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少女「貴方の今に閃きたい」
少女「貴方の今に閃きたい」
1 名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[] 投稿日:2012/01/14(土) 23:38:49 ID:KftohT1A
コンコン
ガチャリ
男「やあ、おはよう」
少女「…」
男「気分はどうかな」
少女「…普通」
男「そうか、何よりだ」
少女「そう」
少女「あなた、誰??」
男「私は…」
少女「…先生、ね」
男「…」
少女「名札があるもの」
男「ははは、そうか」
元スレ
少女「貴方の今に閃きたい」
2
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/14(土) 23:44:23 ID:KftohT1A
少女「ここはどこ??」
男「病院だよ」
少女「私はどうしてここにいるの??」
男「ん…」
少女「病気??」
男「うん、ある意味では、そうかな」
男「君は、昨日の記憶はあるかい??」
少女「…」
少女「わからないわ」
男「そう、昨日の記憶を取り戻すために、君はここにいるんだ」
3
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/14(土) 23:50:46 ID:KftohT1A
少女「治るの??」
男「治すさ」
少女「…そう」
男「少しずつでいい、ゆっくり治していこう」
少女「…」
少女「記憶喪失ということ??」
男「そうだね」
少女「でも私は、自分の名前はわかるわ」
男「うん」
男「ある時から、君の記憶は蓄積されなくなってしまっているんだよ」
少女「ちくせきって??」
男「つまり記憶が溜まらない、毎日忘れていく、ということさ」
4
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/14(土) 23:57:57 ID:KftohT1A
少女「毎日リセットされているということ??」
男「そのようだね」
少女「…」
少女「私がこの病院に入ってから、何日経っているの??」
男「3ヶ月ほどだ」
少女「3ヶ月…」
男「病院に入る前の記憶はあるかな」
少女「白い家に住んでいたわ」
男「うんうん」
少女「犬を飼っていたわ」
男「うんうん」
6
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 00:02:24 ID:/YgAECtM
男「他には??」
少女「近くに湖があって」
男「うん」
少女「よくボートに乗って遊んだわ」
男「うん」
少女「これ、毎日私は同じことを話しているの??」
男「ん、いや、少しずつ内容は変わってきているよ」
少女「でも、3ヶ月経っても先生の顔を覚えていないわ」
男「そうか」
少女「ごめんなさいね」
7
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 00:07:33 ID:/YgAECtM
男「気分はどう??」
少女「普通よ」
男「食事は摂れるかな」
少女「…ええ」
男「じゃあ、持ってこさせよう」
少女「…」
少女「3ヶ月経っても、昨日の記憶がない、かあ」
男「焦る必要はない」
少女「先生は毎日大変じゃないの」
少女「同じ事の繰り返しで」
男「同じじゃないさ」
9
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 00:11:10 ID:/YgAECtM
少女「日記でもつけた方がいいのかしら」
男「日記なら、そこにある」
男「読んでみるといい」
少女「…」
ガチャリ
男「食事を摂りながら、読んでみたらどうかな」
少女「ええ」
男「じゃあ、1時間したらまた来よう」
少女「…」コクン
バタン
10
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 00:16:14 ID:/YgAECtM
助手「どうですか、彼女は」
男「うん、昨日と変わらないようだ」
助手「そうですか…」
助手「食事を運んできますね」
男「ああ、頼む」
…
男「ふぅ」
助手「せ、先生…」
男「ん、どうした」
助手「彼女が、彼女が、私のことを、少し覚えているようです…」
男「なにっ!!」
11
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 00:22:38 ID:/YgAECtM
バタバタバタ
ガチャリ
少女「っ」
男「君、さっき来た人を」
少女「先生、ドアはもう少し静かに開けるものじゃないかしら」
男「あ、ああ、すまない」
少女「さっきの人??あの人がどうかしたの??」
男「あの人を覚えているかい」
少女「ええ、この病院の人でしょう」
男「そうか…そうか!!」
少女「??」
12
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 00:26:13 ID:/YgAECtM
男「彼女は私の助手なんだが、君が記憶を蓄積できなくなってから出会っているんだ」
少女「??」
男「つまり、わずかだが、記憶が蓄積されたらしい」
少女「それって、よいことなの??」
男「ああ、勿論だ」
少女「治る??」
男「治すさ」
少女「ふふふ」
少女「でも相変わらず、先生のことは思い出せないわ」
男「ううむ」
13
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 00:30:05 ID:/YgAECtM
男「まあ、焦らず行こう」
少女「ええ」
男「なんにせよ、いい兆候だ」
男「さて、食事の邪魔をしてしまったな。ゆっくり食べるといい」
少女「はあい」
男「ではまたあとで」
少女「…」
バタン
男「ふふふ…前進だ、これは大いなる前進だ」
男「…前進、なんだ…」
14
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 00:34:53 ID:/YgAECtM
少女「ふう」カチャリ
少女「ごちそうさま」
少女「…」
少女「あ、日記を見るのを忘れていたわ」
ゴソゴソ
少女「これかしらね」
少女「…」
少女「私の字…のようねえ」
少女「あまりうまくないわね」ペラペラ
16
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 14:31:10 ID:/YgAECtM
6月16日
明日の私へ
日記をつけることにした。
ここは病室みたい。私は記おくがちくせき(?)されないんだって。
昨日のことが思い出せないみたい。
先生は私に親切にしてくれるけれど、思い出せない。
この部屋はヒマよ。でも、おねがいすると先生は色々と用意してくれるわ。
6月17日
明日の私へ
食べたものをメモしておくことにしようかしら。
今日の朝はクロワッサンとコーンスープと紅茶。
お昼はカレーライスとミルク。
夜はまだよ。
運動しないと太っちゃう。
ランニングしたいと言ったら、先生にダメって言われた。
外に出たいのに。
P.S. 夜はぶた肉のいためものとおみそしるだったわ。
17
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 14:44:11 ID:/YgAECtM
少女「これ、3ヶ月前からずっと書いているのかしら」
少女「全部読むのは時間がかかりそうね…」ペラペラ
6月18日
明日の私へ
日記に食べたもののことが書いてあるわって言ったら、先生にやめてくれって言われた。
毎日メニューを考えるのは大変みたい。
今日のメニューは昨日とちがったけど、もう書かない方がいいみたいね。
でも日記に書いたせいでもうカレーが食べられないのはいやだなあ。
6月19日
明日の私へ
毎日この日記をちゃんと見るように、表紙にメモでもはろうかしら。
「必ず見ること!!」とかどうかしら。
「よう注意!!」の方がいいかしら??
もちろん赤のマジックでね。
明日は先生をこまらせないように、自主的(?)に日記を読むこと!!
6月20日
昨日の私へ
「よう注意!!」は、しっぱいのようね。
こわくて、先生に言われるまで手に取りたくなかったもの。
明日の私へ
日記は毎日まくら元においておくこと!!
18
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 14:48:28 ID:/YgAECtM
少女「楽しそうね、私」
ガチャリ
男「食事はすんだかい??」
少女「先生」
男「お、日記を読んでいるね」
少女「ええ」
男「君の字だ。覚えはあるかな」
少女「ええ、字はなんとなく」
少女「でも内容は、私には書いた覚えがないの」
男「そうか」
少女「いつか思い出せるかしら??」
男「きっと、ね」
20
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 14:51:27 ID:/YgAECtM
少女「私はいつも、どんな毎日を過ごしているの??」
男「ん…」
少女「壁にスケジュールでも貼っておくといいのに」
男「一度それをしたらね、次の日君が破いてしまったんだ」
少女「どうして??」
男「毎日同じことをしたくない!!って叫んでね」
少女「そう」
男「今日の私は今日だけのものなのよ!!って」
少女「へえ」
21
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 14:56:05 ID:/YgAECtM
男「さて、すまないが日記は少し中断して、検査しなければならないことがあるんだ」
少女「ええ」
男「今からする質問に答えてくれ」
男「わからないことに対してはわからないと言ってくれていいからね」
少女「はあい」
男「じゃあまず、君の最も古い記憶はなにかな」
少女「ええと…パパと公園で遊んでいるところよ」
男「何歳くらい??」
少女「3つか4つだったかしら」
男「ふむ」
男「じゃあ次に、君がパパに叱られた記憶について…」
22
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 14:59:55 ID:/YgAECtM
…
男「この絵は何に見える??」
少女「…牛さん」
男「じゃあ、これは??」
少女「アイスクリームかしら」
男「じゃあ、これ」
少女「??」
少女「さっきも似たような絵がなかったかしら」
男「どうかな」
少女「飛行機??」
男「ふうむ」
23
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 15:03:21 ID:/YgAECtM
…
男「白、空、丸い」
少女「…月」
男「赤、山脈、巨大」
少女「ううん…マグマ」
男「弱い、青、海」
少女「…クラゲかなあ」
男「灰色、ジャングル、夜」
少女「んーと、ハイエナ」
男「黒、庭、小さい」
少女「…蟻」
男「赤、家、暗い」
少女「…わからない」
25
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 22:35:32 ID:/YgAECtM
…
男「よし、今日の分はこれで終了だ。お疲れ様」
少女「これで何がわかるの??」
男「君の症状についてのデータになる」
少女「昨日も同じことをしたのかしら」
男「ああ、そうだね」
少女「まったく同じデータ??」
男「すまないが、それは言えないんだ」
少女「ふうん」
男「じゃあ、日記の続きでも読んだらどうかな」
男「君の日々の記録が記されているから」
少女「ええ、面白いわ」
26
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 22:39:22 ID:/YgAECtM
男「まあ、ゆっくり読むといい」
少女「ええ」
男「なにかあれば、そこの壁にコールボタンがあるからね」
少女「はあい」
バタン
少女「さ、続き続き」ペラペラ
6月21日
明日の私へ
この日記は漢字が少ないわ。
もう少し漢字を書けるようになったほうがいいわね。
漢字じてんを用意してもらおうかしら。
それにしても、この日記を先生は読みたがっているみたいね。
でもはずかしいから、ダメって言ってるけど。
ねてる間に読んだりしてないかしら。だいじょうぶかしら。
27
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 22:43:58 ID:/YgAECtM
6月22日
昨日の私へ
漢字辞典、ありがとう。
先生にいらない紙をいっぱいもらって、漢字の練習をしてみたわ。
でも、辞典で覚えた漢字を明日の私は覚えているのかな??
明日の私へ
今日覚えた漢字を使ってみたんだけど、読める??
読めたら少し、記憶が蓄積されたってことにならないかしら。わくわく。
胡椒 胡桃 胡瓜 (←全部違うものよ!!)
少女「…読めない」
少女「き、き、お、くが…イチゴ??せき??」
少女「全部…全部…あう??」
少女「…もう」
ピンポーン
28
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 23:02:02 ID:/YgAECtM
男「早速どうしたんだい??」
少女「読めない」
男「じゃあ辞典を使ったらいい」
少女「どうやって使うの??」
男「ここに画数索引があるから…」
少女「ふむふむ」
男「振り仮名を振っておいたら??」
少女「いいの、明日の私も困ったらいいんだわ」
男「はは、そうか」
30
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 23:07:02 ID:/YgAECtM
6月23日
昨日の私へ
全然読めなかったわ。おかげで私はきっと毎日漢字辞典と格闘することになりそうね。
ここから先はフリガナを振ることにしない??じゃないと読めないもんね。
少女「あら、この日の私は優しいのねえ」
明日の私へ
お昼に飲んだ薬が苦くってテンションが低いわ。
こんなの、毎日飲んでるのかしら。すごいのね、私って。
気持ち悪い…
でも先生は、よくなるためだから我慢しなさいって…
少女「げ、薬飲むの」
少女「やだなあ、やだなあ」
6月24日
昨日の私へ
そのお薬、本当によくなるためのものなのかしら。
私ここまで読んで考えたんだけれど、本当に私は記憶喪失なのかしら。
この病院、少しアヤシイ気がするんだけど…気のせいかしら。
もしかしたらそのお薬が、記憶喪失の原因で、私は拉致されてるんじゃないかしら。
どう、いい推理じゃない??
明日の私へ
今日のお薬は、内緒で飲んだふりをしてみようかな。
なーんて思ったけど、ちょっと怖いわ。やめとく。
明日の私は、この続きを考えてみて、お願い。
31
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 23:13:13 ID:/YgAECtM
6月25日
昨日の私へ
あの眼鏡の先生は、じゃあ、悪者なの??
優しそうな人だったけれど…
もしかしたら、毎日違う人がやってきていて、私を混乱させようとしていたりして。
明日の私へ
一応先生の特徴を書いておくわね。
眼鏡をかけていて、少しひげがあるわ。髪は黒くて、少し長い方ね、多分。
年は30才くらいかしら。大人の人の年ってわかりにくいわねえ。
P.S. 今日もお薬はちゃんと飲んだわ。飲まないっていうのも、少し怖いの。
少女「先生の特徴かあ」
少女「…合ってるから、ちゃんと同じ人みたいねえ」
少女「…なんだか推理小説を読んでいるみたい」
32
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 23:17:54 ID:/YgAECtM
6月26日
昨日の私へ
先生は先生よ。間違いなさそうね。
やっぱりそんな陰謀(?)はないみたいよ。
明日の私へ
今日は少しだけお庭に出たわ。ほんのちょっとの時間だったけれど…
今までの私はお散歩はさせてもらったのかしら。
もしそうじゃなかったら、私だけ、ごめんなさい。
6月27日
昨日の私へ
ずるい!!私は先生に頼んでみたけれど、
「昨日出たから、今日はダメ」って言われたわ。昨日の私と今日の私は違うのに!!
ずるい!!もう!!
明日の私へ
あんまり腹が立ったから、今日はお薬を内緒で飲んだふりをしてみたわ。
今のところ何にも変化はないけど。
ああ、もう!!私も外に行きたい!!バカ!!
少女「あらあら、荒れてるわねえ」
少女「でも、いいなあ、外に出れるのかあ」
少女「お昼頃になったら、先生に頼んでみようかなあ」
33
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 23:24:06 ID:/YgAECtM
6月28日
昨日の私へ
いやな気持ちになるのはわかるけど、薬はちゃんと飲まないとダメよ。
今日の私はすごく気分が悪いの。
やっぱりお薬は私に必要なものみたいね。
明日の私へ
今日はちゃんとお薬を飲んだけれど、明日の私もちゃんと飲んでね。
じゃないと次の日、大変なことになるから。
おどしじゃあないわよ。
くらくらしてるの。じしょを引く元気もないもの。かんじもしんどいくらいよ。
今日は早めにねることにするわ。
少女「あら、陰謀説は早くもなくなったみたいね」
少女「薬かあ…やだなあ」
34
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 23:29:48 ID:/YgAECtM
6月29日
昨日の私へ
あなたがしっかりと薬を飲んでくれたおかげで気分が良いわ。
もうこれからの私は、薬を飲まないでいる、なんて馬鹿なことはしないでね。
あなただけ辛い思いをしていると思うと、私が今日を楽しむのは悪い気がしちゃうわ。
明日の私へ
私、思ったんだけど、ここにはほとんど娯楽(?)がないの。
だから、食べたいものを先生にリクエストするべきね。
だって私が食べられる食事は、3回しかないの。たった3回よ!?
たとえ先生が「昨日も食べたじゃないか」なんて言っても、関係ない!!
だから私は、今日はカレーライスをリクエストしたわ。とってもおいしかった!!
少女「カレーかあ」
少女「確かに私、カレー好きだものね」
少女「昨日食べたって記憶がなければ、毎日でも美味しいでしょうね」
少女「私のお昼は…なんだろう」
少女「リクエストしてみようかしら」
37
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 23:37:42 ID:/YgAECtM
6月30日
昨日の私へ
あなたの言った通り、先生は「昨日も食べたじゃないか」って呆れていたわ。
でも私が食べたいんだもの。いいわよね。
カレーライスはおいしかった。すごくおいしかったわ。
やっぱり食べたいものを食べるのが一番よね。
明日の私へ
新しい月ね。
7月と言うともう暑いようだけど、ここはエアコンが効いているからわからないわ。
夏らしいこととか、してみたらいいんじゃないかしら。
ちなみに私は「6月らしいこと」をしたわ。
なんだと思う??
わからなかったら先生に聞いてみて。
少女「6月らしいこと、かあ」
少女「なんだろう」
少女「結婚式ごっことか??」
38
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 23:43:07 ID:/YgAECtM
7月1日
昨日の私へ
ジューンブライドっていうから、結婚式の真似事でもしたのかしら。
そう思って、先生に聞いてみたら、なんてことない。
テルテル坊主を作ったのね。
「もう梅雨は明けたよ」って先生がおっしゃったのに、意地になって作ったそうね。
お馬鹿さん!!
P.S. 別に馬鹿にしてるんじゃないのよ。面白かっただけ。
明日の私へ
ねえ、私ふと思ったのだけど、私の「最後の記憶」って、なんなのかしら。
記憶が蓄積されなくなった直前には、一体なにがあったのかしら。
先生は教えてくれないの。
「君が思い出すことが重要なんだ」なんて言われたけれど。
少し怖い。
少女「最後の記憶…」
少女「パパやママは…どうしているのかしら」
40
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 23:49:44 ID:/YgAECtM
ガチャリ
男「また、コールボタンを押したね」
少女「…」
男「どうしたの??」
少女「私のパパとママは、どうしているの??」
男「…」
男「パパとママがどういう人たちだったかは、覚えている??」
少女「…ええ」
男「どんな人たちだった??」
少女「ママは…とても優しい人」
41
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/15(日) 23:53:55 ID:/YgAECtM
少女「料理が上手で、美人で、だけど少し太ってきたことを気にしていて…」
男「うん」
少女「そう、お花を飾るのがとても好きだったわ」
男「うん」
少女「パパは…」
少女「パパは少し、厳しい人だった」
男「…」
少女「だけど私が学校で頑張ったら、いつもいっぱいほめてくれた」
男「…」
少女「厳しいけど、優しい人だった」
メメント面白かったなあ
ああいう仕掛けのある話とか好き
42
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 00:10:24 ID:uiULMk7A
少女「珍しい外国のコインを集めるのが好きで、よく見せてもらったわ」
男「そうか」
少女「でも…ぼんやりとしか、思い出せないの」
男「いや、それだけ思い出せたら、十分さ」
少女「いやよ」
男「どうして」
少女「大事なのに、好きなのに、どうしてはっきり思い出せないの??」
男「それは…」
少女「どうして会いに来てくれないの??」
男「…それは…」
43
名前:
以下、名無しが深夜にお送りします
[sage]投稿日:2012/01/16(月) 09:09:00 ID:cgBjwAt6
ハムじゃねーかこっちにも来るのか乙
45
名前:
以下、名無しが深夜にお送りします
[sage]投稿日:2012/01/16(月) 12:51:39 ID:lwk5CEKI
ハム来てたのか
支援
46
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 19:52:04 ID:uiULMk7A
正直VIPだとすぐ落ちるんです
知ってくれてる人がいると嬉しいけど、調子乗らんよう気をつけますww
47
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 19:55:49 ID:uiULMk7A
少女「この日記に、パパの話もママの話も全然出てこないの」
男「…」
少女「それは、どうして??」
少女「昨日までの私は、思い出すことさえできなかったの??」
少女「もう…いないの??」
男「今の君に、会うことがとても難しいからだよ」
少女「??」
男「正直に話そう」
男「今の君の症状は、とても珍しいんだ」
少女「…ええ」
48
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 20:00:54 ID:uiULMk7A
男「この施設には、部外者が入れない」
男「それほど重要な研究施設なんだ」
少女「研究…」
男「君は患者であると同時に、大事な研究対象なんだ」
少女「…そんな…」
男「いや、すまない、言い方がうまく選べない」
男「少し、落ち着いて話そう」
ピピッ
男「すまないが、コーヒーを持ってきてくれ」
ピピッ
49
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 20:07:23 ID:uiULMk7A
少女「…」ズズ
男「これまでの君には、色々な考え方を聞かされた」
少女「…」ズズ
男「私は悪の組織のトップで、君が『私にとって不都合な記憶』を取り戻すことを心配している」
少女「…」
男「君はクローンであり、私が作り出したものだ」
少女「…」
男「私は少女趣味があり、君を閉じ込めて、夜な夜な好き勝手に君を弄んでいる」
少女「…っ!!」
男「全部、嘘さ」
男「そんなことはあり得ない」
50
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 20:12:33 ID:uiULMk7A
少女「でも研究対象って」
男「ああ、そうだ、言い方が悪かった」
少女「…」
男「君を救いたい」
男「それは医者としての私の本心だ」
少女「そう」
男「だが、君を研究することで、君の症状を研究することで、救われる人たちがいるんだ」
少女「他にも、同じ症状の人がいるの??」
男「そうじゃない、必ずしもそうじゃないんだが…」
51
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 20:19:21 ID:uiULMk7A
男「君の脳に、『一日分だけ記憶を消去するプログラム』があるとしよう」
少女「プログラム??」
男「ああ、例えだけどね、実際になにかが入っているわけではないんだが」
少女「??」
男「まあいい」
男「そのプログラムを解析できたとしたら、世界中の様々な病気の治療に生かすことができる、ということさ」
少女「たとえば??」
男「たとえば…そうだな」
男「脳の一部に、ある負荷がかかっている人がいるとしよう」
男「ずっと、一日中、頭痛に悩まされている人だ」
少女「ええ、実際にいるわね」
52
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 20:24:14 ID:uiULMk7A
男「その脳に同じプログラムを書くことができれば、『痛み』を忘れることができるかもしれない」
少女「…ふうん」
男「その負荷を忘れることができるかもしれない」
少女「…ふうん??」
男「研究とは、そういうことさ」
男「病気の解析は、他の病気の治療にもつながるのさ」
少女「…あんまりわからないわ」
男「はは、少し難しかったかな」
54
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 20:29:07 ID:uiULMk7A
男「たとえばこういう話は知っているかい??」
男「蚊に刺されたとき、君は痛みを感じる??」
少女「…」
少女「いいえ、かゆいけど、痛くはないわ」
男「じゃあ注射を刺されたら??」
少女「痛い」
男「だろうね」
男「私も注射は嫌いだ」
少女「あはは、変なの、先生が注射嫌いだなんて」
男「でも、蚊の針を応用して、痛みのほとんどない注射を作った人もいるんだ」
少女「本当!?」
55
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 20:36:04 ID:uiULMk7A
男「まあ病気とは言えないが、蚊に刺されるということを解析、応用すれば医療に役立つんだ」
少女「すごいのね」
男「それに近いことを、私はしようとしている…のかな」
少女「そう」
男「そして、どのようなアプローチで君の症状が和らぐか、それがとても大事なんだ」
男「そしてこの研究に、部外者のアプローチは極力ほしくない」
少女「…」
男「わかってもらえたかな」
少女「でも、やっぱり、会いたい」
男「…そうだね、そうだろうね」
56
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 20:41:57 ID:uiULMk7A
男「君の病気を治すことができれば…」
少女「できれば??」
男「つまり、君が昨日の記憶を取り戻すことができれば、それは叶うかもしれない」
少女「本当!?」
男「今の君はまだ興奮状態なんだ」
少女「落ち着いてるわ」
男「そうじゃない、君の病気が、だ」
少女「…」
男「それを、その日を楽しみに待っていてほしい」
少女「…」
男「なんて、残酷な言葉かもしれないがね」
少女「…」
57
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 20:57:20 ID:uiULMk7A
少女「…待つ」
男「うん??」
少女「いつかの『私』は、きっと、パパとママに会えるのね」
男「…ああ、約束する」
少女「なら、私は待つわ」
男「…強いな」
少女「パパもママも、すぐに忘れる私よりも、病気が治った私の方がいいわよね」
男「…うん」
少女「私、頑張れって、日記に書く」
男「…そうかい」
少女「先生も、頑張ってね」
男「ああ、もちろんだ」
58
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 21:08:28 ID:uiULMk7A
男「すまない、少し長く話しすぎたかな」
男「疲れはない??」
少女「大丈夫よ。それより…」
男「??」
少女「お腹がすいたわ」
男「ああ、そうか」
男「何が食べたい??」
少女「カレーライス!!」
60
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 21:14:45 ID:uiULMk7A
男「またか」
少女「えへへ、もしかして私、毎日カレーを食べてる??」
男「それは、言えない約束なんだ」
少女「??」
男「楽しみがなくなるからって、日記に書いていないメニューについては君に教えられないんだ」
少女「私が約束したの??」
男「そう」
少女「なら、聞かない」
男「はは、わかった」
61
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 21:24:23 ID:uiULMk7A
少女「ねえ、この日記には、今日までのことが毎日書かれているのよね」
男「ああ」
少女「いつも、何時間くらいで読み終わるかしら??」
男「そうだね…いつも読み終わるのは14時くらいかな」
少女「じゃあ、そのあとは私の自由時間ね??」
男「別に無理せず、全部読まなくたって…」
少女「そうはいかないの」
少女「7月の私も、8月の私も、全部私なの」
少女「私が読まなきゃ、ダメじゃない??」
男「…そうかい」
62
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 21:32:13 ID:uiULMk7A
男「まあ、無理しないように」
男「昼食を持ってこよう、少し待っていてくれるかな」
少女「はあい」
ガチャリ
男「…」
助手「どうでしたか」
男「やはり…真実を言えない、というのは辛いものだな」
助手「ここのところ毎日ですからね」
男「快方に向かっているのか、そうではないのか…」
助手「辛い役回りですね」
男「仕方がない、私が選んだことだ」
63
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 21:38:16 ID:uiULMk7A
少女「さ、続きでも読もうかしら」
7月2日
昨日の私へ
私の病気は、きっと治る。
そして、そのことがきっと、世界中の人の助けになるわ。
だから、私は私で一生懸命、治すの。
先生は一生懸命、治してくれるから、きっと。
明日の私へ
7月よ。7月らしいことをするわ。
そうね…とりあえず私は夏服を買ってもらったわ。
クローゼットに私のお気に入りの服が入っているけれど、一つ新しいのがあるはず。
私の好きな色のワンピースよ。
気に言ってくれるといいのだけれど…
64
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 21:44:47 ID:uiULMk7A
少女「いいわね」
少女「服かあ…」
7月3日
昨日の私へ
さすが私、いいセンスをお持ちのようね。
そのワンピースを早速着てみたわ。なんだか気分がよくなったみたい。
明日の私へ
私、思ったんだけど、先生って素敵だと思わない??
私、今日は『恋』をしてみることにしたわ。
今日一日、先生と私は恋人よ。うふふ。
先生ったら、顔赤くしちゃって、本当にもう可愛いんだから。
「私は今しか知らない」
「貴方の今に閃きたい」
私の殺し文句よ♪なんてね。
少女「恋人…恋人って…」
ガチャリ
少女「!!!!!!」
男「やあ、進んだかな」
65
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 21:53:23 ID:uiULMk7A
少女「あ、えと、えっと」
男「食事、持ってきたよ」コト
少女「ああ、えへへ、はい」
男「どうしたの??顔赤くしちゃって」
少女「っ!!」
少女「なんでも、なんでもないです、はい」
男「どうして敬語になってるの??」
少女「いえ、問題ないです!!なんでもないんです!!」
男「…ふうん」
66
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/16(月) 22:03:00 ID:uiULMk7A
少女「貴方の、今に、閃きたい…」ボソッ
男「!!」
少女「あ、いえ、なんでもないんです、なんでも」
男「それは、聞いたことのある台詞だね」
少女「あ、あの」
男「日記に書いてあったのかな??」
少女「…ええ」
少女「あの、その日の私は、先生と一体何を…」
男「ダメ、言えない約束なんだ」
少女「そっか」
男「ははは、心配しなくても大丈夫だよ」
少女「心配って…」
男「ほら、冷めるよ」
69
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 21:32:01 ID:dgM7hKME
少女「なんか誤魔化されちゃったわ」ペラペラ
少女「恋か…いいなあ…」
少女「私は、いろんなことを楽しんできたのね…」ペラペラ
少女「ん??」
7月27日
昨日の私へ
いいなあ。私も絵を描くのは好きよ。
広い高原で、風を感じながら、油絵を描いてみたいわ。
でも今日は別のことをしてみたい気分なの…
明日の私へ
そう思ってたのに、今日の先生はひどいの。
無理やり水泳をやらされたわ。
私、泳ぐの苦手なのに…
本当は楽器が弾いてみたいって言ったのに、全然聞いてくれないの。
日記にはそんな先生の様子は書かれていなかったのに…
今日は機嫌が悪いのかしら。私の運が悪いのかしら。
少女「先生が無理やり??」
少女「そんな様子はないのに、変ねえ」
70
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 21:44:06 ID:dgM7hKME
7月28日
昨日の私へ
今日の先生は無理やりに何かをさせるなんてこと、なかったわ。
一体どうしちゃったのかしら。
慰めにはならないでしょうけど、残念だったわね。本当に。
明日の私へ
今日の先生は、やけに優しい感じだったわ。
「昨日はすまなかった」って何度も言ってた。覚えてないのに、ね。
「いつもとは違うアプローチを試してみたんだ」って言ってたけど…
症状は別によくなってないみたい。残念。
昨日できなかった楽器を弾かせてもらったわ。
なんだか、当ててみて??
少女「いつもと違うアプローチ、か」
少女「そんなこともあるのねえ」
少女「私が弾きたい楽器と言えば、もちろん…」
71
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 21:47:53 ID:dgM7hKME
7月29日
昨日の私へ
楽器ね。そういえば考えたことなかったわね。
私が弾きたい楽器と言えば、バイオリンしかないわ。
私も弾きたくなっちゃったけど、どうしようかしら。
でも昨日の私が弾いているから、私は違うことをしようかな。
明日の私へ
今日の私はお料理をしたわ。
お昼ごはんを先生と一緒に作ったの。
先生は「料理なんて作ったの、何年振りだろう」なんて言ってたわ。
私はママと料理を作ったことがある気がしたの。
でも、それはずっと前のことで、昨日の記憶ではない、みたいね。
少女「やっぱりバイオリンかあ」
少女「いいないいな、私も弾きたいなあ」ペラペラ
72
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 22:00:21 ID:dgM7hKME
少女「ううん、いつの私も、症状はよくなっていないみたいね…」ペラペラ
少女「私は、どうしてこの病気にかかったのかしら…」ペラペラ
少女「…」ペラペラ
少女「私は、どうして、この病気に…」ペラペラ
―――
助手「今日も彼女は、同じように日記を読んでいますか??」
男「ああ、いつもの通りだ」
助手「彼女が元に戻れる日は、来るのでしょうか」
男「わからない」
男「私は彼女を治す、必ず治す、そう思っているが…」
助手「いる、が??」
73
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 22:19:50 ID:dgM7hKME
男「本当にそれが彼女のためになるのかと、最近思う」
助手「しかし、彼女を研究することで救われる人々が世界には大勢います」
男「ああ、もちろんそれはわかっている」
男「わかってはいるが…」
助手「彼女が治るということは、つまり両親のことを思い出すということですから、ね」
男「ああ、それを私は危惧している」
助手「確かに、彼女には辛いかもしれません」
男「辛いだろう、辛いに決まっている、まだ幼い少女なんだ」
助手「先生…」
男「私なら思い出したくないね」
男「思い出させたくない、とも言える」
男「矛盾しているようだが、それが私の本心だろう」
74
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 22:24:34 ID:dgM7hKME
男「…食事を下げてくる」
助手「薬を…」
男「ああ、わかっているよ」
―――
ガチャリ
男「食事はすんだかな」
少女「ええ、だいぶ前に終わったわ」ペラペラ
男「日記はだいぶ進んだようだね」
少女「ええ、面白いわ」ペラペラ
男「これが今日の分の薬だ、飲みなさい」コト
少女「はあい」
75
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 22:35:48 ID:dgM7hKME
男「苦いが、君のための薬なんだ」
少女「わかってます、ちゃんと飲むわ」クッ
男「えらいな」
少女「ねえ、先生…」
男「ん??」
少女「苦っ」
少女「私は、この病気を治すべきよね??」
男「…」
少女「ね??」
76
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 23:00:51 ID:dgM7hKME
男「ああ、そうだね」
少女「そうしたら私は退院できるのかしら??」
男「ああ、きっと」
少女「本当に??」
男「…」
少女「先生、嘘はつかないで」
男「…きっと、病気を治すことが君の幸せにつながるさ」
少女「…そう」
男「そして、世界中の人を救うことに、なると思う」
少女「そうしたら先生はヒーローね??」
男「はは」
77
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 23:11:31 ID:dgM7hKME
少女「読み終わったら、また呼びます」
男「ああ、ゆっくり読むといい」
バタン
少女「…」ペラペラ
少女「私は料理をしたり、絵を描いたり」ペラペラ
少女「お菓子を食べたり、楽器を弾いたり」ペラペラ
少女「素敵な妄想をしたり、恋をしたり…」ペラペラ
少女「これって、幸せなんじゃないのかしら…」
78
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 23:16:52 ID:dgM7hKME
8月16日
昨日の私へ
今日はなんだか体が重い気がするわ。
昨日の私がたくさん食べたせいよ。
どうしてくれるの!?太っちゃう!!
…なんてね。
明日の私へ
今日の私は運動をさせてもらったわ。
なんだか体を動かしたい気分だったの。
先生も『身体の方は一切問題がない』っておっしゃっていたから。
マット運動もボール遊びもバレエもやらせてもらったわ。
でも一人でやることしかできなかったの。
ここに他にも友だちがいるといいのだけれど。
少女「運動かあ」
少女「私もそういえば運動不足な気がするわ」
少女「友だち…友だちは、いたのかしら」
少女「今、どうしているのかしら」
79
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 23:25:04 ID:dgM7hKME
8月17日
昨日の私へ
今日はなんだか体が重い気がするわ。
昨日の私がたくさん運動したせいよ。
どうしてくれるの!?筋肉痛になっちゃう!!
…なんてね。真似してみたの。
明日の私へ
今日の私も運動をさせてもらったわ。
鼓動が速くなる感覚って、最高ね。
呼吸が苦しくなる感覚も、最高ね。
なんだか、生きているっていう実感が持てるの。
それって、幸せじゃない??
少女「生きている…」
少女「私は、生きているのね」
少女「当り前か…でも…」
少女「それが、なんだか幸せだということは、わかる気がするわ」
80
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 23:33:14 ID:dgM7hKME
少女「…」ペラペラ
男「一心不乱に読んでいるようだ」
少女「…」ペラペラ
助手「さあ、今日は一体どんな無理難題が飛び出すでしょうね」
少女「…」ペラペラ
男「笑い事じゃないぞ」
男「今日だけママになってくださいと言われた時は最悪だった」
少女「…」ペラペラ
助手「先生のママ姿は一生忘れられませんね」
男「忘れろ!!」
少女「…」ペラペラ
81
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 23:43:19 ID:dgM7hKME
少女「…ふぅ」
少女「これで、最後ね」
9月5日
昨日の私へ
写真に撮られるのを嫌がったっていう気持ち、私もわかるわ。
今の私が本物なのよね。今の私だけ、というか。
自分の知らない自分を見るっていうのは、なんだか気持ちが悪いもの。
写真なんかに撮らなくたって、この日記を見れば私がなにをしたかわかるもの。
明日の私へ
ねえ、私は昨日の記憶を思い出したいの??
それとも思い出したくないの??
私は、思い出したくない気がするの。
思い出したら、この日記を読んでも新鮮だと思えないわ。
先生にももう会えないわ。
昨日の私にも、明日の私にも会えないわ。
それって、幸せかしら??
今日の私はずっとそんなことを考えていたの。
でもつまらない一日だったとは思わないわ。
あなたはあなたの、素敵な一日をすごしてね。
だってそれはあなたにしかない権利なんだもの。
82
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 23:47:46 ID:dgM7hKME
少女「…」
少女「私は、幸せ、かもしれないわね…」
少女「今日の私は今日の私だけのもの…」
少女「さあ、なにをしようかしら」
ピンポーン
男「そら、お嬢様がお呼びだ」
助手「今日はなんでしょうねえ」
男「昨日みたいなのも少し寂しいけれど、な」
助手「先生も楽しんでますね」
男「ははは」
ガチャリ
少女「ねえ、先生、今日はね…」
★おしまい★
83
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[]投稿日:2012/01/17(火) 23:56:57 ID:dgM7hKME
終わったー
ありがとうございました
http://hamham278.blog76.fc2.com/
87
名前:
以下、名無しが深夜にお送りします
[sage]投稿日:2012/01/21(土) 13:06:10 ID:DoeoAXGQ
え?
結局少女の過去は??
88
名前:
HAM ◆HAM/FeZ/c2
[sage]投稿日:2012/01/21(土) 22:35:15 ID:xgTgyrS.
詳しく書くと野暮かな、と思いその辺かなりぼかしてあります。
男「あの頃の僕らにはもう戻れない」
http://hamham278.blog76.fc2.com/blog-entry-33.html
この話に出てくる病気の第一感染者が少女です。
「少女は自ら進んで記憶を失った」ということ、「最後の記憶は家族に関すること」ということを付け加えておきます。
蛇足失礼しました。