少女「……」

商人「……そう、私です!」

鎧少女「腹が減ったな、ここらで飯にしよう」

商人「突っ込みも無しに話題をそらされるとちょっと来るものがありますね」


140 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/08(土) 18:11:21.35 ID:3QaqsdnR0
商人「そうだ、お弁当入ります?林檎ちゃん印の特製弁当、お安くしておきますよ?」

鎧少女「いらん。食事なら持参してきている」

商人「あら残念。携帯食ですか?」

鎧少女「ああ、質素だけどな。夫が作って持たせてくれたものだし食べなきゃ損だ」

商人(携帯食だから知れてるな。お弁当チラつかせてみますかね)

商人「では私はこれ!特製スタミナ弁当!肉肉肉と肉尽くしな贅沢で豪快なお弁当♪長丁場になりそうですし体力付けるのは必須!」

鎧少女「夕方には引き上げるつもりでいるしそんな重いもん食ってれるか。私のはこれだ」

商人「おや?小さな包みから出てくるそれは……」




鎧少女「おにぎりだ」

商人「ここで和風」


141 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/08(土) 18:21:09.56 ID:3QaqsdnR0
鎧少女「夫が東洋の島国出身だからな。携帯食と言えばあっちではコレがポピュラーなんだろ?」モッキュモッキュ

商人「仮面被ってるから顔立ち確認できませんでしたが同郷だったとは。というか小さいのが2つしかないですけど足りますか?」

鎧少女「私は小食だからな、これくらいで十分だ。お前は食わないのか?」モッキュモッキュ

商人「ああ食べ方可愛いなもう!なんかどうでもよくなってきた!食べますよ!この肉しか入ってないようなスゴイ弁当!誰だよこんなの作ったの!!」ガツガツガツ

……

商人「胃もたれしてる上にお腹痛いです」

鎧少女「それみろ」

――――――
―――



142 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/08(土) 18:32:37.21 ID:3QaqsdnR0
商人「結局目標が見つからずに依頼所に帰ってきちゃいましたよ」

鎧少女「こういう時もある。明日もまた森に入るから同じ時間に陣準備をしておけ」

商人「始めは嫌々だったのにノリノリじゃないですかー」

鎧少女「まぁ、日は浅いがこれでもプロだからな。受けたものは責任を持つ」

商人「私は違うんですけどね~。森の中じゃ商売できないし、目ぼしい物も何もなかったし。私だけ損してる感じですよ」

鎧少女「自分から寄生すると言っておいてそれは無いだろう。まあいい、強制はしないから好きにしろ」

商人「いんや!そうは言っても受けてしまったのは自分の意思!終わるまで一緒にがんばりましょう!」

鎧少女「そうか?いい心がけだ」

商人(売ろうと思っていた鉱石が売れそうにないのでしばらく他の物の価格調査だけで済ませようってだけですけどね)


143 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/08(土) 19:43:21.33 ID:3QaqsdnR0
鎧少女「じゃあここで解散だな、私は一旦さっきの鍛冶屋に寄ってから宿泊先に行くが……」

商人「あ゛、宿取るのすっかり忘れてた……どうしよう」

鎧少女「そいつはご愁傷様、では明日」

商人「どうしよう、こんな時間じゃ入れてくれる宿探すなんて難しいだろうなぁ」チラッ

鎧少女「あ、夕飯どうするんだろう。あっちで出ないなら買い物しておいた方がいいかな」

商人「あぁ……こんな大きな街で私は野宿しなければいけないんでしょうか!夜中に暴漢に襲われて無残にも美しい花が散ってしまうなんて!!」チラッチラッ

鎧少女「一度相談してからだな、作るとしたらあいつ何が食べたいかなぁ」

商人「ああ!なぜこんなにも世間の風は冷たいのか!!ああ!なぜなの!!」チラッチラッチラッ

鎧少女「ええい鬱陶しい!!私を見るな私に構うな犬っころ!!」

商人「犬じゃなくて狼ですって!!あ、ちょっとそんな乱暴な!」

鎧少女「乱暴なのは貴様だ!しがみつくな!離れろ!!」

商人「鎧の上からでもわかるような華奢な体ぁぁぁ!!」

鎧少女「離せ変態!周りの視線が痛いからやめろ!!」


144 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/08(土) 19:59:41.83 ID:3QaqsdnR0
商人「つーわけで宿、一緒にお願いします♪」

鎧少女「どういう訳だよ!」

商人「割り勘でいいんですよぉ!お願いします、もうこんな時間に宿なんてどこも入らせてくれないんですから、マジで」

鎧少女「……割り勘でいいんだな?」

商人「お?乗ってきますか、いいですよ。流石に全部そっちが出せみたいに図々しいマネできませんからね」

鎧少女「今でも十分図々しいが……とりあえず離れろ」

商人「はいはーい!では旦那さん迎えに行ってレッツらゴー!」

鎧少女(まずいな……あの竜共に押し付けられる形で厄介な奴に捕まってしまったみたいだ)



148 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 14:30:35.79 ID:8KDRXBnf0
商人「ぐっへっへ、宿代浮いた浮いた」

鎧少女(いつまで笑っていられるかな)

鎧少女「着いたな……邪魔するぞ」カランカラン

店主「いらっしゃい。あぁ、仮面の兄ちゃんの連れか。今しがた作業が終わったみたいで片づけしてるよ」

鎧少女「ん、時間通りだな。外で待っていると伝えておいてくれ」

店主「あいよ」

商人「時間決めてたんですか。今までずっと剣を弄ってたんでしょうか?随分長く作業してましたね」

鎧少女「ああ、とにかく丁寧にやるのがあいつもモットーとかなんとか」

商人「それで、仕上げたのはいいんですけどどうするんですかアレ?わざわざ届けに行くんですか?」

鎧少女「いや、そろそろ取りに来るハズだが……」





竜少女「げ、なんか見覚えのある奴が店の前に立っておるぞ」

騎士「なんか話してるけど……知り合いとかじゃねーよな?」


149 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 14:39:34.36 ID:8KDRXBnf0
鎧少女「来たか」

商人「遅かったですねーもう作業とか終わって片づけに入ってるみたいですよ?予定時間より早く来るもんじゃないんですかこういうのは?」

竜少女「予想的中じゃ……」

騎士「うわっ……」

商人「うわってなんですか!?なんちゅう反応するんですかあなた方は!?」

竜少女「小娘、ワシが言うのもなんじゃが交友関係は少し考えたほうがいいぞ?」

鎧少女「お前たちに押し付けられる形になったんだよトカゲが」

竜少女「あ゛ぁん?目上の者の意見もまともに聞けんのかお主は!」

鎧少女「その幼児体型でよく言えたものだな?」

竜少女「お主もちっこいじゃろうが!」

鎧少女「お前よりは背は高い!」



騎士「会うなりいきなりこれだよ」

商人「あらあら、仲のよろしくない事で。で、原因は?」

騎士「大体お前のせい」

仮面男「随分賑やかだね。店の中から普通に聞こえるよ」

商人「あ、ただいま奥さんを連れて無事に戻りました!」

仮面男「どうもありがとう」


150 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 14:50:50.27 ID:8KDRXBnf0
チビ!
ヒンニュウ!
チンチクリン!
ガミガミギャーギャー


仮面男「さて、彼女たちはとりあえず置いておいて」

商人「いいんですかアレ?」

騎士「剣のほう、悪かったな」

仮面男「構わないよ、私も趣味でやっていることだし」

仮面男「一応手入れは入念にしておいたよ。よっぽど大きい傷以外は君が持っていれば再生するから、本当に簡単な手入れをしただけだけど」

騎士「その手入れを俺だけでも出来るようになれればそれが一番だけどな」

仮面男「君はこれから長い人生を歩んでいくんだ、ゆっくり覚えていけばいい」

騎士「……"永い"人生か」

仮面男「……すまない、軽率だった」

商人「お二方?何か感傷に浸っているところ悪いんですがそろそろあの見苦しいキャットファイトを止めないと騒ぎになりかねませんよ」


ゴミ!!
カス!!
クソビッチ!!
アバズレ!!

仮面男「oh...」

騎士「」


151 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 15:06:00.34 ID:8KDRXBnf0
仮面男「そこまでにしておけ品がない。どうせ突っかかったのは君だろう?」

鎧少女「離せ!今日こそどっちの立場が上かこの爬虫類に思い知らせてやる!」

商人「可愛い顔が台無しですよー」

騎士「先にお前が変な事言うからあっちも突っかかってくるんだよ。喧嘩するくらいなら喋らなきゃいいだろ」

竜少女「ええい離さんか!高々30そこそこの小娘にバカにされては数千年生きたプライドというものが!」

商人「お二人ともやめてください!私の為に争わないで!」

鎧少女「黙れ!訳のわからんことを言うな!」

竜少女「そもそもお主のせいじゃ!」

商人「なんで!?さっきも言われたけど私悪くなくね!?」


152 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 15:39:48.01 ID:8KDRXBnf0
仮面男「はいはい、彼女が緩衝材になってくれたおかげで喧嘩はそこまで、これで終わり」

商人「そうです、そこまでです!この話は終わりです!」

商人(被害が拡大する前に)

鎧少女「まったく……分かった。すまないな、少しイライラしてた。狼のせいで」

竜少女「ぬぅ、先に謝られてしまったか。ワシも悪かったの、イライラしてた。犬のせいで」

商人「狼です。だから私のせいにするのはやめろ」

仮面男「3人の見苦しい喜劇をどうも」

騎士「お前ら普通に喋ってるときとかはなんてことは無いのに、ちょっとしたきっかけがあればこれだからな」


153 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 15:47:08.79 ID:8KDRXBnf0
喧嘩の下りいらなかったな


154 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 15:53:02.42 ID:8KDRXBnf0
仮面男「さて、宿に戻るとしよう」

鎧少女「そうだ、コイツが割り勘で私たちと同じ宿に泊まりたいと言っているんだが構わないか?」

仮面男「ん?構わないが……しかし」

鎧少女「別にいいだろう?困ることもあるまい」

商人「もう決定してますけどねー。よろしくお願いしまーす!」

仮面男「……まぁいいだろう。面白そうだ」

騎士「面白い……?」

竜少女「……ふむ、なるほど。面白そうじゃの、ワシらも帰りのついでに見ていくか」

商人「?なんですか?」

鎧少女「よし、ならばとっとと行くぞ。もう辺りも暗くなってきた」

――――――
―――



155 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 15:58:38.91 ID:8KDRXBnf0

商人「……」

竜少女「じゃあワシらはここでお別れじゃな」

騎士「今日はありがとな、それじゃあまた」

仮面男「ああ、さようなら」

鎧少女「またな」

商人「……あの」

仮面男「どうしたんだい?」

商人「いえ、私たち確か宿に泊まるって言ってましたよね?」

鎧少女「確かに言ったな、そして割り勘だ」






商人「…………なにこの大豪邸」


156 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 16:13:43.84 ID:8KDRXBnf0
竜少女「よかったのう、こんなに豪勢なところで寝泊まりできるなんてあまり体験できることではないぞ?」

騎士「あーうらやましいなー、俺たちじゃとてもじゃないけど割り勘でも払えそうにないわー」

商人「ちょっっっっっとまてぇぇぇぇぇぇ!!聞いてないぞこんなこと!?豪華すぎるだろなにこれ!?」

鎧少女「言ってなかったからな。もちろんワザと」

仮面男「要人や大物政治家が招かれて泊まるような宿だ、そこらの豪華ホテルと宿泊費を比べるのもおこがましいほど」

騎士「一般人の俺が泊まろうものなら10分で全財産消えてなくなりそうだなーこれは」

竜少女「ま、こやつらはなんといっても割り勘じゃからの、安く済むのではないか?気休め程度に」

商人「」

鎧少女「こんな下らんものの建設費や維持費は税金で賄われている。ちなみに、私たちは招かれて来ているから宿泊費は免除だ」

商人「な、なら私も免除ということで……」

鎧少女「招待されたのは私たち1組だけだ、もう一つ部屋を増やすのならこちらの口利きで代金も半分にしてやろう」

鎧少女「そこらの商人で払える額の金額ならいいんだけどなぁ」

商人「あー……私、別の宿を探してきまーす……」

鎧少女「あーあぁ、誰かさんが泣きついて宿を紹介しろとせがんできたから宿泊費半額という破格の条件で部屋を用意してやろうと思ったのにあんまりだなぁー!」

鎧少女「商人としての信頼に関わるんじゃないかなーと私は思うんだけどなー」

商人「やめて!大声で言わないで!」


157 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 16:26:20.40 ID:8KDRXBnf0
鎧少女「なんかこの狼の獣人はいらないガラクタ人に押し付けるようなこともしそうだなー!」

竜少女「この着物を着た商人は都合のいい話を持ちかけて相手を騙して金品を奪ってそうじゃのー!」

商人「おいバカやめろお前ら!人通りが多いんだよここは!」

鎧少女「本性を現したぞ!」

竜少女「やっぱり極悪人だったのじゃ!!」

商人「はぁ!?根も葉もないこと言わないでくださいよ!言わせたのあなた方でしょ!?」

竜少女「うわーん!怒鳴られたのじゃあー!この犬耳のおねーちゃんが苛めたのじゃあー!」ダキッ!

鎧少女「やめてください!泣いている子もいるんですよ!」ナデナテ

商人「ちょ!?なんてことを……」



ワイワイガヤガヤ

「えーなにあれ?」
「あの獣人が泣かせたみたいだ」
「まだ小さい子二人相手に……」
「もやしと玉子焼き或いはパスタ要りませんかー?」
「聞いたか?商人だってよ?」
「うわ、詐欺か?」
「ひでぇな、まだ相手は子供じゃないか」

ワイワイガヤガヤ

商人「な、あ……」




騎士「天罰が下ったか」

仮面男「明らかに人為的なものだけどね。そして謎のコンビプレーだ」


158 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 16:39:09.37 ID:8KDRXBnf0
商人「お、おおお……」

鎧少女「?」

商人「覚えてやがれコンチクショー!!」ダダダダダッ




竜少女「凄い勢いで逃げて行きおった」

鎧少女「ま、このくらいでいいだろう。私は被害を受けていないからアレだが、少し目に余るものがあったしな」

鎧少女「逆にこの状況から開き直っていれば部屋をとってやろうかとも思ったが」

仮面男「この状況から開き直ったらメンタルが強すぎるだろう」

竜少女「ワシらは心底スッキリしたがの!」

騎士「いいもん見れたよ、ありがとな」

仮面男「これならここら辺の地区ではしばらく商売は出来なさそうだね。可哀そうだけど」

竜少女「こんな立派な豪邸が立っていて金持ちが多そうな地区じゃしな、あやつに取っては高い授業料になったの」

鎧少女「あ、しまった。これじゃあ明日あいつ依頼所に来ないかも……」

仮面男「彼女は必須なのかい?」

鎧少女「いや、そういうわけじゃなけど……まぁそれならそれでいいか」

騎士「それじゃあ俺たちは今度こそ御暇しようかね」

竜少女「またの!」

鎧少女「楽しかったよ、またな」

仮面男「付き合ってくれてありがとう、おやすみなさい」

――――――
―――



159 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 17:03:10.88 ID:8KDRXBnf0

商人「あぁ、実に不幸だ。何故私がこんな目に合わなきゃいけないんだ」 ※自業自得です

商人「ってか初めから泊める気とか無かったって事かよ!なんか今になって腹立ってきた!」

商人「チクショウ、幸い商店街通りで明るいからまだいいものの、こんな発展している都市のど真ん中で野宿とか嫌ですよ」

商人「……結構歩いたし、ここら辺なら商売出来るかな?そのまま夜を明かせば何とかなるでしょう!」

商人「よし、そうしよう!念のためマスクとサングラスを付けてっと……ここに露店を開くわ!!」


商人「さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!珍しいレアアイテムの陳列!滾る商人の熱線!どこにもない素晴らしきユートピアが今ここに!!今、買い取りも熱い!高価な物を売って買って!当てろ世界一周旅行!(?)」




商人「って、通る人たちみんな可哀そうなものを見るような目で私を一目見てから通り過ぎるばかり……これだから都会はっ!!」チョンチョン

商人「誰ですか背中をつついて。私は今忙しいんですから」

少年「ねぇ犬耳のねーちゃん」

商人「狼ですって、子供?もう夜ですよ、こんな時間にうろちょろしてたら悪いおじさんに連れていかれちゃいますよ?」

少年「さっき俺と同じくらいの子苛めてたの見てたよ、泊まるところ無いんだろ?」

商人「oh...」


160 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 17:25:38.44 ID:8KDRXBnf0
商人「ワタクシハ先ホド騒イデイタモノ達トハ関係アリマセン」

少年「そんな変わった服着てる人なんてねーちゃんしかいないって」

商人「というか何ですか?私に何か要件でも?からかいに来たというのなら営業妨害でムショに突き出しますよ?」

少年「何言ってるのかよくわからないけど。よかったらさ、俺ん家に泊まっていかない?」

商人「ガキんちょの癖に私を家に連れ込もうと誘ってるんですか?そういうことはもう少し大人になってからするんですね」

少年「ねーちゃんみたいなひんそーな体なんて興味ねーよ」フニョ

商人「っておい!胸を触るなマセガキ!私は高いぞ!?」


162 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 17:44:56.47 ID:8KDRXBnf0
少年「ウチ民宿なんだよ。今は誰も泊まってないし、ねーちゃん宿無しで可哀そうだから母さんが客引きして来いってさ」

商人「可哀そうな扱いされちゃったよ……それならまぁありがたい話ですけど、騙して強面なお兄さんがたくさん居る部屋に押し込まれたりしないでしょうね?」

少年「?なんで?」

商人「あぁ、純粋無垢な子供に何言ってんだ私は!分かりました、案内してください!」

少年「やりぃ!お客さん取ってお小遣いアップだぜ!」

商人(私の思考が完全に穢れてるパターンだったか……胸触ったことは水に流してやるか)

商人「あ、そうだ。お菓子食べます?」

少年「なに?タダでくれるの?商人なのに?」

商人「ちょっとしたサービスですよ。はい、リンゴ飴」

少年「うおすっげぇ!なにこれ見たことない!」

商人「ぬっふっふ、これはですねぇ……」

――――――
―――



163 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 18:01:00.82 ID:8KDRXBnf0

少年「母さん、連れてきたよ」

商人「お邪魔しまーす」ソロー

母「あら、いらっしゃいませ」

商人(よし、大丈夫そうだ)

商人「この子から紹介されて来たのですが、いいんですか?」

母「はい、今日は誰も宿泊予定の人は居ませんからね」

商人「……さっきの騒動を見ていたんですよね?いいんですか?」

母「ええ、私はそういう事は気にしませんから。初めから見ていたので楽しかったですし」

商人「あ、なーんだ。だったら私が悪いことしてないのは知ってるんですね!よかったよかった」

母「推定無罪ですけどね」

商人「ひでぇ」


164 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 18:11:28.20 ID:8KDRXBnf0

少年「じゃあ俺部屋の用意してくるよ」

母「先に手洗いしなさいね。あとうがいも……」

少年「そんな子供扱いすんなって!今は俺は従業員なんだからさ!」タタタ

母「あ、ちょっと。……もう、最後まで聞かないで」

商人「ふふ、頑張ってる姿が可愛いじゃないですか。人の胸勝手に触りましたけど」

母「あら、ごめんなさい。あの子、好きな子にちょっかいかけるのが癖なんですよ」

商人「ありゃ、私は好かれてるってことですね?ま、子供のすることですし構いませんけど」

母「ふふふ、ありがとうございます。それと、食事はお済ですか?もうすぐ支度ができますのでご一緒にいかがですか?」

商人「お?それじゃあお言葉に甘えさせていただきます」


168 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 21:49:02.62 ID:8KDRXBnf0
食卓にて

少年「ねーちゃんどこから来たの?何歳?スリーサイズは?」

母「こら、ご飯食べてるのにあんまり質問ばかりしてるとお姉さん疲れちゃうでしょ。あと最後の質問はやめなさい」

商人「出身は東の方の小さな島国ですね。歳は今年で22になりました。スリーサイズは答えるわけねぇだろエロガキ」

母「あぁ、どおりで綺麗な服を。あちらではそのようなものが普段着なんですか?」

商人「いえいえ、もう着物着てる人は滅多にいませんよ。こういう服装の方が商人っぽいので私はこんな恰好してるんです」

少年「そういうの知ってるよ!男はサムライとかニンジャとかってのでしょ?」

商人「あー、探せばいるんじゃないですかね。最近は他国に影響されて剣士とかアサシンとかにすり替わってるみたいですけど」

母「ここにはやはり商売をしに?」

商人「ええ、鉱脈が近場に無いので鉱石を売りさばこうとしたんですけど……」

母「最近鉱脈と物作りの盛んな隣国から大きな支援がありましたからね」


169 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/10(月) 22:27:08.08 ID:8KDRXBnf0
母「そういえば、近々その隣国の国王様を呼んでパーティが行われるそうですよ?」

母「確か場所はあなたが騒ぎを起こしていたあの豪邸で」

商人「騒ぎを起こしたのは私ではありません。でも、それなら上手く集まってきた金持ちを引っかければいい商売になりそうですね」

商人(ん?だったらあそこに宿泊したあの二人組は一体何者……?)

母「でも物を売ること自体が難しいんじゃないですか?」

商人「と、いうと?」

母「パーティは関係者以外は立ち入れないみたいですし、外で商売するにしてもあなた……」

商人「……そうでしたね」

少年「ねーちゃん歩いてた人たちみんなからスゴイ目で見られてたね」

商人「ここら近辺ではもう何もできないですね。次会ったらどうしてやろうか」



173 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/12(水) 00:45:00.33 ID:i2vBK3mh0
母「ですけど、国の代表が来るわけですからそのパーティに合わせて各所で催し物を出すみたいですよ」

母「ここじゃ流石に露店も開けないと思いますが少し場所を変えれば出来るんじゃないですか?」

商人「ふむふむ、なるほど。金持ちは捕まりそうにないですけどそのお祭り騒ぎで来る観光客やらなんやらにいろいろ売り捌けどうですね」

母「本当はウチもそれで女性3人のお客さんの宿泊予約を取ってたんですけど、2日前に列車事故があったみたいで来れなくなったとか……」

商人(……列車事故?)

少年「貨物車が誰かに切り離された上に穴だらけになってて氷漬けになってたってニュースでやってたね」

商人(氷漬け……?あぁアレか……うん、私は悪くない)


174 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/12(水) 00:51:23.36 ID:i2vBK3mh0
母「電話でひょっとしたら来るとしか言われなかったので……部屋は一応開けてるんですけど」

少年「ウチは有名でもないし他のお客さんも居ないけどね。で、都合よく宿無しのねーちゃんが現れたってわけ」

商人「宿無し言うな!……私が魔導都市に着いてから宿を探したのはお昼前でしたけどそれじゃあ遅かったみたいですね」

少年「予約とかもあるはずだし、朝方に宿を探しても馬小屋みたいなところしかないんじゃねーの?」

母「こら、ウチも宿屋なんだからそういうことは言っちゃダメでしょ?」

少年「だっていくつか本当に馬小屋みたいなところあるんだもん」

商人(都市と言っても貧富の差はピンキリですか……)


175 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/12(水) 00:58:13.70 ID:i2vBK3mh0
一方その頃

―――――――――

騎士「俺たち、まるでまともな宿があるように振る舞ったけどさ」

竜少女「寒いのじゃ……」

騎士「この部屋、壁に穴開いてるよ……窓ちゃんと閉まらないし」

竜少女「……隣の部屋から若い力を漲らせている卑猥な男女の声が聞こえるのじゃ……」

騎士「……明日は野宿でいいよな?」

竜少女「うん……」

―――――――――


176 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/12(水) 01:06:01.45 ID:i2vBK3mh0
少年「そうそう!ニュースと言えばさ、俺も大ニュースがあるんだ!」

母「なに?またどうせ女の子にちょっかいかけて酷い目にあったとかでしょ?」

少年「いつもやってることだけどそんなのニュースじゃねーよ!」

商人「いつもあんなことやってんのかよクソガキ」

少年「別に減らないからいいだろそんなもん」

商人「女の子大事にしないといつかバチがあたりますよ」

少年「それはどうでもいいや。それより、ここの地区から街の外に出てすぐの森あるじゃん?」

母「またそんな危ないところへ行って……!あそこは整備されてないし魔物もいるかもしれないから行っちゃダメって言われているでしょう?」

少年「へーきだよ、あそこで魔物なんて見たことないんだもん」

少年「それでさ、その森に行ったときにさ、すっげぇ大きいのがいたんだよ!」

商人「魔物ですか?」

少年「だから魔物じゃないって。ウサギだよ、ウサギ」

商人「ウサギ……?」


177 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/12(水) 01:15:35.82 ID:i2vBK3mh0
母「それでどうしたの?まさかちょっかいかけたの?」

少年「ううん、遠くで見てたらさ、顔色の悪い変なおっさんが『ここは危険だよ』って言って俺を連れてワープしたんだよ!ワープ!」

母「そんな変な作り話を……お姉さんの気を引こうとしてるの?」

少年「ち、違うよ!ウサギもワープしたのもホントの大ニュースなんだから!」

商人「変なおじさんはともかく……そのウサギはどのくらい大きかったかわかりますか?」

少年「え?んっと……ウチの1階の天井くらいかな?」

母「本当にいたとしてもそれは魔物じゃない!もうあそこへは行かない事!わかった?」

少年「ちぇー、数少ない遊び場なのになぁ」

商人(依頼所で貰った情報ではウサギ型の魔物は小型ということは記載されていたはず……これが変異種?)


178 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/12(水) 01:24:12.01 ID:i2vBK3mh0
少年「ごちそーさま!風呂入れてくるね」

母「はい、お願いね」

商人「あ、私もごちそうさま。お夕食まで頂きましてありがとうございます」

母「いいですよ、実は宿泊費の中に含まれてるサービスですし」

商人「それは私が今食事をしなくてもしっかり夕食代取られてたってことですか」

母「うふふふ」

商人「食えない人ですねぇ……っていうか先に言ってくださいよ」

母「ご一緒するとおっしゃいましたので言う必要はないと思ったんですよ」

商人「それを知らずに朝食とか逃したらどうするんですか」

母「うふふふ」

商人「……」

母「……」

母「冗談ですよ?」

商人「じゃないと困ります」


179 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/12(水) 01:33:19.62 ID:i2vBK3mh0
母「失礼しました、ではお風呂の準備ができるまで部屋で寛いでください」

商人「そういやお風呂入れてくるって言ってましたけど、シャワーで済ませるものじゃないんですか?ここら辺は」

母「東洋のお客さんも結構来ますから、湯船に浸かりたいという方もいらしたので」

母「あんまり広くない家ですけど張り切って和室も用意したりしてます」

商人「お?ってことは私が借りる部屋が?」

母「そうですね、余計なお世話でしたか?」

商人「いえいえ、私もそっちの方がいいですよ。ありがとうございます」

少年「ただいまー。それじゃあ俺が部屋に案内するね!」

商人「んじゃあお願いします」


……


180 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/12(水) 01:38:40.36 ID:i2vBK3mh0

少年「ここだよ」

商人「おお、畳!イッツ畳!!そして何故か飾ってある鏡餅と角松!正月かい!!」

少年「母さん東洋の事分からないからそれっぽいのをそれっぽくしただけだけどね」

商人「穴だらけの障子!他の客のせいかこれは!」

少年「それは俺がやっちゃった」

商人「何故破った!?これ一か所破ると直すの全部はがさなきゃいけないんだよ!?」

少年「あ、いや。前に美人のねーちゃんが泊まった時に中が気になってつい」

商人「将来有望だなこのガキんちょ!?」


181 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/12(水) 01:43:18.19 ID:i2vBK3mh0
商人「あとなんですか?この趣味の悪い……」

少年「それ?ゴガツニンギョウだったかな?ヒナニンギョウ?母さんが買ってきたやつだからよくわかんないや」

商人「どう見てもワラニンギョウだよ、そしてなぜこんなにデカいんだ」

母「抱き枕にどうぞ♪」

商人「使わねぇよ!?胸のあたりに釘刺さってるよ!?どうやって私の国の知識付けたらこんな器用な間違いするの!?あと突然現れないで怖い!」


182 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/12(水) 01:50:24.39 ID:i2vBK3mh0
母「あ、これなんかどうです?竹が無いからそこら辺の木の棒で補って自分で作ったんですけど」

少年「テレビでよく見るよね、なんかこう『カコーン』てなるやつ」

商人「ししおどしだよ!?部屋の中に置くものでもないしそこら辺の木の棒使ってる時点で原型留めて無いよ!?」

母「力作です」ドヤァ

商人「決定的に何かが間違ってます!もういい疲れた……」

母「ではごゆっくり~」

少年「ねーちゃん!後で背中流してあげるよ!」ガラガラピシャ!

商人「テメェ人が風呂入ってる最中に一歩でも足を踏み込んだらグーで殴るぞグーで」


183 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2013/06/12(水) 02:13:47.91 ID:i2vBK3mh0
商人「あ゛ーやっとゆっくり出来る」

商人「騒がしい親子だなまったく、いや一方的に騒いでるのは私か。突っ込みが追いつかん」

商人「さて、お風呂に入る前に商品の手入れでもしますかね」

商人「ちゃんと面倒見てあげないとヘソ曲げちゃいますからねぇ」

商人「お、そういえば。先日買い取った魔導核付きの指輪の鑑定してませんでしたね」

商人「ごたごたしてたせいですっかり忘れてました、鍛冶屋で調べてもらうのが手っ取り早いですけど……」

商人「ま、明日あの仮面の人に頼みましょうかね。若干会いづらいですけど」

少年「ねーちゃん独り言多いね」

商人「障子の隙間から覗くなエロガキ」


191 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/12(水) 23:50:09.64 ID:i2vBK3mh0
少年「とりあえず風呂湧いたよ」

商人「そうですか、わかりました。それじゃあさっそく入りに行きますか」

少年「うん!」



商人「……」テクテク

少年「……」テクテク

商人「つ い て く ん な」

――――――
―――



192 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/12(水) 23:59:47.05 ID:i2vBK3mh0
カポーン

商人「お風呂に浸かれるなんて久しぶりですねぇ」

商人「普通の宿でもシャワーか最悪野宿で水浴び程度ですし」

商人「女一人旅って危険が多いんですよねぇー。襲われかけたことが何回あったことか」

商人「……体目当てじゃなくて荷物目当てばっかりだったなぁ」

商人「私ってそんなに魅力ないんでしょうか……」シュン



少年「ねーちゃん!背中流すよ!」ガラガラッ!!

商人「お手製爆弾FBR-2!!」

少年「目がぁぁぁぁぁぁぁ!!」

商人「次に来たら本気で顔面にグーですよ?」

……


193 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 00:18:14.83 ID:j8YTGcY20
商人「あのガキ油断も隙もありゃしませんね、私の貞操が危なすぎます」

『……お邪魔します』

母『あら、こんばんは』

商人「?」

『……予約を入れた者ですが』

母『えぇっと確か……』

『……3名女性で入れてたはずです。名前は青空カフェ御一行で』

母『はい、ご予約を受けています。お疲れ様です、列車事故大丈夫でしたか?』

『……それなりに』

母『他のお客様は?いらっしゃらないみたいですが』

『……今日は来れない、明日に来る』

母『畏まりました、3泊のご予定でしたね。お夕食は……』

『……頂きます』



商人「どこかで聞いたことのある声と喋り方だなおい」


194 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 00:49:02.27 ID:j8YTGcY20
母『今作りますのでごゆっくりして行ってください』

少年『眼帯のねーちゃん!俺が部屋に案内するよ!』

商人「やっぱり眼帯の人か……どういう巡り合わせだよこりゃ」

商人「また鉢合わせになるのも嫌ですしバレないうちにとっとと部屋に戻りますかね」チャプ

眼帯少女『……先にお風呂に入りたい。あっち?』

少年『あ、ちょっとまって!今他の人が』

商人「あ、やべぇ。こっち来るか?」

眼帯少女『……入ってるの女?』

少年『う、うん』

眼帯少女『……なら構わない』

少年『え?でも……』

眼帯少女『……脱ぐからあっち行ってて』

商人「逃げれねぇ……」


195 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 00:54:25.37 ID:j8YTGcY20
眼帯少女『……入るけど、構わない?そう』ガサゴソ

商人(何も答えてねぇよ!もうなんか脱いでるし!)

眼帯少女『……それじゃあ入る』

商人(ん~、よく考えたら売り物の事とあの剣士の事があっただけだし気にするまでもないのか?)

商人(気まずくてもとっととお風呂あがればいいだけですし、腹括りましょうか)

単眼少女「……失礼する」

商人「ど、どうぞ~」

単眼少女「……」

商人「……」



商人「!?」

単眼少女「?」


196 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 00:59:42.75 ID:j8YTGcY20
単眼少女「……あぁ、前会った人……久しぶり?」

商人「……えっと……どちら様でしょうか?」

単眼少女「……?」

商人「私の知り合いにサイクロプスはいません」

単眼少女「……」

商人「……」

単眼少女「……驚かせてごめんなさい……」シュン

商人「だぁぁぁ!違う違う違う!決してビックリしたとかじゃなくて単に驚いたというかなんというか!」

単眼少女「……」ナミダメ

商人(サイクロプスの女性って自分の顔にコンプレックス持ってて凄く傷つきやすいんですよねぇ……)

――――――
―――



197 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 01:05:02.32 ID:j8YTGcY20

商人「あのぅ、ごめんなさい。悪気があったわけじゃ……ほら、お風呂上りに一杯牛乳飲みます?有料ですが」

眼帯少女「……いらない。驚かれるのは慣れてる……相手の事を考えなかった私が悪い……グスッ」

少年「あー、ねーちゃんが眼帯のねーちゃん泣かせたー」

商人「だーかーらー!」

眼帯少女「……いい、誰だってアレを見たら驚く」

単眼少女「……こんな風に」ピラ

少年「」

眼帯少女「……グスッ」

商人「泣くくらいならやらなきゃいいじゃないですかそれ」


198 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 01:10:42.97 ID:j8YTGcY20
眼帯少女「……でも、眼帯取らなきゃお風呂に入れない」

商人「そもそもその眼帯どうなってるんですか?明らかに顔の構造変わってるじゃないですか」

眼帯少女「……マジックアイテム。私の友達から貰ったもの」

商人「へぇ、凄いアイテムですねぇ。作ったのもそのお友達ですか?」

眼帯少女「……作ったのは友達の友達。私もこの眼帯がどんな仕組かは分からない」

商人「私もそんなもの聞いたことないですからねぇ。これが量産できれば世のサイクロプス達を救えるかも……」





商人「それじゃあ後学の為に、それ売ってください」

眼帯少女「ハハッ、残酷な事を言う」


199 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 01:15:24.47 ID:j8YTGcY20
商人「ではそれを作ったお友達のお友達を紹介してください」

眼帯少女「……教える気はない。いい予感がしない」

商人「むぅ、それは残念ですねぇ、まぁいいですけど」

商人「よし、とりあえずあなたは起きてください。悪夢は終わりましたよ」バンッ

少年「はっ!?父さん!?死んだ父さんが川の向こうで手を振ってた!」

眼帯少女「……グスン」

商人「泣いても喚いてもあなたが撒いた種です」


200 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 01:26:27.11 ID:j8YTGcY20
商人「そうだ、ついでに頼んでみるか……」

商人「すみません、あなた確か鍛冶師だって言ってましたよね?」

眼帯少女「……うん、そう」

商人「それじゃあちょっと頼んでもいいですか?」

眼帯少女「鍛冶の仕事?」

商人「はい、この指輪の魔導核の効果を調べてほしいんですけど……できますか?」

眼帯少女「問題ない、出来る。納期は?」

商人「あ、えぇっと……出来ればすぐに」

眼帯少女「分かった、じゃあ部屋に篭るから。明日の夜に取りに来て、それ以上早くは出来ない」

商人「わ、わかりました……」

眼帯少女「……それじゃ……あ、少年」

少年「え?あ、はい!」

眼帯少女「……食事は部屋で取るから、持ってきて」

少年「うん、わかった……」

眼帯少女「……」スタスタ


少年「なんか、眼帯のねーちゃん仕事の話になったら凄くハキハキ喋り出したね」

商人「うむむ、アレがメリハリのあるプロってやつですか」


201 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 01:32:07.39 ID:j8YTGcY20
商人(値段は鑑定後ということになりそうですね……ま、それは当然として)

商人(明日どうしましょうねぇ。仮面の人に会う理由が無くなっちゃいましたし)

商人(でも……ウサギ型の魔物の件も気になりますし、それは一応報告しておいた方がいいでしょう)

商人(大きい魔物のせいで一緒に依頼を受けたあの人がやられちゃったら私も寝覚めが悪いですし)

少年「ねーちゃんはもう寝るの?」

商人「え?あぁ、そうですね。もうすることも無いですし」

少年「それじゃあさ!俺に何かアイテム見せてよ!変なものとか持ってるんでしょ?」

商人「変ってなんだよ変って!?……ん~まぁ仕方ないですね、ちょっとだけですよ?」


203 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 01:38:17.40 ID:j8YTGcY20
商人「変わったものと言えば例えばコレ!獣寄せの笛!」

少年「おお!なんかそれっぽい!吹くとねーちゃんの仲間の犬が集まってくるとか?」

商人「私は狼です。いえいえ、そんなチンケなもんじゃないですよ!」

商人「なんと!この笛はこんな風に吹くだけで!」ピィィィィィ!!

少年「吹くだけで?」




商人「狼男の山田さんの霊を降霊させることが出来るのです!」

山田「やぁ」

少年「誰だよ」


204 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 01:42:54.06 ID:j8YTGcY20
少年「その幽霊山田が何の役に立つんだよ!?」

商人「山田さん舐めんなよ!?一人旅で寂しがってる私にとって大切な友達なんだよ!?」

山田「林檎ちゃん、今日も可愛いね」

少年「ナンパ始めたよ!?」

商人「山田さん中々のプレイボーイだったみたいです、さすが狼」

山田「こっちの少年はお友達かい?君も可愛いね?」ジュルリ

少年「こいつバイだよ!?両刀だよ!?今すぐ縁を切るべきだよねーちゃん!!」


205 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 01:51:24.43 ID:j8YTGcY20
山田「バイバーイ、なんつって」

商人「はい、夜分遅くにすみませんでした、おやすみなさい」

少年「渾身のギャグをスルーしたよ!ってか普通にガラクタじゃん」

商人「ガラクタとは失礼な!変わり種ならまだまだありますよ~ホラ!」

商人「姿ミエナクナ~ル(薬用)!」

少年「(薬用)!?」

商人「これ危険薬品ですから免許取るの苦労したんですよねぇ」

少年「で、一応聞くけど効果は?」

商人「まぁ、文字通り姿が見えなくなりますね」

商人「効果はかなり融通が利いて、来ている服や持っているものも一緒に消えてくれるんですよ」

少年「夢のような薬だね!」


206 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 01:59:34.03 ID:j8YTGcY20
商人「ですが、さすが危険薬品に分類される代物!」

少年「……強い副作用でもあるの?」

商人「いえ、この薬正しくは不可視になるのではなく飲んだ人そのものの存在を限りなく薄くさせるんです」

商人「しかも効果時間はその人その人で変わって、最悪のたれ死ぬまで誰にも相手にされず一生を終えた人もいました」

商人「他には人の煩悩に強く反応して邪まな事を考えると全身の骨が粉々に砕け散ります」

少年「こえぇよ!!よくそんなもん世に出回ったな!?」

商人「……違法ものです。現物も取扱い免許も」

少年「おいぃ!!」


207 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/13(木) 02:05:27.74 ID:j8YTGcY20
商人「それはそれ、これはこれ。さて次は……」

少年「も、もういいよ変わり種は……いろいろと確信したから」

商人「私が優秀だと?」

少年「なんでそうなるの!?優秀っぽさこれっぽっちも無かったよね!?」

商人「ま、生きていくにはこれくらい黒くならなきゃいけないんだよ……大人はね」フッ

少年「少なくとも俺の知り合いにねーちゃんほど黒い大人はいない」

少年「って、そんなものよりさ!武器見せてよ武器!」

商人「武器ぃ?あぁ、やっぱり男の子ってそういうのに憧れるんですね」 



211 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/18(火) 23:27:13.78 ID:XWw2wrQG0
少年「だってカッコイイじゃん!知り合いの冒険者のにーちゃんとかの持ってる剣とかスッゲェ飾り付けしてあったりしてるしさ!」

商人「ゴテゴテした装飾だからって強いというわけじゃないんですけどね。自分に合った使いやすさとかそういうのを……」

少年「そんなのいいからさ!早く見せてよ!」

商人「あなたみたいな子供に紹介する武器はありませんよ、危ないったらありゃしない」

少年「そこはホラ!ねーちゃんスゴイ商人なんでしょ?俺みたいなのが扱える安全な武器とかさ」

商人「ンなモンあっても見せるわけにはいかないの!ガキはとっととクソして寝ろ!」

少年「ちぇっ!なんだよケチ」

商人「ケチで結構。私は子供を戦わせるために商売してる訳ではありませんので」

少年「どいつもこいつも子ども扱いしやがって!こんなところに居られるか!もういい、俺は部屋に帰る!」

商人「あ、ちょっと!どうでもいいところで死亡フラグを……行っちゃったよ」

商人「ま、でも子供にはちゃんと言い聞かせておかないと何やらかすか分かりませんしねぇ」

母「えぇ、まったくです」

商人「ファ!?」


212 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/18(火) 23:41:59.47 ID:XWw2wrQG0
母「あの子ったらあろうことか冒険者に憧れて……」

母「将来はここを出て旅をしながら暮らすんだって言ってるんですよ?冒険者って言ったらニート予備軍じゃないですかもう……」

商人「それを冒険者の人の前で言ったら怒られますよ、そんな事より突然現れるのはやめてください」

母「将来は宿を継いでほしかったんですけど……男の子ですからね、そういうのに憧れちゃうのは仕方がないんでしょうか?」

商人「活発ですからねぇ、でも最近は女の子でも冒険者になりたいって子は増えてるみたいですよ?あと私の発言スルーされること多いなホント」


213 名前: ◆cZ/h8axXSU:2013/06/18(火) 23:48:54.68 ID:XWw2wrQG0
母「あの子に武器を見せるような事はしないでくださいね?一応」

商人「それはご安心を。私だってお客さんを見て商品を選んでますから」

商人「それに、子供に武器を持たせるなんてことは私は絶対にしませんので」

母「お願いしますね。それじゃあおやすみなさい。朝は朝食をおとりになりますか?」

商人「はい、頂きます」

母「それでは朝食が出来次第起こしに来ますので」

商人「普通に起こしてくれれば助かります」

母「フフフフ……」

商人「……」

母「……」

母「……おやすみなさい」

商人「おい、ちょっと待て。さっきみたいに冗談って言わないのかよ」

――――――
―――


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