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男「俺の背中に女の子?」 3/3

男「俺の背中に女の子?」


男「俺の背中に女の子?」



142 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 20:23:34.37 ID:wzcgsL3Jo
自宅。

男「ふはー。なんだか、その、いろいろみんな話すな、最近」

女「きっと、溜まってたんでしょ、いろいろ」

男「そういうもんかな。俺って話しやすそう?」

女「というより、二人いるから、話を預けやすそうというか」

男「二人の包容力か」

女「なんか気持ち悪い言い方ね」

男「照れるなよ」

女「は?」

男「冗談です」

ピンポーン。

男「お、来客か」



元スレ
男「俺の背中に女の子?」
SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)@VIPService掲示板




143 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 20:27:51.37 ID:wzcgsL3Jo
叔母「こんばんはー」

女「あ、叔母様」

男「また叔母さんか」

叔母「またじゃないでしょ。ちゃんと生活できてるの?」

男「女がいちいち小うるさいからがんばっている」

女「私が小うるさく言ってるから大丈夫です」

叔母「男」

男「女、がんばっているのは俺だよな」

女「私も手伝ってるけど?」

男「ノーノー叔母さん、俺は悪いことしてない。女友達も最近出来たし大丈夫。だから、持ってきた米袋を担ぎなおすのはやめてくれ」

叔母「10キロよ」

男「重さは聞いてないよ!」


144 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 20:31:53.50 ID:wzcgsL3Jo
男「なんか星が見える」

女「そりゃあ夜だからでしょ」

叔母「まったく……女ちゃん、男が迷惑かけてないかい?」

女「まあ、許容範囲です」

男「その言い方はひどいぜ」

叔母「あんたちゃんとしないと、申し訳立たないよ」

男「へいへい」

女「でも、男くんのおかげで、こうしていられるわけですし」

叔母「いいんだよ、男の責任でもあるわけだし」

男「ん?」

女「え……」


145 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 20:33:34.98 ID:wzcgsL3Jo
一時中断。にしようか、今日はここで止めとくか考え中。

そろそろ佳境です。


146 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 21:03:54.61 ID:wzcgsL3Jo
今日でいけるところまで行きます。
~~~~~~~~~~~~~~~


叔母「ああ、女ちゃんにも一度、話しておかないとね」

女(なに、なんかあったの?)

男(んー?)

叔母「あのね、女ちゃんのお母さん、とお姉さん、かな」

叔母「私の姉とお父さん、あー、男の両親なんだけど」

叔母「事故で一緒に亡くなってるの」

男「……」

女「……はぁ」

叔母「その、お父さんが、男を避けようとして」

男「……」

女「……は、え、は?」


147 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 21:09:55.08 ID:wzcgsL3Jo
叔母「だから、男がね、こう、車道に出てきて、それを避けようとして、お父さんがこう」

叔母「それに、女ちゃんのお母さんが……」

叔母「男に、話したんだけど、その、男はちゃんと言ってなかったでしょ?」

男「……あ、あー。ソウデスネ」

女「……」

男「つまり、その、罪滅ぼし的な」

叔母「病院に行く前にも話をしたし、男は納得してるんだけどね」

男(あー、なんかごちゃごちゃ言ってるような気がしたけど)

女「……」

男(……やべぇ、全然聞いてなかったな)

女「……なんですかそれ」


148 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 21:19:38.50 ID:wzcgsL3Jo
女「男は、自分のせいで、私の、お母さんが死んだから、宿主になったんですか」

叔母「それだけじゃないわよ。ちゃんと検査にも適合して」

女「適合してるから、ちょうどよくってことですか」

叔母「違うわよ。男の責任みたいなものもあるってことを」

女「おかしいでしょ、それ」

叔母「……」

男(俺を間に挟んでいるんだが)

女「そりゃあ、私は誰かに取り付かないと生きていけないですよ」

女「でも、男は違うでしょ。そんな理由で寄生させるなんておかしいでしょ」

叔母「あのね、男は納得して――」

女「ちがう!」


149 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 21:23:50.50 ID:wzcgsL3Jo
女「男、言ったよね? 最初はどうでもよかったって」

男「あ、あー、うん」

女「私の、お母さんのことなんて言ってくれなかったよね?」

男「う、すまん」

女「自分のご両親も亡くなっていたし、どうなったっていいって思ってたから、受けたんだよね?」

男「あ、あー、そう、かな」

叔母「男!? あんたは納得してやったんでしょう」

男「お、おお」

叔母「ちゃんと同意書の説明も、お医者様にも聞いたじゃない!」

男「ん、うん」

叔母「私の話だって、うんうんって頷いて聞いてたじゃない!」

男(それは聞き流していただけです)


150 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 21:30:06.04 ID:wzcgsL3Jo
女「出て行けよ」

叔母「は!?」

女「出て行ってよ! 男には責任なんかない! そんなので縛るなんておかしい!」

叔母「私はっ……辛いだろうけど、女ちゃんのためを思って」

女「そんな話、前に聞いていたら、絶対受けなかった!」

叔母「あなたのお父さんも、どれだけ悲しんでいたか」

女「もう聞きたくない! 出て行け、出て行け!」ガチャン パリン

男(耳元で騒がれるとやばい)

叔母「ちょっと、男……!」

男「叔母さん、悪いけど、今日は」

叔母「な、なに言ってるのよ」

女「男も知らない! この」ボカ

男「うお、陶器でなぐるんじゃねぇ」


151 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 21:37:24.26 ID:wzcgsL3Jo
男「……叔母さん、ちゃんと帰ったぞ」

女「うっ……うう」

女「ううー、うっ、ひっ」

男「……そのー、俺から言うことじゃないかもしれんが」

女「……ううう、うっぐっ」

男「ショックな話、だけど、もっと冷静になったほうが、いいだろ?」

女「うぇ、ううっ……」

男「謝って、すむ話じゃない、けどさ」

女「……ちがうの」

男「な、何が」

女「それだけじゃないの」

男「だから、何がだよ」

女「男、このままじゃ、死んじゃうかもしれない」


152 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 21:43:27.78 ID:wzcgsL3Jo
男「ほ、ほお。そうか、それなら、その、痛みわけってことじゃないのか」

女「……冗談じゃないの」

男「根拠を言ってくれよ、話が見えねぇ」

女「この間、男友くんの家に行ったとき……」

男「ああ、長髪のことか?」

女「そう、帰り際に、あいつが耳打ちしたんだけど」

男「そうだったな」

女「あいつが言ったのは」


長髪『乗っ取る準備はしておけよ』


153 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 21:48:13.32 ID:wzcgsL3Jo
男「それがなんだよ」

女「男。ネットとか見てないでしょ、寄生人のこと」

男「……ああ」

女「寄生人はね、寄生生活が進むと、宿主を乗っ取るんだって」

男「ほう」

女「分かる? あのお兄さんの反応が鈍かったの」

男「ああ、そうだったな」

女「あれ、長髪に乗っ取られかけているんだよ」

男「……」

女「分かる? 冗談じゃないの」

男「……」

女「このままじゃ、男、私に乗っ取られるんだよ」


154 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 21:55:02.31 ID:wzcgsL3Jo
女「意識がなくなって、ただの乗り物みたいになるんだって」

女「それって、もう、生きてるとはいえないでしょ」

女「ゾンビよ、死んでるも同然じゃない」

女「分かる? 私、男を全部犠牲にして」

男「それって悪いのか」

女「……」

男「俺だって叔母さんの貯めた金で生活してるし、ある意味、食いつぶしているようなもんじゃん」

女「な、何言ってるの?」

男「誰かを犠牲にして生きていくなんて当たり前の話じゃん」

女「……」

男「まあ、おっぱい枕の代償と考えると妥当な線じゃないの」

女「ふざけんなよ」


155 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 22:05:05.39 ID:wzcgsL3Jo
男「ふざけてない。どうでもいいと思ってたのも、叔母さんの話をちゃんと聞いてなかったのも本当だけど」

女「だから、なに? 自己犠牲できてうれしいとか言いたいの?」

男「女を寄生させなくても、別にいつ死んでもいいやって思ってたんだけど」

女「だから、なに!?」

男「いま、女と一緒に生きれて楽しいよ。それが悪いのかよ」

女「あ……っ、あんた、死ぬのよ」

男「まだ死んでない」

女「わ、私」

男「すぐ死ぬかどうかも決まってないじゃん」

女「私が、私は、私、こんな風に生きたくないのよっ!」ぐいっ

男「あって、ててて!」

べりべり、ぶちいっ




 
158 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 22:34:28.34 ID:wzcgsL3Jo
激痛が走った。

二人は床に倒れこみながら、女は腹部から伸びる寄生器官に手をやり、男は背中を引っかいた。
そうして、涙目で、二人は初めて向かい合ってお互いを見た。
鏡を使う以外でちゃんと顔を見ることもなかった。
体はぴったりとくっつけあってるゆえ、もっと見る機会は少なかった。

女の腹から、男の背中にかけて。
赤黒い寄生器官がずるっと垂れ下がっている。
ぐるぐる巻きになっていた「くだ」が、ぐったりと床に伸びていた。

女も男も、顔を歪めてそれを見つめた。
何しろずきずきとした痛みが二人に襲い掛かっていたからだ。

やがて、その痛みが治まりかけたところで、女は興奮して、その「くだ」を引きちぎろうとつかみかかった。
男は女の肩をつかんで、それを止めようとした。

男が女を押し倒すような格好で、二人は絡み合った。
どちらかが、何かを叫んだかもしれない。

160 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 22:43:50.53 ID:wzcgsL3Jo
お互い、泣いていた。

ごろん、と転がるようにして、女が男に馬乗りになった。

女は男の肩をつかんで、何か唾を飛ばしながらわめいた。
男はひじをついて上半身を起こすと、女の腰を抱き寄せた。

息を荒くして、向かい合う。

女が、肩から男の頭に手を移すと、男と同じように抱き寄せた。
男は逆らわずに、女の胸に耳をうずめてしまった。

しばらくの間、ずっとそうしていた。

そうすることが、当たり前みたいに。


161 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 22:54:32.35 ID:wzcgsL3Jo
朝。

男「……」

女「……」

男(やべぇ)

男(やべぇやべぇやべぇ。やっちまった)

男(マジでやっちまった)

女「……病院、行かなきゃね」

男「こ、この惨状を放置してか」

女「でも、背中、破けてるよ、男」

男「いやでも、この部屋も血まみれの体液まみれじゃん」

女(はー……よく暴れたもんね)

女(……ロマンチックじゃなかったわね)

男「女? 聞いてるのか?」


162 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 22:58:41.33 ID:wzcgsL3Jo
女「でも、一応、ケガしてるんだから」

男「まあ、そうだけどさ……」

女「男、ちょっと後ろ向いて」

男「しょうがないな」くるっ

女「……ごめん、お腹でくっつかないから、おんぶ」

男「へいへい」

女「よっ」ぐいっ

男「おお、胸が当たる」

女「……ごめん、ヘソ管、ぼろっと零れ落ちちゃう」

男「内臓ぽろり、みたいな」


163 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 23:01:16.36 ID:wzcgsL3Jo
女「男」

男「なに?」

女「ごめんね。もう少し、付き合って」

男「いや、俺にも付き合ってくれよ」

女「タイプじゃない」

男「体の相性はばっちりなんだろ」

女「ウゼェ」

男「声に出して言うな!」


 
159 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]投稿日:2012/01/19(木) 22:35:19.44 ID:EYqS7syTo
宿主を乗っ取るって寄生人だけで秘密に出来る内容ではないような



 
164 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/19(木) 23:05:37.70 ID:wzcgsL3Jo
すみませーん。この辺で今日は終わりにしますー。
あと、明日あさっては更新できないかもしれない。

>>159
いろんな矛盾点は多少想定していますが、あまり深く考えないほうが幸せ。
一応、ちょっとは考えてますので、よければお付き合いください。


165 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国)[sage saga]投稿日:2012/01/20(金) 00:06:39.05 ID:SkJ47vZAO
乙!

なるほど、こういう風にヤるのか……

ふぅ


166 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage]投稿日:2012/01/20(金) 15:23:37.84 ID:ElbVqW3IO
>>165
抱き合っただけだから、描写してないから、と言い訳してみる。

今夜は遅くなりそうです。



167 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]投稿日:2012/01/20(金) 15:47:17.67 ID:uCYex/gIO
よくわからないんだけど
引きちぎって今は分離した状態ってこと?


168 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage]投稿日:2012/01/20(金) 16:03:59.04 ID:ElbVqW3IO
>>167
お腹と背中がぴったりくっついてた状態から、
今はへその緒みたいなのでつながっているだけの状態ですね。
ちゃんとおんぶ、だっこしないと一緒に移動できません。

描写力不足ですみません。




 
172 名前: ◆E02GB0g5y.[sage]投稿日:2012/01/21(土) 01:48:32.31 ID:4QgQ1UAHo
今夜はいつ戻れるか分からなかったので、明言せずにすみませんでした。
明日の夜で完結できるかと思います。

おまけ的に。

Q:異性のどんなところに魅力を感じますか?

男「おっぱいかな」

女「誠実さ」

男友「えっ、顔、とか?」

女友「二股をかけないところ……」

Q:自分の長所は?

男「ないな」

女「強いていうなら……男が胸ばっかり言ってるし……」

男友「よく便利だねって言われる」

女友「ま、真面目なところ」

Q:お世話になってる人に一言。

男「叔母さん、お金いつもありがとう」

女「男、男がいなかったらこんな風に生きていけなかった。ありがと」

男友「兄貴、また一緒に遊びに行こう」

女友「えっ……いません……」

Q:以上の回答を見てみて、何かある?

男「女って俺のことが好きなのかなぁ」

女「みんなマイナス思考すぎて痛い」

男友「おい、俺の回答って、あれじゃねーか、ちょっと痛い人みたいじゃんか」

女友「と、友達にお世話になってるって言っとけばよかったorz」


では、また明日。



176 名前: ◆WPwc2pN1N6[saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:03:00.91 ID:4QgQ1UAHo
男「叔母さんには連絡したぞ」

女「う、うん」

男「女の声も聞きたがってたけど」

女「ダメ……ま、まだ冷静になれないから」

男「……とりあえず、大怪我してるわけでもないから、タクシーで病院行くか」

女「だ、大丈夫? なんだかんだで血まみれてる」

男「一応タオルでぐるっとくるんでるけど……」

女「汚して、損害賠償とか請求されないかな」

男「大丈夫だろ、事情を説明すれば」


177 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:03:52.36 ID:4QgQ1UAHo
タクシー内。

男「よっと」

女「ありがとう」

男「姫だっことか初めてだわ」

女「ああそう」

男「意外と女も重いな」

女「ねえ、殴られるのとぶん殴られるのはどっちがいいのかしら」

男「ほめてるんだよ、よく成長したなと」(胸とか)

女「ほめてないだろ」

運転手(いちゃついてんじゃねーよ)


178 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:05:17.67 ID:4QgQ1UAHo
男「おお、背中がまだひりひりするな」

女「大丈夫なの? 皮膚がくっついてたところをはがしたから、血が結構出ちゃってたし」

男「もう血は止まっているんだけどな。女もお腹とか大丈夫なの?」

女「うん、「くだ」がつながっているから、命に別状はない。と思う……グロいけど」

男「前に取り外しできたらいいって言ってたけど」

女「できちゃったわね……」

男「あれじゃね、女をサイドカーとか、車椅子に乗せたら便利じゃね」

女「罰ゲーム臭がすごいんだけど」

男「『二人をつなぐ、赤黒い肉のヘソ管。コレが新しい寄生人と宿主のつながり方です』」

女「いやな赤い糸ね……」


179 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:06:20.22 ID:4QgQ1UAHo
男「そういえばさ」

女「なに?」

男「あそこは痛くない?」

パァン

男「というのは冗談でして」

女「本気で聞いただろ」

男「前にさ、女のお母さんって、私をおいて逃げたとか言ってなかったっけ」

女「それは……伝聞だから」

男「伝聞って誰に?」

女「誰にって、誰も教えてくれなかったから、医者とか看護士さんが話しているのを聞いて」


180 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:06:46.72 ID:4QgQ1UAHo
男「じゃあさ、今の女の保護者って誰なの」

女「保護者? それは……」

男「この管を切ってもらうにしろ、元通り背中にくっつけてもらうにしろ、また相談は必要だろ?」

女「そ、そうね」

男「俺も、両親いないから、叔母さんが保護者になってるわけだけどさ」

女「……」

男「おい、知らないってことはないだろ」

女「いや、でも……」

男「寄生の手術するときに、承諾は誰かにもらったんだろ」

女「いや、医者に説明を受けただけで……」

キイッ

運転手「つきましたよ」


181 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:07:31.90 ID:4QgQ1UAHo
病院。

医者「び、びっくりしたじゃないか。そんな格好で来るもんだから」

男「やっぱり、医療関係者の手当ては手際がいいわなー」

女「適当ね」

医者「……でも、どうしたんだい。ひどい怪我ではなかったけど……何があったのか、僕にも聞かせてもらえるかな」

女「……」

男「ほら、女から言わないと」

女「ええ? でも……」

男「だって、暴れたのは女だし」

女「あんただって私に乱暴したわ」

男「人聞きが悪いだろ! あれは流れだよ、勢いだよ」

医者「男くん? どういうこと?」

男「なんで俺に聞くんだよ!」

女「冗談ではないけど」

男「おいお前」


182 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:08:11.16 ID:4QgQ1UAHo
女「……先生」

医者「どうしたんだい」

女「寄生人が、宿主を乗っ取るって本当ですか」

医者「……! そ、そんなことはないけど」

男「先生、そういうのはネットとかで調べたらバレチャウンダヨ」

医者「ネットで毒されたクチなのかな。そういうのは」

女「それだけじゃないです。最初は別の寄生人に会ったとき、私が乗っ取れって言われたんです」

医者「……」

男「で、その宿主が、反応が鈍い人になっていたんで、女がすっかり信じちゃってんですよ」

女「男、黙って。先生、もしそれが本当なら、知らないはずがないですよね。何件も寄生人の手術に関わってきたわけだし」

男「そういや、そんな話してましたね」

女「先生は、私に手術を熱心に勧めてましたよね、命に関わるからと。でも、そのとき、そんな話は聞いたことがありませんでした」

医者「それは……」


183 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:09:08.75 ID:4QgQ1UAHo
女「どうして教えてくれなかったんですか? それを聞いていたら、私はやりたくなかった」

女「今も、すぐにでもヘソ管引きちぎって、一人で死にたいくらいです」

医者「そ、そんなことは……!」

男「……あー、実際どうなんですか?」

医者「な、なにが?」

男「だから、実際、そういう宿主に影響を与えるようなことはないんですか」

医者「……ある」

女「……この!」

男「はい、やめろ」

医者「……といっても、前に話しただろう? 性格の不一致が、体に影響を与えると」


184 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:12:08.70 ID:4QgQ1UAHo
医者「といっても、漠然としたものしか分かっていないんだよ」

医者「……ケンカをしたりすると、脳の活動が停滞するという例が何件かあるのは聞いている」

医者「脳の働きを抑制するような、何らかの物質が寄生人の体内で生成されているのではないか、とも言われている」

女「そ、そ、そんなの! 知ってたんですね!」

男「落ち着け、女」

女「なんでよ!?」

男「……それって本当に詳しくは分からないんですか?」

医者「うん。報告はされているが、かなり不確実なものなんだ」

医者「それに、それは双方で見られる症状だ。だから、乗っ取るという類のものじゃない」

男「うむ、つまり、両方ケンカをすればするほど馬鹿になると」

医者「あくまでも、そういう例が報告されているだけでね」

男「つまり、俺が急におっぱいおっぱい言い始めたのは、脳の活動が抑制されていたからだったんだよ!」

女「黙りなさいよ! ホント! あんたは!」

男(マジギレされた)


185 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:12:37.24 ID:4QgQ1UAHo
女「そんな話、そ、そんな大事な話、どうして言わなかったんですっ!?」

医者「それは……君の場合は、もう命に関わる時期だったし」

女「だからって……! 私の親でもあるまいし」

医者「……」

男「……?」

女「私、私は一人で生きて、一人で死ぬんだ! 寄生なんかしなくても」

医者「お、大声を出すのはやめなさい」

男「あのー」

女「なによ!?」

男「もしかして、先生って女のお父さんだったり」

医者「……!」

女「は!?」


186 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:13:13.57 ID:4QgQ1UAHo
男「だって、女が手術する前に相談したのって、先生だけなんでしょ」

女「……」

男「性別一緒の人に手術するのが普通なのに、特例でやって、保護者が反対しないのもおかしいし。特に女性側のさ」

医者「……」

男「なんで女に教えてないのかが気になるけど、逆に、女が反対しそうなことを教えなかったのもなんか頷けるし」

女「……冗談でしょ」

男「なんで俺にも教えてくれなかったのかは、まあ、叔母さんがきちんと話していると思ったからだろうけど」

医者「……」

男「寄生人関係の専門のお医者さんで、なおかつ保護者だったら、いろいろ無茶はきくよね」


187 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:13:48.94 ID:4QgQ1UAHo
医者「……その。まあ、そうだ」

男(やべぇ、マジか)

女「……」

男(この人の前で、女にセクハラとかしちゃってたかなー)

医者「実のところ、女が忘れてから、知らせない方がいいと思っていたんだ」

男「忘れた?」

医者「その……すまない、知っているのかい? 妻と、もう一人の娘のことを」

男「昨日、叔母さんから聞きました」

医者「女には伝えないようにと言っていたのに……」

男「すみません」

女「……」


188 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:14:27.72 ID:4QgQ1UAHo
医者「でも、そうか。ちゃんと聞かないと、納得しないだろう」

男「……女? 聞く?」

女 コク

医者「……分かった。妻と、もう一人の娘が亡くなったことを、知って、君はひどく暴れたんだ」

医者「そして、散々暴れたあと、記憶喪失に陥っていた。特に、家族のことを」

女「……」

医者「家族の記憶は失っていたけど、その代わり寄生しないで生きたい、という以前からの希望を強く言い始めた」

医者「僕は反対した。他の寄生人よりも体の機能が残っていたとはいえ、他の例からすると……長く生きられるはずがなかったから」

医者「それでも、驚くほど生きていたんだ。仕方なく、その間に、君と相性のあう宿主を探した」

医者「男くん……その」

男「はい?」

医者「性別が違っても、君を宿主として調べたのは、八つ当たりだったかもしれない……あの事故の」

男「あー……まあ、俺のせいみたいな、そのー……まあ、続けてください」


189 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:15:44.74 ID:4QgQ1UAHo
医者「男くんが異常なまでに相性が良いと知って、僕は、一芝居うつことに決めたんだ」

医者「昔から一人で生きて、一人で死にたいって言ってたからね。普通にやったんじゃ反対されると思って」

女「そんなの……おかしい……」

医者「おかしいかもしれない。でも、僕は君に生きててほしかった」

医者「男くんが手術に応じてくれると聞いてからは、絶対に成功させようと説得したよ。それは覚えてるだろ」

女「……うん」

医者「親だったら、他人の子どもを犠牲にしたって、生きていてほしいんだ」

医者「……諸々の不安材料は、だけど、結果的にすごく、好転した」

医者「女が前よりもずっと良くなっていると分かった日は……」

医者「……すまない。少し……」


190 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:16:24.79 ID:4QgQ1UAHo
医者「……それが、僕なりの理由だ。隠していたことは、謝る」

医者「だけど、僕は、君に生きていてほしい」

女「……」

男「そうですか」

医者「すまない。こんなことは許されないのかもしれないが……」

男「俺も親になったら分かりますかね」

女「……男」

男「なんだ」

女「分かったから、もういい」

男「は?」

女「もう、分かったから。もう、帰りたい」


191 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:17:06.52 ID:4QgQ1UAHo
医者「ちょっと、待ってくれ。ちゃんとお腹をくっつけないと」

女「大丈夫です。これでもちゃんと寄生してますから」

男「女、いいのか?」

女「……ずっと私のことを考えてくれて、ありがとう。お父さん」

医者「あ、ああ……」

女「だから、もういいです」

医者「ちょっと待ってくれ」

女「男、だっこして」

男「えーと……」

医者「男くん、その、頼むよ!」

男「あー、まあ、すみません」ガタッ

医者「!」

男「頭、整理する時間も必要でしょ、ちょっと外の空気吸ってきますよ」

医者「二人とも……!」


192 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:18:14.31 ID:4QgQ1UAHo
外。

女「……」

男「……大丈夫か?」

女「……結局」

男「ん?」

女「結局、私は一人じゃ何も決められないし、一人で生きていくなんて無理だったんだ」

男「そうだな」

女「私は、寄生して生きていくしかないんだ」

男「そうだな」

女「お、男の、脳の活動を抑制しちゃうんだ。人に迷惑をかけて生きるしかないんだ」

男「……」

女「そういう風に生きるしかないんだ」

男「違うだろ」


193 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:19:41.12 ID:4QgQ1UAHo
女「違わないよ」

男「ケンカしなけりゃいいんだろうが」

女「そんなの、無理に決まってるじゃない」

男「それが無理なら、ケンカしても仲直りすればいいだろ」

女「そんなの、へ理屈」

男「へ理屈じゃねぇよ。自分基準だけで考えてるから、迷惑をかけるなんて言えるんだろ」

女「……」

男「一人じゃ生きられないってことは、協力して生きていこうってことじゃん」

女「……」

男「迷惑かけるだけじゃないじゃん。それとも、あれか、お前は私に迷惑しかかけてないだろーとか言いたいのか」

女「……その通りよ」

男「おい、お前」

女「……冗談よ」


194 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:24:50.91 ID:4QgQ1UAHo
男「だ、だったら、いいだろ」

女「うん」

男「それにその、責任はいろいろ、生じてしまったしな」

女「うん」

男「背負ってやるよ。もうしばらく」

女「……背負われてやるよ」

男「調子いいやつ」

女「男ほどじゃないよ」

男「おい」

女「冗談よ」

男「へっ」


おしまい



196 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:33:24.34 ID:4QgQ1UAHo
この文を入れ忘れておった。
~~~~~~~~~~~~~~


――寄生(きせい)とは。

ある生物が他の生物から栄養やサービスを持続的かつ一方的に収奪する場合を指す言葉である。
しかしながら、寄生は、共生現象の一種であり、利害関係のみで単純に分類できるものではない。
(wikipediaより)


197 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 20:44:49.48 ID:4QgQ1UAHo
というわけで、おしまいでございます。

SFものでは結構ありがちな「寄生もの」ですが(「たったひとつの冴えたやり方」とか泣けるし!)
もともと、wikipediaにあった文を読んで、
「ほー、寄生ってのは共生の一種なのか、ふんふん」と思っていたのが始まりで、ラブコメちっくに作れるのではないかと思って書きました。

まあ、定義はもっと複雑なようですし、SFにたどり着けないほどバレバレの大嘘をついてますが。

地の文をそこそこ書くのも初の試みで、描写不足が露呈してしまったのも反省点ですねー。
ご希望があれば、おまけとして、もう少しこのキャラクターで何か書こうかなと思います。
こんなのを書いて欲しいというのがあれば、お書き添えください。

それでは、また。



 
201 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]投稿日:2012/01/21(土) 21:47:34.99 ID:n+y8GU/ao

破けた背中は塞いだのにくっつけてなかったのか
剥き出しの管一本で繋がってるって危なっかしいな



203 名前: ◆WPwc2pN1N6[saga]投稿日:2012/01/21(土) 22:17:45.87 ID:4QgQ1UAHo
おまけ。

男「心配かけてすまん」モグモグ

女「ごめんね、いろいろと」ムグムグ

男友「あ、ああ。いや、またしばらく入院してて、大変だったろ」

女友「う、うん。でもその、大丈夫なの……?」

男「うん?」ゴクン

女友「二人とも離れた状態になってるけど」

女 ゴクン「そりゃ、危ないわよ。この管が切れたら私の命に関わるし」ブラブラ

男友「おいおい、それはまずいんじゃないのか」

男「ああ、だから管の収納ケースと密着するためのバンドをな」

女「二人で移動するときは使ってるの。でも、ずっと密着するのもどうかって話をしてね」

男「やっぱり、お互い、顔を合わせて話すのも大事だよな」

女「そうね、首締めだけじゃなく、ビンタも可能になったし」

女友「それはよかったねぇ」

男友「よくないだろ、よくないだろ」


204 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 22:28:52.93 ID:4QgQ1UAHo
男「そういえば、お兄さんどうしてる?」

男友「どうしてるも何も……兄貴より長髪のやつがさ、お前らの話をしたら、あっちから会いたがってるんだよ」

女友「ど、どうして?」

男友「いや、その、お腹と背中が分離した状態っていうのに、えらい関心を示しててさ」

女「……」

男「あー、長髪はなー。女にひどいことを言ったからパス」

女「別に気にしてない」

男友「そうか? まあ、気が向いたら、会ってやってくれよ」

女友「……男友くんも、変わったね」

男「あれ、ラブの予感っすか」

女「だとしたら、私たちがキューピッドということかしらね」

女友「な、何言ってるの」

男友「そうだそうだ! 暴力系ヒロインはごめんだ」

女友「……」

男「まあ、俺たちはつながってるしな。ご利益はありそうだろ」


205 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/21(土) 22:36:38.53 ID:4QgQ1UAHo
男友「……それにしても、お前らよく食べるな」

女友「女ちゃんも、なんか食べるようになったね」

女「そうね。太っちゃうかしらね」モグモグ

男「なんか、安心したら、お腹がすくようになったんだよな」ギュムギュム

男友「……なんかさ、すっぱいものとか、多くね?」

女友「……味覚とか、変わった感じする?」

男「言われてみれば、そうかな」

女「私もお腹がすくのは、不思議だな」

男友「……まさかとは思うんだけどさ」

女友「……うん。冗談であってほしいけど」

男「まあ、今後は食べるだけじゃなくて、稼ぐ方法も考えないとな」

女「そうね。二人で知恵を出していかないと」

男友「指摘するのが怖い……」

女友「で、でも、友達だし……あの、二人とも」

男女『んー?』


これでおしまい。


206 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]投稿日:2012/01/21(土) 22:57:41.10 ID:79NzRwLIO
おつ
離れたからセクロスも出来るんだな…


207 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]投稿日:2012/01/22(日) 01:20:20.11 ID:nXofzyeIO
>>206
したやん


208 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方)[sage]投稿日:2012/01/22(日) 01:36:23.21 ID:ZN1H/MNI0
乙!面白かった


209 名前: ◆WPwc2pN1N6[sage saga]投稿日:2012/01/22(日) 09:37:17.10 ID:DnKLROIDo
わー、レスありがとうございます。

後日談的なものは、案外短くまとまっちゃいましたね。
最初からこういうオチになるだろうと考えていたせいでもありますが。



>>201
事故とかに巻き込まれやすそうですよねー。
ただ、多少でも体の自由を優先させたいと思うんじゃないかなと。


次回はあまり考えておりません。
ファンタジー的なものでも、また男女的なものでも、姉弟ものでもいいと思いますけど。
今度は女の子が泣かないSSでも書きたいものです。

HTML依頼を出しておきます。



210 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]投稿日:2012/01/22(日) 12:10:50.07 ID:ExBZAdcso
思ったより短かった…。主人公の性格といい、あっさりした味の終わり方でしたな。
完結おめでとう。次回作も頑張ってくだされ。


211 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank)[sage]投稿日:2012/01/22(日) 12:47:33.21 ID:LXZqKJV+0

次回も楽しみにしてるぜ


212 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]投稿日:2012/01/22(日) 14:09:33.94 ID:SvPmyExCo
あ、やっぱ男と女共通なのねつわりとか
乙でした



213 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]投稿日:2012/01/22(日) 22:20:31.43 ID:vlQ40xAQo
こういうのスキだわ。
>>1 乙
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